
(3) 策動-2
キト市内に用意された官邸内の寝室で、ローランドはカリンの裸の乳首をくわえた。カリンはローランドの頭を抱き、甘い吐息を漏らした。
最初はすごいラッキーなんだと思おうとした。こんなすごくいい女が俺の秘書についてしかも関係がもてるとは。だが、ローランドの冷静な判断力は安易な偶然を信じることを許さなかった。背景をチェックした。例の狂信者どもから派遣されたことまでつかんだ。まあ、いいさ。せいぜい楽しませてもらえれば、と思い、しばらくおいておいた。だが、ローランドはだんだん我慢ならなくなった。セックスと愛情を別々に捉えて何の違和感も感じないローランドではあったが、カリンに対して愛情を抱いてしまったことに気づいたのである。ある日、自分の調べた事実をカリン本人にぶちまけて、カリンに真相を問うた。カリンは泣きながら事実を認め、いつかローランドにいいだそうと思っていたと言い出した。ローランドはそれに答えていったのである。「愛している、結婚しよう」と。よく考えもせずに結婚を口にしたが、言ってみて本気だと自分でも気づいた。
それ以来、二人はベストパートナーである。ガイアには適当に報告してもらい、逆に情報をカリンからもらい、カリンには二重スパイをやってもらっている。いつまでもこれが続けられるわけはない。ガイアも、連邦軍も、敵にした行為である。止め時を測っていた。バレイユ=ヨンキエ、いいタイミングかもしれなかった。
おれにもこういった店を探す余裕があればな、とローランドはため息をついた。店内は薄暗いくらいが、調度品もこぎれいで店員も心得たものだ。落ち着いた大人の店である。
カリンに腕を貸し、店内に入る。ドレスに身を包んだカリンは、まさに絶品だ。隣にいて自慢できる女のオリンピックでもあれば金メダルものだ。
今回、メールでヨンキエからここに誘われ、夕食を食う時間を割いたが、向こうは相当気を使っている。食事の場所はメールではなく、地図を手渡しされた。原始的だが効果的な方法だ。
指定された席へ向かう。壁際で、窓のない席。基本的な盗聴と暗殺者対策もとっているというわけだ。バレイユ=ヨンキエ少将が席を立ち上がり、歓迎を示した。背は低いが、白髪は豊かで、品のある顔立ち。さっと手を伸ばしてきたので握り返した。ごつい手だ。このじいさん、叩き上げで鈍ってない、とローランドは思った。だが、カリンを見たとき、ヨンキエの顔はこわばった。一人で来い、という指示を無視したわけだが、この反応振りはそれ以上だ、とローランドは思う。
「ミズ・カリン=ラドラムです。ご存知のようですが」ローランドはさらに止めを刺すように、カリンをヨンキエに紹介した。
ヨンキエの経歴は当然調べさせてもらった。パイロットあがりだ。そこそこの成績だったが、小隊指揮官となってから人望厚く、出世街道を走り出す。だが、10年前に第8艦隊司令官から、南極方面軍付きとなり、以降、異動なし。
第8艦隊が10年前にやらかした事件といえば簡単だ。<ラムセス>の一件である。
ザンスカール戦争後、地球の再建に走る連邦は、宇宙資源に目をつけた。中でも、変形軌道を描き、かつ、金属資源が多量に含まれていた小惑星<ラムセス>は、めどがたつとすぐに月の外側の地球周回軌道に乗せられ、多数のあぶれスペースノイドが半ば強制的に移民させられた。
ミノフスキー粒子発見以後の宇宙では、距離が開くと情報封鎖は簡単である。10年にわたり、低賃金で無茶な労働を行わされ、住民の生活の実態は外へ漏れなかった。
住民たちの我慢は限界に達した。反乱をおこし、コロニーに向かって助けを求めようとした。コロニーは徐々に連邦に対する反発を強めだしていた時期だ。扱いを間違えると、また大戦を呼び起こしかねなかった。そこで、連邦は事件を表立たせずに、宇宙に葬り去ることにしたのである。
当時も今も第7、8艦隊が宇宙担当だ。そして、第8艦隊が地球から離れた宇宙すべてを管轄におく。ラムセスもそうだった。事態の隠蔽を図ろうとした第8艦隊は、G4ガスの使用を試みた。だが、第8艦隊の中で、"ドレッドノート"ノートンが反旗を翻し、住民防衛戦を約一週間にわたり20隻相手に1隻でやり、地球とスペースノイドの世論を味方につけて、連邦政府と軍に謝罪をさせて、ラムセスの住民は大きな損害もなく生き延びることができたのだ。
ノートンは、時の英雄となった。昇進して司令官となり、新設された第9独立艦隊に塩漬けにされた。そして、ヨンキエは南極方面軍に配属され、やはり朽ち果てるのを待つ身となった。
あの時すでに第7艦隊付けのドレル配下の戦略部門の一員となっていたローランドは、第8艦隊不在の宇宙に極めて効率的に第7艦隊を配置し、コロニーの呼応を防いだのである。あれがローランドの立身の出発点となった。
これが、ラムセス事件のローランドの知る範囲の経緯である。だが、だ。今まで疑ってみたこともなかったが、どうも怪しげな部分が多いような気がするストーリーだと思った。



え〜と、本作品中二回目のセックスシーン含み、ですかね。公約どおり、あんまりくどくないように、さらっとエッチにね、っと。