臨床心理関係の大学院受験へのアドバイス
2004/12/6更新
カウンセラーの資格には、幾つかありますが、代表的なのは、日本臨床心理士資格認定協会認定の臨床心理士でしょう。臨床心理士は、一定のカリキュラムを備えた「指定校」と呼ばれる全国数十の大学の大学院のいずれかの博士前期課程(修士課程)を修了した後、(第2種指定校の場合は一定の現場経験を経て)、資格認定試験を受けてはじめて資格が得られます。
この大学院受験は、出身学部が何であろうと大抵受験資格はあります(私自身他大学で他学科の大学院に進んでいます)が、後述するように、この大学院への合格そのものが年々非常な狭き門となりつつある現実があります。大学院修了後の資格認定試験の方は合格率7割程度ですから、仮にその年不合格になっても翌年には合格できる人が多いかと思います。
なお、臨床心理士以外にも、認定心理士、産業カウンセラー、学校心理士、精神保健福祉士(PSW)など、幾つかこの領域における資格制度があります。これらの言葉をキー・ワードにしてYahoo!,Infoseekなどの検索エンジンで検索されれば、かなりの情報が得られるかと思います。
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臨床心理士の資格制度が整備され、しかも近年の不況の中で、臨床心理学の大学院は年々極めて狭き門になっている現実はあります。最近は全国どこの心理の院を受験しても同じメンツが顔を合わせてしまい、互いに申し合わせてもいないのに集団で一斉に全国を渡り歩いているかにも見えてしまう現象もあるくらいらしいです。
最初から厳しいことばかり言いたくはないのですが、臨床心理を志望する人が大抵ぶつかる壁は、「臨床心理学やカウンセリングに関心を持っているだけでは大学院受験では通用しない」という現実です。フロイトやユングにどれだけ詳しくても、実験心理学や社会心理学を含む心理学全般について幅広い理解がなければ試験問題にはほとんど歯がたたない……かもしれません。
そのことに矛盾や葛藤を感じる人もあるかもしれませんが、私自身、受験の時は、臨床心理学関連以上に、学習心理や認知心理など、実験心理系、あるいはの精神分析以外の発達心理、そして社会心理の受験勉強ばかりしていたと言っても過言ではありません。
先生によっては学力試験のみならず臨床家としての将来性を重視して選抜なさる場合もありますが、一般的に言えば、心理学研究科ならば、発達やパーソナリティ、社会心理のみならず、学習・認知などの実験系の心理学全般、教育学研究科ならば教育学全般についてもかなり高度な解答ができないと合格できない大学院が多いと思います。大学にもよりますが、一般に、最低ラインで、どの心理学領域も満遍なく正答率7割は目指す方がいいというのが、現時点での私の観測です。
大学院の試験問題や入試要項については、直接それぞれの大学に出向いて入試課などで資料をもらわないとわからないことが多いです。過去の試験問題については、非公開、閲覧は許すがコピー不可、コピー可、有料で過去の試験問題集を頒布、など、大学によって対応が異なりますが、可能ならば早めに入手して実際にごらんになってみるべきです。「これの7割!」と知って動揺する人もあるかもしれませんが、本当に目指したいのでしたら、めげないで下さいね。
受験科目は、従来通りのスタイルの場合、一次試験が筆記で心理学と専門の英語の2科目、二次試験が面接です。一次試験の心理学は、実験系・臨床系に関係なく、全心理学領域に渡って10問ぐらい、専門用語について数行で答えるものと、選択論述式の小論文が組み合わされてそれらをあわせて1時間で回答するものが多いと思います。英語のほうは、心理学の専門の論文からの1ページほどについて、読解力を見るものが多いです。
もっとも、最近は、出題に趣向を凝らした大学院も増えているようです。
専門の英語では何より専門用語の英語の原語も知っているかどうかが決定的になります。一見あたりまえの英単語が専門用語では独自の含蓄を持つことが非常に多いので。たとえば、"drive"を「衝動」「欲求」 、"variable"を「変数」、"projection"を「投影」(精神分析の防衛規制のひとつ)と訳する場合が少なくないことを知らなければ、論文全体をとんちんかんな形で理解することになります。逆にキー・ワードとなる言葉を原語ごと理解できていれば、出題の英文に多少わからない部分があっても、その文章全体の意図が推測できるということにもなります。「ひとつの専門用語を理解する時は、必ず原語の英語も同時に覚える」、これを徹底してください。
いずれにしても、その学部の学問領域全般の基礎用語全般と、専門の英語についての勉強を大事にして下さい。
ちなみにこれらのことは学部への編入試験でも同じことが言えます。得てして大学院受験より競争率は高いですし、編入試験の専門科目の心理学も「想像以上にレヴェルが高い」と感じられる方が多いかと思います。
楽な道ではありませんが、本当に志望されたい方は、メゲることなくチャレンジして下さい。
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次に、これから臨床心理士を志望する皆さんに役立ちそうな本について。
臨床心理士に興味をお持ちの方の最初の入門書としては、馬場禮子著「臨床心理士への道」(AERA books)が特にお勧めです。非常に平易な形で、臨床心理士の仕事、臨床心理士の資格認定に必要な大学院での学歴や指定大学院制度、どういう人が臨床心理士に向くか、臨床心理士を目指す人の心構えが説かれています。
2冊目としては、資格認定協会の「公式本」。誠信書房から毎年改定されて発行されている「臨床心理士になるために」です。臨床心理士の資格認定に関する諸規定や倫理規定の全文掲載、各国の臨床心理士の状況、臨床心理士資格認定試験の前年度の問題も掲載されています。ただ、全体としては前述の馬場先生の本より堅苦しいです。でも、資格制度をめぐる状況は刻々と変化していますので、臨床心理士を志望する人は最新版に毎年目をお通しになる方がいいかと思います。
どの大学にどういう先生がいるかに関しては、現在容易に書店で入手できる本としては、AERA MOOKの「心理学がわかる」が参考になるかもしれませんが、臨床心理の先生は大学間の異動が激しく、その先生がいなくなるとその大学から臨床心理の伝統が失われたり(ただし、この点については指定校はまず心配いらないと思います)、全く違う流派や専門の先生が赴任することも多いので、これらの本もすでに情報の一部がかなり古くなり、これらの本に書いてある大学にはすでに在籍していない先生も多いことに注意してください。
現在在籍している先生でも、その先生が定年まであと何年で、それまでの間に自分が大学院を修了できる見込みが立つかどうかを十分考えて受験したほうがいいです。
ただ、すでに述べましたように、直接大学院に出向いて確認されるのか一番です。
最近はインターネットで各大学のホームページを訪問すると役立つ情報が掲載されていることも多いですが、更新が頻繁ではないために、教員の異動について迅速にホームページに反映させていない大学も時にはありますので注意してください。
「受験参考書」としては、あくまでも私が十数年前に受験した時に個人的に役立ったもの……ということで参考までに述べますと、有斐閣の、「心理学の基礎知識」「心理用語の基礎知識」、誠信書房の「誠信 心理学辞典」が役に立ちました。
なお、日本臨床心理士会のホームページはこちらです。
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以上、思いつくままに書きました。いろいろ書きすぎて逆に混乱なさらなければいいかと思いますが、何かお役にたてる内容になっていたら幸いです。