『俺と僕で何?』


第八話 初めての友人達


「リツコさん、おはようございます」

リツコさんって本当に早起きだな。

「おはよう、シンジ君。朝食もう直出来るからちょっと待っててね」

「はい。綾波は?」

「まだ、寝てるわ」

「起こしましょうか?」

「お願いするわ」

コンコン。

「綾波、朝だよ。起きてくれ」

・・・

コンコンコン。

「綾波っ!」

「シンジくーん!直接起こさないと無理よーー!」

ええ!そんなぁー・・・仕方ない、か。

コン!コン!コン!

「綾波っ!起きろよ!・・・開けるぞ!」

綾波の部屋・・・入るの初めてだ・・・おっかなびっくりドアを開ける・・・

ここもすっきりした部屋だな。マンモス団地みたいに殺伐とした感じじゃなくて普通の部屋だけど・・・

って、あ、あ・や・な・みーーー。ベッドから足はみ出てるぞぉ・・・。寝相悪いんだ。知らなかったな・・・、って、知るわきゃないよな。でも・・・パジャマで良かった・・・腹出てるけど。

・・・普通はパジャマなのかな?

さて、どうしよっか。

「ほら、綾波。朝だよ。起きなよ」

肩を揺すってみる。・・・顔をしかめた。

「ねえ、お願いだから起きてよ」

あ、綾波起きそう。

「ううん」

もう少し。

「ほら、綾波っ!」

わっ!綾波とモロ視線があった!・・・でも俺のこと見えてないみたいだな。

「起きた?綾波?」

「うん」

「じゃ起き上がって。朝飯出来てっから。二度寝すんなよ!」

「わかった・・・碇君」

起き上がったけど・・・ふらふらしてるよ。大丈夫かなぁ。いつものイメージと全然違うんだよな。

「リツコさん、おはようございます。おはよう、碇君」

「おはよう、レイ」

「おはよう、綾波」

「レイ。今朝はシンジ君が起こしてくれたのよ。気が付いてた?」

フルフルとお顔を横に振る。

・・・赤くなった 。

「あ・・・ありがと、碇君」

こういうとこはやっぱ女の子って感じだよ。

「いいって。でも腹出して寝てっと風邪ひくぞ」

「!」

「シンジ君!そんなこと言っちゃいけないわ。レディに対して失礼よ」

とか言って笑ってるよ。

「碇君の意地悪・・・

綾波、赤くなって俯いちゃった。

「お弁当はテーブルの上に置いてあるわ。今日はシンジ君もレイも何もないから本部には来なくていいわよ」

もう作っちゃたんだぁ。

「わかりました。でも・・・すみません、リツコさんに手間掛けさせちゃって」

「水臭いことは言いっこなしよ。一応保護者のつもりなんだから」

保護者以上ですよ・・・でも母親代わり・・・は禁句、かな?お姉さんってのも・・・うーーーん・・・年齢的にキツイしなぁ。 」

あ、あれ?リツコさん?

「シンジ君。それ声に出てるわよ」

・・・

「碇君、お間抜け」

あ、洞木さんだ。

「おはよう、洞木さん」

「おはよう、碇君。おはよう、綾波さん」

「あ、おはよう・・・洞木さん」

「先に言われちゃったね、綾波」

「うん。先に言いたかったけど、先に言われちゃった」

「反応が鈍いんだよ、綾波は」

「そんなことないわよね。挨拶してもらえて嬉しいわ、綾波さん」

「うん」

なかなかいい感じだな。

「昨日綾波に話したんだよ、洞木さんに協力をお願いしたことをさ。綾波も喜んでた。例によってなかなか表情とかには出にくいんだけど、ほんとに喜んでるんだよ、ね、綾波」

・・・洞木さん、わたしの友達になってくれるの?」

「もちろんよ。今までだって友達だと思っていたのよ。あんまり話をする機会がなかっただけ。これからはたくさんお話しましょ。よろしくね、綾波さん」

「こちらこそ、よろしく・・・洞木さん」

よしよし。

「ねえ、綾波さん。洞木さん、ってなんか堅苦しいから『ヒカリ』って呼んで。その代り綾波さんのことも『レイ』って呼んでいいかしら」

「ええ、いいわ」

「ありがとう。レイ」

これが女同士の友情の始まりかぁ・・・

「じゃ、頑張れよ。綾波」

「うん」

「碇君は碇君で頑張るのよ。昨日言ったこと忘れないでね!」

「はい、はい。了解っ!」

はあ。

リツコさんの言ってた、今のシンジは報告書のシンジじゃない、ってどういうことだろう?

