平成15年度文部科学省中堅学校事務職員研修
 平成15年度、夏、独立行政法人教員研修センターで行われた中堅学校事務職員研修で、提出したレポートです。

 与えられたテーマは、「私の望む学校経営」。 但し、「予算増を伴うことなく実現可能なもの」という条件がありました。
 紹介しているレポートは、これまでの教育現場の常識を覆すような提言ですが、近い将来、こうしたことが、実現する土壌や人材は、すでに出現していると思っています。「教育」をめぐる最近の問題は、「教師」の手におえず、社会の様々なことを踏まえて、取り組んでいく力量を発揮する人材が、今の学校現場に求められているということなのかも知れません。


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 私が望む学校経営

 1 現状

 私が勤務している横浜市は、人口350万人。市立学校数は524校。内訳小学校353校、中学校145校、養護学校等26校である。その中の児童数473名、17クラスの小学校に勤務している。
 横浜の学校経営は、昨今の教育改革の流れの中で、転換点にある。
 かつては、ある人の言葉を借りれば、「軽い営み」と書いた「軽営」とか、「傾いた営み」と書いた「傾営」とか、あるいは「形だけの営み」と書いた「形営」とか、そんな営みばかりだったのかもしれない。
 その実態は、市民、保護者に知られることは無く(「閉鎖性」)、批判を浴びることも少なかった(「学校評価」)。
 そうした学校経営の体質は、いつの間にか、社会一般では基本的な常識とされるルール(適正な会計経理執行事務)さえ無視させることとなった。事務処理のルールを軽視し、子ども達の学習のためならば、世間で明らかに違法とされるような文書偽造や架空文書作成に目をつぶってしまおうとする教育現場の風土ができてしまっていたのかも知れない。
 市内では、昨年度、学校の財務管理に関してマスコミで不祥事が、いくつか、報道されている。
@ 中学校自動販売機にかかる問題(平成14年9月)。自動販売機が設置されている39校中30校が同一業者で、学校が業者に売上の一部を還元金として要求し生徒会活動に使用。
A 中学校診断テストにかかる問題(平成14年9月)長年、特定業者と不透明な契約をし、高値発注していた。
B 公金・準公金不正取扱にかかる問題(平成14年10月)
 印刷物を架空発注し、公金を不正搾取。教材費の値引き分を保護者に返金せず、保管。その金で、中庭の木製テーブル購入、図書室のエアコン設置等に使った。

 これらの不祥事を受けて全校実態調査をした結果、304校で総額2300万円の祝い金などの簿外金などの存在も明らかとなった。「副校長は裏金を作ってなんぼの世界。校長が「金がいる」といったら、ぽんと渡せる副校長が評価される」(平成14年11月27日、神奈川新聞)とも報道された。

 これらの問題に対して、学校教育費問題対策部会が教育委員会に設置(平成14年10月)され、調査結果が市議会に報告された(平成14年12月)。平成15年4月からは、準公金事務取扱マニュアルが新たに制定され、1学期中に校長・副校長・事務職員それぞれを対象に学校経営における財務管理や新しいマニュアルについて研修がされてきた。しかし、会計事務手続きについて不慣れで経験の浅い管理職が、こうした研修を負担に感じ、かえって、煩瑣な書類作成にエネルギーを奪われ、教育活動の萎縮化を招いているように感じる。
 
2 私の理想

 地方教育行財政、教育関連法規について理解があり、学校現場の日常の諸問題をつぶさに見てきた経験豊かな学校事務職員は、多い。
 また、研究団体の役員等の活動を通して、優秀な組織管理能力を有する者もいる。そうした事務職員を管理職に登用する。それが、今の私の理想だ。

3 問題点及び改善策等

 問題点

 事務職員の校長登用についてどんな問題点があるだろうか?
 今や教員免許の無い民間人が、校長に登用される時代である。
 では、民間人登用の問題点は何だったのだろうか?学校の自主性・自律性の確立、学校評価、情報公開、説明責任、学社連携、新しい教育課程など今の学校経営は、次々と突きつけられる社会的要請に迅速・柔軟に変化、対応することが求められている。こうした課題に、これまでの学校経営が適切に対応できなかった結果として、現在の変革を招いたと言っても過言ではない。そして、教育界が、こうした社会の様々な課題に適切な対応をとってこなかったことが、民間人の校長登用という学校へ社会の常識を吹き込む契機となったのであろう。

