『俺と僕で何?』


第七話 家族の約束


「今日は1500からシンクロ・テストがあるから二人とも遅れないように。シンジ君は専用プラグスーツが完成したのでそのテストも兼ねてるわ 」

「「はい。わかりました、リツコさん」」

ハモっちゃったよ・・・

「碇君、自己紹介が遅れちゃったけど、わたし、このクラスの委員長をしている洞木ヒカリ。みんなは『委員長』って呼んでるわ。これからよろしくお願いね」

「こちらこそよろしく、洞木さん」

「これから学校の施設とかを案内するわ。先生の許可は取ってあるの」

「そうなんだ。じゃ、お願いするかな。綾波、また後でね」

「うん」

「それじゃ行きましょう。綾波さん、お兄さんちょっとお借りするわね」

「ええ。構わないわ」

「大体こんなところね」

「ああ。ありがとう」

「いいえ。委員長の仕事だもの、当然よ」

・・・

ほんと、委員長って感じだな。

「あの・・・碇君。」

「何?」

「綾波さんは碇君の妹さんなんだってね」

「うん。そうみたいだね、って変な言い方だけど、俺も急に言われて戸惑ってるんだ」

「そう。そうよね」

「で、何?綾波のことで俺を連れ出したんだろ?学校案内は口実でさ」

「いえ。口実じゃあないんだけど・・・

「ごめん、ごめん。別にいいよ」

・・・綾波さんって、クラスのみんなとあまり話をしてないの」

「あまり、と言うか、ほとんど口きいてないんじゃないの?」

「ええ。本当はわたしがもっと気を配ってあげられればいいんだけど、余計なお節介じゃないかって感じもあって・・・

「わかるよ。綾波の方があんな感じじゃ仕方ないと思う」

「でも、みんな綾波さんが嫌いってことじゃないと思うの。ただ話し掛けづらいだけなのよ」

「いい人なんだね、洞木さんは」

「そ、そんなことないわよ」

顔赤くなっちゃったよ。

「わかってる。俺も綾波のこの状態は良くないって感じてるんだ。ただ、相手が弟だったら何とか出来そうな気もするけど、いきなり妹だろ・・・女の子だからなぁ。正直困ってたんだ 」

・・・

「ね。協力してくれないかな」

「え?協力?わたしが?」

「そう。綾波には自分自身の殻に閉じ込まらずに外の世界に楽しいことがあるってことを学んで欲しい。それには友達を作ることが必要だと思う。洞木さんに綾波の最初の友達になってやって欲しいんだ。お願いできるかな 」

