「学校の花子さん」 証言1 ねぇ、ちょっと聞いてよ〜。 うちの学校にも出たのよ。 アレが。 へ?アレって何かって? ほら、アレよ。 女子トイレに出る幽霊。 そうそう、それ。 “花子さん” え?私? 違う違う。見たのは私の友達。 出たのは2階の東側にあるトイレ。 ほら、あそこ昔から噂あったじゃん。何か出るってさ。 それでね、その友達、呼んでみたんだって。 “花子さん”を。 友達も冗談半分だったんだってさ。 まさか本当に出るなんてね。 トイレの前から4番目。 あそこだけ暗くて怪しいって言われてるジャン。 前もさ、あそこでトイレから出てくる“手”を見たって言うのよ。 その後何人かの人が調べたけど、結局何にも出てこなかったの。 不思議でしょ。 で、その内その“手”が“花子さんの手”だって言われてさ、 その子、確かめたのよ。 それが本当に“花子さん”なのかを。 で、本当は私も行く予定だったんだけど、 嫌になったからトイレの外で待ってたの。 え?いや、別に怖いとかそういうのじゃなくて・・・。 とにかく!外で待ってたのよ。 でね、他の二人はどんどん入っていったの。 5分くらい待ってたかな。 突然悲鳴を上げて二人が帰ってきたの。 全力で走りながら。 二人とも真っ青な顔して私にしがみついて来たのよ。 体がブルブル震えててさ、 私はもう、どうしたらいいかわかんなくなっちゃって、 とにかく、二人を保健室に連れて行ったの。大急ぎで。 二人とも疲れきっていて、ベッドに倒れこむなり寝ちゃったのよ。 昼休みだったから一緒にいたんだけど、 昼休み終わっても全然起きないの。 仕方がないから二人を残してひとまず授業に出たのよ。 で、授業終わり次第保健室の二人を見に行ったの。 何とか起きてて、ホッとしたんだけど、 なんか魂が抜けたみたいになっちゃってさ。 顔が青白いし、急にダイエットしたみたいに細くなったみたいでさ、 目の焦点が合ってないと言うか、こう・・・ぼんやりしてるのよ。 話しかけても黙ったまんまだし。 で、心配だから6時間目サボって2人についていたの。 保健の先生は大丈夫って言ってるけど「心配だから」でとうしちゃった。 で、しばらく2人に話しかけてたの。 大丈夫?とか、 私の声聞こえてる?とか、 何があったの?とか。 けれども全然話してくれないし、一向に固まったままだしさ。 もう途方にくれちゃって。 結局、6時間目中ずっと2人についていたけど何にもわかんなかった。 で、4時くらいになって帰らなきゃならなくなってさ。 2人も家に送って行こうと思ってさ。 手を引いていったの。 動く気がないみたいで、半ば強引に連れ出したわ。 帰り道も2人とも何にも喋んないし、ボーっとしてるし、 なんか足取りもゆっくりでフラフラしてるの。 もう、心配で心配で2人を支えるようにして歩いたの。 でも全然喋らないから、家に着くまで黙ってた。 なんかちょっと気まずかったわ。 で、黙ったまま近い方の家に着いたの。 そしたら、いきなりその家の子が抱きついてきたの。 どうしたのって聞いたら「離れたくない。一人になりたくない」て言ってたの。 もう1人の子も同じようなことを呟いてた。 「何があったの?」と聞いたら2人ともやっと話してくれた。 2人の話によると“花子さん”を見たって言ってるの。 噂どおり4番目のトイレに入って“花子さん”を呼んだんだって。 台詞は「花子さ〜ん。出てらっしゃい」と。これも噂どおりに。 そしたら返事が返ってきたんだって。 「は〜い」て言う声がどこからともなく聞こえてきたんだって。 最初は幻聴か悪戯かと思ったんだって。 でもその後、今度は「そっちに行くね〜」て言う声が聞こえて・・・。 トイレの中から2本の手がニュっと・・・。 