『俺と僕で何?』


第壱話 使徒、再来


・・・眼が覚めた。

まだ暗い。何時だ?

・・・5時かよ。

しかし、なんか、妙な気分だ。

ここはどこだっけ?

・・・

・・・

・・・思い出した・・・今日だよ。

第三新東京市に行く日だよ!

 

でも、今更なんだってんだ。

ただ『来い』ったって全然わかんないよ。

・・・

確か9時12分発だったよな。

仕方ない、起きるか。

っと、荷物はオッケーだし、書類も持ったし、後は何もないよな。

この部屋ともお別れだ。・・・あんまりいい思い出もないんだけど、でも、やっぱり寂しい感じがする。

先生の家に来て十年近いんだ・・・この部屋も五年だ。

だいたいそれ以前の事なんて覚えてないもんなぁ。

これからどうなるんだろう。なんで今更俺を呼び寄せるんだろう。

訳わかんないよ、ったく!説明も無しにさ。

なんか、頭きた。寝よ!

〔何か変?〕

(そっかな?)

よくわかんねぇ。

・・・ジ」

・・・ん?

・・・ンジ」

・・・んあ?

・・・シンジ」

「起きなさい、シンジ」

「ああ」

「もう出掛けないと間に合わないわよ」

「うーん・・・今何時?」

「8時半だけど」

げっ!それって結構やばいじゃん。

「わかった!速攻で行くわ!」

・ 

パジャマを制服に着替えて、持ち物オッケー!

じゃ、・・・行くか。

「じゃあ、小母さん、俺行くから。先生にもよろしく言っといて下さい」

「わかったわ」

「本当にお世話になりました。父のところに行ってどうなるのかわかんないんですけど、先生と小母さんには大変良くして頂いたと伝えます」

「いいのよ、そんなことは。実際、そんなに良くはしてやれなかったんだし」

「いえ。・・・じゃあ、行ってきます。お元気で」

「シンジもね」

第三新東京市、か。

第二東京と何が違うんだ?父さんのいるネルフって一体なんなんだ?

着いたら迎えが来るんだよな。葛城ミサトさん、だったな。

手紙と写真が入ってたけど・・・あの手紙でも呼ばれた理由はわからないんだよな。

しかしすっげぇラフな恰好だったけど、父さんのなんなんだ?

まさか、再婚相手ってか?

ま、いっか、行けば解るさ・・・多分。

しっかし、このモノレールって俺以外誰も乗ってねえんじゃねぇか?

・・・眠い。

・・・ださい』

・・・んーん。

・・・住民の方々は、速やかに指定のシェルターに避難して下さい』

『繰り返しお伝えします。本日12時30分。東海地方を中心とした関東、中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は、速やかに・・・

「なんだよ、『非常事態宣言』とか『シェルター』って」

何が起こったんだぁ?

とにかく、モノレールは止まっちゃったんだから降りて電話しないと。

・・・特別非常事態宣言発令のため、現在、全ての通常回線は不通となっています。住民の方々は、速やかに指定のシェルターに避難して下さい。・・・

・・・

どうすんだよ。

『第三新東京市まであと10キロ』かぁ・・・

「仕方ない、シェルターに行こう」

何気なく向けた視線には熱波に陽炎アスファルト道路。

その道路に居たのは・・・

・・・綾波・・・

制服を着た少女が一人・・・立って俺を・・・見ている。

なんか変だ。知らない筈なのに知っているみたいな。

・・・

既視感。

飛び立つ鳥に一瞬それた視線を戻した時には、もうその少女の姿は無かった。

ん〜ん。理解不能。隠れる場所も無いのに、何故?

 

グアグウォーーーンーンーンーーンッ・・・

 

な、な、なんだぁ?

強烈な爆発音と周囲を揺るがす衝撃波。耳が痛い。

シューーーッ、パーーンン!

反射的に音のした方向を振り返ると、その煙の先には巡航ミサイル?ってか?

