過去の建築雑感1です。



いい建物を造りたい
平成14年12月29日

 いい建物を造りたい・・・いつもそう考えています。いい建物って何だろう?使いやすい建物、長持ちする建物、安全な建物、住み心地のいい建物、格好いい建物、雑誌やテレビに取り上げられる建物・・・。なんか違うかなあ?

 造る人や住む人によって感じるいい建物はそれぞれ違います。では造る人が住む人の望む物を望まれるままに造ればいいのでしょうか、それもやっぱり違うようです。又、逆に造る人が住む人に自分の考えを押しつけるようなことなどは、もってのほかです。いい建物って本当に難しい・・・。その建物に関わる全ての人が 「いい建物だなあ」 と思うのがいい建物・・・でも全ての人がいい建物だと思うことなどあり得ない・・・ああーーわけがわからん!

 自分が信じる物をより所にして、自分の今までの経験を糧にして、住む人とのディスカッションから最もふさわしい形を捜し出して行く、なんか優等生みたいな答えですね。でも、やっぱりそれしかないのかな、これからもこういった姿勢を大事にして行きたいと思っています、なんてね。

 ただ、人間として人を裏切ったりだましたり、金儲けだとか、自分の名声や出世のためにこの仕事をしたくはありません。お金や名声が欲しいならもっと儲かる違う仕事をしています。このゼロから物を作り出す仕事が好きです。そんなことだからちっともお金は儲かりません。この商売をやってる人で金持ちがいたらそれはあやしい・・・なんてひがみですか・・・笑。

 今年ももう終わりです。本当に大変な2002年でした。来年2003年はきっと皆さんよい年になりますよう。



やっちまったTV!
平成14年11月25日

 まあね、いつものことなんであんまり驚きもしないんですけど、先日某TV番組を見ていたら木造住宅のリフォームをやっていたんですよ。そうしたらそこに出演していた人が(建築士なのかコーディネーターなのかはたまた無資格なのかは知りませんけど)住宅のじゃまな壁を取りましょうとか言って筋交いを切っちまったんですよ。ただでさえ古くって数少ない筋交いを何本も・・・・・。あーあやっちまった!

 筋交いって御存知でしょうか?木造の在来工法で建てる建物は基礎の上に土台を置いて、その上に柱を立てます。そして柱の上部で柱をつなぐ梁を掛け、その上に屋根をのせます。これが木造建物の基本構造です。これだけで建物の自重(建物自身の重さです)は支えることが出来ますが、たとえば地震や台風の風などの横向きの力が建物にかかった時、これだけだと柱と梁の接合部を支点にしてのびるように平行四辺形になり倒れてしまいます。そう、電車のパンタグラフが伸びるように。また、接合部を固めて動かないようにすると、今度は力の吸収が出来なくなって、ちょっとした動きで柱や梁が折れてしまいます。そこで、そうならないように横向きの力に耐えるために建物の壁の中に柱と梁の接合部と土台と柱の接合部を斜めにつなぐ筋交い材を入れるのです。

 筋交いは建物全体の中にバランス良く必要な量を計算した上で配置します。これと同様に床梁間に梁をつなぐように斜めに付けるのが火打ち材で、鉄骨造などではやはり斜めにブレースと言う材料を使います。そしてこれらは地震などに耐えるという意味では建物に於いてはとても重要な物なのです。どこかの筋交いをとればバランス良くどこかに再配置しないといつか建物は壊れてしまいます。どうしても意匠的に無しにしたいのであれば、たとえばその部分を鉄骨の柱や梁にするとか、力を支えられる耐力壁にするなどの特殊な工法が必要になります。ただでさえ昔の基準で建てられて地震に弱い古い建物の筋交いを切ってしまうなどということはリフォーム以前に問題外です。

 家って一体なんでしょうか?家は衣食住の住をを担うもので、雨風をしのぎ、外敵から身を守り、人が生活する空間を提供する工作物です。まず住む人の安全と健康を確保しその上で快適さを提供する物ではないでしょうか。見てくれとかっこばかり追いかけて本来の家の持つ意味を忘れないように、一番の安全がないがしろにされた建物は家ではありません。

 しかし、TVに出ていろいろやってる人達って一体誰なんでしょうね、そんなことも知らないでリフォームしてるなんて・・・。まだ他にもいろいろありますけど、何かあったら責任取るのはあなたですよ、大丈夫ですか?



建築の許認可権
平成14年11月12日

 都市計画区域内に建物の新築・増築・大規模の模様替えなどを行う際には建築主は(設計者でも施工者でもありません)管轄の役所に確認申請をしなければなりません。確認申請を提出すると役所の審査官が建物や敷地について書類と設計図によって、その建物が法律に適合しているかの審査を行い、審査に合格すると確認通知という物が送られて来て、着工することが可能になります。これがないと建物の建築をすることは出来ません。

 これ以外にも敷地の地域や特性などにより他にも許可等が必要な場合も有りますが、これが俗に言う建築における役所の許認可権と言うやつで、これがないと建築できないために悪い業者などが賄賂を送ったり、役人は自分が特権階級にでもなったかのような態度を取ったりします。本当にそうですよ、役人の人達は多分自分では気がついてないんでしょうけど、基本的にはものすごく態度の悪い人や口の悪い人が多い・・・、担当官に嫌われたら許可してもらえない訳ですから、どんな偉い人でも向こうから頭を下げて来ると自然にそうなっちゃうんでしょうね、いやだいやだ・・・。

 ところが数年前に行革が行われて最近はこの審査の業務が民間にも開放されました。役所だけでなく審査する資格(建築主事と言います。)を持った人が確認申請の審査を出来るようになり、そういった機関がたくさん出来て来ました。そうしたらね、みんなそういった民間の機関に出すようになっちゃって誰も役所には確認申請を出さなくなっちゃったんですよ・・・。審査料金は一般的には民間機関の方がやや高めなんですが、なんと言っても親切で早い、そして責任の所在がはっきりしてる、ここがポイントです。

