
Wienzeile Houses
ヴィーンツァイレの集合住宅(前編) 
DATA
建物名:Wienzeile Houses(ヴィーンツァイレの集合住宅)
通称:Majolika Haus(マジョリカ・ハウス)及びMedallion Haus(メダイヨン・ハウス)
設計者:Otto Wagner(オットー・ヴァーグナー)
所在地:オーストリア ウィーン6区 Linke Wienzeile 40 及び 38
用途:集合住宅
竣工:1899年
交通:鉄道=地下鉄U4 Kettenbrueckengasse駅下車
19世紀末から20世紀初頭にかけてウィーンで活躍したオットー・ヴァーグナーの作品は今も市内の至る所に残っており、それらは駅舎や郵便貯金局などの公共建築から民間建築まで多岐に渡ります。民間の仕事は主に商業ビルや集合住宅で、中でもマジョリカ・ハウスとメダイヨン・ハウスと呼ばれる
※1 二棟の集合住宅は、その美しい壁面装飾によって観光ガイドでも必ず紹介されるほど有名です。
ちなみに、この二棟のすぐ前にある
ケッテンブリュッセンガッセ駅もオットー・ヴァーグナーの設計。
※1: この二棟の集合住宅は、建築専門書では所在地の町名から「ヴィーンツァイレの集合住宅」(厳密にはリンケ・ヴィーンツァイレ)と記される場合が多いのですが、一般には「マジョリカ・ハウス」(またはマヨリカ・ハウス)、「メダイヨン・ハウス」と呼ばれています。そこでこのページでは正式名称(?)としては「建築文化」2002年2月号の表記に倣い、文中では通称を用いています。参考までにマジョリカ・ハウスが40番地、メダイヨン・ハウスが38番地です。
01 左のマジョリカ・ハウスには赤い花の模様が、右のメダイヨン・ハウスには金色のメダル状の装飾が施されていて、とても色鮮やかなファサードなのですが、冬の夕暮れ時の撮影でさらにウェブ公開用にかなり画像を圧縮しているので、この画像では本来の美しさは表現できていませんね。
02 郵便貯金局のページでも述べているように、ヴァーグナーはある時期から表層的な表現手法にこだわるようになります。画像02はメダイヨン・ハウス側の交差点から斜めに見たところで、光線の具合でマジョリカ・ハウスの装飾が見えにくくなっています。こう見ると壁面装飾がなければ何の変哲もないビルに過ぎないことからも、装飾の表層性が理解できます。
一方、メダイヨン・ハウスの壁面も形態としてはシンプルながら、角地に面する部分にだけはシンボリックなデザインがなされています。ある手法にこだわるときは徹底しながら場合によっては他のデザインも取り入れるなど、理論が先走りしない点はベテラン建築家らしい姿勢です。
03 これは建築デザインというよりグラフィックデザインに近いかも。壁面に模様を付けただけという、言葉にすればお手軽な気がしますが、実際には壁面全体から植物の生命感が伝わってきます。ウィーンを代表するユーゲント・シュティール
※2 の傑作です。
ヴァーグナーの作品で植物の壁面装飾としては他に
カールスプラッツ駅がありますが、あえて比べるなら、壁の面積が大きい分だけマジョリカ・ハウスの方が見応えがあります。
04 上部にはライオンの頭が並んでいます。よく見ると案外、緑も多い。
なお、マジョリカ ※3 とはイタリア産の焼物の名前。植物の模様は単なる塗装ではなく、実際は模様を施したマジョリカ焼きのタイルを張っています。その焼き物の名前が建物の通称になったわけです。
※2: Jugendstil アール・ヌーボーのドイツ、オーストリアにおける名称。
※3: 正確には地中海に浮かぶスペイン領のマジョリカ島が発祥の地らしい。
05,06 隣のメダイヨン・ハウスに目を移しましょう。こちらは上層部にメダル状の装飾が施されています。カールスプラッツ駅やゼツェッション館など、ウィーンの新様式の建築には金色が目立ちます。他国のアール・ヌーボーではこれほど金色は使われていないと思うのですが。ゴージャスな装飾を好むあたりはバロック建築など宮廷文化の影響でしょうか。
07 この二棟の集合住宅の前には市場が開かれる広場や駅があって、かなりオープンな空間です。そのためか、メダイヨン・ハウスのコーナー部分はランドマーク性を意識したデザインとなっています。
屋上には両手を口に当てて叫んでいる女人像があります。
郵便貯金局の女人像といい、ヴァーグナーは明らかに何かメッセージを発しようとしています。私には、19世紀から20世紀に変わり、社会の担い手が貴族から市民に変わる、新しい時代の到来を告げているように感じられます。
08 マジョリカ・ハウスの両端はちょっと凹んでバルコニーになっています。よく見るとツタが絡まっているかのごとく緑の装飾に彩られていて、それが両隣の建物との境界線というか、マジョリカ・ハウスの壁面を絵とするならバルコニー部分は額縁のような印象を受けます。
09 マジョリカ・ハウスの出入口のドア。生命感あふれる壁面に比べると、何かメカニカルなデザイン。
10 こちらはメダイヨン・ハウスのドア。やはりシャフトが並んだようなメカニカルなデザインなのですが、暗くてよく写っていませんね。上部には住所が堂々と掲げられています。独特なレタリングが面白い。
参考文献:
- 「オットー・ワーグナー」(H.Geretsegger+M.Peintner著、伊藤哲夫+衛藤信一訳、SD選書187、鹿島出版会)
- 「世紀末の中の近代 オットー・ワグナーの作品と手法」(越後島研一、建築巡礼10、丸善)
- 「新建築1991年1月臨時増刊 創刊65周年記念号 建築20世s紀PART1」54頁(新建築社)
最終更新日:2003年6月17日
作成日:2003年6月17日
撮影時期:2002年1月
作成者:タケ(旧名 tks )(
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