で、そのミサイルの行方には複数の重武装ハリアーと怪獣。

・・・なんだよ、あれ」

我知らず声になってしまう。

これって『非常事態』どころか『異常事態』じゃぁないかっ!

どうすりゃいいんだよぉ。

怪獣はミサイル攻撃を物ともせず、モノレールの高架を破壊。

って、こっちに列車が落ちて来るじゃないかっ!

やばいっ!どおするぅ?

一応逃げるんだけど、もう間に合わないこともわかっちゃってるので、余り必死に逃げる気も起きない。やっぱ来なきゃ良かった。短い人生だったな。

ガガーワァアーンーンンン!

ほら、間に合わなかったじゃないか。

カン、カン、カン!

・・・ん?衝撃はあるけど破片やらは飛んで来ない?

閉じていた眼を開けて見ると、落ちた列車と俺の間に何時の間にか一台の車が居て遮蔽物となっている。ラ、ラッキー。

「でも・・・どうしてこんなところに?」

それは青のアルピーヌルノー・・・だっけ。

なんかあんまり好きじゃない・・・なんでかな?

ドアが開いて声が掛かる。

「ごめーーん、ちょーーっち遅くなっちゃった。さ、乗って!」

父さんの再婚相手?

とか思いつつ反射的にドアを開けて乗り込む、って。

その前にもう走り出してるよ、おいおい、危ねぇじゃねえか!

「危ないじゃないですか!」

「ごめん。でも、とにかくここから離れないとまずいのよっ!しっかりつかまって振り落とされないでね!」

「は、はあ・・・

葛城さんって、結構美人でスタイルいいかも。ミニのチャイナドレスもGOOD!

髪の毛が紫っぽいのはちょっとどうかな?

チラチラ足見てんのばれてるかな?

激走、爆走、・・・気持ち悪い・・・

車が山腹のトンネルに入る。

「はぁ・・・、なんとか無事たどり着いたわ・・・。さすがにちょーーっち疲れた・・・

「あ、あの・・・。さっきの怪獣、あれなんですか?」

「ああ、あれは『使徒』よ」

「なんすか、『シト』って?」

「んーーん。状況の割りに落ち着いてんのね。碇シンジ君」

「落ち着いてるなんて。ただいきなり訳わかんないだけですよ」

「そう」

「で、葛城さん、でしたよね。これからどこに行くんですか?」

「ミサト、でいいわよ。あたしもあなたのことシンジ君って呼ばせてもらうから。司令の名前で『碇君』ってのも言い辛いから・・・

「はい」

「お父さんの仕事、知ってる?」

「えー、人類を守る大事な仕事としか聞いてませんが・・・

「そっか・・・

「俺・・・、いや、僕が呼ばれたのもその仕事に関係があるんですか?」

「『僕』なんて無理しないで『俺』でいいわよ。気にしないで。で、呼ばれた理由はお父さんに直接聞いた方がいいわ」

・・・

「あ、そうだ。お父さんからID貰ってない?」

IDって、これがかぁ?