・・・ええ。でも、わたしに出来るかしら?」

「大丈夫だよ。始めは洞木さんに嫌な思いをさせるかも知れないけど、綾波は自分の感情を表現する方法を知らないだけなんだ。性格が悪いって訳じゃない」

「それはわかってるつもりよ」

「うん。それと今日は綾波も俺も午後早退なんでよろしく」

「聞いているわ。あと・・・碇君も友達作らなきゃだめよ」

「あ、ああ、・・・そうだね。頑張るよ」

前の学校じゃ友達いなかったっけな・・・

「綾波。今日は何の本を読んでたの?」

綾波が鞄から本を出して俺に渡そうとする。

「これよ」

「えーと、『発達心理学と進化心理学』?」

なんかすごい題名だけど・・・これって・・・

「この本どうしたの?自分で買ったの?」

「いいえ。リツコさんが貸してくれたの」

やっぱり。

「結構難しそうな本みたいだけど、いつもそういうのを読んでるの?」

「いろいろ。詩集とか聖書とか形而上生物学とか有機コンピュータなんかもあるわ」

「それってみんなリツコさんの本だよね」

「そうよ。だって他には無いもの」

「綾波は自分で本を買ったりしないんだ」

「詩集はたまに買うことがある」

「この本借りてもいいかな?家に帰ったら返すからさ」

「いいわ。別に急ぐわけでもないし」

『発達心理学』と『進化心理学』か、リツコさんらしいな。

綾波には知識から入ってそこから具体的に感じ取ってもらう方がいいと思ったんだろうな、多分・・・

「これが俺専用のプラグスーツですか」

「そうよ。なかなかいいでしょ」

「そうよ。先輩と一緒にわたしも機能デザインしたんだから」

「マヤさん。気に入りましたよ。ありがとうございます」

ダサイなんて言えないもんな、この状況じゃ・・・

「実は最初のデザインとはちょっと違うの。先輩の発案でね」

「どこがどう違うんですか?」

「それはテストの後で発案者から説明するわ、シンジ君。その前にまずはシンクロテストよ。マヤも準備にかかってちょうだい」

「了解っ」

「はい」

『停止信号プラグ、排出終了』

『了解。エントリープラグ、挿入』

『エントリープラグ、固定終了

『全回路作動正常』

『了解。第一次接続開始

『エントリープラグ、LCL注水』

何回やっても慣れないよな、これ・・・。はあ。

『LCL注入完了。これから第二次ステージに移行します』

薄暗かったプラグ内が明るくなる。結構殺風景だ。

『起動、開始します

『主電源、全回路接続完了

『起動用システム、作動開始します』

『起動電圧、臨界点まで後零点5、零点2、突破しました』

『起動システム、ただいまより第2ステージに移行します』

『パイロット、接合に入ります』

『システム・フェーズ2、スタート』

『シナプス、挿入。結合、開始しました』

『パルス、送信。全回路、正常』

『初期コンタクト、異常ありません』

『A10神経接続、開始しました』

『初期コンタクト、全て問題ありません』

『双方向回線、開きます』

『シンクログラフ上昇。・・・絶対境界線まであと1点2・・・1点零・・・零点8・・・零点6・・・零点2・・・ボーダーライン、突破しましたっ!・・・シンクロ率36パーセントで安定。シンクログラフ最大誤差プラスマイナスゼロコンマ5パーセント。ハーモニクスは全て正常位置。 ・・・暴走ありません』

「やはりダブルエントリーの時ほどには数値は延びないわね」

「そうですね。プラグスーツは専用にしたんですけど、調整不足なんでしょうか?」

「でも初めてにしてはいい数値だわ。では予定通り機体連動試験に入って」

「はい」

やっと終わった・・・。結構時間がかかったな。

しかしこのLCLを吐き出すのって吸い込むときより辛いよな。人には見せたくないって感じだよ・・・

「シンジ君、お疲れ様」

「あ、どうも。マヤさん。テストの結果、どうでした」

「初めてにしては上出来。先輩も褒めてたわよ」

「ありがとうございます。でも、これって褒められることなんですか?」

「集中力が求められる作業だから、高い数値が維持できるっていうのは高い集中力を維持できたってことでしょ。だから褒められていいことなのよ」

「はい、わかりました。生意気言って済みません」

「いいのよ、シンジ君。満足な説明なしに乗ってもらってるんだから、謝らなくちゃいけないのはわたし達の方なのよ」

・・・」

マヤさんって童顔だから年齢がわかり難いけど大学出てるんだろうから若くても20代前半か。もしかしたら大学院卒かも知れないし・・・。なんか『隣のお姉さん』って感じだな。

「シンジ君」

「あ、は、はいっ!」

「ぼーーっとマヤに見とれてないで、検査するから一緒についてらっしゃい」

「はい。済みません」

変なことしたかな?リツコさん機嫌が悪いような・・・

「リツコさん、さっき不機嫌でしたか?」

「え?いつのことかしら」

「いや。マヤさんに見とれてるな、って」

「ああ、あれね。別にシンジ君に不機嫌だった訳じゃないわよ。気にしないで」

「そうですか」

気になるんですけど。という視線に気が付いたのか。

「あれはマヤに対してよ」

「どういうことですか?マヤさん、何かしましたか?」

「シンジ君こそ気が付いていないの?」

「何がですか?」

うーーん、わからないぞ。別に変な会話じゃなかったと思うけど・・・

「まあ、わからないならそれでもいいわ」

「それってすごく気になりますけど・・・

「ところで初めての単独エントリーの感想は?」

「・・・良くわかりませんでした。エヴァに母さんを感じたかってことですよね」

「ええ、それもあるけど、それ以外のことでもいいの」

「何か懐かしい感じがしたのは確かです。うまく説明出来ないんですけど、綾波と一緒に乗った時とは違いました。以前にもこの感覚を味わったような気がします。どういう時だったかは思い出せないんですけど・・・

