人には様々な出会いがあると思います。まったく考えもしなかった所から、現在のように「織り」を仕事にするようになるまでの、ながーいお話に、ちょっとお付き合いくださいませ。

 私が初めて織りを体験したのは、今を遡る事XX年前、高校2年生の時でした。選択したかった授業にあぶれてしまった私はしぶしぶ「染織」を取る事になったのです。織物といえば「鶴の恩返し」ぐらいしか頭にない状態でしたから、あまり良いイメージは持っていなかったように思います。でも、期待していないものが結構良かった!って事ありますよね?私の場合もまさにそんな感じで、織物の持つ不思議な魅力に取りつかれてしまったのです。「もっと勉強してみたい!!」という思いは高まり、大学の志望も180度の転換。これには担任の先生も慌てました。でも、何とか自分の意志を貫いて(?)無事合格する事が出来ました。「こころゆくまで好きな事に打ちこめる!」と当時の私は有頂天でした。

 けれども・・・大学で様々な素材に触れ、数多くのテクニックを習得しても、私の中に何か満たされないものが生まれました。「何か違う・・・」という思いが日に日に膨らんで来たのです。その頃は「何か・・・」というものが具体的に掴めず、迷路に入ってしまったような気がしていました。モヤモヤとした気持ちを抱えつつ、大学の課題は待っていてはくれませんでした。「とにかく織ろう、そうすれば何か掴めるかも・・・」と先の見えない日が続きました。

 そんな思いを抱えつつ1年半ほど経った頃、教授から1冊の本を見せて頂きました。私にとってSWEDENの織物との出会いになった記念すべき本です。それを見た時の驚きは今でも忘れられません。「洗練されたデザイン、クリアな色彩、随所に散りばめられた斬新なアイデア、高品質の生活の布」これこそが求めていた織りだ!!と目的が見つかった私は嬉しくて、逢う人ごとに「素晴らしい織物が北欧にある」と話していた事を思い出します。時期も同じくして「北欧の手工芸展」も開催され、実物を見る機会にも恵まれました。現在も手元にあるその時のカタログは、何度も繰り返し見たのでもうボロボロですが、その当時を思い起こさせる大切なカタログです。

 その後、卒業と同時に母校の高校で講師になった私は、生徒達に織物を教えつつ、毎週日曜日には研究所に通って、北欧の織物を1から勉強し直しました。3年間の研究所通いはアッという間だったと思います。高校でも北欧の織物の素晴らしさを伝えたくて、本や自分の作品などを紹介しました。現在高校には26台織機があり、とても恵まれた環境で授業をする事が出来ますが、卒業してしまうと織物を教えてくれる所は少ないのが現実です。「もう1度やってみたいけど、教えてくれる所がなくて・・・」と相談を受け、自宅のアトリエを開放する事にしました。学校の授業と違って、時間制限もなく、自由に織りが出来るので、今まで教えきれなかった事にまで手を広げる事が出来ます。改めて基礎から教えていると、自分の勉強にもなりますし、何より楽しいのです。本当に打ちこむものに巡り合え、それを仕事とする事が出来る幸せをしみじみと感じます。 私の夢は「織物」を通じて多くの方と感動を分かち合う事です。使ってくださった方が心地よいと感じる作品を製作して行きたいと思います。作品の用途を前面に出して、1歩控えた所で主張する織りが私の理想です。手仕事を大切にし、日々の生活を潤いのあるもので満たして行きたいと願っています。

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