はじめに
潟ーパーツは1975年に叶エ水商会として設立された自動車解体業者である.本社は埼玉県熊谷市にあり,従業員は120名程度である.売上げは2000年6月期に34億円となっており,その売上げは今後も増大が見込まれる.主な業務は,通常の自動車解体業者と同様であり,使用済み自動車を仕入れ,フロン,エアバッグなどの前処理をした後,有価となる中古部品の取り出し作業とその販売を主軸とする.同社の特徴は,このうち,部品販売に注力しているところにある.
競争力の源泉
前回紹介したカースチール鰍フようなディーラーが出資した大規模会社とは異なり,ユーパーツは個人会社として事業を展開してきた企業である.月間処理台数もカースチールの約1,200台に対し,150台弱と少なく,規模の違いが見受けられる.このような大規模会社との競争関係で,ユーパーツが競争力を得るために注目したのは,事故車である.同社は,これに特化し,これから得られる中古部品を精力的に販売することで売上げを増大させたのである.
事故車が競争力の源泉である理由は,それが高付加価値の中古部品を搭載していることにある.通常,ディーラーから大量に排出される車は,下取りで中古車として販売できない中低年式のものが多い.つまり,それから取り出される中古部品は古く,価値のつかないものが多いのである.一方,ユーパーツの扱う事故車は高年式のものが多く,まだまだ新しい型式の部品を取り出すことができる.よって,国内においても修理工場などの需要が高く,これを販売することで競争力を得ることができるのである.
仕入れる車は有償で同社に買い取られ,逆有償はいっさいないという.引取価格は車種や車の状態によって様々であり,多くの場合,仕入先より送られてくる個々の引取依頼書から決定される.この価格決定の材料となる引取依頼書には,事故の内容や走行距離などの情報が映像・画像を含めて細かく記載されている.
しかし,ここで,引取依頼書の情報が詳細に亘っていたとしても,妥当な引取価格を算定することは難しいという問題がある.なぜなら,同社社員には,破損・故障した車のどの部品が機能するかという技術的な判断と,どの部品が市場で売れるかというマーケティング的な判断の双方が,価格付けに要求されるからである.製品として機能するものであっても,需要がない物であれば,作業コストの関係上,それらの部品は解体する必要がない.このような判断は,経験と教育によるものであり,時には見積もりのミスで赤字となるケースもあるという.いずれにしろ高い能力を要するのである.
品質へのこだわり
仕入れされるものには入庫管理票が作成される.これには,購入金額,走行距離,型式などのほか部品の状態が大まかに記載されている.これがそのまま作業指示書となり,これにチェックされたものだけが取り外されることになる.
入庫した使用済み自動車は,まず始めに,フロン,エアバッグ,バッテリー,オイル等の事前処理が行われる.これは,それぞれの処理業者に送られ,処理される.なお,フロンはボンベに回収した後,カースチールに送られ破壊処理されている.
事前処理後,次に部品取り作業が行われる.作業はあくまでも手作業であり,規模の利益を追求しにくい部分である.よって,個々の従業員の特殊的技能と作業効率向上が鍵となる.同社は,整備士など専門知識のある者を集め,チームを構成し,この課題に対処している.部品は,ドア,フェンダーなどの外装部品と,エンジン,ミッションなどの機能部品とに大きく分けることができる.作業は,製品の品質を汚さないように修理工場と同じくジャッキアップをして行われる.
付加価値が高く必要とされる部品以外は,いくら製品として機能しても取り外されることはない.これらは,車体に搭載されたまま廃車ガラとしてシュレッダー業者に運ばれる.なお,廃車ガラはシュレッダー業者に逆有償で引き取られており,この価格は年々上昇していると言われている.
一方,取り出された部品は,工場にて品質のチェックが入念に行われる.同社は,中古部品の販売において,この品質のチェックを重要視している.これは,需要者が持つ品質に対する不安感の払拭と信頼性の向上を追求するものである.例えば,外装部品においてはクリーニング後,傷のチェックをし,その内容をコンピュータに細かく登録するなど注意深い対応をしている.
