1.子どもに身につけてほしい行動を5つ決める。
ポイントシステムでは、子どもに達成できそうな目標を掲げるのが一番大事なところです。
ポイントが全然たまらないような難しすぎる目標行動は、本人の自信を失うことになりかねないので、目標の設定はあらかじめ充分考えておく必要があります。
まず、これを絶対がんばってもらいたいという行動を1つだけ決めます。(これをターゲット行動と呼びます。)欲張って、2つも3つもあげてはいけません。
ターゲット行動はあまり成功しないと思われるので、それを補うために、ちょっとがんばればできそうな行動を3つ決めます。
最後に、その日一日まったくポイントなし、ということにならないように、ほとんどできている行動を1つあげます。(これをダミーと呼びます。)
具体例・1(我が家の場合)
| ターゲット行動 | 朝15分以内に着替えをする。
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| ちょっとがんばる行動 | 1)朝起きたらトイレに行く。 |
| 2)宿題をする。 |
| 3)寝る前にお片づけをする。(少しでも片づけられれば良い)
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| ダミー(ほとんどできている行動) | おじいちゃんたちに大きい声で「おはよう」を言う。 |
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昇平は、ADHDっ子の例に漏れず、着替えにとても手間取ります。でも、着替えが早くできないと、朝食を充分に食べらないし、学校にも遅刻してしまいます。そこで、朝の着替えがターゲット行動です。
ちょっとがんばってほしい3つの行動は、学校や家庭の指導の中で身についてきたことです。ちょっと意識したり、声かけしたりするとできることが多くなったので、ポイントシステムで定着を狙います。
ダミー行動は大きな声の朝の挨拶。挨拶はちゃんとできるけれど、おじいちゃんは耳が遠くて、小さな声だと聞こえないので、おじいちゃんに聞こえるように言うことがポイントになります。朝、孫がはっきり挨拶をしてくれると、おじいちゃんの機嫌も良くなります。(笑)
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2.1週間、子どもに内緒で行動を記録してみる。
目標行動5つを決めたら、子どもには内緒で行動の記録をとってみます。
目標の行動が1週間の間に何度できるかを数えて記録していきます。
もし、1週間の間に全然行動ができていないときには、その目標は難しすぎる可能性があります。やり方を変えたり、目標の設定を変えたりする必要があるかもしません。
裏話
実は、具体例・1の目標は記録をとって修正した後のものです。
最初は、「トイレでうんちをがんばる(おもらしをしない)」などという目標もあげていました。
ところが、これはターゲット行動並の出現率。つまり、めったにできません。(週に1〜2回の成功率)
しかも、昇平は排泄に関しては感覚神経の発達が遅れていて、本人の意識や努力だけではどうにもならないらしい、ということが分かってきました。
そこで、これを削って、代わりに比較的定着してきていた「部屋の片付け」を加えました。
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次に、その行動ができたとき何点もらえるかということを決めます。
点数の代わりに、シールを貼っていっても良いです。特に小さな子どもの場合は、点数よりシールの方が分かりやすいでしょう。
点数を使う場合は、ターゲット行動を高い配点にすると励みになると思います。
具体例・2
我が家では小さな丸シールを使うことにしました。シールの枚数が点数です。
基本・・・・・・・・・・・青シール1枚
良くできたとき・・・・・・赤シール1枚(=青シール2枚分)
とても良くできたとき・・・金シール1枚(=青シール3枚分)
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具体的には、着替えが10分以内にできたら赤シール、5分以内にできたら金シール。
部屋の片付けだけでなく、布団を敷くのも手伝ってくれたら赤シール。
決まった勉強の他に、もっとたくさん自主学習をしたら、その量に応じて赤や金のシール・・・といった具合。
特に良くできたときには大きなシールやキラキラシールを貼って差をつけている、と学習会で報告してくれたお母さんもいました。
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3.子どもと相談する。
| 1) | 子どもにポイントシステムのルールを説明する。(子どもがよく理解できるまで、分かりやすく。)
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| 2) | ごほうびの希望を子どもに聞く。
あらかじめ親がいくつか考えておいて、その中から選ばせると良い。
注意!