2人とも頭がパニック状態になったみたいで、 悲鳴を上げながら逃げてきたそうなの。 そこから先は記憶が曖昧なんだって。 その手はどうやら便器の端を?んだって言ってるの。 もしかしたらトイレから出てくる気だったかもしれない・・・。 でね、2人は本当に怯えてるみたいなんで、一日だけ私の家に泊めさせてあげたわ。 だから今日は学校休んで私の家にいるの。 本当に2人とも大丈夫かしら? 早く立ち直って欲しいな。 というわけで、今度私も調べてみようと思うの。“花子さん”を。 直に見ないと何がどうなってるかわからないからね。 え?がんばって? 何言ってのよ。あんたも行くの。 何でって?私が1人で行けるわけないじゃない。 他の人?この話を聞いた以上逃がさないわよ。 大丈夫。訳を話せば女子トイレにも入れるから。 そういう問題じゃない? いいから。他のも何人か一緒に行かせるから。 明日の放課後に行くからね。 休むんじゃないわよ。 休んだら家まで迎えに行くわよ。 わかったね。 証言2 私も知ってるわよ。“花子さん”の話。 私の場合、他の学校の友達に聞いたんだけど・・・。 どうやら男子のトイレに出たらしいのよ。 本当だったら“太郎くん”って呼ぶんだけど・・・。 声が女の人の声なんだそうよ。 だから“男子トイレの花子さん”て呼んでるみたい。 友達が言うには、声がするだけじゃないって。 もっといろんな事をするそうよ。 一昨日の話。 とある男子がトイレに入った時のこと。 その子運が悪くてね、トイレットペーパーがなくなっちゃったそうなの。 どうしようか迷ってたときに急に声が聞こえたんだって。 「紙、欲しいの?」ていう質問口調の。 もちろん女の人の声で。 その男子は臆病者だったみたいで、 答えを言う前に逃げちゃったの。 拭くのすら忘れて。 その子に言われて数人の生徒がトイレに駆けつけたけど・・・。 もう声も聞こえないし、何にもわかんなかったみたい。 でも、1つだけ。 その臆病者の男子も一緒に来たそうなんだけど・・・。 そのトイレ見て青い顔していたらしいの。 後で聞いてみるとこう言ったそうよ。 「紙が・・・あった・・・」と怯えた声で。 それを聞いた男子たちがもう一度トイレを見に行ったんだけど・・・。 便器のすぐ横にトイレットペーパーが3個置いてあったそうよ。 見間違いじゃないかと言ったんだけど・・・。 「違う!横だけじゃなくてその上もだ!そこには絶対無かったはずだ!」 そう言われて再び見に行ったの。 上って言うのは取るためにあるカラカラ音がするあれのこと。 トイレに入った男子たちが見たものは、 ダラーンと垂れ下がる白いトイレットペーパー。 さっき入れたばかりと言わんばかりの厚みがある新品。 男子たちは本当に驚いて、トイレに入る人が激減したそうよ。 行きたくなったら必ずひとつ上のトイレを使ているって。 これさ、怖いって言うより笑い話みたい。 だってさ、これじゃあ人助けじゃない? 全然ホラーじゃないでしょ。 これ聞いたとき、もっと怖い話を予想してたんだけど、 なんか期待はずれ。 もっと怖い話を聞きたかったな〜。 というわけで、今度私も調べることにしたの。 話してくれた友達も一緒に調べてくれるんだって。 成功したら聞かせてあげるわ。 じゃあね。 証言3 みんないいわね。そんな話で。 私も“花子さん”の話聞いちゃったの。 今思うと後悔してるわ。この話聞いて。 この学校から西に行ったところにM高校って言う学校あるでしょ。 そこの“花子さん”の話。 見た子も好奇心で行ったみたい。 その子女の子なんだけど、ホラー好きで有名なのよ。向こうの学校で。 家には数多くのホラー映画のビデオがあるんだって。 じかに会ったことないからどんな子かわからないけど、 結構明るく活発な子らしいの。 