「このカードのことですか?手紙には『来い』としか書いてないですけど・・・

「ああ、それでいいのよ、ありがと」

葛城さんは車をカートレインに乗せる。

「じゃ、しばらくかかるからその間、これ読んでて」

『ようこそNerv江』と書かれたパンフレットを渡される。

NERV(ネルフ)・・・、父さんのいるところなんだろうな。『司令』って言ってたけど、それってなんか偉そうだよな。

「これから父のところに行くんですよね?」

「そうね、そうなるわね」

・・・

「どうしたの?お父さんのこと苦手?」

「そんなんじゃないんですけど。あんまり話したことないから何言われるのかなって・・・

「そう・・・

「何の仕事してるのかも知らないし・・・

「渡したパンフに書いてあるわよ、さわりだけだけど・・・

あっ!トンネルを抜けた!って。

「これ!本物のジオフロントじゃあないかっ!」

「そうよ。ここがあたし達の秘密基地。ネルフ本部。世界再建の要となるところよ」

凄い・・・。こんなに広い地下空間があるなんて・・・

カートレインは外周をチンタラ降りていくのでジオフロントの建物の中に入るまで結構時間がかかった。

車を降りて通路を一緒に歩かされる。自動ドアを抜けるとその先は自動走路だ。ドアが開いた瞬間、強い風が吹いた。

「中はちょっち気圧が高くなってるの。これだからスカート履き辛いのよね」

何言ってんだこの人は・・・

「はぁ・・・

自動走路は広い空間上にかかっていて相当の高さと距離があり、下を見ると結構怖い。

やっと終わりでまた自動ドアがある。

自動ドアが開くと、白衣の女性と警備員がいる。警備員っていっても自動小銃を持っている・・・。自動小銃?なんなんだろう・・・、このネルフって。

「あ、リツコ・・・

「遅いわよ、葛城一尉!あんまり遅いんで迎えに来たわよ。時間もなければ人手もないのよ!」

白衣の女性が言う。言い方きついな。髪、金髪に染めてるよ・・・。でも、眉毛は黒いまんまか・・・。どっかで会ったことがある気がする?

・・・既視感。

「ごめん」

葛城さん、舌なんか出して、言い方軽いっすよ・・・。もしかして道迷ってたんすか。

また自動走路かよ、でもってその上早歩きだよ・・・。何急いでんだか・・・。

「彼が例の男の子ね」

「そ、マルドゥック機関の報告書による三人目の適格者、サード・チルドレン。でも信用できるの、その報告書?しかも碇司令のご子息。なんでよりによって碇司令のご子息なのよ?」

なんだ?サードチルドレンって?

「現在のところ、マルドゥック機関の報告による方法しかエヴァ操縦の術は解らないの」

「信用するしかないって訳ね」

「残念ながら、ね。今の私達はこの子達、子供に頼らざるを得ないのよ」

エヴァ?操縦?・・・この子達って、俺も入ってるみたいだよな・・・。俺には何も口を挟めない。どうせ父さんから聞くしかないみたいだし・・・。それよりもすれ違う大人達の視線が痛いんだけど・・・

なんとなく俯く俺。

「私は技術一課E計画担当博士、赤木リツコ。よろしくね」

「あ、始めまして、碇シンジです。赤木・・・博士」

「あら、リツコ、でいいわよ。私もシンジ君って呼ばせてもらうから。碇君とは言いにくいものね」

葛城さんとおんなじこと言ってる。父さんって偉いんだろうな…。

「わかりました」

「父親とはえらく違うっしょ、この子」

「さあ、どうかしらね」

今度はエスカレーターかよ、これ超長いっすよ・・・。いつになったら父さんのとこに着くんですかぁ・・・。疲れた・・・心身ともに・・・。

俺の気持ちとは全く関係なく二人の会話は続く。

「で、初号機はどうなの?」

「B型装備のまま現在ケイジで冷却中。起動準備に入っているわ」

「それって本当に動くのー?」

「起動確率は0.000000001%。09計画とは良く言ったものだわ」

「それって、動かない!ってことじゃあないのぉ?」

「あら、失礼ね。ゼロではなくってよ」

「まあ、今更・・・動きませんでしたっ!では済まされないわ」

巨大ロボットの手みたいなのが横の壁から突き出ている?

