連載2回目の今回は,リビルト部品メーカーである潟Aーネストを取り上げる.同社は電子部品のリビルトなど差別化による競争優位の確立を目指している.今回は同社の取り組みを通じて,リビルト業界の現状とリビルト部品普及のための方策について考えたい.
会社概要
潟Aーネストは1993年に中古部品の輸出からスタートし,1998年よりリビルト部品の取り扱いを開始した.現在ではリビルト部品の製造および販売と中古部品の輸出を手がけている.現在,従業員数は50名,今期の年商は約22億円を見込んでいる.輸出される中古部品の大部分が米国向けとなっていることから,海外販売拠点として米国ロサンゼルスとニューヨークに子会社を置いている.
同社で取り扱うリビルト部品は機能部品を中心として14品目を数える.そのうち,自社工場でリビルト部品として製造しているものは,ドライブシャフト,ECU (エンジン・コントロール・ユニット),パワステポンプ,フューエルインジェクターの4品目である.その他の品目は,コアの供給,交換パーツの供給を受けた業務提携先が製造し,同社が販売の窓口となっている.
リビルト部品製造の実際
読者にも馴染みの深いリビルト部品であるが,これがどのように再生され,そして出荷されていくかを,同社の主力商品の1つであるドライブシャフトのリビルト工程を見ながら説明しよう.
まず,リビルトされるベースとなる部品(いわゆるコア部品)を,直接解体業者から,もしくはコアコレクター(ブローカー)と呼ばれる中間業者などから仕入れる.次に工場において,同社独自のかんばん方式による投入方法で,最初に分解洗浄され,摩耗や劣化した部品を交換するための検査が行われる.ここで交換が必要であると判断された内部構成部品は交換され,次の塗装および組立の工程に入る.最終チェックが済んだものは保証書と取扱説明書とともに梱包され,同社のRAPブランドのリビルトパーツ商品となる.製造数は1日200〜300本であるが,全品番抜き取りベンチテストをしており,さらなる信頼性の向上を図っている.そして,出荷される商品は,中古部品商ルートおよび新品部品商ルートの,主に2つの経路で流通される.このような流れを経て,ディーラーや整備業者の元へとリビルト部品が届く.
リビルト部品ビジネスにおける差別化
同社の永塚政義社長は,リビルトされる部品には「3つの世代が存在する」と指摘する.いわゆる「第1世代」の部品とは,ブレーキシューのボンディングやクラッチディスクの張り替え,「第2世代」はドライブシャフト,パワステポンプ,電装品などのリビルト,そして「第3世代」が,スロットルチャンバーや後述のECUといった電子部品のリビルトである.なぜそのような区分けが必要なのか.ここに同社の強みと,今後のリビルト業界で生き残りを図るためのヒントが隠されている.
近年では,「CSR(企業の社会的責任)」の重要性が社会的に認識されるようになったこともあり,「環境問題とリサイクル」への取り組みの一環として大手部品メーカーが本格的に参入しつつある.すでに米国では,純正リビルト部品という形で,部品メーカーがリビルト事業に参入しており,日本でもカルソニックカンセイなどがリビルト事業に取り組んでいる.また,一方でリビルト業界では,ドライブシャフトなどのいわゆる「第2世代」の品目ではすでに価格破壊が発生している.これに対応するために同社では,差別化と知識(ノウハウ)の重視を掲げて,「第3世代」に属する電子部品のリビルトへの取り組みに力を入れている.同社が着目したのがECUのリビルトであった.
ECUはエンジン制御のためのコンピューターであり,エンジンとともに自動車の心臓部ともいえる重要なパーツの1つである.近年,電子技術の発展とともに,自動車にもハイテク化の波が押し寄せているが,まさに自動車ハイテク化の象徴ともいえるのがECUである.ECUが設置されるエンジンルーム内は高温になり,そのためコンデンサーや抵抗の破損,IC類の故障によりECUのトラブルも発生する.このような場合,これまでは新品と交換するか,中古部品の利用しか方法がなかった.しかし,ECUを新品で購入するとなると相当な金額となり,整備業者にエンドユーザーからクレームが来ることもしばしばあったようである.そこで同社では,昨年3月より業界初のリビルトECUの製造販売を開始し,より安価で信頼性のあるリビルト部品の提供を始めている.
同社のECUリビルト工程は,基本的には他の機能部品のリビルト工程と変わらないが,リビルトの対象が電子部品であるため,電子技術の特別な知識を有する熟練の従業員が各工程を担当している.集められたECUは,熟練工の手により,コンデンサーなどの消耗部品や,故障・破損した部品などが交換される.