 御存じとは思いますが、物を造ると製造者責任法(PL法)により造り手には責任が発生します。建築に於いてもこれは例外など無く、設計に関しての責任は設計者に、施行に関しての責任は施行者が負うことになります。そしてこの責任を負うべき者の能力を認めるのが建築士・施工管理技師などの資格で、だからこそ資格により建てられる建物の種類や規模などが細かく決められているのです。建物にミスや法律違反などが見つかっても、それに許可を与えた役所は一切責任を取りません・・・厚生省の事件などでもお分かりの通り、たとえどんなミスを犯しても役人は絶対に捕まりません・・・。責任を取ることになるのは設計者や施行者です。もちろん確信犯的法律違反などは論外ですが(残念ながら中には平気で法律違反をするような設計事務所などもあります。)、責任は取らないのにああしろこうしろと文句ばかり言われ、言うこと聞かないと許可しないぞと脅されたら誰だって嫌になってしまいます。民間機関はこのようなことは言いません、そんなこと言ったらお客さんが来なくなってしまう・・・、機関が責任を負うべき範囲には修正を指示されますが、それ以外は法律違反でない限り設計者等に任せられます。

 民間の機関は営利企業で、お客様は神様ですからお客を待たせるようなことは一切ありません。役所なら数時間待たされるのは当たり前で、担当が違うとどんなに暇でも絶対に審査はしてくれません。決して役人の人間性がそうだと言うことではありません。人として普段はみんないい人ばかりで、官僚機構という物のあり方の問題のような気がします。

 いずれにしろ今役所の審査課はみんなとっても暇そうです。



オープンコンペですか?
平成14年10月18日

 昨今は住宅でもオープンコンペが花盛りです。建築家紹介HPなどは全てオープンコンペになってしまったと言っても過言ではありません。コンペは設計者選択にはとても優れたシステムだと言う人が多いようですが、それって本当ですか?

 元来コンペは住宅などの小規模な建物で行われることはあまりありませんでした。それはコンペ参加者への報酬というネックがあったからです。本来のコンペという物は二段階選抜が多く、一次審査で簡易な図面審査やプロポザールを行い参加者を決め、二次審査では参加者には参加料つまり図面作成料が支払われます。最初から指名コンペにしたとしても、参加者に参加料を支払わないと当選者は全て資金力にたけた大規模設計事務所やゼネコンばかりになってしまうからです。図面にCGや模型を駆使してプレゼンテーションを行なえば当然お金がかかるのです。

 工事の競争入札などの際の見積もりも金額による選抜で、見積料金は支払われません。しかし、工事費数千万円の中の数万円と設計料百数十万円の中の数十万円では全体に占める割合が違います。勝てば良いのですが、負けたらその費用を払うのはその設計者が行う次の設計の施主ということになりかねません。何事もただで出来ることなど無いからです。

 また、建築の設計という物は、ポリシーとデザインと間取りだけで出来る物ではありません。雨漏りしない、壊れない、風を通さない、寒すぎない、etcなどの当たり前な技術力や設計力は知識と経験に負う所が大きく、こうした知識や経験はプレゼンテーション図面では読みとることは出来ません。コンペ参加者をオープンにしてしまうと誰でも参加が出来ますから、絵さえうまければ知識も経験もない資格があるだけの人でも当選してしまうようなことが起こってしまいます。

 昨今の建築業界は未曾有の大不況です。有名設計事務所が次々と倒産し、ちまたには建築士があふれています。力のある人は再就職も出来ますし、独立しても自分の力で仕事を取って来れるから良いのですが、若い知識や経験に乏しい人達が困ってオープンコンペにはあふれています。こういった若い人達が報われない社会にも矛盾を感じますが、そういう人達を利用するように設計者の頭数だけ揃えて選抜するやり方にもどこか理不尽な物を感じます。

 まあ私はあんまりこうしたコンペには参加しないからいいんですけど、だって名前も知らないどこの誰だか分からない人の家を要望だけ聞かされて、どうやって設計しろって言うんですか?会ったこともない顔も知らない人の家をみんなどうやって設計してるんでしょう?こっちだってお客さんを選抜します。長いお付き合いになるんですから。



ただ格好良ければいいの?
平成14年10月10日

 笠木って知ってますか?笠木っていうのは建築物の外壁の天辺に蓋のように覆い被さって付いている金物やモルタルの被せのことで、斜屋根の時は軒があるので必要ありませんが、陸屋根の時は外壁の上に必ず設けられる物です。鉄筋コンクリートでも鉄骨造でも木造でもこの笠木は非常に重要で、壁の中に水が入らないようにする役割と(コンクリートでも雨漏り原因の一番はこの壁内部への浸水です。)、外壁面に雨だれが付かないように、雨水が壁から少し離れた所に落ちるようする役目があり、壁から数センチせり出して取り付けられます。

 日本は多湿で雨の多い国です。多湿な空気は埃をからめとり、雨水がこの埃を壁に吸着させてしまいます。これが雨だれの原因となり、日本の建物は日時の経過と共にうす汚れてきます。エーゲ海やアメリカ西海岸などでは空気が乾燥していて雨が少ないため建物はいつまでもきれいなままでいられますが、残念ながら今私達が住んでいるここは日本なのです。

 最近の格好いい建物には、まず笠木はありません。壁の上に付いている笠木は野暮ったくてデザイナー達が嫌がるからです。中には最新の材料で雨だれが付かない外壁材なんていう物もありますが、これらは値段が高すぎて大きなビルでもなければ使えません。じゃあなんで笠木が無くてもいいの?って、汚れたら外壁を塗り替えたり張り替えたりして下さい・・・ってことなんです。どうせいつかは外壁を直さないといけないというのは確かなのですが、それが5年後なのか20年後なのかでは大きく違ってきます。

 私もデザイナーの端くれです。けれども技術者でもあります。技術者として絶対必要と思われる笠木を設けて、それを野暮ったく無いように、いいえ、より格好良く見せるデザインを与えるのが私達建築家の仕事だと私は考えます。ある物や必要な物を取り込みながらデザインを施す・・・、ただ格好いいだけならお絵かきと同じでなのはないでしょうか。

 霧除けって知ってますか?窓の上に付いている小庇のことです。窓を開ける必要のないビルや軒のある家ならとにかく、住宅で窓の上にこの霧除けが無いと雨の日には窓が開けられません。しかし、雑誌に出てるような格好いい住宅にはあまりこの霧除けもありません、住んでる人達は窓を開けないんでしょうか?

