連載 自動車リサイクルの現実と課題(7)
整備業者と解体業者の境界

阿部 新

『月刊整備界』 36巻1号, 2005年1月, pp. 38-40

 整備業者と解体業者の役割は決定的に異なる.整備業者は,使用済みとなる前の段階の自動車を取り扱い,点検,修理によって,その自動車としての機能を残す.これに対して,解体業者は,自動車としての機能を残さず使用済みとし,部品や素材として生かす.それゆえ,これらの境界は,扱われる自動車が使用済み前か後かで,明確に分けられる.

 また,これらの業者間には,自動車リサイクルの流れにおいて,補完的ともいうべき関係がある.それは,廃車,リサイクル部品の取引関係である.廃車に関しては,整備業者が供給者,解体業者が需要者,リサイクル部品に関しては,その反対の関係になる.

 このような中で,積極的に自動車リサイクルに関わってくる整備業者のグループがある.今回は,このグループを紹介するとともに,自動車リサイクル法に整備業界がどのように関わってくるのかを考えることとする.


 BSサミットとリサイクル

 東京都中央区に本部を持つBSサミットは,1983年2月にスタートしたRSサミット研究会というグループが原型とされる.当時は,車検ビジネスをどうすべきかが主要なテーマであり,そのための情報交換,研究会としてこのグループは位置づけられた.その後,ABサミット21研究会に名称を変更し,組織内も目的,関心が様々となったなかで,車体整備に主に関心を持つ者が再編成された.それが,BSサミットである(94年〜98年は研究会).

 このような組織が設立された背景には,整備業界を取り巻く環境の変化,競争の激化があるという.小型車がより売れるようになり,ディーラーがボディショップを内製化したり,車検ビジネスに力を入れたりするようになり,一社一社では勝てない状況になっていた.BSサミットのメンバーは,アメリカ視察などを積極的に行い,日本の整備業の未来を議論してきた.そして,現在のような車体整備のなかでも,とりわけ保険事故ビジネスに注目した組織へと伸張した.会員も設立当初の22社から,452社(審議中を含め11月1日現在,約470社)となった.

 リサイクルについては,整備業界の状況がさらに厳しくなったここ数年の間に力を入れるようになった.BSサミットは,リサイクル部品のネットワークであるBSサービスネットを構築している.これは,任意団体のBSサミットと表裏一体の関係にある株式会社であり,1997年に設立された.

 BSサミットの会員になるためにはこのネットワークの端末を持つことが条件となる.ネットワークの在庫は,会員が部品取りしたものだけではなく,提携解体業者の部品ネットワークも含まれ,全体で約200万点になる.

 同会会員の顧客は自動車ユーザーであるから,ユーザーとの信頼関係を保つためには,提供されたリサイクル部品が信頼性のあるものでなければならない.グループ内の品質基準を徹底するだけでなく,提携解体業者のネットワークに対しても,定められた品質基準をクリアしたものを在庫登録している.加えて,万が一の場合に備えて,保証をすることで信頼性を保持している.


 自動車リサイクル法への対応

 自動車リサイクル法によって,整備業者は主に引取業者としての役割が期待されている.この役割として重要なのが適正な処理ルートに廃車を流すことである.BSサミットは,この重要性を熟知し,BS-ELVシステムプロジェクトを立ち上げた.ここでは,適正な処理業者と提携関係を結ぶためのチェックリストを作成するなど,委託者としての責任を果たすための研究等を行っている.

 一方,会員には,積極的に解体業の許可取得を勧めている.自動車リサイクル法では,部品取りも解体行為とし,解体業の許可を必要とする.10月末日現在,会員452社のうち,118社が解体業者の許可を既に申請,さらに73社が申請の準備をしている.合計すると,取得者の数は200社程度になる.

 これらの会員は解体業に進出するわけではなく,部品取りを合法的に行うために取得する.ただし,目的はそれだけではない.資格を持っていること自体が顧客であるユーザーからの信頼性を得る意味で重要だという.あくまでも,ユーザーとの信頼関係を維持するためのもの,整備業という本業をサポートするものだと考えられる.同会の磯部君男会長も「私どもは,別に解体業をやろうとして許可を取得するのではありません.あくまでもお客様のニーズに備えるためなのです.」と断言する.

 解体業の許可を取得するのであれば,堂々と解体業に進出することはできる.しかし,進出するためには,相応の廃車を集める必要があるし,行為義務を放棄することはできない.これらを考慮すると,磯部会長が言うように,あくまでも本業をサポートするための資格として取得する方向が自然なのではないだろうか.


