【1】
「あけましておめでとうございます!ツォンさん!」
「ああ。おめでとうイリーナ」
今日は神羅カンパニーの仕事始めの日
かといって、上場企業(?)に休みは無い
悠々自適に正月休みを取っているのは上層部くらいなもので・・・
もちろん裏を担うタークスには正月休みなんてあるはずもないのだが
「ええ〜!!タークスってお正月休みないんですか!?」
イリーナが悲鳴に近い抗議の声を上げたのはちょうど二ヶ月前のこと
「あ?当たり前のことだぞ、と。タークスにいつ仕事が来るかわからないし」
レノがうっとおしそうに抗議に応える
手には正月料理のパンフレットが握られている
「年越しとか正月とか、そんな重要行事にまでこんなむさ苦しいとこで仕事
なんですか!?信じられないです!」
「って、いってもなあ・・・ルード・・・」
レノはもう一人のタークスメンバーに助けを求めた
腕には自信があっても女には弱いようだ。
「・・・・・・」
ルードは無言で正月料理のオーダーをメモしていた
「へいへい、お前に救いを求めた俺が馬鹿だったぞ、と」
ため息混じりにレノはルードを頼りにしたことを後悔した
イリーナは相変わらずすごい剣幕でレノを凝視していた
「いいんじゃないか?イリーナの年休余っているようだし
正月は仕事も多くは無い。前の秘書課は重役がお休みだったから
秘書たちも年末年始は休暇だったのだろう?」
「ツ・・ツォンさん!いつの間に!!」
「いいや、気にするな。休暇は必要だ。そのかわり、年明けからは
しっかり働いてもらうからそのつもりで」
「は、はい!ありがとうございます!!」
そんなやりとりがあり、仕事始めの日から初出勤となったイリーナ
あんな休暇をめぐって攻防戦を制したというのに
休暇中はどこへ行くというわけでもなく、実家で寝正月で過ごして終了したのだった
「あ、イリーナ。早速だが今日は新年会をすることになった。夕方予定は?」
「ありません!もちろん参加させていただきます!」
「休暇明けのせいか、はりきっているな。今年もその調子でよろしくな」
「はい!私、タークスの為に今年も身を粉にして頑張ります!」
イリーナが張り切っているのは休暇明けのせいでもなんでもない
憧れのツォンの前だからだ
ちなみに、本音はタークスの為でなくツォンの為であるし
レノやルードがピンチになったら、身の危険を理由にしてツォンと逃亡を謀るくらいの
よくわからない覚悟もあった
「新年会・・・ふふふ・・・・」
呪文のように呟きながら薄暗い廊下を歩いていくイリーナ
その姿にレノが大げさに驚いて見せたが、イリーナの視界に入れてももらえなかった
夕方7時
今日も汚い裏の仕事をチャキチャキ片付けてタークスの面々が
大手居酒屋チェーン店の前に集まった。
3人とも黒スーツに黒いコート
傍からみれば、某映画ファンのオフ会か新興宗教の勧誘か・・・
年始め早々怪しい面々が居酒屋に集合していたのだ
「レノ先輩〜。こんな格好で飲み会なんてやめましょうよ!
なんだか注目されてますよ。ほら・・・」
マフラーで顔を半分隠したイリーナが小声でレノに抗議した
「バカだな、と。タークスは何をやるにも黒スーツだと決まっているぞ、と
宴会最中に裏の仕事が突然来たら、俺たちは全身タイツで駆けつけるのか?」
「レノ先輩ー!なんで宴会で全身タイツなんですか〜!!」
「いや、俺も若かりし頃に同じ疑問を持って、上司にきいたのだ。そしたら・・・」
「待たせたな」
「ツォンさん!」
こうしてタークスメンバーが全てそろった
ツォンも同様、真っ黒なコートに真っ黒なスーツで決めていた
イリーナのフィルターを通してしまえば、ツォンの全身黒ずくめもタキシードになるのだが
「さあ、予約の時間だ。中に入ろうか」
幹事のレノを先頭に居酒屋の中に入る面々だったが
最後尾のツォンにイリーナはそれとなく近寄って、ドキドキしながら話しかけた
「ツォンさん、今日も黒いスーツ、決まってますね!」
「ああ、ありがとう。これは宴会用に特注したものだ」
ツォンはまんざらでもないというような表情をして袖部分を持ち上げた
「宴会用・・・ですか。では、何着も黒いスーツを?」
「そうだな・・・ここ最近では黒いスーツしか着ていないな」
「じゃ、次の打ち上げとかは違うの、着ませんか?全員黒スーツで飲み会なんて
違ったら、もっと盛り上がると思いますよ!」
(そして私は大胆なイブニングドレスでツォンさんのハートをゲット!!)
イリーナの押しにツォンは少し眉を寄せた
「あ・・・・」
イリーナはツォンの微妙な表情に「まずかった?」という直感が働いた。
(そうだよね。決まりだってレノ先輩がさっき言っていたし・・・
ツォンさんは上司として、決まりを破るわけにはいけないのよ!なんて漢なの!!)
「イリーナ・・・」
「・・・はい」
「タークスは黒スーツで仕事をこなす。プライベート中といえども仕事が来る部署なのだ」
諭すような声色のツォンに、イリーナはうっとりしながら頷く。
「我々が、宴会中に呼び出しをくらった時に全身タイツだったら大変じゃないか?」
半ば諦めたかのように笑うツォンに、イリーナは固まった
「レノ・・・」
「なんだ?ルード・・・」
「ツォンさん、まだ知らないんだな・・・」
「ああ。宴会の正装は全身タイツだって騙されてること。解ってないぞ、と」
イリーナは入口で固まったままだ。このままでは営業妨害だと店員に怒られるだろう
「若かりし頃のドッキリらしいぞ、と。今や裏の仕事の部長だからな・・・
当時騙していた輩はきっと闇討ち決定だぞ、と」
「それは俺たちの仕事か?」
「かも・・・な」
「俺達も・・・同罪・・・」
「あ゛・・・・」
「何をしている?早く新年会始めてしまおう」
入口で固まる3人をよそに、ツォンはコートを脱いだ
タークスSS第二弾です。
いい感じに壊れた方達です。きっと彼らでまともなネタはもうないでしょう
第三弾、あるかもしれません
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