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−早稲田大学マンドリン楽部稲友会会誌「稲友」第20号掲載文より−

 みなさん、すっかりごぶさたしてしまいましたがお元気ですか。卒部後ほとんど顔をお見せしていませんが、覚えていてくださるでしょうか。

 私のことを思い出していただき、また卒業後の空白を少しでも埋めるために、WMGに入った頃の事と、卒部後の私の、けっして成功とは言えない人生をあえてお書きします。人にはこんな人生もあるのかと思ってお読みください。

 高校でマンドリンに夢中になり、成城大学入学後、個人レッスンを受けたり、高校の練習に参加し続けた私が、WMGに入ることになったのは、高校の後輩の吉川さんが、WMGに参加していたからでした。大学でクラブに入っていなかった私は、友人もそう多くなく、何か淋しさを感じていたのでしょう。ある時吉川さんと話をしていて、「自分も一緒にやってみたい」と思ったのです。当時すでに三年になっていた私は、「入れるはずはない」と思っていたのですが、数日後には楽器を抱えて大隅講堂へ行き、入部することになりました。

 マンドリンのこと自体は少々自信はありましたが、入部イコール一年生のつもりで参加したため、非常に緊張し、しばらくは三年生として扱われることが、かえってその緊張感を高めてしまったものでした。

 でも、仲間たちのやさしさに接しているうちに、次第に力も抜けて、本領発揮(?)となりました。その頃のエピソードをひとつお話ししましょう。

 ある合宿の日の夜、マンドリンについて話し始めると止まらない私は、にこにこしながら聞いてくれる、一人のかわいい下級生の娘と話をしていました。高校のクラブでも、また大学でも、女性の多い所で過ごして来た私は、ごく自然に話していたのです。(もっとも、その娘は、眠いのに話を聞かされて、大変だったとは思います。)あとで聞いたことですが、その時、男子部員の中には、「どうやったらあんなに(女の子に)近づけるのか」とあきれていた人もいたようです。そういえば、ずっとあとで、「女性への近づき方を教えて下さい」と言われたこともありました。

 さて、突然卒部後の事になりますが、大学院に進学を希望し、全く就職活動をしていなかった私は、大学院入学を止めてしまったために、とたんに就職浪人となってしまいました。夏に図書館司書の講習に通い、資格を取ったものの、就職先はみつからず、アルバイト生活を続けました。翌年の七月、中央出版というキリスト教の出版社にようやく就職しこれで人生も安定したかに見えたのです。

 ところが、何とか音楽に係わりたい。マンドリンでセミプロ級の合奏団を作りたい。などと夢を追い続ける私には、「普通の」生き方ができなかったのです。音楽の勉強(マンドリンに限りません)をすればするほど、高校のマンドリン部に係われば係わるほど、ますます思いはつのり、あせりました。それでいながら、人並みの結婚を夢見たため、これも失敗し、結婚に至りませんでした。

 さすがに私も考えさせられました。いったい自分の人生はどうなるのか、と。そんな時ある友人に出会いました。子供の頃からのカトリック信者であり、勤め先もカトリックの出版社であった私は、大人になってから洗礼を受けて、真剣に神を求めるとの人に大きな影響を受けました。中学の頃から、大人の人に神父にならないかと勧められていた私は、それまでにも何度か神父の道も考えましたが、踏み出せませんでした。一度は結婚を決意したので完全にあきらめたのですが、今回のこの友人との出会いで、もう一度、神父になろうと思うようになったのです。

 そして、色々本を読んだり、幾つかの修道会を調べて(職場にはその様な本はたくさんありましたので)、聖アウグスチノ修道会というグループを知りました。何度か訪れ、神父たちや、若い人たちと接して入会することを決めました。「修道院」と聞くと、山の中で人里離れて生活したり、まるで牢獄のような閉ざされた世界で生きるように思う人もいるかも知れませんが、そうではありません。現に私は、修道院に生活してから、修練という修行期間に入るまで7ヶ月間昼間は会社へ出勤していました。また、特に、私が入った修道院は小さく、普通の教会の2階が、修道者たちの住居になっているだけのものでした。

 修練に入ってからの生活を少しお話ししましょう。

朝6:00頃  起床 
6:20   ミサ 
7:00   朝の祈り・食事・念祷
      (三十分間の沈黙の祈り)
      そうじ
9:20   勉強
11:50   昼の祈り・昼食
1:30〜  老人ホームでボランティア
3:30   その後自由
5:15   晩の祈り
5:30   夕食・かたづけ
7:30〜  自習
9:30   寝る前の祈り

 とまあこんな具合です。曜日によって違いもあり、木曜日は休日で、みんなで出かけたりもしますから、それほどたいへんなことではありませんでした。さてそんな生活も9ヶ月が過ぎ、いよいよ神学校へ入学のための試験が近づいたころ、指導神父との個人面談をしました。それまで、色々と悩み、音楽の勉強も、教会音楽の勉強でますますその意欲が高まっていたので自分の希望を率直に話しました。そして、よくよく相談の結果、修道院を去ることにしました。昨年十二月修道院を出てアルバイトをしながら就職先を探していますが、経歴の複雑さのせいかなかなか思うように進みません。この「稲友」が読まれる頃には決まっていると良いのですが。

 現在2度目の就職浪人中ですが、あまり悲観せずがんばっています。今度こそ、「普通の」生き方をしようと思っています。趣味はあくまでも、「普通の」生活の中で持とうと努力しています。どうかみなさん、私が新しくなれるよう応援して下さい。これからもよろしくお願いします。

 

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