ガンダムイフニ

(5) 謁見-3

 ここに来るまでに沐浴をさせられた部屋に、軍服を脱いできた。歩みだすと、通路に若い男がきらびやかな司祭の服を着て立っていた。ナハティだ。息が荒い。今にも飛び掛ってきそうな勢いだった。
「覗き見とは趣味が悪いな、ナハティ」ナハティは教皇に次ぐ教団ナンバー2といわれる男である。だが、どうも演説を聴いたりするたびに胡散臭く思っていた。うまいが、いささか自分に酔っているようなところがあり、軽薄な感じを覚える。こいつと教皇を実質的にコントロールするものが、さらに上にいるのではないだろうか。ここは、その可能性にかけて思い切った言葉を吐いた。実際にナンバー2の怒りを買ってしまったのなら、どういう態度をとろうと、自分に教団での将来はない。どちらにころんでも、ここは堂々たる態度を取るべきだった。
「貴様!」
 ナハティは殴りかかってきた。軽くスウェーしてかわす。カウンターをあごにめり込ませた。仰向けに倒れたナハティが胸元を探っている。そうさ、はじめから飛び道具を使うべきだったのさ、あんたは。だが、もう遅い。今のアッパーで、脳を揺さぶられ、たっぷり20秒はまともに握ることもできまい。裏返ってはいつくばって逃げながら、引き金に指をかけようとしてできずにあわてている。歩みよって、右手を踏みつけ、拳銃を奪い取った。馬乗りになってナハティの髪をつかんで頭を引っ張り、後頭部に銃口を突きつけた。
「しかも僕みたいな下っ端に嫉妬するとは、ナハティ。教団ナンバー2でも、神の愛に近づくのは難しいと見えるな」
「わ、私を殺すのか。殺せば、おまえだってここから生きては出られないぞ」
「殺す価値もないだろ。弾がもったいない。……ひとつ聞きたいのだが、おまえの上に誰がいる」
「……主であるガイアと教皇ロード=エリンだ」
 後頭部に銃口をごりごりと押し付ける。
「僕の忍耐力を試しているのか? そんなことを聞いているのではないことは、わかっているはずだ。そこの扉の影に――」見ないようにしながら銃口をコントロールしてナハティに意味がわかるようにした。「警備の人間が来ているが、なかなか突入してこない」
 遅れて通路に飛び込んできたのは、屈強な少年一人である。その背後の数名は、待機しているだけだ。
「どうする?」メッターは少年に言う。
「おれは、どっちがどうなろうとかまわない。ただ、二人とも、ロード=エリンの姫様に、迷惑をかけんな」ナハティとメッターのどちらに銃口を向けるでもなく、拳銃を手にしたが、その頑強な体に似合わず、瞬時にどちらも打ち抜ける、油断のないやわらかい動きをした。
「だ、そうだ。で、おまえをコントロールしているのは誰だ」メッターはごりごりとナハティの後頭部に銃口を押し付ける。
「ナハティだ」
メッターはがちゃり、と安全装置をはずした。音が威圧的に響くように、わざと大きなアクションにする。
「いや、待て、待ってくれ、違うんだ、もう一人いる、ナハティはもう一人いるんだ。おれは本当は、ベクターというんだ、本当だ」
「なんだと?」
「そうだ。そいつは傀儡。本当のナハティは、ひひ爺で、毎晩ロード=エリンの姫様をいたぶっている。おれには、まだ力が足りない。メッター、あんたなら、姫様を助けてやれないか?」コレンが、メッターの耳のそばに口を寄せ、言い出す。盗聴にキャッチされないようにしているのは、明らかだった。
「どうすればいいんだ」やはり、小声でメッターは口を動かさずに聞いた。
「俺はガキだから、難しいことはわからねえ。だが、あんたと姫様の今日の謁見、姫様は、心を動かされた。だからよお、いつか、あんたに迎えに来てもらいてえんだよ。おれには、姫様のお体を守ることはできるが、幸せにすることはできねえんだよ」
「わかった。約束しよう」メッターはすっと立ち上がり、出口に向かって歩き出す。すかさず起き上がって攻撃しようとしたベクターを、コレンが首根っこを押さえて、動けないようにした。

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 ここも、だなあ。実は、封印してしまったんですが、18禁版があります、このシーン。あっちゃあ。