(12) <アーク>・マーシャル上空-2
「目標をキャッチしました。地球から上がってきます。これは!」
「どうしたんだ!」脇でウィルガムが言った。一時しょげていたのをすっかり忘れている様子である。
「ウィルガム中佐! ブリッジで余計な発言は避けていただきたい! オペレーター、規定どおり報告しろ! おまえまで艦の規則を忘れたのか! 鳥頭やろうめ」ノートンはもはやウィルガムへの軽蔑を隠そうともしなかった。グリーンランドのブリッジ内に控えめな笑い声が起きた。
「申し訳ございません。目標は約10m毎秒で加速中です」
「なんだと……!」重力加速度で加速をする艦。そんな高性能戦艦は連邦にはない。
「ウィルガム中佐、連邦軍参謀連が居眠りをしていた間に、エウーゴはずいぶん力をつけたようですな」ノートンはウィルガムのほうをみて、皮肉たっぷりに言った。
「それはだな、ノートン艦長、決して……」
「あー、おっしゃるとおりですな、ウィルガム中佐。連中は居眠りをしていたわけではない。地球の1Gの快適なベッドの上で、地球人口の回復のためにせっせと下半身の運動にいそしんでいたんでしょう。重要な任務です」ブリッジは卑猥な爆笑に包まれた。
「さて、サトウ副長。このスピード気違いをとめる方法はあるか?」ノートンは口調を変えて、ブリッジを仕事モードにもどしつつ、副長へ問い掛けた。
「難しいですね。今のペースでも3分後に接触できますが、交戦距離を保てるのは30秒がいいとこです。目標は1分後にほぼ大気の影響を脱します。そこでさらに加速する可能性もあります」
サトウ副長の発言を聞いてノートンは考えをまとめた。1G加速程度なら、ガンダムH2で追いつける。だが、当然、敵もミノフスキードライブ機を搭載しているはずだ。なぜなら、母艦より遅いモビルスーツでは役に立たないからだ。それも搭載機全部がミノフスキードライブ。だが、敵の目的は要人亡命だったことがもうわかっている。余計な戦闘は避けるだろう。こちらが追ってみせても、あしらう程度にするだろう。自分ならそうする。
結論。今のこちらの手駒では、どちらにしろ目標は落とせない。無理をすべきではないが、将来に備え、データは収集すべきだ。あの艦と敵対することは今度が最後でないことは間違いない。
「よし、H2だけを出して、敵戦力の観察を行うぞ! サトウ副長、敵との接触時間を一番長く取れるコースを割り出せ」
「了解」
「モビルスーツデッキ! 出撃はH2だけだ! 他は待機! 繰り返すぞ、H2だけを出して、他は待機。H2、カタパルトへ。ハーヴェイ少佐!」
「はい、艦長。どうしますか」落ち着き払ったハーヴェイの声がブリッジに返ってきた。ノートンの手元のモニターに、ガンダムのコクピット内の様子が映し出される。
「信じられんが、敵艦は約1Gで加速している。あきらかに新型だ。こちらの艦のスピードでは追いつけん。ヴィガンでもついていくのがやっとだから、出さない。H2だけを出す。相手の艦はモビルスーツを何機搭載しているかわからんが、全部ミノフスキードライブ機だろう」
「なるほど。そうでしょうね。母艦に帰り着けないモビルスーツを艦に乗せるはずがない」
「そうだ。したがって、交戦は不許可。目標艦と適当な距離を開け、データ収集しろ。モビルスーツが出てくるだろうから、これも観察しろ。無理をするな。敵も戦う気はないはずだ」
「アイアイ・サー。ガンダムH2、ハーヴェイ=クロンドル、出るぞ!」カタパルトから勢い良く飛び出す。
「敵艦、モビルスーツ射出! ――1機だけです」
「何だと。こっちに追いつける機なのか?」アークではフロスト艦長があきれていた。幸いにして、こちらの進路上に立ちふさがる位置に入っていた敵艦はなかった。こちらの加速に追いつける艦はないだろうから、一戦交えずに帰れると思っていたところである。だが、一番近くに近づいていた艦がモビルスーツを出してきたのだった。
「加速度計測中……5G加速です! 1分後に接触」くそ! やむをえない。1機だけなのが不幸中の幸いだ。敵もまともにこちらの艦に突っ込んではこないだろう。
「ホートラングとブラッドの2機を出せ。敵もミノフスキードライブだ。十分注意させろ。無理に落とす必要はない。追っ払うだけでいい」


実は、あんまりモビルスーツ工学体系みたいのに詳しくないんで、この辺結構適当だったりします。
・普通のモビルスーツ=地球で飛べない、スピード普通
・ミノフスキークラフト機=地球で飛べる、スピードちょい速い
・ミノフスキードライブ機=地球で飛べる、スピード超早い
ぐらいのアバウトな理解なんですが、あってますかねえ。
モビルスーツについて、すごく詳しく解説してあるHPとか、たくさんあるんですが、出力がキロワットとかで書いてあるだけで、「じゃあ、それがどれだけ速いのよ」ってのがわかんないんですよね〜。そういうのに詳しいところがあったら、教えてくださいませ。