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とある小さな町の一軒家に、くろすけという年老いた猫がすんでいました。
くろすけは、とても心のやさしい猫で、いつも礼儀正しく、争いごとを好みませんでした。 朝の食事が済むと、町へでかけ、 お腹をすかせた猫をみれば、家に連れてきて、じぶんの食事を分けてやったり、 淋しがっているお年寄りがいれば、話し相手になったりするので、町のみんなから、愛されていました。
そんなある日、どこからか、ならず者のグレオという猫がやってきて、くろすけに、決闘を申し込みました。 グレオはグレイの毛並みをした、若くて大きな猫でした。 つやのいい毛並みとアイドル系の顔立ち、そしてすらりと伸びた長い足、どこを取っても、くろすけに勝ち目はありませんでした。
クロスケは、争いごとが大嫌いで、決闘などしたくありませんでしたが、申し込まれた以上受けてたたねばなりません。 翌日の昼下がり、くろすけの家の前で、二匹は戦いました。 木枯らしの吹く寒い日でした。 くろすけも必死で戦いましたが、がっぷり四つになって、ころげまわっているうちに、 力尽きてしまいました。
戦いに敗れたくろすけは、町から出て行かなければなりませんでした。 もうすぐ冬になろうという寒い朝、くろすけは、住み慣れた家をあとにしました。 かなりの高齢だったくろすけは、もうここには二度と帰れないかもしれないと思うと、涙が止まりませんでした。
一方、グレオはくろすけの家にいすわり、昼間はたらふくご飯を食べ、ごろごろして暮らしました。 そして、夜になると、たくさんの取り巻き猫を引き連れて、豪遊してまわりました。 そのたぐいまれな美貌と美しい毛並みにひかれ、雌猫たちもたくさんよってきました。 しかしグレオにはくろすけのような、やさしさがありません。 おなかを空かせた子猫をみつけても、じぶんの食事を分けたりしませんでした。
そんな毎日を送っているうちに、グレオはだんだん太ってきました。 2ヶ月ほど過ぎた頃から、とりまきたちが少なくなってきました。雌猫は、1匹もよりつかなくなりました。 いままでちやほやしていた仲間も、みんなグレオがちかずくと逃げてしまいます。
なんでこんなに嫌われるようになったのだろう。 ある日、池に移った自分の姿を見て、グレオは卒倒しそうになりました。 そこには似ても似つかないびわダルのように太った姿があったからです。 グレオは何時間も泣きつづけました。
泣きつかれてふと見ると、神様がたっていました。 グレオは神様にお願いしました。 「神様、お願いです。わたしを、元の姿に戻してください。友達は一人もいなくなってしまいました。 こんな醜い姿なら死んだほうがましです。」 神様は言いました。 「グレオ、お前は、人(猫)に親切にした事があるかい。 ただ、じぶんの楽しみの事だけを考えて暮らしてきたのではないかな。 そんなに太るまでたべなくても、飢えた猫たちに分けてあげればよかったのに。 クロスケの事もそうだ。 争いなどして追い出さなくとも、クロスケは、一緒になかよく暮らしてくれただろう。 おまえが本当にもとの姿にもどりたいのなら、いますぐ修行のたびにでなさい。 そして人(猫)のために役に立ちながら旅をつづけなさい。 そのうちきっと、元通りになれるだろう。」 そう言い終わると、神様の姿は、消えていました。
グレオはいままでに味わった事のない満ち足りた気持ちになっていました。 雪の降る寒い日でしたが、すがすがしい気持ちで修行のたびに出て行きました。 飢えと寒さで凍えそうになりながら、旅を続けているクロスケのところにも、神様はあらわれました。 神様は 「グレオは修行のたびに出たからもうあの家にはいません。 町のみんなが待っているから、はやく帰りなさい。」 といいました。
くろすけは、喜んで、神様にお礼を言うと住み慣れた我が家へ、帰っていきました。 それからまたいつものおだやかで平和な暮らしが続きました。
おわり