 間違えては行けないのですが、お客さんが納得して汚れてもいいから笠木はない方がいいと判断されれば、又雨の日には窓が開けられなくてもいいよって言ってるのなら・・・そんなことわかって言ってるとは思えませんが・・・、これらは優れたデザインとなり得ます。しかし、私は決して必要な物を無くすことで格好良くしたりするようなことはしたくない・・・、そんな低レベルなデザイナーにはなりたくありません。



まだ値切るの?
平成14年9月27日

 お金に対する考え方というのは千差万別で、お金が全てと考える人もいれば、お金で買えない物があると考える人もいます。私などはどちらかというと後者なのですが、建物を建てるのには大変大きな金額のお金が動くため、お金を払う段には結構その人の性格が現れてきます。

 家を建てる際、工事費というのは見積もりによって算出します。見積もりというのは屋根瓦が何枚、いくらの長さの柱何本、何ミリの鉄筋が何トンなどと材料の使用数量を全て拾い出して、それに単価を掛けて建物の原材料費を出し、大工さんが日当いくらで何日働く、ダンプが1台いくらで何日運ぶなどと全ての工事費用を足していった合計に経費を加えて算出します。ちゃんとした見積書にはそれら全てが記入されているため、数百枚の書類になります(一式いくらなどと書いたペラペラの見積書は論外です)。工事業者を決めるのには数社の競争入札がいい・・・。というのは、この見積もり内容を比較するためといった意味もあります。この家のコンクリートは何立米などと言う数量は数社を比較してみないと正しいかどうかがわからないからです。

 ではこのように細かく見積もっているのになぜ見積価格に工務店毎に差が出るのかというと、やっぱり工務店にもいろいろと得意不得意があり、いい大工がいるが腕が立つ分日当が高いとか、このメーカーとは懇意にしていて材料が安く入るとか、材料の支給先が現場の近くなので運賃が安いなどなど諸条件がからみあって見積価格は決まってくるからで、きちんと見積もりしていて、材料などの数量的に差異がないところの最安値で工務店を決めるのが一般的です。もちろん入札に参加させるのは信頼に値する工務店だけという前提条件の上の話ですが・・・。

 そして見積もり内容のチェックやおかしい所の修正指導は我々の仕事ですが、値切るのはお客さんが勝手にやるわけで、中には数週間もかけて値切りまくる人もいます。「だめなら他社にするぞー・・・」と言うわけです。ただ敵もさる者そんなことはわかっていますから、あの手この手でばかしあい、私などは口を開けてポカーンと見守っているだけ・・・。そしてやれやれやっと決まったら契約して着工です。

 着工したら工事中気に入らないことも出てきます。変えて欲しいことも出てきます。でもね、ちょっとまって・・・工事中にお金の話はだめです。「そんなことなら金払わんぞー」は言わないほうがいい。御願いをしたり文句を言ったりするのは構いませんが、工事中に値切ったり払わないなどと言うのは約束違反です。お金は見積もりで決めて既に値切っているのですから、それに対して文句を言うと相手も人間ですから、そこからはそれなりの工事になってしまいます。どうしても納得いかない場合は、工事が終わってから残金額や追加工事額を払う時に言いましょう。それもアフターサービスは期待しない覚悟の上で・・・。

 造っている大工さん達はお金を払う相手ではありません。工務店から彼らはお金をもらっているのであって、払うのはその工務店ですから文句を言う相手は工務店です。ただお金を払わないと彼らもお金をもらえないと言うことを忘れないでください。お金を払わないで、あそこが気にいらない、ここが壊れてるから早く直しに来い、「直したら払う」と言われてやって来るのは彼らです。彼らだって人間です。おもしろくなければ仕事は雑になります。

 本当は値切らない方が向こうも気分良くいい仕事をするんですけどね・・・、でも金額が金額ですからやっぱり私でも値切りますよね、きっと・・・笑。



バリアフリー2・手摺り
平成14年9月19日

 今回は手摺りについてです。人は誰でも年をとります。年をとってくると足元がおぼつかなくなり、昇降したり、立ち上がったり、座ったりするのが大変になります。「よっこらしょっ」というやつですね・・・、この時捕まるために必要なのが手摺りです。この場合の手摺りは縦向きのI型手摺りや、縦と横を組み合わせたL型手摺りを使います。身体を段の上に上げたり、腰掛けている所から立ち上がったりするために、上下に手を滑らせることの出来る手摺りが基本です。便所や浴室、玄関に設置します。

 それに対し歩行の際に捕まるため、廊下などの壁に設置し、伝い歩き出来るよう設置するのが連続手摺りです。この手摺りは床と平行に手の高さに設置します。階段に設置する階段手摺りもこの手摺りの一種で、これは法律で設置が義務づけられています。バルコニーや吹き抜けに設置する落下防止手摺りも法律で義務づけられていますが、これは落ちる危険を避けるための物で、手を掛けて伝い歩く連続手摺りではありません。

 ちょっと違う話ですが、お年寄りの寝床は布団よりもベットの方がよいと言われています。動ける人でも寝床から立ち上がるのに難儀するためと、介護などの際に介護者が立ったまま介護することができるからで、この場合のベットにも手摺りを取り付けると立ち上がるのが楽になります。同様にお年寄りには座卓やコタツよりも椅子テーブルなどの方が生活するのには向いています。床暖房などが高齢者対応住宅に多用されるのはこういった生活パターンを考えてのことです。

 話しを手摺りに戻しますが、手摺りという物はそう簡単に付けられる物ではないと言うことを皆さん覚えておいてください。身体を預ける手摺りには全体重がかかります。しっかりと止めなければならず、間違って外れたら大怪我をしてしまう・・・、このため手摺りというのは、壁の下の下地の木にしっかり取り付けなければなりません。現在の住宅やマンションの内壁は、防火性や遮音性、平滑性を得るために石膏ボードがほとんどで、この石膏ボードにはビスは効きません。そしてこの石膏ボードを止める為にある壁の中の胴縁も木なら問題ないのですが、反りをなくしたり、最近とても多くなってきた配線を通すためにスタッドというスチールの物が多く、これにもビスは効きません。ということは、そういった壁には全体重がかかるような手摺りは付けられないのです。

 ではどうやって付けるのか、壁に手摺りを付けるための下地の板を柱間に付けてからそこに付ける、あるいは壁自体を石膏ボードから木板に変えてそこに付ける、壁板を切り取ってスタッドにボルトで付ける、つまりお金がかかるし、みっともない・・・。そうならないためには新築の際に手摺りが付けられる下地にしておく必要があります。胴縁を木にしておくか、石膏ボードの下の手摺りがつく位置にベニアを張っておく、などの準備をしておくことが新築の際には必要です。 

 「うちも年寄りが歩くのが億劫になってきたから手摺りでも付けようか」と、工務店さんにお願いして値段を聞いてびっくり・・・自分でホームセンターで買って来て付けようと思ったら付かなかった・・・、よく受ける相談です。



