自動車リサイクルの現実と課題
― 第24回:ニュージーランドの自動車リサイクル事情(後編):現地販売と部品流通グループ ―

阿部 新

『月刊整備界』 37巻6号,2006年6月,pp. 34-37

 前回に引き続き,ニュージーランドの自動車リサイクル事情を紹介する.今回は,ニュージーランドに拠点を設け,中古部品ビジネスを展開している日本の事業者と,同社がニュージーランドにおいて属す部品流通グループを紹介する.


 海外拠点を設ける

 ぶどう,ワインの産地として知られる山梨県甲州市勝沼町にある泣Wャパンオートパーツは,自動車中古部品の輸出を手がけ,これを専門としている事業者である.同社は,オセアニア,アフリカ,中東向けに中古部品を輸出しているが,それと同時にフィジーやニュージーランドに拠点を設け,現地の販売業者として事業活動を行っている.これまでわれわれは様々なリサイクル業者を見てきたが,海外に販売拠点を置いている会社はあまり記憶がない.その意味で非常に興味深い事業者である.

 今回案内をしていただいた同社の共同経営者の一人である小林大二氏は,もともと自動車解体業や中古部品販売業に携わっていたわけではない.貿易会社の社員として,むしろ自動車とは無縁の世界で,様々な貿易に携わってきたという.ある時,建設機械の会社において,中古車の輸出を扱う案件もあり,その際に自動車解体業者との付き合いも生まれた.その後,これらの解体業者と共同で,1988年にジャパンオートパーツを設立し,自動車解体,中古部品販売を行うようになったという.海外経験が豊富だったこともあり,当初から国内向けの部品販売ではなく,輸出業というスタンスで事業展開をし,設立後すぐに現地に拠点を置いた.

 同社がまず拠点を置いたのは,フィジーである.これは1988年の同社設立直後だという.数ある有望市場があるなかで,フィジーに目を向けた理由は,小林氏が会社員時代に築いたフィジーでの人的ネットワークがあったからだという.その後,フィジーの政情が不安定だったこともあり,本格的にニュージーランドのオークランドへ拠点を設けるようになった.それは,4年後の1992年のことである.

 ニュージーランドとは,拠点を置くまでは,輸出業者として関わりがあり,現地販売業者との人的ネットワークもあった.1980年代末,ニュージーランドでは,種々の規制緩和により日本からの中古車輸入が急増したが,そのような過渡期に,同社は現地拠点を置いたことになる.小林氏によると,現地拠点を置いた要因の1つは,マーケットリサーチの必要性だったという.これまで取引先であった販売業者と競合関係になるだけでなく,言葉も文化も違う場所だけに,現地拠点を置くということは困難を伴う.それでも置いたのは,輸出するだけでは,同社にとって市場の動きを迅速に読むことが難しい状況だったのだろう.


 メーカーごとにすみわけるというアイディア

 ジャパンオートパーツ社がオークランドで経営している中古部品販売会社は,ニスビッツ・フォー・ニッサン(Nisbits for Nissan)という名であり,タカニニ(Takanini)という中心街より車で30分程度のところにある.事務所の奥には倉庫があり,ジャパンオートパーツから「輸入」された中古部品がきれいに並べてられている.夏の強い日差しのせいか,倉庫内はとても明るい印象で,また従業員の対応も笑顔で親切であり,豊かさを感じる.

 部品の管理や販売方法は日本と同様であり,全ての在庫をコンピュータに登録し管理をしている.顧客は,日本と同様に,多くが整備業者やディーラーであり,一般の個人ユーザーは10パーセント程度である.ニュージーランドの顧客は,電話帳を見て問い合わせをすることが多く,そのため,同社は電話帳に大きく広告を掲載している.

 これだけ見ると,日本の中古販売業者と何ら変わりはないが,ニスビッツには大きな特徴がある.それは,名前からも想像できるように,日産の中古部品に特化して販売していることである.そして,さらに興味深いのは,同じように特化している中古部品販売業者が他におり,それらがニスビッツを含め12社で1つのグループを作っていることにある.そのグループはパーツコネクションと名付けられている.

 パーツコネクションは,メンバーがそれぞれ別々の自動車メーカーの中古部品を取り扱い,グループ内で競合をせず,住み分けをしている.ニスビッツの他,前回の連載で紹介したストロング・フォー・ホンダやトヨタッツ・ガローア・フォー・トヨタもこのグループのメンバーになっており,それぞれその名のとおり,ホンダ,トヨタに特化し,販売をしている.


 日本との違い

 日本でも,中古部品ネットワークグループという同業者グループが存在することはよく知られているが,このパーツコネクションとは根本的に異なる.上述のとおり,パーツコネクションのメンバーは,それぞれが取り扱う中古部品を特化させ,グループ内で競合を避け,住み分けをしているが,日本ではそういうことはない.日本のグループでは,それぞれがメーカーに関係なく,同じような形態で売れ筋の部品を集め,販売をしている.

 日本では,顧客から引き合いがあったとき,往々にして自らが窓口となって顧客の要望に応える.保有していない部品であれば,同業者から調達するなどしてあくまでも自らを通して供給する.それが日本で伝統的に行なわれてきた同業者間の部品交換・融通の文化であり,この文化が近年ではコンピュータネットワークを利用した在庫共有化へと発展させたと考えられる.

 これに対し,パーツコネクションでは,自らの扱わないメーカーの部品の引き合いがあったとき,それを扱うメンバーを紹介するなどして他のグループメンバーに託す.そのため,メンバー間で上記のような部品交換という発想も起きないし,顧客の取り合いも起きない.

