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     707が最初で最后の航海に出る。大改装成って最初の航海であると同時に、速水艦長の最后の航海なのだ。そして新たに707の艦長として着任した艦長、秋月レオナ(UNJ中佐)の初航海でもある。だが、二人とは別にもう一人の艦長が乗り込んだから3人の艦長が乗り組んで出航することになったのだ。
 さて、この航海で707の指揮をとるのは誰か?序列から言えば当然、速水艦長の筈だがすでに除隊を決めている老艦長だ、なたば辞令を待って乗り組んだ 秋月艦長 か?
 ところが 艦内の空気はもう一人の艦長を圧倒的に推していた・・
 折角、改装成った707が肝心の命令系統に曖昧を抱えたままの出航となったのだ。
 慣熟航海と哨戒任務を合せ持った出航そのものにも曖昧が否めず、先行き不安を抱えての出航であった。
 航海中、三人艦長の弊害は事ある毎に艦内の空気を悪くする。寛容と意地と独善がぶつかって主導権が誰にあるのか掴めない先任仕官の苦悩を余所速水艦長は個室に引きこもってまるで隠居を決め込んでいる様子にクルーの苛立ちは一層募っていく。
 だが、艦内の不穏を抱える707に突然、国連海軍本部から緊急司令が飛び込んできた。
 「原潜ゴルビーヌ を撃沈せよ!」 驚天動地、707にとって驚愕の司令であった。
 “ゴルビーヌイ”は就役したばかりのUNN(国連海軍)のロシア艦で自他共に認める世界最強の攻 撃型原潜なのだ、UNN潜水艦隊編入を前にその勇姿を披露すべく世界一周の親善航海に出ていた筈であった。
 数日前、大西洋上を漂流する救命ボートから救助されたゴルビーヌイの士官と下士官の口から世界を揺るがすような重大な事実が語られたのだ!ゴルビーヌイの艦長ゲロイ大佐の独善的な正義が途方もない計画のもとに怖るべき行動に出ていたのだ。
 密かに追撃していたロシア海軍とUNNはゴルビーヌイの高性能に裏をかかれその足跡を見失っていたのだが、予想を越えていつの間にか東支那海を駆け抜けて太平洋に入り日本海溝から深海ルートを辿ってアリューシャンからアメリカ大陸を目指しているという。ゴルビーヌイに搭載された中距離 ミサイルには何故か100mt級の核弾頭が装備されているのだ。たとえ位置が確認されても深々度 を高速で走るゴルビーヌイを空から捕捉して攻撃するのは不可能なのだ。自国の命運を賭して急遽大 西洋から太平洋へと急行するUNNアメリカ艦の“ネプチューン”こそゴルビーヌイに対抗できる唯 一の攻撃原潜のあのだが、未だゴルビーヌイとの距離がありすぎるのだ。たまたま最も間近にいる7 07には到底ゴルビーヌイに対抗できる戦力は微塵もない。だが、撃沈の司令が出されたのは正にネ プチューンのために時間を稼ぐための“生け贄”なのだ。「艦長はキミだっ」707の発令所に速水 艦長の凛とした号令が走った・・
 
    (C)小澤さとる / あとりえ太陽市場