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Report 2回目のトピックは、日本ではあまり馴染みのないブラジルのテキスタイルについて取り上げます。

1999年の4月、ブラジルのテキスタイルデザイナーのへナート・インブロイジとミナス州ムケン村で織物をする女性エヴァ・マシエウ・ダ・クニャが来日しました。私は偶然にもその事を知り非常に興味を覚えました。それというのも南米ではペルーやボリビアなどは織物が盛んですが、ブラジルには特に代表的という織物は見当たらないと思っていたからです。どちらかと言うとどんどん新しいものを追い求める国民性というイメージもありました。実際私が織物の事を聞いてもブラジルの友人達は、「織物?」という感じでしたし、織物を表現する的確なポルトガル語もなかったのです。ですから4月の来日で、どんな話が聞けるのか、またどんな織物を織っているのか興味津々でした。
私は2回のレクチャーに参加して本当に感動しました。手仕事の素晴らしさと、それを支えるへナートのヴァイタリテイと優しさ。何度か訪れた事もあり、個人的にも関係が深いブラジルという国に惚れ直したとでも言えるでしょう。
まず、ヘナートを簡単に紹介しなくてはなりませんね。彼はリオの出身で20代前半より「織物作家」として注目されました。彼のファンは上流階級の人が多く、各地で個展を開催し成功を収めて来ました。そんなへナートが興味を持っていたのは、ブラジルの農村、漁村に埋もれてしまった「暮らしの中の手仕事」でした。彼は自分の足で各地を訪ね歩き、それらを丹念に掘り起こして行きました。彼は「ほとんど顧みられなかったブラジルの手仕事に光をあてたかったんだ、手仕事の美しさや豊かさ、それを作る女性が文化的にも、経済的にも評価されれば素晴らしい」と語っています。レナートが光をあてるまでの村の女性達は薄暗い機織小屋の中で自分達のためだけに黙々と織り、それを評価してくれる人がいるなどどは、夢にも思っていなかったそうです。スライドで見る限りでは、織機や筬などはすべて手作りのようでした。現在では300人もの女性達が織物をしていると言います。こんなに素晴らしい発展をしたのにヘナート達はいたってクール。「楽しいからやっているんだよ」とでも言いたげな雰囲気です。
ヘナートとムケン村のエヴァとの出会いは、へナートのお母様が、ミナス州にある保養地に移り住んだのを訪ねたのが、きっかけだそうです。訪ねる途中で彼は「手織りの布」を売る男性に出逢いました。。しっかり織られたその布に興味を持ったへナートは「何処で織っているのか?」と訪ね、ムケンという村を知ったのです。そこはヨーロッパからの移民の子孫が多い地方で、女性達は家族の為に機織りを続けていました。ほとんど現金収入のない自給自足の生活だったようです。それが10年ほど前へナートと出合った事によって少しずつ変わってきました。彼のテキスタイルデザイナーとしての知識と、エヴァ達の村にある豊かな素材を生かす方法とが上手く融合して1つの「商品」を作り、へナートはサンパウロやリオのショップに持って行きます。それによって女性達は「収入と誇り」を手にする事が出来る様になったのです。
スライドで見せていただいた、抜けるような青空、どこまでも続く緑豊かな大地、そこには丸ごとの自然があり、それはそのまま織りの素材として活用されます。特にトウモロコシの皮やガマの茎を乾燥させて使う方法は、古くから村では自然に行われて来た事なのです。ヘナートとエヴァ達は、それらの素材を持ちよって色々と話し合いながらデザインを決めて行くそうです。「昔はこうだった・・・」などと言う話の中からアイデアが浮かんでくると聞きました。豊かな素材を目の前にした話し合いは、想像するだけでも楽しそうです。
今回ブラジル大使館で開催されたテキスタイルアート展には、数多くの作品が展示されました。生成りや黒の経糸に乾燥したガマの茎などを織りこんだもの、SWEDENでは「ハーフドレル」や「ダールドレル」と呼ばれているテクニックで、古くからベッドカバーやテーブルクロスなどが織られて来ました。また、リップスと呼ばれる畝織りを植物の茎の太細で表現したり、緯糸のガマの茎でループを作ったりという、遊び心一杯の布達が沢山ありました。その他にも植物で染めた糸で織られたショール。テクニックはシーペット(綾織)ですが、房の部分にはピニョンと言うパラナ松の松かさ(これは食べると美味しいです)がついています。動くたびにカラカラと鳴って面白い。松かさの色に合わせて深いワイン色に染められていました。
その他には、いかにもブラジル的と思わせる色彩の裂き織りがありました。これを作ろうとヘナートが提案した時には、女性達の反対にあったと彼は笑いながら話してくれました。エヴァ達は「こんなに綺麗な布を切ってしまうのはもったいない」と言って、なかなか首をたてには振らなかったそうです。物を大切にして生きている彼女達にすれば、当然の考えでしょう。でもヘナートは「違う形で美しく生まれ変われば良いのではないか」と説得し、織る事になったそうです。それらはソファの貼り地として加工され、サンパウロなどのお店の人気商品になっています。
織物以外にも、レース編みや刺繍などもありました。私が1番気に入ったのは木の葉をつなぎ合わせたスクリーンです。木の葉は葉脈だけになっていて(科学的に処理してあると思います)そのうえからGOLDに染められています。1つ1つ丁寧につなぎ合わせたスクリーンは、光が通ったらどんなにか美しいだろうと想像するだけでもワクワクします。どの作品を見ても感じる事ですが、作った人の愛情が伝わって来ます。手仕事を愛している事は勿論。生活自体を愛しているのでしょう。この事は手工芸を仕事とする者として、決して忘れてはならない事だと改めて感じました。