でもね、 その“花子さん”を見てから性格が一変したそうなの。 何かに怯えるようになっちゃって毎日ビクビクしながら過ごしてるそうよ。 コレクションだったホラー映画のビデオもその影響で全部捨てちゃったみたい。 何があったかはこれから話すわ。 聞きたくなければ耳でも塞いでなさい。いい? 事件が起こったのは2週間と少し前。 そのホラー好きな子との会話から始まった。 昼休みにご飯を食べながらのこと。 「ねぇ、“花子さん”っていると思う?」 「ん?さぁ、見たことないからわかんない」その子と一緒に食べていた子が言う。 「私はいると思うな〜。だっていろんな噂があるのよ」 「噂は噂じゃん。嘘かもよ」 「いいの。私はいると思うの。そうだ!」その子が大声を上げる。 「今から花子さんを呼んでみない?」 相手の子は少し動きを止めてその子を顔をじっと見た。 「・・・うちの学校、いるの?」 「さぁ、わかんないから見に行くのよ。一緒に行こ」 「・・・私は行かない・・・」 「なんで?面白そうジャン」 「そういうの嫌いなの。あんたと違って」 「そうか、残念だな。じゃあ一人で行ってくるよ」 そう言ってさっさと弁当を片付けてしまった。 「じゃあ、いってくる」そういってその子はトイレに向かった。 トイレはいつもどおり薄暗かった。 日の光が入りにくいせいもある。 女子トイレの戸は全部で5個。 その中の噂の4番目のトイレに入った。 戸がしっかり閉まるのを見届け、便器を見た。 普通の人から見れば何も変哲もないトイレだが、 その子からしてみれば、それは希望に満ちて輝いたトイレに見えた。 彼女はさっそく「花子さん、出てらっしゃい」と少し大きめな声で言った。 声が反響する。 少し待ったが返事はない。 その子はため息交じりでトイレから出ようとした。 だが動きが止まった。 「・・・は〜い」 奥底から聞こえてくるような響く声。 でも陽気な女の子の声にも聞こえる。 その子は笑みを浮かべた。 やっぱいるじゃん。“花子さん”。 その子は心の中でそう呟いた。 声が聞こえればもうここに用はない。 その子は戸をあけて出ようとした。 「待って、行かないで!」 また“花子さん”の声が聞こえた。 その子は気にせずに取っ手に手をかけた。 突然、背筋に悪寒が走ったる。 左腕に冷たい感触。 何かに左腕をつかまれた。 その子はつい振り向いてしまった。 再び背筋を悪寒が音速の速さで走る。 便器の中から異様に長く突き出た2本の腕。 今にも折れてしまいそうな細い腕。 死人のように青白い腕。 その2本の腕がその子の左手首を強く握っていた。 「・・・行かないで・・・」また暗い声が聞こえた。 その子は言葉にもならない悲鳴を上げた。 右手でドアノブを懸命にまわした。 左手を暴れさせ振りほどこうとした。 しかし悲鳴は虚しく反響しながら消える。 ドアノブはいくら回そうとしても回らない。 激しく動かす左腕から冷たい感触からは逃げられない。 その子はもう全てを拒絶するように滅茶苦茶に暴れた。 「・・・行かないで・・・」また暗い声。 左腕が強く引っ張られた。 その強さに、その子は抵抗することもできなかった。 気がついたら保健室で寝てたそうよ。 悲鳴を聞いて駆けつけた子が運んだんだって。 その人たちによるとその子はトイレの中で気絶してたそうなの。 蹲るような格好で顔が非常に苦しそうだったと言ってるわ。 頭にこぶができてたから、便器に頭をぶつけたということになってる。 ドアの鍵? かかってなかったって言ってるわ。 不思議でしょ。 でも“花子さん”だしね。 呪いの1つや2つ、簡単に出来るんじゃないのかしら。 M高校ではそういうことになってるわ。 後はさっき話したとおり。 