バリアフリー1・段差
平成14年9月10日

 バリアフリーという言葉も段々一般的になってきました。これからの高齢化社会を見据えて、障害者や高齢者の方々にも住みやすい町造り家造りをする・・・。公共施設や、ある程度の規模以上の建物に関してはバリアフリーは既に法制化され、義務づけられています。住宅に関しては個々の状況によるところが大きいため、法制化というのは難しいところでしょうが、様々なバリアフリー用の材料が開発されていますから、多少値段は張っても、将来を見据えて家を建てる際には導入されることをお勧めします。

 住宅におけるバリアフリーの基本は段差の解消と手摺りの設置です。住宅新築の際は、住む人の状況に応じ将来必要な時にこの二つが導入可能なように設計しておく必要があります。新築時の一般的な将来を見据えた高齢者向けの対応策について、今回はその中の段差についてです。

 段差をなくすと言いますが、全てなくせばいいという物ではありません。玄関床は段差が無いと大雨の時など浸水が屋内まで入り込む危険がありますし、浴槽はふらついて落ちたり、浴槽から出る時に足を上げられなくなる可能性があります。こうした所は、むしろ腰掛けられる高さを取り、手摺りを設置出来るようにする、もちろんスロープを造るスペースがあればそれに越したことはありません・・・。このように、状況に応じてむしろ段差を大きくした方が使いやすい場合などもありますから、よく検討する必要があります。床の高さや浴槽の高さは将来リフォームで簡単に変えることは出来ないのです。

 段差で最も危険なのは微妙な数センチの段差で、これは健常者には何ともありませんが、高齢者の人や目の悪い人には見えにくく、すり足歩行の人がつまずいたり、車椅子の走行の障害になったりします。ただ、これは床の構造から完璧になくすのは思ったより大変なことで、床の材料の厚みの違いにより、床下の構造体を上下させる必要があるため、材料費は高くても床は全て同じフローリングにしてしまい、カーペットにしたい部屋はその上に置き敷いたりした方がむしろ安くつくこともあります。

 そうした床材料が変わる場所には建具があるわけですが、建具には開き戸と引き戸があります。開き戸は扉を開ける際に身体を下げる必要があるためバリアフリーには不向きで、又災害時に開かなくなると脱出の妨げにもなるなどの理由から、基本的には引き戸が向いていると言われています。

 引き戸には大きく分けて戸車式と上吊り式があります。戸車式は戸車が転がる下枠が床に付きますので、枠が床から飛び出し、斜めにカットしたバリアフリー枠などもありますが、完全なバリアフリーにはなりません。しかし、両側の部屋の床材料の厚みの違いを枠で吸収することが可能になる利点があります。上吊り式はハンガーレールという物で上から建具を吊りますから、下枠は不要で扉がふらつくのを止めるレールだけを床に埋め込むため、完全なバリアフリーが可能です。しかし、床材料の厚みの違いが解消出来ないことと、上から吊るため扉の下がどうしても数センチ空いて、すきま風が通るという欠点があります。建具にも状況に応じた選択が必要なのです。

 実は私の父も障害者です。病気で半身不随となり、通常は杖を使ったすり足歩行と、車椅子の生活です。けれども父はまったく悔やんだり落ち込んだりせず、毎日人生を楽しんで生きようとしています。こういった人々が支障なく生活できる場を造ること、人生をさらに謳歌する余裕を与えることが出来ればと、いつも考えています。



コーポラティブハウスって?
平成14年8月27日

 最近名古屋でもまたコーポラティブハウスのことをよく耳にするようになって来ました。コーポラティブハウス(コーポラティブマンション)というのは、簡単に言うと、規模の大小や自由度の違いはありますが、完全フルオーダー(住戸の面積・間取り・デザイン・設備等全てが自由ということです。)の共同住宅のことです。

 当然、共同住宅である以上、外観等のデザインは統一されます、しかし住戸内は全くの自由です。和風にしようが、アメリカンハウス風にしようが、ワンルーム形式にしようが、4LDKにしようが、巨大な浴室を造ろうが、それはお客さんの自由ということになります。言ってみれば専用住宅とマンションのいいとこ取りをしたようなもので、我々建築に携わる者にとっては、ある意味、理想の建物、理想のマンションに近い物かもしれません。

 ではなぜこんな夢のような共同住宅が一般化していないのでしょうか?一つには、土地だけしかなくて建物の様子が全く見えない状態でお客さんを集めるために、集客がしにくいこと。それと単純にお金がかかることがあげられます。設計事務所や工務店にとっては30戸のコーポラティブハウスを建てるのは、30軒の家を建てるのと同じことになります。マンションなら30戸あっても住戸は2〜3種類の間取りしかありませんから、同じ物を設計したり造ったりすれば済みますが、コーポラティブハウスでは全てが違いますから、30戸まるまる設計したり建てたりしなければなりません。さらには、マンションなら企画しているデベロッパーさんとだけ打ち合わせを進めればよいのですが、コーポラティブハウスでは30人のお客さん全てと打ち合わせをして設計しなければなりません。これは大変な作業です。

 マンションは同じ物を何個も造る、という数の論理の上に安価供給が成り立っています。材料も同じ物を何個も買うと当然安くなるのです。しかし、これが成り立たないコーポラティブハウスは、どうしても安価供給は難しくなります。設計料だけ見ても通常コーポラティブハウスはマンションの3〜5倍の金額になります。広告費が必要なくなる、事務経費が安くなる、などというのがコーポラティブハウスのうたい文句になっていますが、それだけでマンションと同じ金額で同じ品質の物を要求するのには、やはり少し無理があり、名古屋なら戸建住宅を建てるのとあまり変わらない金額になってしまう・・・、そこがコーポラティブハウスの辛いところです。



リフォーム増改築
平成14年8月14日

 不景気のせいか世はリフォームブームです。新築はちょっと・・・、でもせめて今の家でより快適に住みたいということでしょう。TVでも雑誌でもリフォームのオンパレードです。私達設計事務所もリフォーム増改築なども当然設計します。が、場合によっては素直に喜んでやれないこともあるんです。

  リフォーム増改築の場合、新築と違い、予算のめどを立てるためには設計してあることが前提になります。いきなりここに部屋を増築すると何十万円などと価格を出すことは出来ないのです。お客さんに見積もり書を提出するためにはまず現地を調査してどのような建物か、大きさはどれくらいか、構造は何かなど調べて、設計図を全て完成させてから見積もりを行う・・・。つまりお客さんが金額を聞いて「予算オーバーだからやめます」と言うと我々の仕事は全て終わっているのに “ただ働き” になってしまうのです。