さらに,品質検査の工程では,メーカーで使われるECU開発のソフトを用いて同社が独自に開発したシミュレーターシステムが用いられている.これは,リビルトされたECUが正常に動作するかどうかを確認するために,車載された状態を再現するものである.このシミュレータでは,レーシングエンジンからディーゼルエンジンまであらゆる自動車のエンジン状態を忠実に再現することが可能で,これを用いて様々な状況を再現し,その状況に応じて正しくECUが信号を出しているかどうかが検査される.ここに同社の技術力の粋が集められているといっても過言ではない.
以上の工程を経て検査に合格したECUは洗浄や防湿処理が施され完成品となる.現在のところ,リビルトECUは三菱とスズキ(マツダへのOEM車を含む)が商品化されており,日産については現在開発中とのことである.
このように,同社では差別化と知識の重視を実践すべく,他社に先駆けて電子部品のリビルトへと参入した.リビルト市場全体は拡大しているが,価格競争もいっそう進んでいる.このような状況の中で競争優位を確立するためには,コスト競争力の強化と他社にはない独自性をいかに獲得するかにかかっている.その独自性を生かすべく適切に経営資源を集中することができた企業が今後生き残ることが出来るのである.その意味で,同社の経営戦略はビジネスモデルとして1つの答えを示していると筆者には映る.
リビルト部品の普及に向けて
前述したように,米国ではすでに純正リビルト部品が発達しており,その意味で日本においても部品メーカーの本格的な参入とリビルト部品市場が拡大の余地は大いにある.しかし,現状のままのリビルト業界ではリビルト部品の普及はままならないと思われる.
第1に,品質基準や規格の問題である.エンドユーザーにとって,リビルト部品は低価格であることが大きな魅力となっているが,現在はそれだけでは支持を得ることはできない.やはり,エンドユーザーは価格面と品質・安全面の両方を求めているのである.
しかし,現状では,その肝心の品質基準や規格は各リビルトメーカーが独自に設定しており,業界全体での統一化された品質基準や規格は存在していない.そのため,必要な内部部品の交換を行わない粗悪なリビルト部品が流通するなど,深刻な問題が発生してしまう.このような状況を放置しつづけることはリビルト部品そのもののイメージを低下させることにつながりかねず,リビルト部品の普及の足かせとなるのは明らかである.業界団体のリビルト工業会が音頭を取って,普及のために早い段階で規格作りを進めていくのが望ましいのではないだろうか.
そのような中,同社では各品目の品質基準・規格を設定するにあたって,2002年にISO9001の認証を取得しており,またISO14001も併せて今年8月中旬に取得予定である.新品部品メーカーでは,自動車メーカーとの取引の条件として認証の取得が求められることもあるが,リビルト部品メーカーとしては異例である.認証を取得しているリビルト部品メーカーでは同社を含めて5社程度にすぎない.エンドユーザーにとってみれば,認証を持つメーカーのリビルト部品にはいっそうの安心感があるのではないだろうか.この点からも他社との差別化を意識した戦略が見て取れる.
第2に,エンドユーザーにおけるリビルト部品への認知度の低さである.ディーラーや整備業者においては,リビルト部品の存在を知らない者はいないであろう.しかし,エンドユーザーにおいてリビルト部品に対する認知・理解度がまだまだ低いことはかねてから指摘されていることである.理由の1つとして,エンドユーザーがリビルト部品を利用することで得られるメリットをPRし切れていないことが考えられる.リビルト部品をはじめとしたリサイクル部品を利用するメリットは,「循環型社会」への貢献,整備費用を抑えることができる経済性である.整備をする側では認識されているメリットがエンドユーザーにはまだ浸透し切れていない.この点に関しても,業界団体として何らかのPR活動をしていくことも必要ではないだろうか.
リビルト業界は大きな変化の時代に入ろうとしている.各リビルト部品メーカーはいかに競争力を付けるかが課題であり,いかに独自色を出すかという点で同社は参考になるだろう.また,リビルト部品の普及と業界の活性化に向けたリビルト工業会の取り組みも課題である.以上の課題を指摘して結びに代えたい.
(なかたに ゆうすけ ・ 一橋大学大学院経済学研究科)----------
* 本執筆にあたって,潟Aーネスト(2004年3月12日)の永塚政義社長,今村宣彦課長に貴重なお話を頂戴した.記して感謝したい.