自動車解体事業の現実と課題
― 第5回:(株)茨自販リサイクルセンター/協同組合長野県中古自動車リサイクルセンター ―

野田浩二

『月刊整備界』 33巻12号, 2002年11月, pp. 34-36

 はじめに

 今回取上げるのは,活自販リサイクルセンター(以下,茨自販)と,協同組合長野県中古自動車リサイクルセンター(以下,長野RC)の2社である.この2社は,連載の第1回目で紹介したカースチールと同様,茨城県,長野県の各カーディーラーによって設立された,いわば川上側の新規参入組である.本稿は,両者を比較しながら,カーディーラー系解体業者の特徴を明らかにする.


 設立目的と会社形態

 茨自販は,「自分たちで販売した車輌は自分たちの手で回収し,処理を行い,資源を有効に再利用する」(茨自販「会社の概要」,1ページ)ことを目的に,1993年に設立,1995年に操業が開始された.その形態は,カースチールと同じく,株式会社方式を採用している.その株式は,茨自販・自販連茨城県支部会員各社によって所有され,茨自販の社長も株主の持ち回りとなっている.ただし,株主が各カーディーラーだからといって,金銭的な援助を受けているわけではない.株式会社である以上,利潤を追求しなければならない.

 一方,長野RCは,社団法人長野県自動車店協会(現在,48社が加盟)を母体として,1995年に設立,1997年に操業が開始された.ここの大きな特徴は,協同組合方式を採用した点にある.そのため,極端な言い方をすれば,利潤を追求する必要がない.もし利潤が生じた場合,出資金に応じた「出資金配当」と,廃車の持込数に応じた「利用割当配当」の2種類が,各組合員に支払われる.東部事業所の飯田清一所長によれば,協同組合方式を採用したことで,各カーディーラーの連帯意識が高まったという.


 廃車の仕入先とその価格

 茨自販も長野RCも,受入れる廃車の90%以上は,県内のディーラーからである.茨自販は,BMWの指定解体業者となっている.両社の年間処理台数は,それぞれ24,000台,20,000台であり,これは茨城県で発生する廃車の約16%,長野県では約25〜30%にあたる.

 廃車の引取価格であるが,両社とも逆有償となっている.茨自販の場合,合計7,500円(解体処理費用として5,000円,フロンガス回収・破壊費用として2,500円)となっている(株主に対する価格設定).他方長野RCでは,合計12,500円(解体処理費用として5,000円,フロンガス回収費用として2,500円,輸送費用として5,000円)となっているが,ディーラーが自ら持込む場合もあるので,実際には,平均10,000円程度となっている.組合員以外が持込んだ場合は,17,500円となる.解体業者の中には,いまだ廃車を有償で引取っている会社もあり,そういう意味で,両者は恵まれているといえるかもしれない.

 しかしその一方で,いわゆる高年式の廃車が,確実に引渡されるわけではない.実態としては,付加価値の高い廃車は,他の解体業者あるいは海外バイヤーに流れる方が多いといわれる.

 したがって,カーディーラーによって設立された解体業者は,その設立背景から,付加価値の低い廃車を大量に処理しなければならないのである.この点は,両社がどのような販売戦略をとっているのか,また解体処理設備にも大きく関係している.


 適正処理と廃車の生産工程

 茨自販,長野RCの敷地面積は,それぞれ約20,000坪,7,800坪とかなり広い.そのため両社とも,廃車を平置きで保管している.

 茨自販の場合,現在,約1,500台の廃車が保管されており,入庫したばかりの廃車は,事務所前の専用スペースに置かれる.そこでしばらく保管され(最大90日間),近隣の整備業者が中古部品を買取りに来るのを待つ.中古部品販売の供給先は,もっぱら近隣の整備業者に限定され,1日平均,20組(40人)の整備業者が訪れる.茨自販の場合,この過程を経てから,解体処理・生産工程に移される.

 次に,解体処理の段階では,長野RCの工程に注目したい.これは『日刊自動車新聞』2002年7月5日付けの記事で紹介されたこともあり,非常に注目されている.長野RCの解体処理は3つに分かれている.第1段階は,タイヤバッテリーの取外し,フロンガスの回収等.第2段階は,燃料とオイルの抜取り等.ガソリンはタンクごと取外して抜取っている.また抜き取られた廃油・廃液は,基本的に焼却処分される.第3段階は,廃液類やハーネスの取外し,そして部品取りとなっている.この工程はライン作業となっており,長野RCが独自に設計したものである.解体ラインは合計3つあり,1ライン約1,000万円かかっている.