 何度も言いますがたとえリフォームであっても設計しないで出来る工事などありません。ところがリフォーム増改築の場合、役所の申請は無しで出来てしまいます。大きく建物の面積や高さが変わったり、主要構造部(基礎・柱・梁など)を変えたりしなければ、役所の確認申請等は必要ありません。ここで登場するのがリフォーム屋さんという商売です。新築工事などはやらずにリフォームだけを行っている業者です。彼らは設計は設計事務所に、工事は工務店に全て成功報酬で仕事を下請けに出します。つまり仕事が取れなかったら無料ということです。(きちんとした工務店は自社で設計するか、設計事務所に頼んでちゃんと設計料を払います。)彼らは申請が必要な仕事はやりませんから、何が起こっても責任を負う必要はありません。下手をすると工事業者の登録すらやっていない無資格業者です。ところが成功報酬で仕事を行うため、リスクがないので見積もり価格が安いのです。

 本来リフォーム増改築の場合も設計は設計事務所に頼み、設計料を払ってから工事はその設計図を元に工務店を競争入札で選ぶのが最も適した方法だと思われます。しかし、数十万数百万程度の工事にそこまでは・・・、と言われたり、思われることもあるでしょう。その際は、まずその建物を設計した設計事務所や、建てた工務店に相談しましょう。彼らはその建物のことを一番よく知っているはずですし、自分が設計したり建てたりした建物に責任を負っています。おかしなことはしないはずです。

 たとえ簡単なリフォームでも工事はきちんとした工務店に頼みましょう。決してみんながみんなそうだとゆうことはありませんが、飛び込みで来た小さなリフォーム屋さんに半年後に文句を言おうと思ったら、もうなかった・・・、なんて言うことにならないように。



マンションを選ぶ時
平成14年8月8日

  マンション購入を考えていらっしゃる方も多いかと思います。マンションは家を建てることより購入する際の労力がはるかに楽に済みます。そしてそこがマンション購入の際の落とし穴になりやすい所なのです。

 一般にマンションを購入する際、皆さんはチラシや雑誌を見てモデルルームに出かけられます。モデルルームを見て・・まあ、なんて素敵なんでしょう・・となるわけです。モデルルームには難しい耐震や構造、断熱などの話がいっぱい展示され、うーんここは安全で快適だ・・・などともなるわけです。しかし特殊な材料や最新工法を駆使すれば、それはマンションの値段に跳ね返ってきます。他はだめでも我が社だけはこれを特別な価格で出来る、などということはあり得ません。不動産屋は工事業者ではないのですから。それなのになぜ億ションにならず、一般的な価格で売られているのか・・・、それはモデルルームに展示されている話はさもすごそうに書いてありますが、決して特別な工法でも何でもないからです。それらは単なる特徴にしかすぎません。

 モデルルームに騙されてはいけません。モデルルームに置いてある家具は通常サイズより若干小さいものが多く、悪質な業者だとモデルルーム自体も本物より大きく造られていることがあります。中を広く見せるためです。インテリア類もやけに華々しく感じたりしますが、購入する住戸をオプションで同じデザインにするととんでもない金額を請求されたりします。モデルルームは業者が売るために造ったもので、そのマンションの長所だけがクローズアップされていると思って下さい。あくまでもイメージの参考にする程度にした方がよいのです。

 では何を見たらよいのでしょう。まず、工法等については完成しても目には見えない部分ですから、業者やそれを設計した設計事務所を信じるしかありません。過去のその業者や設計事務所の建物で問題になってるものが多くないか・・・、新聞沙汰になったものが多くあるようなところは問題外です。そして本物を見る、つまり完成したものを見る。まだ工事中のマンションならマンションは大抵高層なので、下から順に造って行くため下の階は早い時期に出来上がっていますから、そこの部屋を見せてもらう・・・。棟内モデルという形で用意している業者も多くあります。それか、同じシリーズの違うマンションの売れ残っている部屋を見せてもらう。それらを危険だとか遠いとか理由をつけて見せてくれないマンションはやめた方がいいでしょう。

 以前にも書きましたが建物は建てる際に車を買うようにこれくださいとは買えません。しかしマンションはそれに近い購入方法が出来るため、家を建てる際とは若干選択方法が異なります。この本物が見えるということを利用せずにマンション業者の用意した見せ物だけに踊らされてはいけません。

 最後に一つ、業者の営業マンは建物に関しては素人です。彼らは売ることのプロであって建物のプロではありません。特に販売提携などしている場合、売っている人たちはそこに来るまでそのマンションのことなど聞いたこともかった人達ばかりです。建物のことは造ってる人・・・設計者、施工者、それと業者の中でも営業ではなくそこを企画した人。・・・に聞きましょう。親切に答えてくれると思います。



暑い夏、寒い冬
平成14年7月26日

 梅雨が終わったと思ったら、いきなり真夏で本当に暑いですね。うちの事務所は古いビルの最上階なので夏は地獄のように暑いんです。窓が西側に向いている上、屋根にも壁にも断熱材などまったくなくて建物の躯体まで熱せられ、夜になってもまったく冷えません。エアコンがフル稼働状態です。ところで断熱という物について少し話そうかと思うのですが、詳しい話や細かいことはいっぱい書籍などがあふれていますから、ここでは思うところを述べてみます。

 断熱とは何でしょうか、簡単に言えば夏涼しく、冬暖かい家を造る材料工法のこと・・・。この断熱工法には外断熱、内断熱、外壁通気、高気密高断熱、機械管理高気密などなどそれこそ星の数ほどの工法や材料があります。これらは全て外気と内気を遮断して、材料工法により程度の差はありますが、外とは違う環境を屋内に作り出そうという方法で、基本的には夏はエアコンを、冬は暖房器具を使用することが大前提になった方法です。ただこのような家には人間が環境に対応出来なくなるなどの意見も多く、叉家の中の空気が常時流通するわけではないので、家が傷みやすい、シックハウスが起こりやすい、などの欠点もあります。これを解消するために機械管理などの工法があるのですが、四六時中機械が動いているためランニングコストがかかる、また機械が壊れるとどうにもならない(機械はいつかは壊れます。)などの弊害がやはり生まれて来ています。

