特集 国際リサイクルの実態と制度設計



『環境と公害』(岩波書店) 36巻4号,2007年4月,pp. 2-64

Update: July 4,2009

 1990年代後半以降,日本から中国をはじめとしたアジア地域に向けた,中古品や再生資源など循環資源の輸出が急増している.たとえば古紙では,1990年にはわずか2万トン余だった輸出量が,2005年には371万トンへと170倍も増加している.鉄くずは40万トンから758万トンへ,廃プラスチックは4万トンから106万トンへと増加している.輸出先の大半をアジア地域が占めている.2005年時点では,古紙84%が中国向けであり,鉄くずの46%が中国,38%が韓国,12%が台湾向け,廃プラスチックの85%が香港向けとなっている.国内で回収された古紙の17%,鉄くずの15%が輸出されている.廃プラスチックの輸出量は,国内の排出量の8%,マテリアル・リサイクルされた量の46%を占めている(注1).

 これは,日本で回収された循環資源が,国内ではリサイクルされず,アジア地域でリサイクルされるようになりつつあることを意味している.従来,日本国内で閉じていると考えられていたリサイクルが,循環資源貿易を通じて国際化し,国際リサイクルの状況が出現しているのである.

 一方で,国際リサイクルにともなう公害輸出も後を絶たない.1999年には,日本からフィリピンへ,古紙の名目で医療系を含む廃棄物が不法輸出された(ニッソー事件).2002年には,アメリカのNGOが,アメリカから輸出された廃パソコンが中国で不適正処理されている実態を報告している(Basel Action Network and Silicon Valley Toxics Coalition 2002).中国の代表的リサイクル拠点である広東省汕頭市貴嶼鎮では,2005年に実施された幼児の健康調査の結果,81.8%に鉛中毒がみられたという(信濃毎日新聞2006年10月19日).

 こうした国際リサイクルの問題に関して,本誌では,早くも2001年の31巻2号の特集「『循環型社会』を問う」の座談会「廃棄物処分・リサイクルはどうあるべきか」で取り上げている.そこでは,寺西が国際リサイクルへの対応の必要性について,@循環型社会形成推進基本法を中心とした日本の循環法制では,国際リサイクルの十分な管理ができない,Aアジア的な視野での実態調査に基づいて,公害輸出につながらないような国際的な制度設計を行う責任が日本にはある」と述べている.さらに2005年の34巻3号では,「自動車リサイクルと海外事情」を特集し,アジア,ロシア,EUなどの現状報告と,施行を控えていた自動車リサイクル法に関する評価が行われている.

 こうした研究蓄積を踏まえ,従前から国内における自動車リサイクルを研究していた研究者グループ(注2)を中心として,自動車国際リサイクル研究会が立ち上げられた.2005年11月以降はトヨタ財団から2年間の研究助成を受け,調査・研究活動を進めている(注3).本特集は,この研究会の研究成果の中間報告である(注4).(以下略)

(山下論文冒頭より抜粋)

■特集 国際リサイクルの実態と制度設計」


■Note


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