2003/03/22 町田「満屋」



2003年3月22日(土)13時過ぎ

アサヒスーパードライ生を、ぐいっと飲む。疲れた体にしみ渡る。

「満屋」は、町田駅から神奈川中央交通のバスで10分弱の熊野神社前で下車し、成瀬街道を進行方向に歩く事、3分程にある。成瀬街道沿いにあり、ネオンも出ているので、見過ごす事は無いだろう。

なぜこんな所まで来ているか?

3月17日(月)、「とても悲しいお知らせ」という題名のメールが届いた。差出人に心当たりがなく、「迷惑メールか」と思ったが中を開けてみた。そこには、高校時代軟式テニス部で一緒だったT君が、昨日、脳溢血で急逝したと書いてある、絶句。

差出人は、軟式クラブに途中まで在籍し、T君と共に一浪して慶応大学に進み、慶大で同じテニスサークルに入ったN君からだった。

N君の携帯電話にかける。「ホントなんだよ〜。死んじゃったんだよ」。僕等は皆同じ年齢だから、それぞれ病気で入院したりしてもおかしくはない。
でも、よりによってT君が脳溢血で急逝するとは・・・。

この日から連日連夜、友人達と連絡をとりあった。
T君は多くの友人達とすごすことを一番の楽しみにしていたので、日はあくが、祝日の21日にお通夜、土曜日の22日に告別式という日程になった。

時間がたつにつれ、T君との思い出が蘇ってきた。

数十万円する英会話教材のセールスにあったT君は「お金が無い」と言うと、セールスマンが山下公園前の駐車場のアルバイトを紹介した。
露天商が経営していたので昼食付き、土日しか仕事はないが、当時としては破格のバイト料であった。
T君は自分が行けない時は、僕に横流ししてくれた。T君は優男風なのだが、結構腹はすわっていて、アルバイト料は稼いだが、ずるずると引き伸ばしをはかり、教材は買わなかった。
大分経ってから、バイトはお払い箱になった。

N君は、大学に入って直に、青山学院と合コンした。
当時、青短(青山学院短期大学)、東女(東京女子大学)、本女(日本女子大学)あたりは、合コン対象としては最も人気があった。聖心、フェイリスあたりになると、庶民派の僕等には別世界な感じがしていた。

T君は後に有名な女優になるNと知り合った。Nは横浜出身ということもあり、T君と仲良くなり、2回程デートをした様だ。T君からNの女優に対する熱意を聞いたことがある。
T君は、当時から運は悪かった。骨折して、しばらく自宅療養になり、その間にNとの連絡は絶えてしまった。
T君の見舞いに行く時に、気晴らしにと思い「週刊プレイボーイ」を買った。偶然、女優を目指すNの写真とインタビューが中程に載っていた。まだ、ほとんど無名の時代の話だ。

T君は若い頃一回転職した。転職したメーカーは、ここ数年来業績が思わしくなく、昨年大規模なリストラを行った。T君は早期退職に応募した。彼が退職を決意した理由を記したメールが僕のPCに残っ
ている。

今年の2月から再就職した。
その初日の心境を記したメールも残っている・・・。

昨年から今年にかけ、T君は非常に悩んでたことは察して余りある。

「寿命だったんだよ。そう思う」T君とは兄弟付き合いのN君は電話口で噛み締める様に言った。N君は6人のお姉さんがいる末っ子長男である(昔、「女だらけ」と言う漫画があった。N君は見た目は主人公の様ではないが、私生活は良く似ていた。薄汚い格好の僕等とは違い、いつもお姉さん達が買ってきた綺麗な服を着ていた)。

T君とのエピソードは、昔の日記を紐解けば、まだまだ出てくるだろう。その日は、もっと先にとっておこう。今はとても読む気にならない。

お通夜、告別式は、神奈川県大和市の大和斎場で行われた。大和市は湘南の北側で厚木基地がある。大和駅は小田急線と相鉄線が交わる駅である。僕は大学に入った直後から大和駅に隣接した書店でアルバイトを始めた。思い出の場所であるが、今は改築され、当時のおもかげはない。
駅から車で15分程行った旧246号線沿いに斎場はある。

ここの斎場では一昨年、軟式テニス部の2期上の先輩の葬儀が行われている。
「軟式テニス部は、たたられているんじゃないか」と同期のK君がうめく。

昨日は、お通夜の後、小田急線鶴間駅に近い焼肉屋で、5人で御清めをやった。高校時代の思い出に花を咲かせ、旧制一中で新学校であった母校の凋落ぶりと、最近の公立校の不甲斐さに不満を漏らし(小
学校の先生1名、中学校の先生1名がいたが)、さ来年の卒業30周年を記念した同窓会(と言ってもわが母校の卒業生は帰属意識は薄いので、相当煽らないと誰も動かないが・・・)での再会を約して別れた。

今日は10時から告別式があった。美味い蕎麦でも食べないと、やりきれないので、「もっと蕎麦屋で憩う」に掲載された「満屋」まで足をのばしたのである。

満屋は住宅街の一角にある。家族経営だと思う。結構、努力しておりメニューは趣向をこらしていた。ピアノ・ジャズがBGMだ。身近に欲しい店の雰囲気を備えている。

新聞で、イラク戦の状況を読みながら、ビールを飲む。

お通しで、イカと大根の煮物が出てきた。今日は曇天で寒い。
冷たいビールの後に、温かい煮物は体に優しい。素朴な味が、心を和らげる。

「穴子の天麩羅しぐれ煮」は、柚子の香りがちょっときつい感じだった。穴子はカリっとあげてある。「しぐれ」とネーミングした人のセンスは素晴らしいと改めて思う。

「そば焼酎の蕎麦湯割(梅入り)」を頼む。白濁した蕎麦湯で、梅が霞んでいる。

「せいろ」は、ざるにこんもりと盛って出てきた。汁はダシがきいて甘めである。蕎麦湯で何回も割れるほど、たっぷりあった。たっぷりだけで、嬉しくなる。

小さい子供を連れた家族連れが席を空くのを待っている。子供はじっとしていられない。
普段は無視するのだが、今日は余韻を楽しまず店を出る。

ご会葬のお礼の挨拶にたったT君の弟は、こう述べた。
「兄は二人の子供を残し無念だったでしょう。私達も無念です。これからは親族で力を合わせて子供を育てて行きます」

T君の子供、長男は今年高校入学、次男は小学校の低学年である。
遺影を抱いた長男は、まだあどけなかった。

健康のため町田まで歩く。30分弱かかった。

片道2時間を2日間、ずっと読めなかったポール・オースターの「ムーン・パレス」を読み終えた。著者が自分が書いた唯一作のコメデイという本書、生と死の物語で、読んでいる間は、気を紛らわせることが出来た。

さすがに疲れた。今夜は熟睡したいが・・・。

<本日のお会計>

生アサヒスーパードライ小     350円
お通し              100円
穴子の天麩羅しぐれ煮       950円
そば焼酎蕎麦湯割         500円
せいろ              550円
======================
合計             2,450円+税

町田市高ケ坂585−2

電話:042−727−5078

以上


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