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審美歯科へのあこがれ

大学を卒業して開業医に勤務し、やがて札幌で診療するようになりましたが、しばらくは審美歯科とは無縁の日々が続いていました。
そんなある日、自宅で北海道新聞の夕刊に目を通していた私は、ある記事から目を離すことができなくなってしまいました。
気づいたら何度も何度も同じところを読み返していたのです。

「一体だれだこの人!」「これはK教授が語った審美歯科ではないか・・」「そんなことやる人が日本に現れたのか・・」「だれなんだろうこの人・・」と、今思えば1時間くらい悶々としていたような気がします。

その記事には、虫歯を白くつめるのは特別なことではなくて、元の状態にもどしてあげるだけなのです・・といったことが書かれてありました。『つめものを白くすることは特別なことではない』という表現に深い感動をおぼえ、その日以来私は「この人に会って話を聞きたい」と思うようになりました。

その人とは札幌市中央区で開業されている坂本洋介氏のことです。
坂本氏は日本の審美歯科を立ち上げた中心人物の一人で、米国審美歯科学会の認定医でもあります。
私は坂本氏の同窓であったこともあって、ある方(渡部圭吾氏/札幌市北区ご開業)の仲介を経て話を聞くことができました。といってしまえばかんたんに聞こえますが、実際には何度も断られながらやっと会えたというのが正直なところです。

今でこそ「審美歯科」というキーワードで検索するとその手の情報がいともかんたんに手に入りますが、そのころはインターネットもなく、審美歯科に関する学術的教科書もありませんでした。ですから私にとっては坂本氏の語ることばの一つ一つが数少ない情報であり、それを書き留めたメモが教科書のようなものでした(これは平成5年から6年にかけての話です)。

坂本氏の指導は非常に厳しく、それはたとえていうなら現代の松下村塾のようなものでした。
決して手取り足取りやさしくていねいに指導するというようなものではなく、学ぶ手段にしてもこちらから質問ができるわけでもなく、推して知る、あるいは学び取るということだけが許されていたくらいです。
私などはその当時、「君には審美歯科以前に学ばなければならないことがたくさんある・・」と言い渡されて、しばらくは入門が許されないような状況にありました。

そのときはっきりとわかったことは、もし審美歯科を学問という枠だけでとらえるのであれば、その歯科医師に成長は期待できないのだということです。つまり、銀色のつめものを白くしてあげたことで患者さんの心に感動が起こらなければ、それは歯科医師の一方的な自己満足でしかないということです。

坂本氏は『審美歯科はただ理論や技術を学ぶだけでは意味がない』とはっきり言います。そして、『審美歯科は概念だからメンタル的な部分も含めて患者さんを診てあげられなければ審美歯科をやってるとは言うべきではない』という方針を持ち続けています。
そのことを悟らせるために坂本氏はあえて厳しい態度をとっていたのだと思います。

はずかしながら、そのことを私がほんとうの意味で理解できたのはここ最近であることをここに告白しておきます。

追記1
審美歯科のゴールがスマイルであることを知らない歯科医師が想像以上に多いという事実をご存じでしょうか。
もっともこれはすでに定着してしまった事柄にはありがちな問題ですので、時代とともにどこかで誤解が生じることは想像していました。それゆえに今一度、審美歯科のゴールがスマイルであることをきちんと伝えてゆきたいと思っています。

追記2
前述の北海道新聞には、その続きとしてこう書かれてありました。
「あなたは口を開けて笑えますか?口の中はあなたの人格を現します。日本人の多くはそれに気づいていません。だからまだまだほとんどの日本人が『銀歯を入れたサル』なのです・・・。」
坂本氏のこのことばは当時としてはとても斬新なもので、ある意味ショッキングでした。なぜなら私も銀歯を入れたサルだったからです・・・あなたはどんなサルですか?