
(10) <グリーンランド>始動
「民間人が住むコロニーに砲撃しただと?」ハーヴェイは頭を振りながらヘルメットをかぶるという器用な芸をやってのけた。グリーンランドの望遠鏡から、コロニーにビームが直撃した様子が観測されたのだ。かなり大きな穴があいただろう。間違いなく、コロニーの中の人々の多くが死ぬことになる。
ハーヴェイは憤っていた。どういう輩か知らないが、戦争には戦争のルールというものがあるのだ。ルールを守らない戦争は、単なる人殺しである。
爆光が観察されて2分かからずに、ハーヴェイは出撃準備を整えた。他のメンバーより早かった理由は、なぜか胸騒ぎがしてパイロット控えにいたからである。こういうところがハーヴェイが周りからニュータイプ呼ばわりされる原因だろう。
「ビームの砲撃元はギニア空域内のごみ領域です。出力から見て、艦船と思われます! 当然モビルスーツも周囲に展開されていると思われますが、ここからでは確認できません。注意してください!」
「ありがとう。ハーヴェイ=クロンドル、H2、先発する!」
フローリア以下、メンバーを待っている余裕はなかった。
「すまない。頼むぞ」ノートンが声をかけた。
「グリーンランドも進撃する。目的は治安維持と、民間人救出等の人道目的だ」
エウーゴも文句はいわないだろう。それに、コロニーへの砲撃が続くようだと、事実、民間人救出に宇宙船がいくつあっても足らない状況となる。そして、これを機会に、できれば口実を見つけてこの後ギニア内に駐留でもできれば、戦争を未然に防ぐ道が開けるかもしれない。
もっとも、さっきの砲撃をやったやつの身元次第な部分はある。いったいどんなやつなのか。いきなりコロニーに穴を空けるとは。例え戦争であっても、コロニーに穴を空けない、ガス攻撃はしない、というのはこの時代の不文律である。コロニーは過酷な宇宙空間からスペースノイドを守るかけがえのないものなのだ。これを破るものは、すべてのスペースノイドの反発を招くことになる。普段は地球人と違ってコロニーごとにばらばらになっており、結束のないスペースノイドだが、いったん共通の敵が見つかると、きっちり結束し、自分たちの身を守る。コロニー攻撃をして、戦争に勝った勢力は歴史上ない。
それに、宇宙世紀以前からの戦争のルールとして、民間人に手を出さない、降伏した相手は殺さない、捕虜は人権を保障される、というのがある。一年戦争時にこれらは不文律から南極条約という実態のある文に格上げされている。これを守らないものは戦争をしているのではなく、単なるテロリストとみなされる。テロリストに人権は認められない。
テロリスト。では、やはりうわさは本当だったのか。ガイア教団が、独自に軍備を整えているという情報はまわってきていた。連邦内の強硬派か気違いがやった線も捨てきれないが、ノートンの勘はガイア教団の犯行説をとった。
第2派の出撃準備が整ったとのコールが入る。
「フローリア、ヴィガン、出撃準備完了です。カタパルトデッキへ! 出ますッ」フローリアの声にはハーヴェイを一人で行かせてしまった焦りが出ていた。ノートンは危ないな、と思う。
「待て、フローリア、ハーヴェイなら心配はいらん。それよりも、オメガ隊の統率を取りなさい」ノートンは普段使わない口調で、ゆっくりといった。「5機とも無事に帰還させるのが、君の今日の役割だ。わかるか? 熱くなるな」
「えっ、……ハイ」フローリアはびっくりした。カタパルトデッキに出たモビルスーツに、艦長が待てを出すとは思わなかった。
「やつらのやり口はテロリストだ。立派な軍人がテロリスト相手に命を落としてはならないのだ。肩の力を抜きなさい」
「はい。そうですね」実際にシートに少し深めに座りなおしながら、フローリアは答えた。だいぶ落ち着いてきたようだ。ノートンは、にやり、といつもの表情に戻った。
「よし。テロリストに容赦はいらん! 宇宙の民の安全を守るのだ。行って来い!」
「了解。フローリア、ヴィガン、出ます!」



いよいよ戦いの場に<グリーンランド>、そしてハーヴェイがやってきます。ガンダムの名シーンっていろいろあると思うんですが、個人的に結構出撃シーンって好きです。<めぐりあい宇宙>の冒頭とか、Ζの各回もそれなりに緊張感あって。あとは、F91の初出撃シーン。皆さんはどんな出撃シーンが記憶にありますか?