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Text from atarayo〈8〉
オリジナル曲の解説
1. Yours Sincerely
2006年、第3回目の吟遊コンサートにゲスト出演して頂いた女優・大塚良重さんとのコラボレーションのため作曲。親愛なるあなたへ。手紙の最後に書く結句です。
2. Floating Moon
インプロヴィゼーションのやり方とは簡単に言うとピアノの鍵盤を下から上に向かって弾いて(上から下でもよい)、上の鍵盤が無くなれば下に行ってと、つまり低音から高音、高音から低音を行ったり来たりすることで、行ったり来たりしているうちに自分が何に快感を覚えるかが分かってくる、そしてその快感はどういう仕組みから発生するのかを探していく、そうすれば自ずとルールらしきものが浮上してくる、、かもしれません。
3. 月のうさぎ
待宵(まつよい)から始まり十五夜、十六夜(いざよい)、立待月(たちまちづき)、居待月(いまちづき)、臥待月(ふしまちづき)、更待月(ふけまちづき)など、名月は数多の美しい名称で愛でられています。
「月のうさぎ」は十三夜をイメージして作曲しました。
カタルシスの波打ち際に十三夜
十三夜ピザは楕円に焼きあがる
4. 吉雲Yo-Ke-Ku-Mo
作家・多和田葉子さんの小説「飛魂」の中の一節に出てきた「吉雲」。「吉雲」は「よけくも」と読むそうです。美しい虹や雲の姿に日本人は古来いろいろな前兆を読み取ってその生活に反映させて来ました。七色に輝く雲が流れゆく究極の一瞬を感じていただければ本望です。
5. Walpurgis Night
4月30日に行われるドイツのお祭り「ワルプルギスの夜」。魔女たちの年に一度の集会です。一説には春の訪れを祝う祭りとも言われています。
6. あさきゆめみし
夢見の激しい夜 夢が夢を呼んで 夢が夢を作り 夢は果てしなく膨らんでいく
夢見のたびに目を覚まし 夢を反芻して 夢の数をかぞえる
しかし明け方に見た最後の夢が それ以前の夢をすべて持ち去ってしまうのだ
何処へ?
7. Outside of Dream
ひと頃、パット・メセニー・グループにハマってしまったことがあり、この曲の曲想は多分にその影響を受けています。「ジャズはやらない」という「ルール」で活動したグループですが、ジャズが出来なければこのルールは成り立ちませんね。
8. 730日目のAria
長崎市のグラバー邸を訪れた折、ソプラノ歌手・三浦環さんの銅像に遭遇、実に相応しい場所に建てられたものだなぁ、と感慨深いものがありました。崖の上から幾日も海を見つめピンカートンの帰りを待っていたのであろう蝶々夫人のせつないアリアです。
9. Train to the Future
乗り物に乗れば「場所」だけでなく「時間」も移動します。乗り物は常に未来へと連れて行ってくれるもの。そして音楽や演奏もそれに似たところがあります。今宵パウゼ号にご乗船頂き宇宙を漂う演奏会、終演までにさまざまな景色をご堪能下さいますように。
10. Mermaid Song
「人魚」というとローレライやセイレーンを思い浮かべますが日本でもその存在はずいぶん昔から知られているようです。マーメイドは女性の人魚、男性の人魚はマーマン(marman)。
11. 平成申年Monkey Tonk
バークリー音楽大学に留学して帰国間もない頃のドラマーO君の土産話。イギリス人の留学生から「‘君が代’は何でC(ド)の音でなくてD(レ)の音で終わるんだ」と質問されたということ。
この曲も「レ」で終わるDドリアン旋法を使って書きました。
12. Sarasvaty
サラスパティーと呼ばれているインドの女の子たちの花占い。英語表記ではサラスヴァーティーとなります。ヒンズー教の女神。川に色とりどりの花を投げ入れて、その行方と恋の行方を重ね合わせて占う、その情景をイメージしています。
2008/11/11 吟遊コンサートvol.8 〜Piano Sanctuary〜プログラムパンフレットより

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先日10月31日は、日本でももうすっかりお馴染となった「ハロウィン」でしたが、その対極の日、4月30日の夜は「ワルプルギスの夜」と呼ばれています。ゲーテの「ファウスト」にも書かれたこのお祭りは、ドイツのブロッケン山に魔女が集まって春の到来を祝うもの。世界中の魔女や魔法使いが箒に跨ってブロッケン山に飛んでくる光景は思い描いてみただけでも壮観ですね。魔女たちは魔王と共に朝まで宴会。年に一度のお祭り騒ぎで日ごろの憂さを晴らし、情報交換なんかをするのでしょうか?しかし魔女は魔法が使えるのだからストレスなんかとは無縁だし、パソコンやケータイがなくてもあらゆる情報を入手できると思うのですがそこはやはり、魔女なりの事情やご苦労があるのでしょう。猫は自由な生き物だなぁと思うけれど、猫は猫なりのルールがあるように、魔女には魔女のルールや日常が存在する。それらから解き放たれて思いっきりフィーバーする「ワルプルギスの夜」。