元気もなくなっちゃって、じめじめしてるのよ。 もう、立ち直れそうにないわ。あの子。 あぁ〜、なんか話したらよけい怖くなったわ。 しばらくトイレには入りたくないなぁ。 じゃあ、私は帰るよ。 だって、もう話すことないもん。 話すネタが出来たらまた話してあげる。 あんたもなんかあったら話してよ。 ホラーな話以外なら聞いてあげるわ。 じゃ、バイバイ。 証言4 なんで私って嫌われてるんだろう。 多少みんなと違うところはあるけど、みんなとほとんど同じだと思うのに・・・。 私だって人間だよ。 この前の子だって私を呼んでくれるのに、無視するのよ。 ホント酷いでしょ? もっと悪ければ逃げだしちゃうのよ。 「ピンポンダッシュ」ならぬ「呼び出しダッシュ」て言うのかしら。 あ、意味は同じか。 まあ、いいわ。 でも、何でみんなして私を虐めるのかしら。 やっぱ気味が悪いからかしら。 それにしたって度合いって言うものがあるわよね。 でもね、これくらいならまだいいの。 この前呼ばれた子は私を見て悲鳴を上げたよ。 もう、信じられない。 これって絶対いじめよね。 その次の子なんて逃げようとするから腕掴んでやったの。 逃がさないようにギュッとね。 そうしたら、その子泣き叫ぶわ暴れるわで大変だったのよ。 こっちも逃がさないように必死に掴んでたの。 終いには強く引っ張りすぎて後ろに倒れてガーン。 そのまま気絶しちゃったの。 流石にその拒絶されたのが精神的に辛くてさ、 一週間ぐらい何もやる気が出なかったわ。 ん?もっと何かしたらって? そりゃあ、してるわよ。 この前だって困ってる子を助けてあげたわ。 その子男の子だったのだけど、 どうやら紙がなくて困ってたみたいなの。 だから私は言ってあげたの。 紙が欲しいかって。 もちろん優しい声でよ。 そしたら案の定逃げだしちゃったのよ。 拭くのすら忘れて。 しかも猛スピード。 もうさ、笑いたいのと泣きたいのとが同時にきてさ、 どうしたらいいかわからなくなっちゃった。 とりあえず、心を落ち着かせるために紙を補充しておいたの。 きっと、みんな驚くだろうと思って。 そしたら予想通り驚いてくれたわ。 もう、可笑しくて笑い声を上げたくなったわ。 そしたら、涙が込上げてきちゃって。 どうしようもなくなっちゃった。 だから奥のほうに隠れて静かに泣いたわ。 私泣いた事なんてなかったのよ。 おかげでかなり長い間泣いてたわ。 今までの悲しみとか辛さとか全部思い出してきてさ。 嗚咽が出るまで泣いたわ。 2、3時間ぐらい泣いてたかしら。 とにかく吐くもの全部吐いてきた。 そしたら急にスッキリしちゃってさ。 なんか雲ひとつない青空を見たように心が澄んだのよ。 空なんか見たことないけどね。 こんなところだもの。 とにかく、とても清々しくてさ、今までのことどうでもよくなったのよ。 今までの絶望がどうでもよかったように消えちゃった。 それが一昨日の事。 だから今とっても気分がいいの。 今なら何がきても怖くないって、 そんな気がするの。 うん。 人に話したらさらにスッキリしたわ。 聞いてくれてありがとうね。 本当にあなただけよ。 こんな私の話を聞いてくれる人なんて。 本当にありがとう。 また遊びにきてね。 本当は私のほうから行きたいのだけど、 あまり、遠くにいけないの。 残念だなぁ。 あなたの家とか生活とか見たいのになぁ。 まぁ、仕方ないか。 絶対にまた来てよ。 「花子さ〜ん。出てらっしゃい」 あ!また来たわ。 「は〜い」 じゃあ、私、行ってくる。 終 |
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| 後書き テーマは事実の真実。ホラー物。花子さんの存在の理想。 |