 これに対し断熱ではありませんが、内環境を作るのではなく、外環境を取り入れることで住みやすい家を造ろうという方法があります。古来の和風住宅は家全体の通気性を高くし、土や木紙などによって湿度をコントロールさせ、風を通し夏の暑さをしのぎ、冬の乾燥を避けてきました。今でも在来工法の木造住宅などはこの考え方の物が多くあり、床下や天井裏の通気性を高めこのような家を造る工法などもあります。今はやりの珪藻土などもこれに準じた物です。

 鉄筋コンクリートの建物はその構造体故にいやでも高気密高断熱の家しか造りようがありません。構造体自身が熱を貯めやすく、気密性が高いため、べらぼうにコストはかかりますが外断熱などがもっともすぐれた断熱法と言われ、現実には内断熱が多く用いられます。しかしS造や木造の場合はいろいろな考え方がありますから、住み方や住む地域によって断熱方法などは選択すべきでしょう、床を高く上げて通気性を高めておきながら高気密高断熱の家を建てたり、土壁塗りの家を外壁通気にしたり、機械管理高気密にしたりするのは、効果が薄いことに莫大なお金を掛けることになりかねません。盲目的にメーカーのカタログを信じずによく考えて決めましょう。



家具の選び方
平成14年7月12日

 住宅が完成すると引っ越す際に古い家具は新しい家具に買い換える方が多いようです。造り付けの家具を建築工事に含んで造られる方も多いですが、これは市販の家具より大変高くつきますし、家具を建築化して収め込むのには適していますが、家具としての性能や精度は市販品にはるかに劣ります。専門の家具職人さんが腕と技術で造るわけでも、量産により品質管理や最新技術が整っているわけでもないからです。簡単なカウンター類や下駄箱、TEL台、本棚などは建築化により美しく収められますが、食器棚、水屋、タンス、机などは市販品を買われた方が機能的にも品質的にも優れた物が多く、又模様替えなどで家具を移動することも出来ますから、私はそちらをおすすめしています。

 建築を設計する際、家具の大きさと置く場所は大変重要な要素の一つです。私達は設計に取り掛かる際には必ず新しい家で使う家具のサイズと場所、それに趣味や仕事の道具類などのことをお聞きします。タンスを使うのかそれともクロゼットにするのか、本は何冊くらいあって本棚は必要か、ベットで寝るのか布団で寝るのか、食器はどのぐらいの量があるのか、仏壇はあるか、神棚はあるか、さらにはゴルフをするか、スキーをするか、釣りをするか。ゴルフバックやスキー板、釣り竿などは専用の置き場を造らないと通常の物入れでは入りません。この時、今ある家具道具類のサイズをお聞きしてそれに合わせて寸法を決めていきます。新しい家具を買われる場合は標準的なサイズを基準にして決めておきます。ですから、新しい家具を買われる際、将来でも特別な物にしたいと思っているのなら最初に言っておいた方がいいでしょう。たとえば次買うときはテレビはプラズマワイドの37インチだよ、とかね。

 家が完成した後、家具を買われる際にどんな家具がいいでしょうか?どんな家具がこの部屋には合いますか?などと聞かれることが多いのですが、いつもこう言うことにしています。「まず家具を置く場所とその廻りの写真を撮りましょう。そしてその写真と平面図の両方を持って家具屋さんに行くといいですよ」と。家具はいっぺんに家中の家具を買うことはまずありません。一つずつ気に入った物があると買い足していくのが普通です。その都度一つ家具が増える毎にその家具を含めた部屋全体の写真を撮っておくのです。そして次に気に入った家具が見つかった時、家具屋さんで写真と買いたい家具を両方見ながらその写真の中にその家具を置いてみて下さい。家具だけを見た時はすごく素敵でも、写真のなかではなんか変ではありませんか?。色が微妙に違っていませんか?おかしくなければその家具はOKです。あとは店員さんに平面図を見せてこの部屋に入りますか?と聞いて下さい。置く場所のことは皆さん結構考えられますが、部屋に入れられるかどうかを気がつかない人が多いからです。店員さんはプロですから、OKが出たら買いましょう。



    設計料は高くない!
    平成14年6月25日

 世の中の人たちは設計事務所というのはどうも堅苦しくて敷居が高いなんて思ってる方が多いようで・・・。そんなことありませんよ、いつでも気軽に声をかけてみてください。それと、設計料を余分に払うのはただでさえ資金が苦しいのに余裕がないなんて思ってらっしゃいませんか?

 ここでは少し昔話をします。とある注文住宅を鉄骨造で造る住宅メーカーがあるのですが、35坪の2階建て住宅を2000万円程度(外構は別途です)のお得な値段で造るのが売りです。もちろん住宅展示場にいくつも展示住宅を出しているようなメーカーです。ここの住宅の設計を私やってたんです昔、頼まれましてね、断れずに・・・、そのときの設計料が60万円程度、構造計算料が25万円程度、設備設計料が15万円程度、申請料が一式10万円程度、どうです合計110万円です。現場監理はメーカーが自社でやりますが、もし外注すれば設計料の45%として約50万円、全部で160万円です。一般的な設計事務所に依頼をすれば、設計監理料は10%程度ですから200万円程度・・・、40万円しか差がありません。この40万円で自由自在の間取りや空間、デザイン、好きな材料、それに第三者の現場監理を買うと思えば安くありませんか?

 それから、2000万円の家といっても、実は設計料を引いた1840万円の家だということを忘れては行けません。つまり、メーカーの2000万円の家は、設計事務所に1840万円の家を依頼して建てた家と同じという事になります・・・1840万円の10%なら、設計料は184万円です・・・。

 どんな家でも設計をせずに建てられる家などありません。役所に申請をせずに建てられる家もありません。住宅メーカーなどでは設計などは社内でやってしまうことが多いので、事務経費などにこれを含んでしまって外から金額が見えなくなってしまいます。ただ社内では間に合わなくなったりした時に設計などを外注することも多く、こんな金額が出てくる訳です。

 もちろん住宅メーカーを否定するつもりなどさらさらありません。ただもっと設計事務所を身近に考えて頂ければと願っているんです。建築家というのは決して立派なビルばかり建てたり、ものすごくかっこいい豪邸を造ったりする人ばかりではありません。些細なことでも相談すれば結構親身になってもらえると思いますよ。