 許可業者の数

 自動車リサイクル法の本格施行に先立ち,9月末を期限として解体業者などの関連業者の許可や登録の申請受付が行なわれた.集計後,11月の政府の自動車リサイクル合同会議にて,環境省よりその集計量が発表された(表1).

 注目されるのが,解体業者の数である.これまで5000社程度と言われ続けてきたが,データとして実際に調査したのが,外川健一九州大学助教授のタウンページによる調査である**.これによると,1996年から98年の調査では5063社,99年の調査では4611社である.その後,2002年に環境省が解体業者の実態調査を行ううえで,同様に,タウンページなどを用いて,解体業者3706社を割り出した.

 これらには,廃業,休業中の解体業者が含められるため,継続的に事業を行っている解体業者数はさらに限られるのだが,この数字を特定することはできない.環境省は,解体業者にアンケートを求めることで,回答数約1900社のうち,300社が廃業または休業中であることを確認できた.ただし,未回答が半数もあり,全体の数字については何ともいえない.また,その後の解体業界の競争激化で,各事業者に関わる環境は大きく変わり,その数もどの程度変化したのか想定できない状況にあった.

 これに対して,今回の業許可を申請した解体業者は,競争環境下にあっても,なおも業を継続していこうと考えている.もっとも,無許可の違法業者はカウントできないが,少なくとも実質的に動いている解体業者と廃業・休業状態の解体業者を区分できる.そのため,今回,どの程度の許可が申請されるのか注目された.


 整備業者はどの程度含まれるのか

 その点,今回の4993社という数字を見ると,驚かざるを得ない.これまでの通説に限りなく近いからだ.整備業者やシュレッダー業者のなかで解体業に進出する業者の存在があるものの,その数はごく限られる.ドイツのように解体業許可によって淘汰が始まるという仮説は,日本では,一見,払拭されたかに思える.

 ただし,それは慎重に議論されねばならない.先のBSサミットでの話のように,整備業者は,解体業に進出しなくても,許可を必要とする状況がある.このような整備業者がどの程度存在するかを考慮しなければ,廃車を積極的に集め,業として解体を行う実質的な解体業者の数は定まらない.

 ここで,この実質的な解体業者はどの程度なのか考えてみよう.用いるのは,各自治体が公表する許可取得業者名簿と,自動車整備振興会の名簿,およびタウンページである.これらを照らし合わせて見ていくと,整備業や販売業として登録されている業者と,解体業や廃棄物処理業として登録されている業者を分けることができる.例として11月現在で既に許可業者名を公表している群馬,栃木県について作成したのが表2である.

 これによると,群馬県では,解体業者の許可を申請した業者のうち,整備業者が約65%,栃木県では約7%である.そのため,これらを排除することによって実質的な解体業者の数が見えてくる.また,この事例で興味深いのは地域性である.これは,解体業許可に対する各地域の自治体や業界団体の考え方,取り組み方に違いがあることを示唆している.それゆえ,全国的な傾向を見るためには,全地域のデータを集計する必要があるだろう.

 このように,自動車リサイクル法の下では,同じ解体業の許可業者であっても,その目的の違いによって分けて議論しなければならない.解体行為をするか否かで解体業の範囲を定めたのは,あくまでも政策の便宜上であり,整備業界と解体業界の境界は,施行後も変わらず明瞭といえる.これらは,相互の領域に進出するのではなく,むしろ新たな仕組みの下で,新たな協力関係を築き,強固にしていく方向に進むのではないだろうか.その具体的な動きについては,まだ調査不足であるが,筆者の今後の課題としたいと思っている.

 
表1 関連事業者の登録・許可状況
登録・許可数
引取業者
61,382
フロン回収業者
20,351
解体業者
4,993
破砕業者
982
破砕業者
149
        
表2 解体業許可取得数比較(2004年11月現在:筆者作成)
業種 群馬県 栃木県
業者数割合業者数割合
解体,廃棄物処理業者
28
31.8%
35
85.4%
整備振興会会員
54
61.4%
2
4.9%
非会員整備業者
4
4.5%
1
2.4%
不明
2
2.3%
3
7.3%
合計
88
100%
41
100%
(あべ あらた ・ 一橋大学大学院経済学研究科)
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* 本稿の執筆に当たり,BSサミット磯部君男会長,櫻井正毅教育次長に大変お世話になった.
** 外川健一(2001)『自動車とリサイクル』日刊自動車新聞社,166ページ参照


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