 平成15年4月25日京都新聞によると「民間人校長は、平成15年4月1日現在、24都道府県に計56人。前年度比35人増。急増の背景には「閉鎖的」とされる学校に、民間の経営感覚や発想を生かした学校改革への期待がある。しかし、広島県尾道市の小学校で3月に民間人校長が自殺するなど、教育経験のない校長が学校の舵取りをすることの困難さに直面するケースも出ている。学校段階別で民間人校長が最も多いのは高校の計37人。小中学校が、各8人。養護学校などが3人。都道府県別では、広島6人。和歌山5人。埼玉、東京各4人など。」とある。
この民間人校長、民間活力の導入が、学校を活性化させていることは、評価に値する。しかし、現場を全く知らないという問題点もあわせて強く指摘したい。
 この民間人校長を迎えた教職員たち曰く、「校長先生は『私は素人ですから』が口癖でした。基本的な事柄、用語もご存じなかったし、事務面でも教育委員会への報告書の書式自体分からなくて、随分ご苦労されていました。書類への捺印から指導案まで、ごくごく基本的な事柄も本当にご存知なかったことを、自殺されるまでわかりませんでした。」「授業内容を分かりやすく黒板に明記することを『板書』と言いますが、校長は知らなかったし、生徒に配る『プリント』を校長は会社のように『ペーパー』と言ってみたり。ですから、意思が直接つたわりづらいことがよくあった。」(新潮45 平成15年7月号)
 現場の一事務職員としては、まさに、目を覆いたくなる話だ。立場を逆にして、50歳代まで学校に勤めていた事務職員や教員が、銀行の支店長職に転職して、「新BIS規制のことで・・・」と行員から言われて意味がわからず困る姿は、想像するに難くない。学校と全くかかわりのなかった民間人登用には、円滑な学校経営という面では、大きな課題があると言える。

改善策

 ある意味で、教職免許を持った優秀な現場の教師を子どもから引き離して、学校経営者とすることは不経済ともいえる。

 民間人の校長登用が、可能なら、同じ資質を備えた事務職員を登用する方が、即戦力として活用できる。

 最近の動向では、平成14年10月17日の南日本新聞によると「鹿児島県教委、小・中学校管理職任用試験で、今回から、受験資格を拡大。養護教諭、事務職員、栄養職員も受験。受験者489人。教員以外の合格者は、42人。うち事務職員は27人。多様な人材が新しい感覚や幅広い視点で、学校運営にかかわれると県教委は言っている。」と紹介されている。
 こうした動きが広がりつつあり、鹿児島県で1名、宮崎県で1名、事務職員から教頭に任用発令がされたそうだ。
(http://www.aq.wakwak.com/~miejiken/zenjiken/houkoku/03041801.htm)
 財務・予算・法令に習熟した経験豊かな事務職員出身者を管理職員に登用・活用することは、学校現場での法令遵守・金銭取扱に対する倫理観の醸成や意識改革を強く促進するだろう。様々な職種の管理職への登用は、これまで教育関係法規や財務事務に無関心で済まされた教員・教頭職に一定の緊張感をもたらし、様々な人材の中から、学校経営に優れた手腕を発揮できる人材の登用につながる。
 もちろん、人員・予算の増は、招かないし、各地教委が、本当に実現する気があれば、2〜3年で、いや、来年度からでも、すぐできることだと思う。


 このレポートへのご意見・ご感想をお待ちしています

平成15年度の中堅研修で、このレポートを提出し、同じ班の10名の方と協議した。ある方が、私のレポートを読んで、「校長になることを目指してるの?」と言われた。
 今の答えは、「NO」。でも、10年経ったら、「YES」かも知れない。そういう、道が、あっても、いいと思う。(学校教育法の中では、制度的には、「校長になるのに教員免許が不要で、教師経験がなくても校長にはなれる。」ということは、あまり、知られていない。) 

 このレポートの趣旨は、「今の教育現場に、すぐにでも校長になりうる経験豊な学校事務職員が、いる。そうした人材を活かすことなく、民間人登用をすすめるのは、学校現場の足元を見ずに、付け焼刃で、外からの風を入れようとしているに過ぎず、効果的な政策だとは、思わない。」ということだ。
 私の知る範囲の経験的なことに過ぎず、統計をとったわけではないが、年配の学校事務職員には、教員に比べると若い頃に民間会社を経験済みという人も、多い。ものの見方、考え方も、教育現場のことばかりでなく、世間の情勢を踏まえた上で、自分の意見を持っている先輩が、多い。
 そう思っているからだ。

 このレポートについて、是非、皆さんのご意見・ご感想を伺いたく存じます。トップページから、メールをいただければ、幸いです。(2004年2月11日)



 中堅研修講義で使われた資料の一つです

平成15年7月14日(月)、独立行政法人教員研修センターで、平成15年度公立小・中学校事務職員研修講座があり、参加させていただきました。
 同日、文部科学省 初等中等教育局初等中等教育企画課 課長補佐 K氏が、「学校教育の課題と事務職員の役割」と題して講義をしました。