よけいなお世話の話
平成14年6月9日

 家を建てようと思い立つと、色々な所で皆さん情報を集められます。そして色々な人の意見を聞きたくなります。建築家や工務店、住宅メーカーなどを決めるまではこれは本当に大切なことです。どんどん色々な人の話を聞いて、色々な建物を見て下さい。そこから自分の希望に合う会社や建築家を選び、形や好みのイメージを創り上げて行って下さい。

 ところが設計が始まり、工事が始まっても、まだありとあらゆる人の話を聞きたがる人がいます。いえいえ、向こうから親切に教えに来てくれるんです。これが結構やっかいなんですよ。自分の時はこうだったからこうした方がいい、あそこのメーカーはこうだったからやめた方がいい、こんな物の値段がこんなに高いわけがないからおかしい・・・あんた知ってるのかいとは言えない・・・あげくの果てには家相が悪いからこんな家建てちゃだめだ・・・・・・・・・・・・・。
 それが知り合いだったりするもんだから、聞かないわけにもいかない、みんな親切で話してくれてるわけですから。だけどね、あなたとは建てる家も場所も人も違うんですよ、メーカーも欠点があればどんどん市場調査して改善して行くわけで、家相に至っては気にする人は最初から考えてますし、そんな物僕は気にしないよと言っていた人だって、面と向かって 「あなた不幸になるよ」 なんて言われたらねえ・・・・これが設計中ならまだしも、建て始めてからも言ってくる人がいるんです、御親切に。現場の中に勝手に入ってきて得々と話して帰って行く人なんかもいましたよ。熱心に聞いていらしたので、御施主さんにお知り合いですかって聞くと、 「いえ知らない人です」 ってね。

 何を信じるのか何を正しいとするのか、これを判断するのはとても難しいことです。我々も出来るだけ御施主さんの御要望には応えるよう努力しますが、出来上がっているのに無理難題言われても困ってしまう時もあります。そのためにも建築家や工務店さんとは健全な関係を設計・工事を通じて作り上げることはとても大事です。

 でもねえ、そう言う私もよく相談受けるんですよ、仕事柄当然ですか・・・相談受けて何にも言わないわけにもいかないし、本当に困ってる時はいいんですけどね、迷惑してるんだろうな、きっと・・・・。



デザインの手法
平成14年5月30日

 建物を計画する際の私のデザインの進め方は、

・・・1:まずお客さんの意向を聞く、丸か四角か、木か鉄かコンクリートか、和風か現代風か、などなど。
・・・2:建設予定地に建ってみる、頭の中に建物を建ててみてこの場所にはどのような物がよいかイメージする。
・・・3:考える、考える、考える。
・・・4:スケッチする。
・・・5:法規等に適合させる。
・・・6:図にする。

 お客さんの意向の上にデザインが成り立つことは当たり前ですが、通常は建設地に立った段階でほぼイメージは決定します。やはり土地と環境を肌で感じることが一番大事だと考えるのと、最初の”ひらめき”が一番大切だと思うからです。あまり考えすぎるとろくなことはありません。

 デザインという物は考える人の指向や知識や経験に大きく左右される物です。これほど不確定な物はなく、これが正しいという正解もありません。人それぞれ考える考え手によって出来上がる物は全く異なります。この考え方の中のもっとも大きな要素は歴史です。私達は知らず知らずのうちに日本という国の歴史の中で生きているからです。たとえば門構え、我々日本の建築家は無意識のうちに門には屋根を付けたがります。屋根はなくとも上にも梁を付けて門を開口部にすることが多いのですが、欧米にはこういう門構えは少なく、古来、武家門、寺門、鳥居などが入り口には必ず存在していた日本人の感性なのです。バッキンガム宮殿にもホワイトハウスにも門はありますが、門構えはありません。外国の建築家の設計や輸入住宅がどこか違う感じがしてうけるのはこのためで、逆に日本の国際的建築家が海外の賞を独占したりするのは、こういった独自の感性と先進の技術を日本人が併せ持っているからです。

 歴史を知らず経験のない人の造った物はどこか薄っぺらで、完成当初はおもしろくてもすぐに飽きられます。古い物のまねをしろと言うことではありません。長く好まれる物を知って新しい物を造るのと、知らずに造るのではおのずと差が出るということです。若い才能あふれる建築家が出て来ても結局消えて行ってしまう・・・若い人達、もっともっと若いうちに歴史を勉強しなさい。あー私もまだまだ若いけど?



木造?S造?RC造?
平成14年5月17日

 我々が住宅を設計する際その基本構造には木造(在来工法)、S造(重量鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)の3種類が多用されます。この他にも俗に言うプレハブ造(軽量鉄骨造)、ツーバイフォー、パルコン、など多々ありますが、これらは工業化住宅という工場で製作した材料を現場で組み立てるという手法の物で、どれも決められた形のものを組み合わせて造るため一品物の家を造ることは大変難しいので、いえ出来ないので採用することはありません。

 どの構造体で造るのがよいのですかとよく聞かれますが、どうなのでしょう?まずは基本構造単価の違い・・・あたりまえですが、一般的には木造・S造・RC造の順に単価は上がって行きます。そして次にはこの構造により建物の重さが違うのです。通常木造・S造・RC造の順に建物は重くなって行きます。建物が重くなれば建物の基礎が大きくなり、場合によっては基礎の下に杭を打つ必要も出てきます。杭を打つから地震に強いと言うわけではありません。その建物の重量を支えるだけの地盤がある所まで基礎を届かせるために杭を打つのであって、軽い建物ならばよっぽどの悪条件でない限りは地表の地盤で十分耐力を得ることが出来ます。かえって軽い建物に無理矢理杭を打ったりするとバランスを崩して建物の強さと基礎の強さが異なり壊れることにもなりかねないのです。つまりはこの基礎の違いが大きく基本構造単価にも跳ね返ってくるため、木造でも地盤状況が悪ければ単価が上がるようなこともあり得ます。また、RC造だから杭を打ってるから地震に強いというわけでもないのです。

 ではどの構造体にしたらよいのか・・・一番は趣味です。なんて言うと怒られそうですが、木には木の暖かみのある良さがありますし工期も短い、コンクリートならその素材の斬新さがあり揺れにも強く自由自在の形が造れます、又重量鉄骨なら巨大な空間を作ることも可能です。ただ、その敷地の状況によりこの構造体は施工不可能などということもありますから、その辺を確認したらあとは好みの構造体で懐具合と相談しながら決めればいいのでは?



