水平思考(lateral thinking)は既成の枠に捕らわれずに
視点を様々に変えて問題解決を図る思考方法です.
与えられた枠の中での問題解決を探る通常の思考方法は
垂直思考(vertical thinking)と呼ばれます.



発案者のデボノ(Edward De Bono)は次のような水平思考の具体例を示しました:




[年老いた醜い金貸しに借金した父親と娘の具体例での水平思考]


多額の借金をした父親と娘に対して年老いた醜い金貸しがチャンスを与えます.敷地に散らばっている石から白い石と黒い石をひとつずつ選んで袋にいれた籤(くじ)を作って引かせてあげようと提案したのです.「娘がもし白い石を引いたら借金は帳消しだし何もしなくていいが,黒い石を引いたら借金は帳消しにするが娘は嫁として貰い受ける」と言いだしたのです.「このチャンスに掛けないなら借金をすぐに返せ」と金貸しは迫ります.

若く美しい娘は年老いた醜い高利貸しのところには嫁に行きたくありません.でも,高利貸しが2つとも黒い石!の籤を作るところを娘は見てしまいました.「このとき娘はどうするのが賢いか?」…っとデボノは問いかけました.

既成の枠に捕らわれた垂直思考では,「籤を引くのを拒否する」,「インチキを暴いて籤を作り直させる」,「父親を救うために諦めてお嫁にいっちゃう…!?」とかいう考えしか浮かびません.垂直思考では「娘が取出す石の色」に捕らわれたままなので,有効な問題解決方法が見いだせないのです.

水平思考では袋の中に残る石の色にも注目します. 娘は籤を引きます. が,石の色を確かめる前に!敷地に落してしまうのです!…「あらっ, 私ってそそっかしいわね. でも大丈夫!袋に残ってる石の色を見れば引いた石が何色だったか分かりますものね♪」




[ワインと水の具体例での水平思考]

2つのグラスA,BがあってAにはワイン,Bには水が同じ量だけ入っています.今,ワインの入っているグラスAからスプーン1杯のワインを取出して水の入っているグラスBに入れて混ぜます.このワインを加えて混ぜたグラスBから同じスプーン1杯の液体を取出してグラスAに戻します. AからBへスプーン1杯の液体を移し,BからAにスプーン1杯の液体を戻すという操作をもう一度繰り返します. 「この操作を行った結果,グラスAの中の水の量とグラスBの中のワインの量はどちらが多くなるか?」…っとデボノは問いかけました.

垂直思考では,グラスAのワインとグラスBの水の量が同じLリットルだったとし,スプーン1杯で運ばれる液体の量をxリットルとしてワインや水の濃度などを考え, 1回目の操作の後グラスAの中の水の量とグラスBの中のワインの量は同じ


,2回目操作の後もグラスAの中の水の量とグラスBの中のワインの量は同じ下記だという結論を出します:




垂直思考では「スプーンでどのくらいのワインや水が移動するか」に捕らわれたままなので,複雑な計算を強いられるのです. が,計算など必要ないのです.

水平思考では「何度操作を繰り返そうがグラスAとグラスBの中の液体の量は変らない」ということに注目します. それはグラスAの中に移された水の量とグラスBの中に移されたワインの量が同じだからなのです.グラスAの中に移された水の量をL1,グラスBの中に移されたワインの量をL2として,グラスAの中の液体が全体でLのままだという式をたてると下記が得られます:


垂直思考なら量が分かるから便利だって?では,「かき混ぜない」としたときはどうでしょう(笑).水平思考の威力は劇的です.



水平思考は特別なものではなく,日常生活にも広い応用範囲をもっています.
「こんな状況を打開する方法なんてない!」としか思えないときこそが!,
水平思考の出番です…一晩寝て問題を別の角度から見直してみましょう.
諦めかけていた問題の解決策が見つかります.水平思考力を高めるには
星新一がお奨めです…様々な視点から課題に取り組めるようになります.



参考文献:

エドワード・デボノ著,白井寛訳:水平思考の世界,講談社(1969)

…「万事が順調にはこんでいるようにみえる企業にこそ問題がある!」
マクルーハン以上と騒がれ,欧米を席巻した「水平思考」
デボノ博士の創造的思考法は科学者に,ビジネスマンに芸術家に
コンピュータ時代に生きるすべての現代人に思考革命を要求する!




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