会場ではヘナートやエヴァと話をしました。とても気さくな方たちで、私が織物をする事を話すと、とても興味を持ってくれて「今度ブラジルに来る時は連絡するんだよ。一緒にムケン村に行こう」と誘ってくれました。ムケン村まではサンパウロから車で10時間以上かかるそうです。それも途中からは舗装されていない道になるので、普通の車では無理。「チャレンジ精神旺盛ならきっと行けるよ、行くからには何日か泊まるのが礼儀だよ!」とヘナートは悪戯っぽくウインクしました。う〜ん大変そう・・・でもミナス州には1度も行った事がありません。cidade historica(歴史の街)と呼ばれる所で、ユネスコの世界遺産にも指定されている場所です。興味はあるけれど・・・本当に行けるのでしょうか???
今年の秋にへナートはまた日本にやって来るそうです。その時はまた逢って色々と聞いてみたい事があります。今一体何を考えているのでしょう?エヴァ達は元気に織っているのでしょうか?今から楽しみです。
レクチャーの最後に彼はこんな事を言っていました。「ヘナート・インブロイジ」のマークは自分で考えたものだそうですが、日本語の「風」という感じにとても良く似ています。「何故か判らないけど、こういう形が良いと思ったんだ。そんな字があるなんて全然知らなかった。もしかしたら日本に縁があったのかもしれないね。日本はとても好きな国だよ・・・」ヘナート、エヴァ素晴らしい織物を見せてくれてどうもありがとう。秋に逢えるのを楽しみにしています!!
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ブラジルらしい色彩の布を裂いて織っています。経糸は黒と赤を不規則なストライプ状に配置。奥に見えているのが筬ですが、シャトルともども手作りのようです。 |
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上のような裂き織りの布をファニチャーファブリックとして活用したソファです。良く見ると布以外にも植物の皮を剥いだものも一緒に織りこまれていました。 |
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白や黒の経糸にムケン村に沢山生えている植物(葦)を織りこんでいます。左から2番目の布には木の実が織り込まれているようです。 |
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レポートの中でも話した、「ピニョン」というパラナ松の松かさが房のところについているショールです。松かさの色とショールの色が微妙に合っていて綺麗ですね。織られている組織は杉綾です。この松かさは茹でて食べると美味しい!栗のような感じです。中身は真っ白なんですよ。 |
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中央の部分はムケン村で取れる木の実です。ヨーヨーキルトというテクニック。これは織物ではありませんが、1つずつ作ったキルトを繋げてベットカバーなどにして使います。 |
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上の写真と色違いのキルトです。濃い紺地に赤い実が映えて美しいですね。 |
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トウモロコシから取った繊維をよって織られたキュートなカゴです。サンドイッチでも入れてピクニックに行く時に使いたい気分! |
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緯糸に入れている太目の糸(麻糸の太いもの)をリング状にしてアクセントとして出しています。中央の布の下の部分は丸く結んであり、コロコロした玉が並んでいてキュートです。リングの向きがあっちこっちで、面白いリズムを生み出しています。 |
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上と同じような感じの布です。緯糸のアクセントになっている糸はリリアンのようなコード糸です。 |
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手織りの布で作られたジャケット。色彩がミラノっぽいと感じるのは私だけ? |
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白や黒の経糸に、太目の麻糸やビニールテープなどを織り込んである布たち。テクニックはスウェーデンでは「ハーフドレル」と呼ばれているもので、ベッドカバーやテーブルクロスに良く用いられるものです。 |
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織物と編物の合体作品。経糸の部分が手編みで、緯糸にあたるのが木の枝です。ナチュラルな感じのケースメント。 |
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手作りのカーテンが掛かるムケン村のお家。右側のブルーのカーテンはお魚のシェイプ。横に小さなお魚がくっついていて可愛い。 |
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沢山織られた作品が巻き取られています。横糸になっているのはトウモロコシでしょうか?かなり柔らかめな感じ。一体何になるのでしょうか?楽しみです。 |