はじめに
今,自動車の静脈産業は変革の時を迎えている.20世紀後半に起きた豊島事件によって社会に広く顕在化した使用済み自動車の問題は,21世紀,自動車リサイクル法が制定される新たな段階を迎えようとしている.法律の効力および関連業界への仔細な影響は未知数であるが,業界構造を激変させる十分な可能性を秘めていることは間違いない.
2002年7月
本連載は,そのような時代の流れと問題解決の可能性を考察する上で,まず自動車解体作業の現場で何がおこなわれているか把握すべくおこなった,自動車解体業者巡りの「記録集」である.自動車解体業者とは,カーディーラや自動車整備業者などから使用済み自動車を引き取り,有用な部品を取り出す作業を行う者であり,静脈過程において重要な位置を担っている業者である.さらに,最近では解体処理後の部品のリユースで業績を伸ばしており,彼らの成功と課題を見聞することは,自動車に限らず今後の静脈産業のあり方を考える意味で非常に重要である.
現場で見聞する「現実」は非常に新鮮かつ複雑,難解である.どのような問題があり,その問題に各事業者および業界がどのように対処しているか知ることは,我々研究者にとって貴重であるだけでなく,業界関係者はもとより一般の人々にとっても重要であると確信する.本連載が,社会的重要性に反して久しく注目されてこなかったこの業界が,今後理解されていく一端を担えれば幸いである.
(連載第1回より抜粋)