ジャズに限らず、西洋音楽に限らず、人間は最初、どのようにして音楽を生じさせたのか?嬉しいことがあった時、小鳥の鳴き声を真似てルンルンする。悲しみに打ちひしがれた時、胸のしこりを解きほぐすために絶叫する。悔しくてたまらない時には雷の音とともに慟哭。または自分の朗らかな気分を相手に伝えたい、周りの人と分かち合いたい、淋しい気持ちを理解してもらい、慰めてもらいたい、慰めたい。そして、他者と思いを共有したい、他者とコミュニケートしたい、さらには人間というルールの中で生きていくことから解放されたい、あぁ小鳥になって空を飛びたい、自然界と一体になりたい・・・と思った瞬間に音楽は誕生したのかもしれませんね。なぜなら「音楽」は自然界に偏在するものだから。
自分の気持ちを伝えるとき、そこに「表現」が必要になる。私たちは一生の間ずっと、この「表現」の勉強を続けているわけです。どう言ったら素直に相手に通じるのか?どう言ったら誤解や曲解から免れるのか?どう言ったら相手は心を開いてくれるのか?そして、お互い共感し合えるのか?言葉使いや言い方ひとつでわたしたちの関係は様々に変容してしまう。音楽における「表現」も同じで、テンポや強弱、間の取り方など一つ間違えればとんでもない代物になってしまう。表現が美しいものであればこの世の諍いや仲違いや確執も減ることでしょうし、音楽はさらに美しく私たちに届くことでしょう。
猫には猫の、魔女には魔女の、人間には人間の「ルール」があるように、自由にピアノを弾くためには「ルール」を設定することが大前提となります。インプロビゼーションのルールは「始まったら終わる」。
2008/11/11 吟遊コンサートvol.7 〜吟遊Night in PAUSE〜プログラムパンフレットより
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atarayo発
1969年7月、アポロ11号に乗り込んだ飛行士、ニール・アムストロング船長・エドウィン・オルドリン月着陸船操縦士の二人が「静かの海」に着陸して、「人類にとって偉大な一歩」を踏み出してから早38年が過ぎた。「やっぱり月にウサギはいなかったね」などと言いながらテレビ中継を見て、その後は何回も録画を見て、新聞の切抜きを集めてアルバムに貼り付けたものをそのまま「夏休みの自由研究」として提出し、翌年の大阪万博では月の石を見るために辛抱強く並んだ。その後もアポロ計画は続いたが、それらの印象はアポロ11号に比べて薄い。そしていつの間にか有人飛行のニュースも聞かなくなっていたが、先日9月1日付け読売新聞夕刊は、ロシアが2025年までに月面基地建設のための有人飛行計画を発表したと告げた。これからはまたクレーターの隕石衝突説とか月の土地販売とか「月の情報」が溢れてくることになるのだろう。人類は偉大な一歩の次の一歩を歩み始めているのだから。
さて、「atarayo発」と題した今回のコンサートツアーですが、atarayo とは「あたらよ」、漢字で書くと「可惜夜」。「中秋の名月」「良夜」、つまり「十五夜」という意味です。
瞑想の可惜夜発の舟ゆらり
月光を浴びてはじける人魚たち
うさぎ餅絵に描いた餅夢の淵
月のしずく滴り落ちて白露かな
満月は第三の眼宇宙の眼
アリストテレスは月蝕を観て地球が球形であると発想しました。「発想した」と言うより「気付いた」と言うべきか。幸運にも何かに気付くことのできた時、「何でこんな簡単なことに今まで気がつかなかったのだろう?」と愕然としてしまうことが多々ある。そんな時は嬉しさ反面、情けない気分に陥るものだ。だいたいに於いて、すぐ近くに答えは満ちているのにわざわざ遠くまで探しに旅に出てしまったりする。収穫のない旅から戻って、あれれ、何だかな〜、ここにこうしてちゃんと答えがあるじゃないの。と知る。わざわざ遠回りをして、迷路の出口や答えを見出す課程を無意識に楽しんでいるのだろうか?それとも旅に出る前と旅から帰還した後では波長か何かが変わるのだろうか?
旅は経験、「経験すること」は大いに人生の糧になるだろうが、人間は残念ながらその一生の間に何もかもを経験できる訳ではない。そこで「今までのひとつひとつのかけがえのない経験をシナプスで繋ぎ、脳内で編集する作業」が必須となる。それが上手くできれば「経験したくても絶対無理そうなこと」をも経験できるかもしれないし、また、より豊かにしかも手っ取り早く「何かに気付く」ことができるかもしれませんね。
月旅行に憧れています。できれば「かぐや姫」のように8畳ぐらいの畳カーペットにふわりと乗って、ゆらりゆふらり漂いながら飛んで行きたい。月の引力に導かれるままに。
〜Fly me to the moon ,Fly me to the ataryo.〜
2007/09/14「吟遊コンサートvol.4」
2007/10/20「吟遊コンサートvol.5」
2007/12/02「吟遊コンサートvol.6」
CD同時発売記念「吟遊コンサート」ツアー2007〜atarayo発〜プログラムパンフレットより

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