| ゲームソフトやゲーム機といった高価なごほうびは、毎回出すわけには行かないので、すぐに行き詰まります。あまり金のかからないごほうびを選ぶのがポイントです。(モノでなければなお良い。) |
例:
ガチャガチャ(100円のカプセル入りおもちゃ)、かわいいシールや折り紙、子どもの好物を夕飯に作る、ゲームの時間を週末に延長できる、お母さんとふたりきりで10分間好きな遊びができる(スペシャルタイムの活用)、etc. |
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| 3) | 目標得点と、項目の点数を子どもと話し合って決める。
何点とったら(シール何枚たまったら)ごほうびと交換できるかを決める。
1週間ごとに区切って、一定点数までたまっていたらごほうび、というやりかたもある。(週末にごほうびを出す人向け)
各項目の点数も、子どもと相談して決める。
その際、親は秘密の記録を頭に置きながら考えていくこと。
※小さなお子さんの場合は、親が枠組みを決めてあげて、そこに本人の希望を織りこんでいく形が良いでしょう。
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具体例・3
| ごほうび ・・・ | 100円券1枚(買い物時に換金) |
| 目標点数・・・ | 1週間でシール28枚
それ以上になってもごほうびの内容は変わらない。
ただし、毎日の「評価」という欄に、母が点数に応じたカービィの絵を描く。
(5枚:ニコニコカービィ、3〜4枚:普通の顔カービィ、2枚以下:ムムム顔カービィ)
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| 項目の点数 ・・・ | すべて同じ1点ずつ。ただし、がんばりに応じた加算点あり。 (例:10分で着替えれば赤シール=シール2枚分) |
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本当は、私はお金をごほうびにするのはあまり好きではありません。以前は、ガチャガチャやカード、百円ショップのおもちゃなどをごほうびに使っていたこともあります。でも、最近、昇平がお金の使い方に関心を持ち始めたので、今回はあえて百円券という形でお金をごほうびにしています。買い物の仕方やお金の取り扱いはだいぶ上手になりました。
週末にごほうびを出すためには、一週間ごとに表を切らなくてはなりません。
ところが、その週によっては、早々と週の途中で目標枚数を達成してしまうこともあります。そうすると、とたんに気がゆるむのか、がんばる意識が下がってしまいます。
そこで、枚数は28枚で切り捨てにするものの、その日一日のトータル枚数によって、こまめに評価することにしました。5枚全部貼れた日は、ニコニコ笑顔のカービィの絵、3〜4枚だったら普通の顔をしたカービィの絵、2枚以下の日には困ったような顔をしているムムムカービィの絵。台詞の文字も適当に入れるようにしたら、現在これが大受けで、百円券より喜ばれているくらいです。(笑)
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4.実行する。
| 1) | 子どもとふたりで表を作る。
と中田先生には指導されましたが、実際には、我が家では母がパソコンで作った表を使っています。(笑)
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| 2) | 表を見えるところに貼る。
我が家はタンスの扉にテープで貼り付けています。部屋で一番目だつ場所で昇平が着替えをする場所でもあります。
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| 3) | できたときには○やシール。×はつけない。
できたことだけ評価します。できなかったことは空欄のまま。絶対×などはつけない。マイナス評価をしないこと。
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| 4) | 毎日決まった時間に、親子で結果をつける。(誉める!)
大事なこと!
実はポイントシステムは、この「親子で結果をつける」ときが一番大切なのです。
○を書いたり、シールを貼ったりするときに、ただ「はい、シールよ」とポンと渡すだけでなく、「今日はお片づけをたくさんできたよね」とか「宿題の漢字練習がんばったよね」というように、誉めてあげることが大事なのです。
子どもを誉めてあげるためにポイントシステムをやっている、と言っても過言ではないでしょう。
できなかったことを叱ったり、皮肉を言ったりするするのは厳禁。
子どもがその日がんばったことを、誉めて誉めて、誉めまくってください。 |
※小さなお子さんの場合は、決まった時間にシールを貼るより、目標に上げた行動をやったそのすぐ後にシールを貼って上げる方が効果的です。 |
| | 5) | 特別良いことをしたときには、ボーナス点を上げる。
欄の下に、「ボーナス」という欄を付け足しておいて、なにかあったときにはそこにもシールを貼ります。
我が家の例で言えば、トイレでウンチがしっかりできた、とか、お手伝いをいっぱいやった、とか・・・。
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| 6) | ポイント(シール)が目標数までたまったら、忘れずにごほうびをあげる。
あたりまえのことですが、ごほうびの実施をずるずると引き延ばしたりしないように・・・。
きちんと自分のがんばりを評価されてこそ、次もまたがんばろうという気持ちになるのですから。
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| 実際のポイントシステム表