『第一種戦闘配置!繰り返す。第一種戦闘配置!対地迎撃戦初号機起動用意!』

「ですって・・・

「でも、パイロットはどうするのよ。パイロットがいないわよ」

「パイロットって、さっきの巨大ロボットのですか?」

ようやく口出し出来たな。

「そうよ。良く気が付いたわね。意外と冷静じゃない?」

「そうですか・・・?」

「で、リツコ。使徒は?」

「戦自のNN地雷で足止めは出来たけど、表層部にダメージを与えただけで現在自己修復中。再度進行は時間の問題だわ」

「やはりATフィールドを持ってるのかしら?」

「多分ね。おまけに学習能力も持っていて、MAGIによる分析結果では、内部プログラムで動作する知的生命体一種と出たわ」

「それって!」

「そう。エヴァと一緒。さて、シンジ君。お父さんに会わせる前に見せたいものがあるの」

「見せたいもの、ですか」

「リツコ。まさか・・・

「さ、いらっしゃい、シンジ君。こっちよ」

貯水池みたいなところに浮かんでいるゴムボートに3人で乗る。

壁伝いにしばらく進んで降ろされるとドアが開いて・・・

「!・・・ロボット・・・?」

目の前に紫色の装甲に覆われたロボットの顔がある・・・

「厳密に言うとロボットじゃあないの。他人が造り出した究極の人型汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。我々人類の最後の切り札よ・・・

「これも父の仕事ですか・・・

「そうだ!」

と、頭の上から声がする。

!父さん・・・

「久しぶりだな、シンジ」

「父さん・・・・・・本当に久しぶりだよね・・・

・・・なんだよ、あんな高いとこから・・・

「良く聴け、シンジ。これからお前はこれに乗るのだ。そしてあの使徒と戦ってもらう」

「な、何言ってんだよっ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい、碇司令!あの綾レイでさえシンクロするのに7ヶ月もかかったんです。今来たばかりのこの子にはとても無理です!」

「多くは望まん。ただ座っているだけで良い」

「今は使徒撃退が最優先事項です。判っている筈よ、葛城一尉!」

「そ、そうね。判ってるわ。判っている筈なんだけど・・・

「この後に及んで偽善は止めて、ミサト」

何言ってんだ、この人達は・・・

「何の説明も無しに、いきなり何だよっ! ここに来るまでの話で何となく予感はあったけど、なんで俺なんだよっ!他にもパイロットいるんだろっ! 何の知識もない、訓練したこともない、で、いきなり戦えだとっ?ふざけんなよっ!」

ぜえぜえ・・・。ぶち切れたぜ。

「乗るなら早くしろ。でなければ帰れっ!」

・・・バカヤロ。はあはあ・・・人の話聞いてねえのかよ」

ったくっ!

「帰れったってお前の所為で先生のとこ引き払っちゃったんだから帰るとこなんてないだろがっ!」

「そうか。乗らないのだな」

「乗れる訳ないだろっ!」

あれ、父さん引っ込んだぞ?・・・諦めたのかな・・・

「シンジ君、事前に説明しなかったのは悪かったわ。 あなたも見たように使徒が来てしまった以上私達にはあの敵性体を殲滅するしか途はないの。負ければ人類、いえ、この地球上の生物は絶滅するわ。使徒と互角に戦えるのはこのエヴァンゲリオンだけ。 そしてこのエヴァを操縦できるのは、シンジ君、あなたを含めて二人しかいないのよ。 でも、もう一人のパイロットは負傷中。」

「えっ・・・

「だから出来ればシンジ君に乗って欲しいのよ。本当にただ座っていればいいの。詳しい説明は今してる余裕がないけど、今回はそれで勝てるの」

「そんなこと言われても納得できませんよ」

「そうね・・・。だから信用してもらうしかないわ」

「そんなぁ」

信用しろって言われたって・・・

「シンジ君。こうなることは予想できていたのに、いくら権限がなかっとは言え、説明出来なかったのは謝るわ。・・・でも、今はあなたに縋るしかないの。ごめんなさい」

どうすんだよ、俺はどうすればいいんだ・・・

俺達が入ってきたドアが開いて医師と看護婦が担架を搬入してくる。

担架の上には点滴を付けた・・・少女?

さっき言ってた負傷中のパイロットなのか?

