(6) <グリーンランド>-1
「ハーヴェイ=クロンドル大尉、フローリア=フローリー少尉、入ります」ハーヴェイはびしりと敬礼を決め、長身の体を艦長室へ進めた。フローリアがぴったりと続く。
第9独立戦隊<グリーンランド>。現在はサイド5からそれほど離れてない空域をなすこともなく漂っている。もっとも戦隊とは言うものの、<グリーンランド>一隻しかない。
「いいからすわれ」
答礼も返さずにノートン艦長は椅子を指し示した。思わずハーヴェイは苦笑した。
確かにこの艦長あっての<グリーンランド>である。ハーヴェイがいた前の艦の艦長はいつも自分が部下からどう思われているのかを気にするタイプであった。その反動だろう、部下がきちんとした礼をとらないといきなりキレてしまうのである。エースとして鳴らしながらも、どこかやりづらい艦であった。だからこそ、第9戦隊などといういわくつきの部隊に呼ばれて、ためらわずにきてしまった。出世より、気楽にやれるところのほうがよかったのである。
「失礼します」
苦笑しながら椅子に座ると、ノートンもにやりとしながら腰をおろした。彼の部下にはこういうタイプはあまりいないので、面白いのだろう。
"ドレッドノート"――恐れを知らない――ノートン、といわれている。艦にきてから、まだ実戦はないが、指揮ぶりは勇猛果敢で知られている。堂々たる体躯で、身長はハーヴェイの長身と変わらないが、体重は1.5倍は下るまい。訓練中に部下がへまをすれば怒鳴り飛ばし、うまくやれば、機嫌よくジョークを飛ばす。部下がジョークを言えば、豪快な笑い声を上げる。10年前の『ラムセス事件』で伝説的な役割を果たした艦長である。
「本艦はドレルの指揮下に入ることになった」笑みを消してから、いきなり本題に入った。しかもこれは相当悪い知らせである。
独立戦隊でなくなったということがひとつ。もはやノートンは司令官ではなく、単なる艦長になった。
それに、ドレル=ハーグ少将。忘れもしない。でぶで無能な男。2年前の『フロリダの乱』の時は子飼いの隊を最後まで後方待機させ、戦線に投入しなかった。そのおかげでハーヴェイ隊は6機中5機――ハーヴェイ以外のすべての機――を失った。そして、ハーヴェイ個人はルチアを。
どす黒い感情が湧き上がってくるのを覚えた。隊員たちの恨みは、まだ晴れていない。そして、ルチアの魂は永久に宇宙をさまよう。


ブラッドのライバルとなるハーヴェイ、初登場です。苦みばしったいい男系キャラを作ってみたかったんですが、うまくいったかな。作者本人的には、この作品の中で最も人気が集まるキャラだと思っています。フローリアの存在が邪魔かな。
ノートンのモデルは明確じゃないんですが、ヘンケン艦長をデブにしたイメージです。こういう上司だったら、やりいいかな、っと。