「そう、まあいいわ。これからもテストでいい結果を出せることを期待しているわ。お母さんでもエヴァそのものでもいいから一体感を得るように集中して取り組んでね」

「はい・・・

「何か?」

「エヴァは人の手で作られたんですよね。リリスをコピーして」

「そう説明したはずよ」

・・・綾波もリリスのコピーなんですか?」

「エヴァは100%リリスのコピー。でも魂がない。レイはお母さんとリリスとが混ざり合っているもの。だからコピーではないわ。でも魂がある。そしてその魂はお母さんのものではないの。だから遺伝子的には限りなくリリスに近いといえる。けどヒトよ、間違いなく 」

「なんか歯切れの悪い言い方ですね」

「私にも正確なところは解っていないのよ。特にレイについてはね。一番良く解っているのは碇司令と冬月副司令よ。そして、ユイさんもね」

「父さんが?」

「そう・・・。碇司令はその他の計画にも関わっている。そのことについてはもう少しわかってから話すわ」

「分かりました。・・・でも、俺なんかに話していいんですか?」

「シンジ君には知っておいて欲しいのよ。いえ、シンジ君には知る権利と知っておく義務があるということかしらね・・・

「知っておく義務?」

「それも追々は話すわ。一方的で悪いけど今は我慢してちょうだいな」

「はい。でも・・・俺、リツコさんから聞いたことを父さん達に喋っちゃうかも知れませんよ」

「それはないわね」

「どうしてそう言えるんですか?」

「もちろん100%保証は出来ないけど、シンジ君はそれほど馬鹿じゃないわよ」

「喋るのは馬鹿、ですか・・・

「わかってるんでしょ」

そう。自分の身の安全を考えれば喋るのは得策ではないだろうな。

「ええ」

「じゃ、この件はこれ位にさせてもらうわ。いいわね」

「はい。済みませんでした」

「いいのよ。さっきマヤも言ってたけど、プラグスーツの機能デザインに変更を加えたの。あなたに実際会って必要性を感じたからなんだけど」

「ええ。何を変えたんですか?」

「外見は変わってないわ。ただシンジ君のA10神経の情動パターンを補正する装置を取り付けただけ」

「何のことだか全然わかんないんですけど・・・」

「パイロットとエヴァとの脳神経結合の要はA10神経の接続で、パイロットが考えるだけでエヴァを操縦できるのはそのため。そのA10神経というのは記憶や認知、運動の遂行などの高次な脳機能をつかさどる一方で、不安や恐れ、幸福感や快楽などの情動とも関係するの。ここまではわかる?」

「ええ。大丈夫です」

「A10神経を大雑把に運動神経と情動とに分けて、それぞれ運動神経と感情と呼ぶことにしましょう。その方が判り易いでしょうから」

「はい」

「まずエヴァを操縦するためにはエヴァとシンクロすることが必要でそのためにエヴァにはパイロットのパーソナル・パターンが組込まれています。平たく言えば相性を良くしてあると言うことね。相性が良ければシンクロ率は高くなる。そして運動神経は、シンクロ率と正の相関関係にあるのと同時に、エヴァの運動神経はパイロットの運動神経と正の相関関係にあるの。一方、感情はエヴァに組込まれたパーソナル・パターンと基本的に一致している必要があると同時に、ある特定のパターンが要求される。そういうエヴァへの組込み可能なパーソナル・パターンを持つ子供を『適格者』、『チルドレン』と呼ぶのよ 」

「じゃさっき情動パターンを補正したっていうのは」

「そう。シンジ君の現在のパーソナル・パターンではエヴァとシンクロ出来ない可能性があると判断したからよ」

「それは俺が既に『チルドレン』の資格を失っている、ということですか?」

「いいえ、実際には今日のテストは補正機能は使わなかったわ。それであの結果だからシンジ君は立派なチルドレンよ。安心しなさい」

・・・両親が身近に居ないこと、性格が内向的で友達がいないってことでしたよね」

「『サードチルドレンに関する報告書』のことね」

「俺のどこが違うと思ったんですか?」

「シンジ君、ちっとも内向的じゃないわよ。自分で『報告書』読んで違和感なかったの?」

「いえ、特には・・・

「そうかしら?わたしには今ここにいる碇シンジは報告書の碇シンジと違う人格だと思っているのよ。たとえDNAが一致していたとしてもね」

これって俺のことを疑ってるのか?