「お前が乗らないならレイが乗ることになる」

父さん。

『目標、市内に到達っ!兵装ビル稼働率65パーセント。迎撃体制に入ります!』

「やば、シンジ君!時間がないわっ!」

・・・

「わたしが出ます」

・・・レイ、お前は乗せられない」

「そうよっ!まだ怪我治ってないでしょっ!」

「訓練をしていないパイロットよりは役に立ちます。問題ありません」

ムカつくな・・・。訓練してないんじゃなくて、今来たばっかだっつうの!

「ねえ、リツコ・・・。レイの怪我って大怪我じゃあなかったの?全然平気みたいに見えるわよ」

「そうね」

「そうね、って、あんた!」

「司令!時間がありません。この際です。技術部よりダブルエントリーを提案しますっ!」

「リツコっ!」

・・・?一緒に乗るのか?この子と?

「問題ありません」

「って!問題大ありよっ!」

「そうかしら。嫌がる子を単独で乗せるよりは随分と割がいいと思うけど」

俺はまだ承知してねえぞ。

「なんですか、そのダブルエントリーって?」

「この子とあなたが一緒に乗るのよ、このエヴァに。一人よりはいいでしょ」

・・・やっぱり。

「どうあっても俺を乗せたいんですね」

「そうよ」

・・・

「サード・チルドレン、・・・あなた怖いの?」

何時の間にか少女は俺の横に立っている。怪我の様子は外見からは判らない。

と言うよりも、その容姿が際立っていてそちらに目を奪われた。

蒼く銀色に煌く髪、紅く吸い込まれるような双眸…。

アルビノだったっけ?

初めて見ると思うんだけど、初めてじゃない気がする。何故?

それに、着ているウェットスーツみたいなの、薄くてちょっとやばくない?

「怖くないとは言わないけど、怖い訳でもない、と思う。要するに俺が判断できるだけの情報が絶対的に足りないってことだよ、多分・・・

「そう・・・そうかも知れない」

「で、どうなの?ダブルエントリーの件、了承してくれるかしら」

「あたしからもお願いするわ、シンジ君」

「わたしは一人でも構わないわ」

「わかったよ。なんか訳わかんないけど、乗るよ。この子だけに負担はかけたくない。それに・・・どうせ遅かれ早かれ俺はこれに乗る羽目になるんだろうからな」

しょうがないじゃないか。・・・もう後戻りは出来ないんだ。

もう疲れちゃったよ。

時間がないとか言いながら、あの女の子の、レイって言ったっけか、予備のプラグスーツに着替えさせられて・・・、頭にはヘッドセットとかいうアンテナみたいの付けられて・・・、相当に恥ずかしい恰好だよね、これって。

このスーツ、ほとんど何も着ていないような感覚だよ。カップが無けりゃあもっこりだよなぁ、・・・はぁ。

手伝ってくれた人達の様子が真剣そのものだったから、ある意味助かったのかな。

「準備は出来たようね」

「はい」

「レイも問題無いわね」

「はい」

「レイ、シンジ君と一緒にエントリー、シンクロ準備に入ってちょうだい」

「了解。碇君、ついて来て」

「了解」

・・・真似っこしぃ。

ブリッジからタラップを登ってエントリープラグに入る。

中は結構広い。シートは前後2席になっている。

当然俺は後ろだよな・・・

レイが前部座席に座るのを見て俺は後部座席に座る。

ハッチが閉まる。

「エントリー完了」

『了解』

・・・

「ねえ、レイ、って呼んでいいのかな?」

「かまわないわ。」

「レイの名前はなんていうのかな。まだ聞いてないと思うんだけど」

「あなた知ってるでしょ。わたしはレイ。あなたもそう呼んでいるもの」

「あ、いや、そうじゃなくて。苗字の方だよ。俺は碇、碇シンジ」

・・・なんか調子狂うなぁ。

「わたしは綾波レイ。綾波レイと呼ばれるもの」

「そっか、綾波・・・さん、だね」

「そう言ったでしょ」

やっぱ変だよ、この子。

『自己紹介はもういいでしょ。起動シークエンスに入るわよ!』

「了解」

『シンジ君も、いいわね!』

「は、はい」

『ケイジ内、全てドッキング位置』

『停止信号プラグ、排出終了』

『了解。エントリープラグ、挿入』

『エントリープラグ、固定終了

『全回路作動正常』

『了解。第一次接続開始 』

『エントリープラグ、LCL注水

って!水が、水がっ!なんだよ、これっ!

