●第2次予選
私が到着したときは、第2次予選の終わりの方で、最後の2名の演奏だけが聴けました。
第2次予選は課題曲の演奏のため、同じ曲を二人の奏者が演奏し、聴き比べることが出来ました。ただ、課題曲は私は全く知らない曲でしたので、細かいところはよくわかりませんでした。
課題曲A:小林由直作曲「カンタービレ」
課題曲B:ルッツ=ウェルナー・ヘッセ作曲「六つの前奏曲より第5、6番」
音色的には、石橋さん(男性、関西地区)の方が優しい音だったと思います。もう一人竹間さんは少し音色に難がありました。また、調律も少し悪かったように思います。
課題曲Aのメロディーは石橋さんの方がきれいに出ていました。ただ、細かい動きが出てきて、旋律がピアノに移った際に、マンドリンの音が小さすぎて聞こえなくなってしまいました。その点は、竹間さんの方がはっきり聞こえてよかったと思います。
はじめの印象は、この2名を聴く限り、かつてよりは、だいぶコンクールのレベルはアップしたと感じました。
演奏終了後、やく30分ほどで審査発表となり、6名の本選出場者が発表されました。
●さて、第2次予選と本選前半3名を聴いた結果の感想です。
(あわせて4名を聴いたことになります。うち1人は2回)
まず、コンクールという性質上仕方がないかもしれませんが、技巧を競うという感じで、自由曲は、やはり、いわゆる「難曲」ばかりという印象でした。確かに、本選出場者だけあって、皆さんかなりの訓練を積まれた方であることはわかります。しかし、私にとってはそれでは引きつけられるところが少ないと感じました。
●音色について
私の最大の関心事は「音色」です。しかし、出場者の中で、これは、と思わせる音を出す方はいませんでした。むしろ、あれだけの技術を持っているのに、トレモロはこの程度か、という演奏なのが残念でした。(本当は、音色だって「技術」です。でも「技術」「技巧」と言うと、通常、速いパッセージを弾きこなす、あるいは、重音、アルペジオなど、特殊な奏法を演奏する「技術」という意味に使われています。)
私の望むような音が出ていない原因になっているのは、皆「手首」ではなく「腕」で演奏していたからだと思います。マンドリンの演奏法は「流派」とでも言いましょうか、やり方が様々で、「腕弾き」を指導する先生がいるのは知っていましたし、実際「プロ」の方でも腕弾きの人を、これまでも何人も見てきました。私は「手首」派であり、そのように指導していますが、出演者がみんな「腕弾き」だったので驚きました。
しかし、腕弾きではどうしても音色が固くなりがちす。トレモロをしたとき「タタタタタ」という感じになり、私が求める「タララララ」という滑らかな音にはならないのです。
また、曲のせいもありますが(特に課題曲B)、強い音ではじくところでは、とても固い音で演奏され、まるで打楽器のようでした。マンドリンの「美しい音」とはほど遠い感じでした。でも、もし、「美しい音」を求める奏者なら、もう少し違った音になったと思います。やはりそのようのことはあまり求めていないのだと感じました。
「腕弾き」のせいで音が固くなるからでしょう、柔らかい音で弾くべきところにくると、皆一様にスルタスト(指板上で弾くこと)をするのです。そのようにすることで、たしかに柔らかい音にはなりますが、その分とてもこもった音になります。また、楽器を抱え込むように持つので、音が響きにくくなります。奏者の中には、トレモロをしながら不必要なくらい、弾く位置を変える(ピックが弦にあたる位置が変わる)人もいました。
それなのに会場に十分行き渡る音で演奏していたので、きっとピックは相当強く持っているのだと思います。それがさらに音色を悪くする結果を生むのだと思います。
●歌がない
難易度の高いところはよく演奏していますが、ひとたび美しいメロディが出てきたときに「歌」が感じられません。課題曲Aの「カンタービレ」や、山田さんが演奏したムニエル作曲「アリアと変奏」などは、美しいメロディがあるのですが、「歌い方」の研究はあまりされていないと感じました。
●マンドリン関係者以外に受け入れられにくい
出演者は皆、私がとても及ばないような難易度の高い曲を、良くこなしていました。6名の中から優勝者が出て、会場のマンドリン関係者からは、きっと注目されるでしょう。今後も活躍されると思います。ただ、それはあくまで「マンドリン関係者」から注目されるだけであり、一般の人からはあまり注目されないと思います。
おそらくこれらコンクールで入賞した方たちは、いずれ「先生」として、その生徒に同じようなことを教えていく、熱心な生徒ほど、それらの先生のもとに集まってくるので、ますます、マンドリン界ではそのような演奏傾向が進むのでしょう。
私は、それは、一般の音楽とは相入れない方向だと思います。たとえば、私が好きな弦楽四重奏団の演奏会に行きます。その「技術」はすばらしく、難易度の高い曲を「難しくなさそうに」自然に弾いていきます。でもそれだけなら、さほど好ましいと思いません。けれど彼らの演奏は、美しい旋律や、ゆっくりしたメロディ、ロングトーンなどのときに、「ぐっとひきつける」ような音が響くのです。そして、私は心を奪われます。だから、マンドリン以外の楽器の方とは「出来れば一緒に演奏したい」と思うのです。
でも、今回のコンクール出演者の演奏からは、私はとても「一緒にやりたい」とは思えませんでした。コンクールの出演者だけではなく、それらを育てた先生も、現在プロとして活躍している人たちも同様と思われます。
もちろん、彼らからすれば、私の方が「魅力がない」と思います。むしろ、はじめから対象外でしょう。でもそれはし方がないのでしょう。あまりにも「求めるもの」が違うのだと思います。同じ楽器を使っていても。
●見た目
容姿ではありません。演奏者としての振る舞いとでも言いましょうか、観客にとって好印象を与えられるかということです。演奏の善し悪しの本質から離れるかもしれませんが、それでも大事な要素の一つと思います。
まず以前からとても疑問だったのですが、「暗譜」で弾くことは良いとしても、そのためにどこを見てよいのか分からないためか、全員が終始自分の手を見て演奏するというのがあまり良いとは思えませんでした。
観客の方へ視線を向けることが、演奏中はもちろん、お辞儀するときでさえほとんどないのです。プロとして舞台で演奏するようになるなら、もっと観客を引きつけるような振る舞いをしてほしいと思いました。
また先ほどもあげましたが、楽器を抱え込むような姿も見た目に美しくないです。その他の例としては、楽器が正面に向くようにとわざといすを斜めに向けて座る人もいました。でも少し不自然に感じました。それから、足台に両足を載せるという演奏も初めて見ました。みなそれぞれ「良い演奏」に必要があってやっていることだとは思います。でも観客にとってはやはり「不思議な」気がする演奏スタイル。すくなくとも「魅力的」ではない演奏スタイルだと思います。もう少し考えてほしいと思います。
●本選の結果?
本選の結果はどうなったか不明です。私が聴いた3名がどういう審査結果だったか、審査員の審査傾向などが興味深いところです。
以上まとまりのないレポートで申し訳有ありません。私の個人的見解なので、会場にいた方、あるいは出場関係者の方からは、反対意見も多々あると思います。
私の考え方については、こちらもご覧ください。
(追記)*本選の結果です。
1位竹間さん
2位石橋さん
3位望月さん
です。おめでとうございました。1、2位の方の演奏を聴けたのはラッキーだったと思います。(竹間さんは2次予選しか聴けなかったけど)