「そんなふうに言われても・・・。別に何も隠してなんかいませんよ」

「隠してるなんて思ってないわ。ただあなたが忘れているだけ、深層心理の奥に置き忘れているだけ。わたしはそれを掘り起こしたいのよ。色々話しているのもそのため。何かきっかけがある筈なの。キーワードかイベントか、解らないけど。・・・シンジ君。報告書の碇シンジは自分のことを『俺』とは呼ばない、『僕』って言うのよ・・・

・・・

・・・じゃあ今日はこの位にして戻りましょうか」

・・・はい」

戻るとミサトさんがいた・・・

「よっ、シンちゃん。お久し振りっ!」

「こんにちは。ミ、ミサトさん・・・」

・・・この人、なんか苦手なんだよなぁ・・・

「ミサト。何しに来たの?」

「冷たいわねぇ、リツコ。あんたはシンちゃんと住んでるからいいけど、あたしは滅多に会えないんだから」

「まあいいわ」

「で、どうだった?初めての単独エントリーは」

「別に特別なことはなかったですよ」

「でも今日はレイと一緒に乗れなくって残念だったわよねぇ」

この人は・・・

「綾波とは別々に乗れる方が戦闘には有利じゃないんですか?」

「それは・・・そうよ。ちょっとからかっただけなのに・・・つまんないのー 」

「ミサト。邪魔するんなら追い出すわよ」

「ごめん、ごめん」

・・・葛城さん、無駄口が多い・・・

げっ!

「あ、綾波っ!そういうことは本人の目の前では言っちゃいけないんだよ」

「本人の目の前じゃなきゃいいのね」

って、ミサトさん?

「よーーーーっくっ!わかったわよ。あんた達があたしのことどう思ってるかが・・・

まずいっ!

「ち、違いますよっ!今のは言葉の綾じゃぁないですか。い、嫌だなぁ。ははは・・・

「無様ね・・・

「ま、いいわ。そんなことより、リツコ。戦闘訓練の方はいつから始めさせてもらえるのかしら?」

「そうね。実はシンジ君の『雇用契約』まだなのよ。それが済んでからになるわね」

「あんでそんなものが終わってないのよぉ、リツコ。怠慢じゃないの!」

「あら、何も説明せずにサインさせる気?」

「とにかく早くしてよ!」

「はい、はい」

「はい、は一度でいいのっ!」

「了解、了解」

「あ、あんた!あたしのこと馬鹿にしてない?」

「あら、わかっちゃった?」

・・・

よかった・・・話がそれて・・・・・・リツコさん、わざと?

「マヤさん、リツコさんとミサトさんって仲いいんですよね?」

「そうよ。大学時代からの友人なんですって。なんだか漫才の掛合いみたいだけどね」

「「そこっ(マヤ)!うるさい(わよ)っ!」」

ほんっとに、仲いいんだね・・・

「綾波。風呂上がったよ」

「わかったわ。リツコさん、お先にどうぞ」

「私は後でいいわ。まだやることがあるから。レイ、先入っちゃって」

「はい」

綾波が風呂場に行った。

「さて、シンジ君」

来た、来た。

「はい。何ですか?」

「やるべきことを済ませてしまいましょ、ミサトが五月蝿いし」

やっぱりあれか。

「『雇用契約』ですよね」

「そう。よくわかったわね」

「わかりますよ。ミサトさん、怒ってましたものね」

「まずは勤務形態は24時間常時待機ということで月給がでるわ。その代り非常召集がかかったら問答無用で出頭すること」

「はい」

「テストや訓練は1回毎に手当てが支給されるけど、それ相当の理由があれば拒否可能。まあ、ほとんどは却下されるでしょうけど」

「はい」

「あと、戦闘時には戦闘時割増日給と危険手当を別途支給」

「はぁ」

「戦闘による負傷などの治療費は当然タダ」

「だいたいわかりました。いいですよ。お任せします。サインしますから」

「金額とかまだ言ってないわよ」

「それなりのきちんとした金額なんでしょう?それに金額を聞いても高いのか安いのか適正なのか判断できないですよ」

「それもそうね。給与などは自動振込になっていて、渡してあるNERVカードで使えるわ。この市内ならどんなに小額でも大丈夫だから現金を持ち歩く必要、ないわよ。ただし、使用内容は全部MAGIに筒抜けだから気を付けることね 」

