
(9) オペレーション-4
マリリーとパットがラボの入り口の通路を進むと、建物の中が見渡せる、キャットウォークに出た。下の広大なフロアに、人の姿はほとんどない。予定通りだ。だが、二人は目を疑った。モビルスーツが3体ベッドに寝ている。
「ばかな……1機多いぞ」開発完了のプロトは2機だと聞いていたのだ。3機というのは事前に得られなかった情報だ。だからパットとマリリーの二人できたのだ。マリリーはいらだった。
「パット……どれにする?」左のマシーンはおかしな顔――ひげのような――に見えるが、すんなりまとまったボディに、トリコロール塗装である。まさしく完成したプロトに見えた。中央は変な格好だが、一応緑系の塗装がきれいに施れているように見える。そして、一番右端は伝統的なGM系ボディにいろいろごてごてがついていて、未塗装だ。
「おれが左、マリリーは真ん中だ」右――イフニ――は切った。ここで未塗装のマシーンを選ぶ危険は冒せなかった。少なくとも、選択した2機は稼動はするだろう。
「了解、パット」
本来なら、無事でとか、無茶をするなとか、言うべきところだが、今回はもともと無茶な作戦で、生還を想定していない。マリリーは言葉に詰まった。
「また、がっちり愛してやるよ」
パットはマリリーの手を取って軽く指を絡めた。1階へ階段を降りる間手をつないでいたが、真ん中の踊り場で我慢できずにマリリーを抱き寄せて、唇を重ねた。だが、その瞬間に警報が鳴り響いた。
一秒を争う状況になった。「さあ、行くぞ!」残りの階段を一気に駆け下りた。マリリーの表情が一瞬崩れそうになったが、けなげにも中央のマシーンのほうに走り出したのを確認して、パットも左のトリコロールへ向かった。
近くにいた作業員だろう、男が意図を察したらしくモビルスーツとマリリーの間に入った。時間さえあれば、こんな野蛮な手は使わないのだが、とマリリーは思いながら、拳銃を引き抜き、警告なしに相手の心臓を射抜いた。
イアンがキャットウォークの手すりから身を乗り出し、マリリーの姿を確認した時、マリリーは拳銃を構えていて、前に立った男はつんのめって倒れた。男をしとめたばかりのマリリーが、すごくセクシーに見えた。――何が何でも、彼女に追いつく。
彼と彼女の意図は明らかだ。左側と中央に見えるモビルスーツを強奪するつもりだろう。階段を降りていたら、コクピットに入るまでにそれを阻止することは不可能だ。手すりを乗り越え、10m下のフロアに飛び降りた。
どすん、という音が後ろでしたので振り返った。イアンが決死の形相でこちらに向かって走りだしているではないか。私に追いついた後どうするつもりだろう? レイプでもできるつもりなんだろうかと、ちょっとほほえましい気分にさえなった。だが、全館に警報が鳴り響き、もはや一刻の猶予もない。
ごめんね、坊や、とつぶやきながら拳銃の照準にイアンを収めた。
まるで発情期の猿だ。下半身を硬くして、興奮で顔を真っ赤にし、全力疾走する情けない姿。イアンは全力疾走しているハイドを一歩下がった位置で眺めている。だが、マリリーがこちらに狙いをつけたのを見て、ハイド=イアンの体温はいっぺんに下がった。意識が再び流れるように統一され、いつものイアンに戻る。
くそッ! 未塗装で、ちょっと頼りなげなモビルスーツの体を盾にする位置に逃げ込まざるを得ない。そうなれば、彼女は緑のモビルスーツに乗り込んでしまう。そして、やつらの意図を砕くとしたら、このモビルスーツに乗り込むしかなくなる。彼女が緑のモビルスーツのコクピットに身を沈めるのを見た直後に、イアンは一気に<イフニ>のコクピットへ駆け上がり、体を放り込んだ。



ついにイアンが<イフニ>に搭乗しました。ここでCM!? ってな感じですね。いや、ああいう台本の作り方する人の気持ちわかるようになりました。
裏設定を書いてしまうと(他で書くところなさそうですし)
・ヤマト工業がジェネラルにミノフスキードライブの技術供与をした
・ターンAとヴィクトールは共同開発である
・ターンX(ターンB)はジェネラルが独自開発しようとしたが、ヤマトにも情報が漏れた
・イフニはジェネラルの極秘開発でどこにも情報が漏れていない
という状況です。
ヤマトはターンXの完成を知って、その技術の入手をもくろみ、ガイアに情報を流しましたが、本命イフニの情報は知らず・・・