![]()
……マクロス・プラス
しばらくOVAを見る時間的余裕など失っていたのだが、AM2月号での取り上げ方が大きかったので、『マクロス・プラス』を見てみる気になり、LDを捜したのだがどの店にも置いてない! 今人気あるらしい他のOVAなら大抵見つかるので、よほど売れているのだと思った(AMの大特集も効いている?)
つい先日、第3巻発売と同時に1・2巻もやっと店頭に並び、『卒業』第2巻と同時という大出費(3万!)のもとに買い込んだ。
うーむ。これほど堪能したOVAは実に久しぶりだ…というより、今のアニメの最先端の作り手がここまでやれるようになっているというのを見せて貰えて大いに安心すると共に満足した。購入以来ほとんど毎日最低どの巻かは見ている。
要するに劇場版『パトレイバー』と『オネアミス』と劇場版『オレンジロード』のいいところがすべて一緒になったような作品とも言える。河森氏は「従来からの『マクロス』ファンだけではなく、偶然見た一般の大人の人も楽しめるような作品を目指した」とライナーノートで書いているが、そのもくろみは見事に成功していると思う。
脚本の構成やセリフ回し、画面の構成が、アニメ的というよりはハリウッド映画のセンスに近いように思う。確かにこういう見せ方なら、よほどアニメに偏見を抱いている人でもないかぎり「偶然見た一般の大人も楽しめる」だけの開かれたメジャー性がある。もとより、その裏返しとして、ある意味ではものすごくキザ! そのあたりにむしろ反発を感じてしまうアニメファンも少なくないかもしれない。
でも、実はこの作品、実は当然これまでにもできていて良かった筈の、映像作品の基本的な作劇術を地道に積み上げることをアニメの世界でやっとこさ実現しただけの、大変素直な、遅過ぎたくらいの「正攻法」の作品という気がする。そういうノウハウを河森氏をはじめとする若い作り手がここまで使いこなせるようになったということが大事なのだ。更なる独創はこれから先の課題にすればいい。
話題になったコンピュターグラフィックの味つけとかはすでに実写映画で更に大がかりに実現されていることなので実はことさら取りざたするほどのものではないのではないか。自分たちににだけわかる楽しみではなくて誰にでもわかる楽しみ(しかも非常に高い次元で!)を素直に楽しんでもいいではないか。カッコいいよ、ゴージャスだよ、こういうの。
受け取りようによっては、一人の女性をめぐってふたりの男がバルキリーに乗って延々と喧嘩することを繰り返すだけのひどくシンプルな三角関係の物語である。しかしその背後にあるのは、機械文明の庇護の中で、生身の人間の肉体と思いを込めて自分の限界に挑むパワーを喪失しつつある現代人のためのファンタジー。
ミュンは夢を失った女。3人とも仲良く過ごせたあの懐かしい日々が二度と返って来ない。もうかつての2人の男友達は自分を取り合うためにただのオスと化して敵意をムキ出しにして戦う敵同士に過ぎない。
「どうしてあなたたちは普通の大人になってくれなかったの!」
巨大翼竜を嬉々として追いかけて行く夢追い人のイサムとの間に自分との越えられない距離を感じてしまうミュン。
イサムは見つけた野生の果実を苦いと吐き出す。それでも「食えよ」とミュンに勧めるイサム。「自分で食べるからこそその苦さも実感できるんだよ」。
痛い思いをしそうになると前もって回避してしまおうとする、一度味わった苦い体験を繰り返すくらいならば引き籠る道を選んでしまう「大人の」ミュンの生きざまとの対照。
ミュンの越えられない深淵とは? そこにオーバーラップされる生身の人間としての現実体験とバーチャル・リアリティ的体験の問題。
恐らく第4話では、シャロンの人工頭脳に託されたミュンの生身の女のとしての本能が一気に解放されるのだろう。それは一つのカタストロフ。その時、きっと3人はこれまでにない苦い果実を味わうことになる。
Muss es sein? Es muss sein! 【注】
…言葉にしてしまうとありふれた陳腐なメッセージに還元されかねない。でもそれを、こうしたさりげないシーンのつみあげの中で描いてくれると何か嬉しい。
(95/2/26)
【注】ベートーヴェンが生涯最後の作品、弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135の終楽章の自筆譜の冒頭に書きつけた言葉
P.S.
音楽の多彩さにも圧倒される。オーケストラ曲の音色がひどくシックで上品だと思ったらイスラエル・フィルとはね。例によってユダヤ人は知的専門職に就くことではじめてヨーロッパ社会に適応してきたので,優秀な演奏家もユダヤ人に多い現実がある。結果的にイスラエル・フィルは実は一流なのだ(特に弦楽器セクションはウイーン・フィル以上とも言われる)。ユダヤ人である故バーンスタインやメータがよく指揮をして来た。このオケは最近までナチに崇拝されたワーグナーを演奏しなかった。
東京都:普通の大人になれなかった阿世賀浩一郎(34)
この投稿は全4巻のうち3巻まで見終わった時点で書かれたものです。私は「劇場版」の方は見ないままです。実は第4話については少し予定調和すぎて物足りない面もありました。その辺の現在の印象については、この作品についてのメールが「レタールーム」に掲載されていますので、そこでの私のコメントとして追加しています。
まあ、それでも実写的な画面づくりのこだわり、画面のすばらしい空気感、音楽のすばらしさが歴然と一つの世界を作っているあたり、好きな方の作品ではあります。最終話の最後に字幕を出すあたりの感覚は、妙に「エヴァ」現行版最終回に通じるものがありますね。
「エスカフローネ」をお気に入りの人は、是非この作品もごらんになられることを推薦します。
ご意見・ご感想をお待ちしています。
Email:kasega@nifty.com
インデックスに戻る