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私のラーメンの食べ方(02/09/27)

なじみの店では、新聞を読みながら食べるのが最高です。味は熟知していますし、何を使っているかなどはすでに調査済みですので、何も深く考えることはありません。初めに、ご主人と時候の挨拶を交わしたりして、あとはラーメンと新聞に没頭します。新聞はどちらかといえば、軟らかい内容のスポーツ紙がベターです。

しかし初めて入る店は違います。前もってガイドブック、インターネットなどで下調べをしておきます。期待に胸を膨らませながら、リラックスを装って暖簾をくぐります。席は、できればカウンターの厨房が一望できるところに陣取ります。まずメニューに目を通しますが、注文するのは予め調べておいたその店のお薦めの一品です。そうした特別なものがなければ、ただのラーメンかチャーシュウメンです。注文したあとは、新聞を読む振りをしたり水を飲んだりしながら、店の雰囲気、作り手や店員を観察します。可能ならラーメンを作る行程を観察します。タレはどれくらい使うのか、化学調味料を入れるか、スープは濾すか、スープはどんぶりにいつ入れるか、どんぶりは暖めるか、麺を手でもむか、麺を湯に入れたらどのくらいかき回すか、麺を茹でる時間は、上げるザルはヒラかデボか、湯きりの回数は、茹でる湯はいつ変えるか、トッピングの順番はなどを、観察します。麺を入れている箱からどこの製麺所のものを使っているかが分かることがあります。手際の良し悪しも観察します。厨房のガスコンロやテーブル、蛇口の配置などを見て、動線にかなっているかなどと余計な心配もしてみます。厨房の清潔度、整理が行き届いているかは、その店のオーナーの気持ちになって厳しく観察します。

さていよいよ、ラーメンが運ばれてきたら、まず匂いに意識を持ってゆきます。鼻をクンクンさせるのは品がないから、鼻腔を目立たないくらい膨らませ鼻から息を吸うようにします。匂いを最初にかいでおかないと、食べ始めてからでは鼻が匂いに慣れてしまい、細かい匂いの分析ができなくなるからです。スープの色、透明度、油の浮き具合、トッピングのバランスなども頭に入れておきます。次にスープをすすります。蓮華がないと口の中をやけどしますので、蓮華のない店ではこの行程は後回しになります。スープをすするたびにダシは何で取ってあるかを考えます。これも最初にしておかないと後からではスープにチャーシュウ、メンマ、味付け卵の味が染み出したりして、スープがトッピングの影響を受け、スープ本来の味を正確に捉えられないことが多いからです。スープは大体3回すすり、納得してから、麺に移ります。麺は太さ縮れ具合を見て、もちろん鼻腔を少し膨らませ息を吸い込んで、麺の匂いもかいでおきます。歯ざわりは加水率はかん水の量はなどと、試し眇めつ、のど越しも味わいます。少し長めに噛んで麺のもつうまみを探ります。麺の吟味が終わったら、次はチャーシュウです。チャーシュウは脂身の割合、大きさや厚さ、味付け、肉のうまみ、どの部分の肉かなどを考えます。もちろん何枚入っているかもです。チャーシュウが、ひどくマズイときがありますが、そのときはチャーシュウを麺の下に沈めておいて後で食べるようにします。これでマズサを和らげます。次はメンマです。メンマは歯ごたえ、香り、味付け、大きさ、量、調理の仕方などをチェックします。チャーシュウもメンマもスープとの味の関係が重要です。この点も分析します。

ここでコショウを入れます。あっさり系は白、こってり系は黒です。コショウをあとで入れる理由は、最初に入れるとコショウの風味が勝ってしまい、スープや麺の本来の味を正確につかめないからです。ここからはコショウの風味も楽しみながら、スープ、麺、チャーシュウ、メンマの味を確認しながら食べ進みます。ほかのトッピング、例えば味付け卵、海苔、わかめ、きくらげ、紅しょうがなども適宜味わいます。こうしてラーメンは徐々になくなってゆきます。

こんな食べ方をいつもしていたらすごく疲れます。この食べ方をするのは初めての店のときです。紹介本で絶賛されていても、「なーんだ、この程度か」という店は少なくありません。店に入ったときから不吉な予感がして、店を出るときには「生きている限り二度と訪れない」と誓うような「絶望的な店」もときにあります。紹介本の目的のひとつは、取材した店を誉めることですなのですから、「空振り」は良くあることです。そこでめげてはいけません。がっかりした場合は、納得の行かない理由も探します。その日に納得がゆかなくても、別の日に再度挑戦することもあります。体調によって正確な判断ができないこともありますし、出てくるラーメンのちょっとした味のばらつきということも考慮にいれなくてはならないからです。

レジのところで、お金を払いながら、「チャーシュウ、どこを使っているの。うちモモ、ロース?」などと生意気な質問をしているオヤジがいたら、それはきっと私です。

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