「ねえ、ちょっと!水が入ってきてるんだけど、なんで?」

「水じゃない。LCLよ」

な、なんだよ・・・LCLって。

『大丈夫。肺がその水溶液、LCLで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれるわ。だから息を思いっきり吐き出してから、そのLCLを空気だと思って思いっ切り吸い込んみなさい 』

いきなり言わないでよ、そんなこと。

「要はLCLに溺れればいいの。簡単なこと」

そ、そっかな?はあ。

『しっかりしなさい!』だの、『おっとこの子でしょ!』だの、ボロくそ言われながらも無事に(?)溺れることができた。が、やっぱ気持ち悪りぃ・・・

『LCL注入完了。これから第二次ステージに移行します』

薄暗かったプラグ内が明るくなる。結構殺風景だ。

『起動、開始』

『主電源、全回路、接続』

『主電源、接続完了

『起動用システム、作動開始』

『起動電圧、臨界点まで後零点5、零点2、突破』

『起動システム、第二段階に移行』

『パイロット、接合に入ります』

『システム・フェーズ2、スタート』

『シナプス、挿入。結合、開始』

『パルス、送信。全回路、正常』

『初期コンタクト、異常無し』

『左右上腕筋まで動力伝達

『主電源接続、全回路動力伝達完了』

『第二次コンタクト、準備良し』

『思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス』

『A10神経接続、開始しました

プラグ内の壁面が様々に明滅して変化していく。

『初期コンタクト、全て問題無し』

『双方向回線、開きます』

凄い・・・。プラグが透明化したみたいに外が映ってる!

『シンクログラフ上昇中。・・・絶対境界線まであと零点9・・・零点8・・・零点7・・・零点5・・・零点3・・・ボーダーライン、突破しましたっ!・・・シンクロ率65パーセントで安定。シンクログラフ最大誤差プラスマイナスゼロコンマ3パーセント。ハーモニクス全て正常 値。・・・暴走ありません 』

・・・凄いわね・・・・・・ミサト、いけるわ!』

『エヴァ初号機、発進準備!』

『第一ロックボルト、解除』

『解除完了。第二ロックボルト、解除』

『解除完了。アンビカルブリッジ、移動開始』

『第一拘束具、除去。同じく第二拘束具、除去』

『1番から15番までの安全装置、全て解除されました』

『内部電源、充填完了』

『外部電源用コンセント、異常無し』

『了解。エヴァ初号機、5番ゲート射出口へ!』

おおっ!いよいよ動き出した。

「動いたね」

・・・口、閉じてて」

『5番ゲート、スタンバイ』

『進路、クリア!オールグリーン!』

『発進準備、完了しましたっ!』

『了解!・・・碇司令。構いませんね?』

『もちろんだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い』

『発進!』

ぐふ・・・!なんだよ、これ・・・。口閉じろって、このことかよ・・・。

地上に出た。急停止した割りにショックが少ないのはこのLCLのせいなんだろうな。

『最終安全装置、解除!』

『エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!』

視界がちょっと下がる。前方にはさっきの、シト。

『レイ、シンジ君、防御態勢!』

「了解」

って、俺は・・・

「あ、綾波・・・。俺は何にもわかんねぇからな。何かすることがあったら言ってくれ」

「目、閉じてて。何も考えないで。使徒を殲滅したら教えるから」

それって・・・俺には何もするなってことかい・・・ 


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