
Gasometer
ガソメーター(前編) 
DATA
建物名:Gasometer(ガソメーター)
設計者(当初):Franz Kapaun(フランツ・カパウン)
設計者(増改築後):
- A棟:Jean Nouvel(ジャン・ヌーベル)(フランス)
- B棟:COOP HIMMELB(L)AU(コープ・ヒンメルブラウ)(オーストリア)
- C棟:Manfred Wehdorn(マンフレド・ヴェドルン)(オーストリア)
- D棟:Wilhelm Holzbauer(ヴィルヘルム・ホルツバウア)
所在地:オーストリア ウィーン11区
用途:ガスタンク(当初)、商業施設・集合住宅・オフィス・ホール(増改築後)
竣工:1896年(当初)、2001年(増改築後)
備考:内部は商業施設のみ立ち入りと撮影が可能。集合住宅は立ち入り不可。
交通:地下鉄U3のGasometer駅下車
周辺地図(ガソメーター公式サイト)
私がウィーンに行く直接のきっかけとなったのがこの建物です。日本の大学を卒業後にウィーンに留学した私の後輩がガスタンクに住んでいると聞いて、これは見に行かねばと思い立ったのでした。
元は19世紀末に建設されたウィーン市のガスタンクで、1986年の天然ガス転換に伴いガスタンクとしての使命を終えました。その後しばらく再利用法について議論がなされた上で、商業施設・集合住宅・ホールなどの複合施設とすることが決まり、4組の建築家がそれぞれ1基のタンクを手掛けました。
このガソメーター(またはガゾメーター)は、古典様式の円筒形構造物の内外部空間に複数の建築家がモダンな建築を挿入するという非常に面白い建築です。昔の建物を再利用することは珍しくないヨーロッパにおいてもかなりユニークな存在と言えるでしょう。
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01 幹線道路の歩道橋からの眺め。ウィーンの中心部からちょっと離れた、準工業地域みたいな雰囲気の場所にあります。そもそもガスタンクでしたからね。ですからガソメーターはこの地域の活性化を担うものと思います。
直径65m、高さ72.5mの円筒形の4基の構造物が一列に並んでいて、右からA,B,C,D棟と付けられています。外観はあまり手を加えず、円筒の内部に増築するのが基本方針ですが、B棟だけは例外的に高層棟が付属しています。また道路を挟んだ敷地には新築の商業施設があってガソメーターとは渡り廊下で結ばれています。
このふたつはパノラマ形式のQuickTime VRファイルです(※1)。QTVR01(ファイルサイズ=171KB)は画像01と同じ位置からより広い範囲を、QTVR02(同241KB)は01の反対側から全体を見渡しています。
※1:このファイルを見るためにはQuickTime Playerが必要です。入手先は
こちら。QuickTime Playerの画面上で左右にマウスドラッグすると画像が横にスクロールします。なお、ファイルを開いた時点ではなぜか若干ズームインした状態ですので、下部のマイナスボタンをクリックしてズームアウトしてください。
02,03 01の反対側(つまりQTVR02の撮影位置付近)の立面。手前からD,C,B,A棟の順です。この位置の眺めはガスタンク時代の姿に近いと思います。撮影時は裏側は更地だったので全体が見渡せましたけど、今は何かが建っているかも。
ガスタンクなのに何故か開口部があります。ということは内部にもうひとつタンク本体の壁があったのでしょうか。開口部やストライプ模様など古典様式の巧みなデザインによって、72.5mも高さがあるにしては威圧感が上手く抑えられています。
Augarten Flakturmと見比べるとその効果がよく分かります。
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04,05 開口部を通して増築された内部の建物が垣間見えます。後述のように増築部分の内部は吹き抜けですから、つまり円筒状構造物が二重にあるというか入れ子になっているわけです。
06 裏側とはうってかわって表側にはいろんな増築部分が表出しています。とりわけ目立つのがB棟にだけ付属する高層棟。この設計もB棟本体と同じくコープ・ヒンメルブラウの仕事です。
一見、寄りかかっているかに見えることで、ガスタンクが主で高層棟が従であるとはっきり分かります。これまでの景観に大きな異物を加えてしまう高層棟の建設に対する、実に独創的な解決策と言えるでしょう。並の設計者なら垂直なビルの壁面に何らかのデザイン的な処理をするところを、ビルを「く」の字に折り曲げてしまうとは、さすがは前衛的あるいは脱構築主義的な作風で知られるコープ・ヒンメルブラウだけのことはあります。
07 高層棟の側面。B棟とは渡り廊下で結ばれているだけで、構造的には自立しています。よく建っているものです。改めて見るとヘンな感じがしますね。もっとも、画像では危うく見えますけど実際には不安感は感じませんでした。とはいえそれは私も一応は設計者なので、同業者として感心する気持ちが強かったからかもしれません。
08 設計者が「シールド」と呼んでいるように、盾にも見えますね。4基のガソメーターでも十分に地域のランドマークたり得るのに高層棟を付け足したのは蛇足に思えますが、採算性を確保するにはガスタンク内部の住戸数では足りないのだろうと推測します。住民の増加で内部の商業施設に活気が出ることも期待できますし。
09 この形状はビル風を抑えることが出来るのだそうです。実際に効果があるのかは分かりませんが。
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10 道路を挟んで新設の商業施設もあります。ファサードはガラス張りでかなりカラフルながら、ケバケバしさは感じられません。また、この商業施設とガソメーター本体との間には渡り廊下が架けられています。鉄骨のフレームが露出していて内側にガラスボックスが納まっているようなデザインです。ウィーンの商業デザインはガラスの使い方が実に面白い。
11 C・D棟間の渡り廊下に前述の渡り廊下が接続しています。
参考文献:
- 「a+u」1999年8月号、2002年5月号(新建築社)
- 「建築文化」2002年2月号 特集:ウィーン20世紀建築MAP(彰国社)
- 「BRUTUS」512号(マガジンハウス)
関連サイト:
最終更新日:2008年7月3日
作成日:2002年9月8日
撮影時期:2002年1月
作成者:タケ(旧名 tks )(
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