2007年7月25日
奄美市市長 平田隆義 様
NPO法人環境ネットワーク奄美
    代表 薗 博明

   北部奄美観光拠点施設整備基本計画に関する申し入れ

 「北部奄美観光拠点施設整備基本計画」(以下「計画書」)を白紙にもどし基本概念から再検討されるよう申し入れます。
 併せて、次回の委員会を持つ前に行政当局ならびに策定委員会委員と話し合いを持つ場を設定していただくよう要請します。真摯な意見交換の中で共通理解を得る努力をすることが、奄美の将来にとって何よりも大事かと考えるからです。そして、共通理解は必ず得られると確信しています。
 主な理由は次のとおりです。

1 計画書は、(旧)笠利町が長年にわたって積み上げてきた古代村構想を根底から崩す計画になっています。
 笠利町東海岸一帯は国指定史跡「宇宿貝塚」をはじめとして長浜金久遺跡 群、用岬遺跡、喜子川遺跡、マツノト遺跡などが分布し、有数の埋蔵文化財 包蔵地として知られています。また、グスク分布の密度が高く辺留グスク、ウーバルグスク、赤嶺グスク、万屋グスク、赤木名グスク、喜瀬タナグスク、用安ニャトグスク、山グスク、フーグスクなど30ほどを数えます。ヤマト 文化、琉球文化との関連で重要性が注目されている地域ですが、それらの調査・分析・研究は途中の段階ではないでしょうか。それらの中心に位置しているのが神聖な信仰の地「あやまるグスク」です。安易に手をつけてはなりません。
 奄美の先人たちは、月や太陽まで含めた雄大な宇宙観を持ち、多様な生態系を持続させ、独自の文化を創り後世に伝えました。「地球の宝」と注目されている奄美の自然、人間の温もりに満ちた豊かな奄美の文化を顧みない計画であることを、万感の思いを込めて強調します。

2 あやまる岬とその周辺一帯の歴史的意義、景観、風土を損ねる計画です。計画書の【基本コンセプト】には「奄美の自然、奄美の史跡、奄美のこころ、あやまるグスクと自然」とありますが、計画書作成のみなさんはこのことを理解しているのか疑問を抱かざるを得ません。理解しているのならこのような計画はできません。計画書は、【基本コンセプト】にあるすべての項目をすべて踏みにじる計画になっています。

3 国定公園内に位置し、「“奄美十景”“新鹿児島百景”」になっている景勝の地を破壊し、「神聖な“信仰の地”」を踏みにじる計画です。さらには、世界遺産登録をめざしている本県の方針をも否定することになります。地元奄美でも登録をめざして取り組んでいますが、克服すべき課題の一つに地元の認識不足があげられていることはご承知かと思います。この計画書は、認識不足を象徴しているように見えてなりません。

4 高名な大瀬のホゾンガナシは、あやまる岬のアムィゴーで自然界への畏敬の念をもって身を清めてきました。近接している大瀬海岸で公園整備をしたときのことです。カンゼラゼの石(神石)の撤去作業を始めようとしたとき、石の破片による死亡事故がありました。それで神石は残すことにしました。神がかったことを申し上げているのではありません。自然界と人間の係わり方はどうあるべきかを奄美の先人たちは、“人間は自然に生かされている”と受け止め、自然をあがめる神聖な場所を定めてきました。これは、環境破 壊が国際政治の重要課題になっている今日、世界に向かって誇りを持って発信できる奄美の文化です。あやまる岬はそんな場所です。

5 あやまる岬周辺の動植物ついては検討の視野にすら入っていないのではないかと思えますので簡単にふれておきます。
・《数多い希少種の植物》
ヤンバルゴマ(準絶滅危惧、北限)、タマムラサキ (アマミヤマラッキョ、準絶滅危惧、奄美群島では笠利だけ)、オキナワチドリ(分布重要、絶滅危惧?)、マルバグミ(希少種)、ハウチワノキ(絶滅危惧?)、イソノギク(絶滅危惧?、北限)、イソフサギ(分布重要)、アツバアサガオ(絶滅危惧)、ソコベニヒルガオ(絶滅危惧?)などなどです。
・《動物のにぎわい》オットンガエル(県・天然記念物、中琉球固有種、奄美大島と加計呂麻島に生息、絶滅危惧?類)、オカヤドカリ(天然記念物、分布重要)、リュウキュウアカショウビン(夏鳥)が繁殖しています。リュウキュウサンコウチョウ(夏鳥)、ベニアジサシ(絶滅危惧?類)、エリグロアジサシ(絶滅 危惧?類)、メジロ、イソヒヨドリなど、貴重な生き物たちのにぎわいはここでも見られます。奄美大島の自然が世界的に注目されているのは、ア マミノクロウサギなどが生息している森林地帯だけではありません。
 あやまる岬周辺の多様な生態系は、欠かせない重要な検討項目です。

6 奄美に訪れる観光客が望んでいるのは奄美の自然や昔ながらの素朴な風土であって、無機質な都市型の施設ではありません。計画書は、奄美パークをつくったときと同じ発想になっています。奄美大島を訪れる観光客のほとんどは奄美パーク、あやまる岬を巡ります。当計画は、あやまる岬の自然のたたずまいや文化財的価値を台無しにするだけでなく、奄美パークの存在価値をも失うことになります。諸施設は奄美パークで十分すぎるぐらいです。
 ワンパターンのところを巡って満足する人がどれだけいるでしょうか。

7 地元の観光関連業者にとってもマイナス要因になります。奄美の特性(自然、文化、歴史)が失われるからです。観光客と地域住民を分断する結果をもたらすことにもなるでしょう。「1集落1ブランドとの連携」とありますが、とってつけたに過ぎません。本気で地域ブランドとの連携を考えるなら、なおさら古代村構想を生かすべきです。

8 皆既日食時に予想される来訪者は奄美固有の自然のたたずまいの中で、奄美の先人たちの宇宙観に接したとき、きっと感動を覚えるに違いありません。そんなとき、もう一度奄美に来たいという気になると思います。特段の施設を設けることではありません。悠久の自然を一過性の事象のためにつぶしてはなりません。

9 バブル期に見られたカネを使えばよいという発想です。これまでの無駄な工事、過剰な事業のために奄美の宝がどれだけ失われたかを振り返っていただきたい。
 国民宿舎を閉鎖したこの機会に神聖な信仰の地にもどし、奄美の先人たちが畏敬の念を持って護ってきた原点に可能な限り近づける努力をすることこそが今を生きる私たちの使命です。このことが奄美の特性をアピールし、観光の目玉にもなります。
 ゆめゆめ、このことを忘れてはならないと考えます。

10 総じて奄美の歴史、風土、地元感情、自然、景観を踏みにじる許し難い計画です。のみならず、これからの奄美振興をも阻害する要因になります。
 事を急いで悔いを後々に残すようなことにならないよう、くれぐれも申し上げます。

※ 当申し入れについての回答をお待ちしています。行政当局ならびに策定委員会委員と話し合う前にいただけないでしょうか。よろしくお願いします。