なんで現場監理するの?
平成14年4月30日

 よく現場監理は必要なのですか?と質問されることが多いのですが、本当に設計事務所が現場監理をした方がよいのでしょうか・・・。施工会社の現場監督のほうが建物の作り方や工程、などは私達よりも詳しいのは事実です。だって毎日実際に建てているのですから、下請けの業者だとか材料の仕入先、あるいは釘の打ち方など私達にはわかりません。それなのになぜ私達設計事務所が監理するのかというと、設計図通りに建てているかを監視するため・・・あたりまえのことですが。施工会社が手抜きをするから?、それもあります。けれども世の中の施工会社がみんなテレビに出てくるような悪質手抜き業者なわけではありません。普通は真面目に一生懸命造っている業者がほとんどです。ただ間違えることがある・・・人間のやることですから。その間違いがなぜ起きるのか、それは立場の違いから起きることが多いんです。施工会社は営利企業ですから、当然少しでも早いほうが、造りやすい方が、決められた建築費から利益を多く残すことができます。そこで早くやろうとして忘れる、造りにくいから造り方を変えて間違える、などとゆうことが起きるのです。

 私達設計事務所も営利企業です。しかし、建物を早く建てようが、造りやすかろうが、たくさん建築費から利益を出そうが、私達には関係ありません。それよりも間違えたことによる欠陥の方が私達には怖い・・・。だから間違えないように、もちろん手抜き工事などしないように私達は監理するのです。

 これは設計にも当てはまります。設計施工の場合、設計者と施工者が同じですから、立場が同じになり営利が同じになると間違いが起きやすくなる。外国では同じ会社が設計と施工を兼ねることを禁止している国もあると聞きます。


拝啓テレビ様
平成14年4月23日

 最近世の中はリフォームブームです。テレビでは毎日のようにどこかでインテリアコーディネーターと称する人達が人の家を勝手にいじくりまわしてはにこにこ笑っています。そうゆう私もインテリアコーディネーターでもあるんですけれど・・・。ただ見てくればかりが強調されて奇抜なことばかりが画になるからでしょうか、ちょっとした造り家具一つでも強度とか安全性などは全く考慮されず、あげくのはてに下地のない壁に釘打って棚付けるは、裸電球に紙巻いて照明つくるは・・・おいおい火事になっても知らないぞ・・・これで総額100,000円でできました!・・・そりゃそうだろ、そんなもんでいいんならいくらでもやってやるよ、そのかわり後でぜったい文句言うなよ、と世の中の建築に携わる人たちはみんな思っています。

 ところが仕事をしているとこれが我が身に降りかかってくることがある。ここにあのテレビと同じようなテーブルを造ってください、え!10万円もかかるんですか!テレビでは2万円でしたけど・・・・・。だったらテレビ局にたのみゃいいじゃねーか、とは言えないので一生懸命説明します。あんなホームセンターで買ってくるような台では5年ともたない、そんな合板では子供が遊ぶと3日で穴があく、この家に何十年も住むんじゃないんですか、云々、だけど僕よりテレビのほうが偉い先生様なんですよね、わかってもらえたのかどうか・・・

 テレビ局の方々お願いですから、目立つ長所だけじゃなくて欠点なんかもちゃんと放送しましょうよ、リフォームした家の半年後特集なんてやるとすっごいおもしろいと思いますよ。



建築家の選び方
平成14年4月7日

 世の中には建築家はたくさんいます。それぞれいろいろな考え方の方々がいらっしゃいます。私が思うにその違いというのは何に重きを置いているのか、なのではないかと思っています。もっともその人の造る建物の基準になるのは機能性・安全性・恒久性などと意匠性とのバランスをどこに持っていくか、ということです。

 一般にアトリエ派などと呼ばれるデザイン重視の方々の建物は使い勝手や安全性、納まりなどを排除した物が多いです。ガラス張りの部屋を造れば夏は暑くてたまらず、RC打ち放しの内壁の部屋は結露でべたべたになりカビが生えます。逆に世に多いただの四角い建物というのは要求される機能を重視するが故にただ四角くなってしまう、雨漏りや耐久性、耐震性などのためには四角いのが一番なのですから、だけどただ四角いだけの建物なんて・・・機能性等々と意匠性というのは一般には絶対に相容れません、技術や材料の進歩というのはこれを近づけるための進歩といっても過言ではないのです。

 建築家を選ぶときはそのバランスがあなたの望むバランスに近い人を捜して下さい。ようは建物に対する価値観です。PLANとかデザインなどがかっこいいことによる欠点を住む際にどこまであなたが許すかということです。それにはやはり1つはその人の作品、実物はなかなか難しいですから写真でも見ること。ガラス張りの部屋の写真を見てあなたがコリャー夏暑そうだなと思うか、暑くても電気代かけてエアコンがんがんに入れればかっこいい方がいいなと思うか・・・、あるいはスカスカの手摺り一本の階段を見てかっこいいと思うか、子供が落ちそうで危ないなあと思うか・・・、写真には建築家が私はこんな家を造りますよ、という情報が詰まっているんです。どんなにかっこよくても、これは危ないなあ、なんか使いにくそうだな、などと思ったらその人ははずした方がいいでしょう。

 そしてあとはその建築家にこうしてほしいと要望したときに、あるいはこうしてはと提案を受けた時、それによる欠点をどの程度その建築家が説明するか、ではないかと思います。計画時にこれは違うと感じたら断ることも大切です。



家って買う物ですか?
平成14年3月20日

 設計事務所なんて敷居が高くて・・・なんて思っていませんか?家って住宅展示場でこれくださいって買うもんでしょうか?家って買うもんじゃなくて建てる物です。

 最近感じているなんことですが、なんだか家を建てるとき車を買いに行くのと同じような感覚の人が随分多いような気がしています。家は中古か建て売りでなければ完成している物をこれくださいとは買えません。住み方というのは千差万別で人により色々な暮らし方をしています。住宅メーカーなども標準化による住宅の安価安定供給と品質の均一化という意味では大変よい点も多々あると思いますが、人が暮らし方を家にあわせるのってなんだか逆な気がします。だって背の高い人も低い人もいるじゃないですか・・・。

 住む人それぞれの住み方や嗜好や考え方に合わせた家を設計して施工を指示するのが私達の仕事です。でも、これって家を建てようと思ってる人たちには見本がないから何を見たらいいのかわかりにくいんですよね・・・。やっぱり住宅展示場で実物を見せられるとわかりやすいですから。

 ということで、私達の作品や考え方を知ってもらおうとHPを作ることにしました。家ってやっぱり普請する物だと思います。



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