人文研の助手に採用されたてのころ、中国科学史班の会読のさいに、神戸と六甲という地名は、もしかしたら中国の星座名に由来するのかも知れないと思われる記事に出合ったことがあった。
中国星座としての六甲は、北極星からそう遠くないところにあって、現在のきりん座とケフェウス座にまたがる6個の星を指すと考えられる。
唐代の瞿曇悉達(ぐどんしった)が編纂した占星術書『開元占経』(かいげんせんきょう)は、約三百個の中国星座ついても解説している。
その書の巻六九で六甲という星座を説明して、「春秋緯(しゅんじゅうい)に曰(いわ)く、六甲中を輔と為す、物類を包羅し、神戸を為す」とある。
六甲はまた「神戸」(しんこ)、すなわち神の戸、神様が出入りするためのドアでもあるというのだ。
通説では、地名の神戸(こうべ)は生田神社に税をおさめていた封戸・神戸(かんべ)に由来するという。
また地名の六甲には二説あって、一説は大阪の向こうにそびえる山の意で、「ムコ」に六甲という漢字をあてたとするもの。
もう一説は神功皇后が六個の甲(かぶと)を埋めたからというもの。
かねてから、わたしはこれらの通説にさらに中国星座名からの影響を付け加えられないかと、ひそかに思っている。
とこであの阪神大震災を中国占星術によって考えると、こんなふうにいえるだろう。
ある日、天上の神様はおもしろくないことがあって、プンプン怒っていた。そして腹立ちまぎれに「神の戸」をバーンとおもいっきり閉め、おもわずそのドアを破壊してしまった。
そのときの激震は地上にも伝わって、神戸の地に地震を引き起こしたのだと。
だとしたら神様もずいぶんと罪なことをしてくれたものだ。それならそれで、今後は神様には、神戸の復興がとどこおりなく達成されるようちゃんと見とどけてもらいたいものである。
---『人文』44号('98)より---