 また,部品のメーカーごとの住み分けは,廃車の仕入れにも影響する.日本では,部品ネットワークに属するメンバーのほとんどがメーカーやブランドに関係なく,廃車を仕入れるのが通常である.そのため,近隣の解体業者同士は,廃車の仕入れで競合することがある.ところが,パーツコネクションでは,前述の通りメーカーにより住み分けているため,各社は自らの扱わないメーカーに関しては,廃車の仕入れにはあまり積極的ではない.その結果,営業エリアが近くても,廃車の仕入れで競合するようなことはない.仮に,他メーカーの廃車を引き取り,解体したとしても,その部品は国内で販売しないルールとなっている.そうすることによって,他メーカーの部品を販売するインセンティブを抑え,廃車仕入れの競合も避けている.

 品質についても,事情は異なってくる.日本では,グループのメンバーの在庫から調達することがあるため,その品質が思わしくなければ自らの評判にも傷がついてしまう.それゆえ,品質レベルをグループ内で合わせる必要性がある.これに対して,パーツコネクションでは,メンバー他社から部品を調達して販売することはない.自らが保有する在庫は,自らの責任で販売し,クレーム対応や品質保証も自らが行う.もちろん,パーツコネクションというブランドイメージの維持もあり,ある程度品質レベルを合わせる必要はあるが,日本のようにグループのメンバーの品質レベルが直接自らに対するクレームとして発生するようなことは避けられる.


 求心力

 パーツコネクションは,1992年に設立後,すでに15年近くも経過している.グループ化することによる統一ブランドの形成が1つの目的と考えられるが,マーケティングを主とした共同事業も重視されており,そのための専任の従業員を,パートを含め4人置いている.それは,広告宣伝といったものの他,顧客にグループ全体あるいはメンバーの対応についてヒアリングをするなどの活動を行っている.それには,バーベキュートラックで修理業者を訪問し,無償でランチを提供するなどの工夫を行う他,一般のユーザーに対しては,抽選でガソリン交換券をあげるなどの活動も行っている.加えて,パーツコネクションとしてまだ取引のない会社に営業したり,必要な物品の共同購入を行ったり,さらに,各社の売上を分析し統計を取り販売計画の助けとするなども行っている.

 パーツコネクションを継続させている要因は,そのブランドイメージに加え,上記のような共同事業のメリットをメンバーが重要視しているからにほかならない.しかし,特定のメーカーに特化して部品を供給することは,非常に勇気のいることであり,他のメーカーの部品も販売したいというインセンティブが生まれるのが自然ではないだろうか.そのようななかでグループの維持を共通認識とすることは難しく,また人間同士のグループである以上,個々のメンバー同士の話し合い,人間としての信頼関係が欠かせない.パーツコネクションでは,月に一度ミーティングを実施し,互いの結束を確認しあうという.

 また,このようなグループの形成の背景には,そもそも日本と異なる土壌がニュージーランドにある点が指摘できる.小林氏によると,ニュージーランドの部品市場は,現在こそ競争が激しくなってきているが,以前は価格や保有在庫の面で,中古部品が新品よりも有利な状況があったという.新品の部品については商品管理が十分ではなく,また現地にないモデルが輸入された場合,対応できないなどの問題があり,しばしば調達に1,2ヵ月もかかり,価格も相対的に高値だったようである.このような事情もあり,保険会社は中古部品を好み,新車より3年後の事故車の部品については,中古部品を優先的に使うなどの考えを持っていたという.

 また,ニュージーランドは,中古部品の供給源として,日本に頼ることができるという点も日本の事情と大きく異なる.通常,中古部品販売業者が売れ筋の部品を供給するには,事故車などの部品取り車を仕入れるか,国内の同業者から調達するという選択肢があるが,これに加え,ニュージーランドの販売業者には,日本から輸入するという選択肢もある.周知のとおり,同国は圧倒的に日本から輸入された中古車が多いことから,日本で走っている車よりも若干古く,日本との使用年数にずれがある.中古部品も,日本の国内市場との競合は幾分避けられ,取引関係を築くことで互いにメリットを生み出すことができる.これに対して,日本の中古部品販売においては,部品取り車の仕入れに重点が置かれ,同じ市場内で競争の度合いが大きい.その点,メーカーごとにすみわけるというパーツコネクションのようなグループ化はニュージーランドよりも難しいのかもしれない.

 日本の解体業者は,解体した部品の販売をニュージーランドの販売業者に委ね,両国の間で生産と販売を分離させ,役割分担をしている.また,ニュージーランドで発生した廃車について,解体された部品の一部はさらに別の国に輸出される.国内で流通できなくても,グローバルに生産と販売を分離することで,製品の長期使用が行われている.これらは部品輸出という形でかねてから行われてきたことだが,今後,アジア,アフリカを中心にモータリゼーションが発展するなかで,より広がっていくのだろう.それは,輸出なのか,現地販売なのかわからない.今回の調査を機に,これまであまり見てこなかった現地販売の動きが今後どうなるのか,注目していきたいところである.

(あべ あらた ・ 一橋大学大学院)
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* 本研究は,トヨタ財団2005年度研究助成(『アジアにおける自動車リサイクルの実態調査および国際的制度設計に関する政策研究』研究代表・寺西俊一・一橋大学教授)より補助を受けた.本稿の作成にあたり,ジャパンオートパーツの小林大二氏には大変お世話になった.また,外川健一氏(熊本大学),木村眞実氏(九州大学)との議論は本稿の作成に重要であった.その他,河村二四夫氏(河村自動車工業),シェーン・ヴォイス氏(ニスビッツ)ほか多くの方にお世話になった.ここに記して感謝したい.

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