また,機能部品,特にエンジンの品質をチェックするためには,エンジンを回さなければならないが,事故車で車体が崩れている場合は回すことができないこともある.その場合,品質チェックができず,販売後のクレームの可能性が高くなる.これに対して同社はエンジンを取り出してチェックする機械(「かけるくん」)を自社開発し,この問題をクリアしている.この機械は,ほとんど全ての自動車のエンジンに対応しており,これによってエンジンの品質保証が可能となり,同社がその先駆けとなっている.また,これは他社へも販売されることで,業界全体の信頼性向上にも貢献している.
ユーパーツの品質に対するこだわりは,ISO規格の取得にもあらわれている.同社はこの業界では最初に生産から販売,すなわち車の仕入れ,分解,販売までのISO9002(品質管理および品質保証の規格)を取得している.仕入れにしろ,販売にしろ,損保会社などのある程度ハードルの高い企業とのビジネスにも対応するような努力がこのISO規格の取得にあらわれているといえる.
部品調達と営業拠点の拡充
外装及び機能部品の入念な品質のチェック後,製品は包装され,それぞれ棚番をつけて保管する.在庫は,明らかになった傷や欠陥部分の情報を含めてコンピュータに登録される.エンジン等の場合,もし保管期間がある程度経っていれば,再度エンジンを回すなどのチェックを行うことで,品質管理の徹底を図っている.
ここで,通常の部品メーカーとは異なり,売れ筋の部品を効率よく調達することはできないという問題がある.ましてや同社のように生産の少ない企業が単体で,多品種化されている自動車部品に対応するのは非効率的であると考えられる.
これに対して,ユーパーツは早くから同業他社と提携して,各々の在庫を公開し,部品を融通し合うネットワークを構築している.同社は,これを積極的に利用することで,より効率的な部品調達を可能とし,顧客満足を向上させている.
この中古部品のネットワークは,以前はFAXによって行われていたが,昨今ではコンピュータオンラインによって繋がっている.これにより,他社の在庫情報を簡単にかつ素早く検索し,必要となる部品を効率よく調達することが可能となっている.
一方,販売拠点としてユーパーツは本社のほか,周囲の都県に10ヶ所の営業所を持っている.よってこれらの周辺の修理工場が彼らのターゲットと考えられる.また,営業所は販売のみであり,在庫スペースも生産工場もない.このような店舗展開が可能となったのは,前述のネットワークによる取り扱い部品点数の増加も寄与していると思われる.
これらの営業所では,使用方法やクレームにある程度迅速に対応するために,顧客とフェース・トゥ・フェースで接することを重要視している.スクラップ価格の下落から同業他社も中古部品販売に戦略をシフトし,業界の競争は激しくなっているという経済環境もあり,同社は品質だけでなくサービス面でも付加価値を得ようとしている.また,ISOも本社だけでなく,営業所全てが取得している.これらから,同社が中古部品販売において競争力を得ようとする努力が伺える.
注目を浴びる業界リーダー
事故車への特化,高付加価値中古部品の生産,品質へのこだわり,ネットワークの積極的な利用,営業拠点の拡充・・・.これらの企業努力の結果,ユーパーツは,中古部品の販売における障壁を一歩一歩乗り越え,中古部品販売業者の最大手と呼ばれるほどの地位を築いている.しかし,自動車リサイクル法制定が議論される昨今,彼らを取り巻く経済環境はまた一段と変化することが予想される.自動車解体事業全体および中古部品市場の動向とともに,ユーパーツの事業戦略は今後とも注目の的であるといえよう.
(あべ あらた ・ 一橋大学大学院経済学研究科)----------
* 本稿は,2001年5月19日に同社を訪問した調査レポートが元になっている.よって,本稿で明記されている数値等はこの時点のものである.訪問に際しては,清水信夫社長はじめ,従業員の方々には貴重な時間を割いていただき,心より感謝申し上げたい.また,調査においては竹内啓介氏より全面的協力を得ており,あわせて感謝の意を表したい.なお,残されたであろう誤りはすべて筆者によるものである.