自動車リサイクルの現実と課題
― 第59回:山口県における自動車リサイクル ―

阿部 新

『月刊整備界』 40巻5号,2009年5月,pp. 18-22

 本州の西端に位置する山口県は,人口146万人であり,主な市として下関市(23万人),山口市(19万人),宇部市(17万人)などで構成されている(いずれも2009年3月現在).筆者は,2008年10月に山口大学に赴任したが,「地元」である山口の事情については,実はあまりよくわかっていない.今回は,山口県の自動車の流通およびリサイクルについて整理をしておきたい.


 1.流通

 まず,自動車の流通について見てみる.グラフ1(省略)は,周囲の県と比べた自動車(三輪車以上)の保有台数である.これによると,その数は全体で100万台超であり,2006年の104万台をピークに減少傾向にある.周囲の県では,福岡県が山口の3倍程度の300万台程度,広島県が175万台程度,島根県が53万台程度である.広島は山口と同じ傾向を示しており,2006年をピークに減少している.島根のピークは2005年とやや早く,また福岡は2008年でもなお増加傾向となっている.

 グラフ2(省略)は,乗用車の保有台数のうち,普通車,小型車,軽四輪車の割合を示したものである.これによると,山口県では,2001年から2007年にかけて,軽四輪車の割合が30%から36.8%に上昇しているが,2000cc以下の小型乗用車の割合は48.6%から40.6%に減少している.この傾向は,全国でも同様である.ただし,山口県のほうが,軽四輪車の割合が大きく,小型車の割合が小さい.また,普通車の割合も全国と比べると小さい.

 次に,販売台数である.新車販売に関する統計は,登録車と軽自動車とで分けられており,表1がそれをまとめたものである(以下「新車登録台数」と「軽自動車販売台数」の合計を「新車販売台数」と呼ぶ).これを見ると,全体の新車販売台数が減少傾向にあることがわかる.このうち,乗用車について示したものがグラフ3(省略)である.これをみると,小型乗用車の販売が減少していることがわかる.反面,軽乗用車が増加し,2004年と2006年以降は,軽乗用車が小型乗用車を上回っている.

 なお,表1(省略)には中古車登録台数も示してある.新車販売とともに,中古車登録も減少傾向にあることがわかる.これが意味するのは,自動車販売全体が減少傾向にあるということであり,新車が中古車に代替されたということではない.背景には,各所有者が自動車を手放さなくなり,使用の長期化が進んでいることなどが考えられる.

 一方,中古車として他の都道府県から移入したり,反対に移出したりするデータもあるので紹介しておく.表2(省略)が,2006年,2007年について見たデータである.昨今では,オートオークションやインターネットにより,中古車は全国規模で取引され,県境を移動している.これを見ると,関東や中部,近畿などの大都市圏を抱える地域からの移入が超過している点が目に付く.また,九州に対しては移出が超過している.近隣県については,広島や島根からの移入が超過しているが,福岡に対しては移出が超過している.福岡との経済的な繋がりの強さを考慮すれば,山口の中古車が福岡に渡っている状況が想定される.


 2.使用済み自動車台数

 ところで,山口県で使用済みとなる車両台数は,どの程度なのだろうか.これには,上記で紹介した自動車保有台数(ストック)と新車販売台数(フロー)のデータを用いることで大まかな数値を出すことができる.具体的には,阿部(2007),浅妻・阿部(2007)などで示されている通り,以下の式が成り立つ.

 前期末実在(保有・抹消)台数+当期流入(生産・移入)台数−当期流出(移出・廃棄)台数=当期末実在(保有・抹消)台数

 ここでは,県単位の分析のため,移出入には,対国外の輸出入のほか対県外の移出入が含まれる.生産+輸入−新車移出を県内での新車販売台数と同等と考え,上式を変形すると,以下のようになる.

 前期末保有台数+当期新車販売台数−当期末保有台数=中古車輸出台数+対県外中古車移出台数−対県外中古車移入台数+使用済自動車台数+当期末抹消状態台数−前期末抹消状態台数抹消状態数

 山口県からの中古車輸出台数は,正確な値を出すことは難しいが,ここでは山口県で計上された輸出抹消登録台数を用いる.また,抹消状態台数とは,県内にある一時抹消状態の車両であり,ある時点でのストックを表す.筆者の知る限り,このデータは存在しないが,上式で必要なのは当期末と前期末の差であり,ここでは増減がないと仮定し,差をゼロとする.

 表3(省略)が2006年と2007年について,該当する数値を並べたものである.これを用いて,上式を解くと,使用済自動車台数は,7万台から7.5万台ということになる.


 3.解体業者数

 山口県では,下関市が中核市となっており,自動車リサイクルの許可等を管轄する行政は,下関市を除いた全域を山口県が担当する.山口県,下関市のホームページには,それぞれ解体業者,破砕業者の名簿が載っている.

 これによると,下関市を除いた県内の解体業者は60社,下関市は8社ということが分かり,県全体では68社ということになる.ただし,山口県の名簿の公表日は,2005年3月25日とやや古い.また,下関市の名簿には,公表日の記載がない.これに対して,自動車リサイクルシステムのホームページでは,都道府県および保健所設置市の解体業者の名簿を閲覧することができる.これによると,2009年4月1日現在で,下関市を除いた県内の解体業者は60社,下関市は10社,県全体で68社ということがわかる.一方,経済産業省の自動車リサイクル法のホームページには,毎年行われた審議会の資料が掲載されている.これには法施行以降の許可業者数が掲載されている.表4(省略)は,この資料の情報をまとめたものである.