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【付記】 ポイントシステムのやめ方
ポイントシステムはかなりの子どもに効果があるのですが、最終的には、ごほうびがなくても自分の力でそれをでできるようになることが目的です。また、特にADHDっ子の場合は、ポイントシステムを繰り返しやっていると、そのうちに飽きてきてしまいます。
そこで、ポイントシステムで良い行動が身についたら、それをやめていくことも考えます。
例:
・表が完成したら、次の表を作るまで間をおく。その間隔をだんだん長くしていく。
・「ずいぶん続けたから、そろそろ休もうね」と言う。
・「○○ちゃんはとても良くできるようになったから、このがんばり表は卒業だね」と子どもに言って終了する。
ポイントシステムを終了しても、子どもが良い行動をしたときにはしっかり誉めます。
良い行動が減り始めたら、またポイントシステムを復活させます。
そうやって繰り返すうちに、良い習慣が身についていきます。
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■最後に
さて、これでペアレント・トレーニングに関する説明は、一応完成です。
このポイントシステムには、目標行動を時間に沿って並べたBBC(Better Behevior Chart:「よりよい行動のためのチャート」)というものもあります。
朝の忙しい時間帯などにスムーズに行動ができるように、目標時刻も書き込んだポイントシステムです。
これに関しては、詳しくは「ADHDのペアレントトレーニング 〜むずかしい子にやさしい子育て〜」(シンシア・ウィッタム著/明石書店)をご覧いただきたいと思います。
この本は私が受講したペアレント・トレーニングの基礎テキストです。事例や具体的な方法などについてもたくさん紹介されていますので、併せてお読みいただければと思います。
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我が家ではペアレント・トレーニングを通じて、子どもたちがとても良く変わってきました。
ADHDのある次男だけでなく、普通の子どもである長男にもこのペアレント・トレーニングは有効だったのです。
ペアレント・トレーニングは親のための訓練ではありますが、同時に子どもを支援し、育てるための手段だったと思っています。その子の良いところ、がんばっているところを見逃さずに誉めることは、親子の信頼関係を深めるだけでなく、その子自身の自分を信じる心も育ててくれたのです。
ADHDを持つ子に兄弟姉妹がいる場合は、ぜひ、その子たちにもペアレント・トレーニングで学んだことを実践してもらいたいな、と思います。彼らもまた、親の注目を求めている子どもたちなのですから。
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ただし、ひとつだけ、ペアレント・トレーニングを実施する際に気をつけなくてはならないことがあります。
このペアレント・トレーニングはADHDのあるお子さんのためのプログラムなのですが、お子さんが広汎性発達障害(PDD)、高機能自閉症、アスペルガー、または自閉傾向もある、というような診断を受けていたり、一度覚え込んでしまったことを後からなかなか修正できないタイプであるような場合です。
ペアレント・トレーニングは子どもに世間一般から見て「良い」行動を身につけさせるためのテクニックですが、自閉的な特徴のあるお子さんの場合、それが本人にとっては「必ずしも良くない」可能性があるからです。
ごく単純な例をひとつあげます。
これは自閉のあるお子さんに限りませんが、皮膚感覚が敏感で、セーターがちくちく感じられて着られないお子さんがいたとします。
そのお子さんが「セーターは着たくない! 大嫌い!」と言っているのを、ペアレント・トレーニングの方法で着るように促し、誉めまくり、ポイントシステムなどで、セーターを着ることを習慣づけたとします。
でも、当人はセーターが着られるようになったことで、幸せになれたでしょうか?
寒さはしのげるようになったかもしれません。おしゃれの幅も広がったかもしれない。
でも、セーターのちくちく感を我慢するために全神経を張りつめるようになって、セーターを着ただけでひどく疲れてしまうかもしれません。学校の授業にも身が入らなくなるかもしれません。果ては、「お母さんはこんな自分の気持ちを全然分かってない。お母さんは自分の味方じゃないんだ」と思われてしまったり、「こんなふうに自分の不快なことに我慢をすることこそ、何より大切な美徳なんだ」と思いこんでしまって、どんな場面でも不快な感覚を「いやだ」と言えなくなる可能性さえあります。
親は決してそんなことを望んではいないのですが、子ども自身にとって「良いことかどうか」「有益かどうか」を最初に考えることを忘れると、とんでもない落とし穴に足を取られる結果になりかねません。
ですから、ペアレント・トレーニングを実施するに当たっては、まず「誉める」ことから徹底して行ってほしいと思います。
その子がすでにできている行動の中の、良い行動を見つけて、それを誉めて伸ばす。
それが充分にできるようになったところで、その子に身につけてほしい行動を、慎重に吟味しながら増やしていってほしいと思います。
また、ペアレント・トレーニングを実施してみても問題行動が減らない、あるいは逆に悪化していくように見える場合には、すぐにトレーニングを中止して、専門家に相談するのも大切なことだと思います。
親と子が、そろって気持ちよく生活ができるようになるために、ペアレント・トレーニングが活用されることを、心から願っています。
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