 これは、その講義でK氏が使用した資料を抜粋しまとめなおしたものです。

学校事務職員について

1.学校事務職員の数

・公立の小学校、中学校等の数  約35,000校
・学校事務職員  約44,000人
(標準定数を上限として給与の2分の1を国庫負担。対象者は約38,000人。)

2.学校事務職員の職務

(1)総務
校務分掌組織の策定、校内諸規定の制定及び改正、文書の収受・発送、文書管理、調査統計、情報管理、各種証明書(通勤、通学、卒業、在学証明書等)の発行、教育委員会等関係機関との渉外

(2)人事
人事異動に関する事務、人事記録の整理、休職・復職・退職等の手続に関する事務、出勤簿等勤務の状況の整理、職員の勤務報告書の整理

(3)給与
   給与の計算、年末調整及び都道府県・市町村民税に関する事務、旅費の予算管理・請求及び支給に関する事務

(4)福利厚生
   共済組合・教職員互助組合に関する事務、公務災害に関する事務

(5)管財
   施設設備の維持・管理、物品の維持・管理

(6)経理
   予算編成・執行及び決算に関する事務、各種補助金に関する事務

(7)学務
児童生徒の教科書に関する事務、児童生徒の転入・転出等に関する事務、児童生徒の就学援助に関する事務

3.事務職員の担う職務の状況

渉外、学校予算、校内事務の情報化等を担当する学校事務職員が担うべき役割の増大

【完全学校週5日制の実施】
○ 学校と地域・関係機関との連
携による取り組みの実施
○ 学校が保護者や地域住民に対する説明責任を果たすための積極的な情報提供等の推進

【学校の裁量権限の拡大】
各教育委員会における学校の裁量権限の拡大に向けた取り組み(いわゆる校長裁量経費の措置等)

【教育における情報化の進展】
学校内のコンピューター機器類の維持管理、インターネット、校内LANの整備及び維持管理等に係る事務の増大

【多様な教育活動の推進】
個別指導やグループ指導等の学習形態の導入、ティーム・ティーチング、学校外の人材の活用など、多様な教育活動の実施に伴う負担増


4.事務職員の必要性

 校長・教頭(管理職)、教諭(児童生徒の教育をつかさどる)、事務職員(総務、庶務、財務、渉外等を担当)が、それぞれ学校運営に不可欠な各業務に専門性をもってあたることが必要かつ効率的


学校に事務職員をおかない場合→職務の特殊性、専門性から教員免許を要することとされている教諭等が、専門外の事務処理等の業務を担当せざるを得ないことに→児童生徒の教育への影響、効率的な学校運営の確保に関する懸念

5.学校事務職員の定数の標準
  
  1校に2人   27学級以上の小学校、21学級以上の中学校等
  1校に1人   4〜26学級の小学校、4〜20学級の中学校等
  1校に0.75人  3学級の小学校・中学校等

※要保護等児童生徒数が100人以上かつ児童生徒数の25%以上である小学校・中学校等に対し、更に1名を加配

なお、学校事務がきわめて少ない小規模校もあること等を踏まえ、小中学校における事務職員の設置については、学校教育法第28条但書に「ただし、特別の事情があるとき」は、「事務職員を置かないことができる」と例外が定められている。

6.事務の効率化のための新たな取り組みの支援

学校事務職員を拠点となる学校に集中配置して複数校を兼務させる、センター校的組織を設ける等、事務の共同実施、効率化に向けた柔軟な取り組みに対する事務職員の加配を行うこと等により、教育委員会の取り組みを支援。

事務処理のセンター校的役割を担う学校、学校間連携を伴う教育の情報化支援等のための事務部門強化を行う学校への加配
平成14年度  237名


学校事務職員と一般の行政職との職務の違い

学校事務職員は、「学校事務」に従事する行政職の職員であるが、以下の点において、一般官公庁など他の分野の行政事務に従事する行政職員と異なる資質が求められている。

少数の職員で広範囲の事務を処理
公立学校に勤務する職員の大部分は教員であり、各学校に配置されている事務職員は少数である(特に小・中学校では一人配置が大部)。このため、事務職員は、総務、人事、給与、福利厚生、管財、経理、学務等、広範囲にわたる分野の事務を担当しなければならない。

学校教育という人間関係に関わる活動に従事する
事務職員は、児童生徒の教育を直接つかさどる者ではないものの、部活動の指導等において児童生徒と直接接する機会も多く、児童生徒や保護者から見れば教員と同様に教育を施す側と見られていることから、他の一般の公務員とは異なる教育的な資質が求められる。



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