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エミーの手紙が来てから、マスターは又旅に出たくなりました。 このギャラネコの地では、一年ほど暮らしてきましたが、又放浪癖が頭をもたげてきたのです。これはノラネコの本能でした。どんなに居心地がいい場所でも、しばらくたつと、別の場所へ旅をしたくなるのです。マスターだけではありません。他の3匹もそんな気分になっていたのです。
マスターが 「もうそろそろ、この町からおさらばしたいな。」 と言うと、 グレは 「みんなマスターがいつ言い出すのか待っていたんだ。僕たちは準備はできているよ。いつ旅立ってもいいよ。」 と答えました。 カノジョとチャピーもニヤニヤしながら、マスターを見ています。
「何だ、みんな同じ気持ちだったのか、もっとはやく言い出せばよかった!」 マスターはほっとして、肩の力が抜けていくようでした。 「そうと決まれば、明日にでも旅立とうぜ」 と言うマスターの言葉に カノジョは 「そうはできないわ。今まで私たちを応援してくれたファンの為にも、そしてジュールの猫たちには、しばらく救援物資も送れないので、最後にチャリティーコンサートをやりましょう。」 と発案しました。 グレも 「そうだなあ、僕たちを一人前のミュージッシャンにしてくれた、ギャラネコのファンには本当に感謝しているんだ。お別れのコンサートくらいやらなきゃ。」 マスターとチャピーもしみじみとうなずきました。
4匹は精一杯の感謝の気持ちを込めて、ラストコンサートをやる準備を始めました。メルリンケルやリスナーズ、そしてクロスケの家のクリスマスパーティーに来ていた、ファンキーロックグループ、聖歌隊の子猫たち、うぐいすのバーバラさん親子にも連絡して、参加してもらうことにしました。 みんな急な連絡にもかかわらず、忙しいスケジュールを調整して、全員参加してくれることになったのです。チャリティーコンサートですので、もちろんノーギャラです。
いよいよコンサート当日の日がやってきました。 場所はあのメルリンケルと共演した、丘の上の野外ステージ!! 何人の観客が来ても、全員見ることができるように。 夜6時開演のコンサートには、朝早くから長蛇の列ができていました。 このコンサートはチャリティーなので、入場料は全額寄付されますが、もう一つ入場料の設定が変わっていました。 入場料はファンの気持ちなので、何でもいいし、いくらでもいいというものです。たとえば、お金を手にしたことのない子猫が、自分の今夜の分のキャットフードを持ってきたり、森で拾った木の実を持ってきたり、そういうものでもいいのです。そうかと思えば、あるお金持ちの紳士は、大きなトランク一杯に、1ドル紙幣を詰め込んでやってきました。お金持ちの猫はたくさん払えばいいし、持っていない猫は自分なりの物でいいのです。そしてすべての猫が来た順番に、列に並びました。
やがて夕日が遠くの山のかなたに沈んで、空に星がまたたきはじめると、ファンファーレが高らかに鳴り響き、真っ白なタキシードに身を包んだ、グレとマスター、そしてこれまた、真っ白なウエディングドレスのような衣装に身を包んだカノジョとチャピーがステージに姿をあらわしました。 「ワー!!キャー!!」「ノラーズ、行かないで!!」 ファンは悲鳴にも似た歓声を張り上げています。今日が最後のコンサートだなんて、1ヶ月前までは、誰も予想もしていなかったのです。あまりにも突然のラストコンサート!! 観客はノラーズの一挙手一投足も見逃すまいと、大きな目をうるうるさせながら、熱い声援を送っていました。 ノラーズの一曲めに「僕たちのほしい物」そして「愛すればこそ」「黒ネコブルース」を歌い、次にメルリンケル、リスラーズ、ファンキーロックグループ、バーバラさん親子のデュエット、最後に聖歌隊の子猫たちが歌い終わると、グレが代表で、最後のご挨拶をしました。 「みなさん、今日は本当にありがとう。みなさんの思いはジュールの猫たちに届けます。そして、こんなにも温かい声援を送り続けてくれた、みなさんのことは、一生忘れません。僕たちは明日、旅立ちます。でも、どこへ行ってもノラーズの音楽は続けていこうと思っています。又いつの日か、お逢いできる日を信じて、生きていきます。今日は本当にありがとうございました。」 「ノラーズ、行かないで!!」「ワー!!ノラーズ、ありがとう!!」 「又、ギャラネコに帰ってきてください!!」 そして、会場中が興奮の渦の中、出演者全員がステージに現れました。観客も総立ちになって、別れを惜しんでいます。ノラーズのメンバーも、他のミュージッシャンたちも、涙でぐしょぐしょになっていました。 「最後にみんなで歌いましょう、ジュールのネコたちに思いを込めて、風のトロイア!!」 やがて嵐のような歓声が一瞬静けさに変わり、イントロのメロディーが流れ始めると、出演者も観客もお互い肩を組んで、静かにウエーブしながら、歌い出しました。 「おお!風のトロイア!!私たちの祖国、平和を夢見て、歌い続ける...」