審美歯科の基礎を学ぶ

北海道歯科審美研究会で学んでいく中で、私は坂本氏らからもっとベーシックな部分を学びなおした方がよいと強く勧められました。それを受けて私は、確かに今後歯科医師として歩みつづけるにあたって、一度きちんとしたかたちで学ぶことは自分の中で大きな自信につながるにちがいないと思うようになりました。

気が変わってはいけないと思い、さっそく私は研修の準備を開始しました。
研修先はかねてからあこがれていた国際デンタルアカデミー(以下IDA)を迷わず選びました(平成7年ころの話です)。

IDAは、全国各地をはじめ韓国からも受講者が集まってくるほど人気のある卒後研修施設で、咬合治療、審美歯科治療、顎関節、インプラント、歯周外科、矯正治療の最前線を総合的に学ぶカリキュラムがその当時から整備されていました。

札幌から東京へ月一度、土日の二日間、一年間みっちり学びました。
IDAで学ぶ講義や実習の内容はすぐに臨床応用できるものばかりなので、私は日々の診療がとても楽しくなりました。その楽しさは何にも変えがたいものでした。

この一年間はお金も時間もかかってけっこう大変でしたが、今振り返ってみて思うことは、『若いうちに情熱的に打ち込むことができて本当によかった』ということです。
若いということは貪欲です。そして若いときには思い込みも強いので、その思い込みも人間の成長を促してくれるということを経験的に知ることができました。
私は審美歯科の基礎を学ぶためにIDAを受講したわけですが、結果的にそれ以上のものを身につけることができました。出会いや発見も多く、とても濃密な時期でもありました。

私はどういうわけかIDAでよくほめられました(大学時代はほとんどほめられたことがありませんでしたが)。
こんな私をほめてくださったのはIDA創設者の故保母須弥也(ほぼすみや)氏です。
あるときなどは、「君は将来まちがいなくすばらしい歯科医師になるよ。がんばりなさい。」と声をかけていただきました。私は『世界の保母氏』が個人的に声をかけてくれただけでなく、ほめてもらえたことに感激して、とても嬉しかったことをおぼえています。今思えばはずかしいはなしですが、私は一流の臨床家に認められたのだと一方的に思い込んでいたようです。でもそれは私の向上心をさらに向上させるのには十分すぎるほどでした。

おそらく保母氏は私が札幌から来ているという苦労を知っていて、少しでも私が気分よく受講できるようにと気遣ってくれていたのだと思います。
私はことばどおりに信じて、おかげさまで一年間を最高の思いですごすことができました・・・<続く>。

追記1
現在IDAでは故保母須弥也氏のご子息の保母浩児 (ほぼこうじ)氏が理事長兼所長としてその運営にあたっておられます。

追記2
その当時、私の医院ではそれなりにラミネートベニア、オールセラミッククラウン、インプラント、矯正治療、ホワイトニングなどを実施していましたが、IDAで学んだことによってそれらがより安全確実に行えるようになりました。
中でもラミネートベニア(歯の表面を少しけずってセラミックをはりつける治療)の形成が格段に進歩したことが実感できました。その勘所を教えてくださったのは当時インストラクターであった中川孝男氏です。私は中川氏の診療に対する姿勢や、患者さんへの思いやりという点で今もなお尊敬しています。

追記3
保母氏はよく、『田舎の三年、京の一年』ということばを口にしておられました。緊張感をもって日々をすごさなければ人生が無駄に終始するという意味です。自分流でぼんやり学ぶよりも、よき師に出会って合理的に学びなさいという教えです。
保母氏はまた、『歯科医師たる者、診療中にネクタイや白衣にしわが寄るようじゃあまだまだだぞ』と、実習中の私たちの無駄な動きを見てそう指摘されました。つまりそれは歯科医師がスマートにふるまうことで患者さんはストレスを感じなくなるというアドバイスでした。
なかなかそこまでは私にはできませんが、保母イズムはこれからも大事にしてゆきたいと思っています。