 長野RCの環境保全に対する意識の高さは,たとえば次の点からうかがえる.通常,解体処理において,フォークリフトが多用される.しかし,真空ポンプ式抜取機が用いられない場合,どうしてもオイルやガソリンが床に飛び散ってしまう.そこにフォークリフトで乗入れると,廃液類を拡散させてしまう恐れがある.そのため,長野RCでは,フォークリフトを極力利用しないように,解体ラインが設計されている(解体工程の各段階の移動は,台車で移動させる).


 売上構成比とその特徴

 茨自販の売上構成比は,中古部品の販売と素材売上の合計が70%,解体処理費用部分(逆有償売上高)が30%となっている.また中古部品販売のなかでは,輸出が41%,国内販売が59%となっており,主な輸出先は東南アジアとオーストラリアである.国内販売は近所の整備業者が中心で,輸出は直接海外バイヤーとは取引せず,商社を通して行われている.

 他方,長野RCは中古部品販売と素材販売の合計が全体の60%,処理費用部分が40%となっている.長野RCは中古部品の輸出に積極的で,中古部品販売の65%(金額ベース)が,輸出となっている.主な輸出先は,マレーシア,シンガポールと,ニュージーランド,オーストラリアである.商社による仲介という点では茨自販と変わらないが,操業以来,一貫して同じバイヤーと取引している.

 一見,多くの商社を競合させた方が良さそうに見えるが,「取引相手と狭く深く付き合った方が,結局,信頼関係が強くなり,取引量を増やすことことができる」と,飯田所長は指摘している.

 長野RCだけの特徴としては,日産グリーンパーツと本田技研部品部に納入している点である.日産への納入額は月平均200万円.先方が引取りに来るので,梱包・輸送費用がかからない.そのため,利益率は国内向けの一般販売とほとんど変わらない.

 このように,茨自販と長野RCと両者とも,中古部品の輸出に力を入れている.この理由は先ほども述べたように,付加価値の低い,低年式の廃車が大量に送られてくるからだといえる.


 シュレッダーダストの処理費用

 連載第3回目でも指摘されたように,現在,解体業者が抱える大きな悩みのひとつに,シュレッダーダスト処理費用の高騰がある.この点は,茨自販と長野RCにもあてはまる.茨自販の場合,不純物が入っていれば,1トンあたり7,000〜8,000円,入ってなければ3,500円を支払っている.長野県RCの場合は,1トンあたり5,500円(運賃込み)となっている.

 特に茨自販は,できるだけ細かな解体を実施している.たとえば,手間のかかるハーネスも取外すことで,シュレッダーダスト処理費用を圧縮しようとしている.ただそのためには,徹底した手作業が必要となり,そのための人件費が大きな問題となる.徹底した分別を求めれば求めるほど,解体処理費用は大きくなる.「適正処理」のための費用を誰が負担するかという点が,今後の自動車リサイクルにおいて考えられるべき点だといえる.


 ネットワークへの未加盟

 両者はともに,国内向けの中古部品販売ネットワークに加盟していない.ネットワークへの加盟を誘われることもあったそうだ.しかし,そのための設備費用や,輸出に力を入れていることもあって,現在のところ,必要性を感じていないようである.

 まとめ

 これまで,カーディーラー系解体業者の特徴について述べてきた.一般的解体業者と比較して,その規模からみても,カーディーラー系解体業者は,かなり特徴的だといえる.今後,他の県で同様の動きが生じるか否かは分からない.しかし今後の解体業において,ひとつの中心的形態となることは間違いないと思われる.

(のだ こうじ ・ 一橋大学大学院経済学研究科)
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*本稿は,同社見学会(茨自販は2002年5月8日,長野RCは同年5月20日実施)の調査レポートに加筆・修正を加えたものである.見学の際には,茨自販取締役の島根勝氏,総務課長の萩直樹氏,長野RC東部町事業所所長の飯田清一氏をはじめ,社員の方々にお世話になった.この場を借りて感謝申し上げたい.本連載の調査実施にあたって拠|内環境リサイクル研究所より援助を受けている.なお,誤謬があるとすれば,その責任は全て筆者に帰することを断っておきたい.

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