「はい。気を付けますよ」

俺はまあ心配ないけど、不届きな大人達は苦労してるんだろうな・・・

「次に、今更って感はあるけど、住居ね」

・・・

今更引越せってんじゃないよな・・・

「別に私は追い出さないわよ。ただシンジ君にも選択肢があるのよ」

「わかりました。でも、リツコさんさえ良ければここに住まわせて欲しいです」

「喜んでお受けするわ。でも説明だけはさせてね。これから何が起こるかなんて誰にも分からないんだし」

「はい」

「選択肢は次の3通り。一つはネルフ本部の宿舎に住むこと。二つ目はネルフの提供する市内の住居に住むこと。最後にネルフの職員と同居すること。今はこの状態ね。自宅があればその選択肢もあるんだけど場所によっては却下されることがあるわ、警備上の問題でね 」

「リツコさんは何故俺を引き取ったんですか?」

「ずいぶんとストレートに聞くのね」

まずかったかな?

「わたしも聞きたい・・・」

「あ、綾波。聞いてたの」

「いいえ。聞こえたの」

「いいわ。二人一緒に聞いてもらうわ」

綾波も俺の隣の椅子に座った。

「シンジ君、あなたを引き取ったのははっきり言えば個人的な興味よ。あ、変な意味じゃないからね。くれぐれも勘違いしないでね」

こういうところはミサトさんの影響なんだろうな。

「変な意味って何ですか?」

「シンジ君の思っているミサトの考えそうなことよ。冗談はここまで。それに、レイにとっても良い影響があると思ったからよ」

「どんな影響ですか?」

「レイは今まで同年代の人間と接する機会が極めて少なかった。いえ、中学に通うようになるまで絶無と言っていい位だった。中学に通うようになってもレイはクラスメートとも碌に話もしていない。それは仕方無いのよ。ネルフには大人しかいないから、同年代との友達付合いを学習出来る訳がなかったんだから。その大人達との付合いだって仕事上のものなんだし 」

「ええ、それは分かるような気がします」

綾波は黙って聞いている。

「だからシンジ君にレイの友達第1号になって欲しかったの。まあ兄妹というのは対外的なカモフラージュみたいなもので、戸籍上の繋がりはないし、遺伝的にも問題はないのよ 」

「な、何言ってるんですか!問題って!」

「慌てることないでしょ。単なる可能性の話なんだから」

「そう。可能性の問題なのね」

あ、綾波まで・・・・・・意味分かってんのかな?

「それと俺が自分のことを『僕』って言わない理由も探りたいんじゃないですか?」

「あら、それは違うわよ。だって、そのことはあなたに会うまで私は知らなかったことだもの」

「あっ、そうですよね。了解しました。まだ裏がありそうな気がしますけど、まあいいです」

「ありがとう。裏事情についてはまた時期が来たら話すわ。約束します」

「碇君はわたしの友達第1号になるのね」

「そ、そうだね。よろしく綾波」

「こちらこそ、よろしく。碇君」

・・・綾波・・・その紅い眼でじっと見つめられると、ドキドキするよなぁ。

「リツコさん、もうお話は終わりでいいですか」

「ええ。こちらから話しておきたいことは終了よ」

「はい。じゃ、綾波、早速なんだけど。今日洞木さんが学校を案内してくれたろ」

「うん」

「洞木さん、綾波のこと心配していたよ。友達いないみたいだって。俺が綾波の兄貴だってんで俺に何とかして欲しかったみたいだった」

・・・

「でも、俺は逆に洞木さんにお願いしたんだ。綾波の最初の友達になってやって欲しいって。綾波は女の子だろ。男の俺じゃ駄目なこともあると思うんだ。だから最初の男友達が俺で、最初の女友達が洞木さんということでどうかな 」

綾波がびっくりしたような顔で俺を見ている。

「レイ。よかったわね。一度に二人も友達が出来るのよ」

「うん」

「でもね、綾波。綾波も自分自身で努力しなくちゃ駄目だ。だから、努力するって約束して欲しい。自分なりでいいんだ。そして解からなかったり困ったこととかあったら、リツコさんや俺に相談して欲しいんだ。これは俺達、家族としての希望だよ 」

「約束・・・。うん。努力してみる」

「それにリツコさんも『発達心理学と進化心理学』とか本を読ませるだけじゃ駄目ですよ」

「耳が痛いわね・・・


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