 これを見ると,若干増減があるが,おおむね70社で推移してきたことがわかる.山口県内の使用済自動車台数が7万〜7.5万台程度であることを考慮すると,解体業者1社あたりの平均台数は1,000台強となる.これは,年間の台数であり,月にしたら1社あたり100台にも満たない.しかも,県外の解体業者が県境を越えて使用済自動車を収集することもあり,競争は激しい.

 ただし,70社程度というのは,許可を得ている解体業者の数であり,解体を主要な事業としていない整備業者なども含まれると思われる.そこで,インターネットタウンページで「自動車解体」に該当する県内の解体業者を集計したところ,30社であった(2009年4月1日現在.検索でヒットした会社のうち,住所や電話番号が同一のものは除いている).つまり,許可業者名簿の半数以下である.表5(省略)は,許可業者とタウンページを地区ごとにまとめたものである.

 これを見ると,タウンページに記載されているのに,許可を取得していない事業者が存在することがわかる.つまり,無許可営業が示唆されるが,行政側のデータが古いことや,その後の資料で許可業者数が増加していることを考えると,法施行後しばらく経ってから解体業に参入しタウンページに掲載された状況や,既に店を閉じているが名前だけタウンページに残っている状況を想定したほうが,自然なように思える.

 なお,これを見るとわかるように,地域ごとで見ると,許可業者の数値にそれぞれ増減がある.全体数のみを見ると,法施行直後から単純に新規に2社の許可があったように見えるが,実際は,新規のほか廃止や移転があったことがわかる.


 4.中古車輸出と使用済み自動車市場

 最後に山口県の市場をまとめておこう.まず,中古車輸出だが,山口県は門司税関の管轄である.表6(省略)にみるように,中古車輸出は,下関,萩,宇部,徳山,三田尻中関,岩国の各港で行われている.ただし,規模は小さく,福岡(門司,苅田,博多)や島根(浜田)のような周囲の県からの輸出のほうが多い.

 下関港は,2005年が目に付くが,この多くはロシア向けである(3,054台).また,現在はないものの,過去には同港からは北朝鮮向けの輸出も行われていた.また,萩港では,2008年のみ輸出されているが,これは全数がロシア向けである.宇部港も2008年が目に付くが,これはシンガポール向けが多くを占める(197台).

 三田尻中関港は,2006年より増加しているが,これもロシア向けの急増によるものである.同港は,新車の輸出港になっており,2008年は同港から50万台程度もの新車が輸出されている.岩国は米軍基地があり,その影響からかアメリカ向けが多い.

 周囲県の港では,ロシア向けの中古車輸出が多いのは浜田,博多である.苅田は三田尻中関と同様に新車の輸出が多く,2008年は35万台程度輸出された.これらの周囲の県から輸出されている可能性も大いにありうる.

 先に触れたが,使用済み自動車の仕入れは,県内の解体業者だけではなく,周囲の県の解体業者とも競合する.例えば,福岡県の解体業者とは県西部の下関や宇部などの都市圏,島根県の解体業者とは県北東部の萩などの都市圏,広島県の解体業者とは南東部の岩国,柳井,周南などの都市圏で競合することもあるようだ.

 解体業者の組合については,日本ELVリサイクル機構に属しているのは,5社であり,これらは,島根,広島,鳥取の解体業者と「ヴィークルリサイクラークラブ」という組織を作っている.同組織は,ELVリサイクル機構の地域ブロックとして認定インストラクターによる自動車リサイクルの講習会を行うなどの活動をしている.

 他の地域と比べた特徴としては,鉄スクラップ価格が高いことである.これは,北九州や岡山など鉄鋼メーカー(電炉,高炉)が多く立地していることが要因とされる.山口県内にも共英製鋼(山陽小野田市),宇部スチール(宇部市)といった鉄鋼メーカーが立地している.一方,オートオークション会場もあり,山口市阿知須町にKCAA山口が,防府市にJU山口が立地している.


 5.まとめ

 本稿では,山口県の自動車リサイクルをみる上での基本情報を整理した.地域単位で分析することは,より細かいデータを用いることができ,全国規模で分析するものとは異なった角度での分析を可能にする.それが現行の自動車リサイクル政策に生かされる場合もあるだろう.一方,地域分析で得られる結果は,地域性による例外として扱われる場合もある.そのため,地域間の比較も必要である.これらを考慮し,地域分析を進めていくことが重要である.

(あべ あらた ・ 山口大学)
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*より細かく見ると,合同会議の資料においては,同じ調査年月で異なった数値が提示されていたり,2005年5月の山口県(下関市を除く)の数値61社となっているなど正確性に欠ける箇所もあった.念のため,県に問い合わせたが,当時の集計の基になる詳細資料がなく,その根拠は不明とのことだった.いずれにしろ,70社程度であることには変わりない.
参考文献:
浅妻裕・阿部新(2007)「北海道における使用済自動車市場と流通量に関する研究」,『北海学園大学経済論集』55(1),pp.55-88
阿部新(2007)「使用済自動車の流通フロー ―100万台は「消えた」のか」,『環境と公害』36(4),pp.24-30

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