先生の家にいた時のことって印象薄いんだよな。何か遠い出来事みたいだ・・・。もちろん覚えてるけど、 適当に人生を流してたってことかな?はっきり言ってどうでもいいって感じ・・・。他人事みたいだよ。・・・自分の事を『僕』って言ってたって?よく覚えていない。

デジャビュだっけ、記憶の混乱・・・。ここに来てから何回かあった。偽記憶の典型例で、初めての場所や光景のはずなのに過去に見たことがあると思いこむこと、既視感、既知感。

ここに来て使徒と遭遇する直前に道路に立っている制服姿の綾波を見たように思った。でも綾波は怪我で動けなかった筈・・・。あれはなんだったんだろう?リツコさんに初めて出会った時も初めてじゃないような気がした・・・何故だ?

まだある。綾波が住んでいたというマンモス団地。綾波が何気なく言う『言葉』。エントリー・プラグ・・・

俺は何か大事なことを忘れているんじゃないか?

・・・

・・・り。・・・かり。おい!碇っ!」

あ、いかん!

「は、はいっ!」

「碇!次、読んでみろっ!」

「はい!」

は、いいけど、どっからだぁ?

!メールだ!

『54ページの第2段落から!』

サンキューー。多謝。

「では、読みますっ!」

・・・助かった・・・いつの間にか思考の海に溺れてた。

さっきのメール、誰だろ?ん、相田ケンスケ?誰だっけ?座席表、座席表っと、あった。

眼鏡のあいつか・・・確か・・・メカ好きのミリタリー・オタクっぽい奴だったな…。

・・・ま、いっか。

『さっきはサンキュー。助かったよ』

と、お礼のメール、発信終了!

「相田君、さっきはありがとう、ほんと助かったぜ」

「いいって事よ。困った時はお互い様だよ。なあトウジ」

トウジね。『鈴原トウジ』。これも既知感・・・。でも何故苗字がすぐに出てくるんだ?さっきの座席表に載ってたから?

「せや、困ったことあったら何でも言いや。わしは鈴原トウジ、トウジって呼んでくれたらええわい」

「ありがとう、トウジ。俺もシンジでいいよ」

「じゃ、シンジ。俺もケンスケでいいからな」

「わかった」

「しかし今朝の綾波には驚いたよ。委員長に挨拶してたぜ」

「せやな。用もないと自分から喋っとる綾波見たんは初めてとちゃうかぁ?」

「そうだよな。俺は思わずシャッター切ったぜ」

「ケンスケってさ、いつもデジカメ持って歩いてんのか?」

「そや。ケンスケの奴はデジカメ命なんや。商売道具でもあるさかいな」

「それって撮った写真を売るってこと?」

「もちろんそうさ!撮った写真を自分だけこっそり見てたらオタクじゃないか?」

・・・撮ってるだけで十二分にオタクなんだよ、ケンスケ・・・声には出てないな。

「で、何を撮るのさ?」

「いろいろだよ」

「ふーーーーん。でも、綾波撮るんだったらモデル代払えよ」

「げ!」

「まあ、タダじゃ商売させてもらえへんっちゅうことやな。がははは!」

「碇君。レイと屋上でお昼食べるんだけど、一緒に行かない?」

「いいけど、ケンスケやトウジも誘っていいかな?」

「え、ええ。いいわよ・・・

ん?声が小さくないか?

「じゃ、誘ってくる。先行ってていいから」

「うん」

「ケンスケとトウジっていっつも購買のパンなの?」

「ああ、俺は親父と二人暮しだからな」

「わしもおじんとおとんと妹やからなぁ。弁当なんて作れるもんはおらんのや」

「そうなんだ」

「その点、碇君は恵まれてるのね。お弁当作ってくれる人がいて」

「うん。リツコさんが作ってくれるんだ。それ程暇な人じゃないはずだし、保護者といっても血の繋がりのない他人なのにね。だから感謝してる。ね、綾波」

「うん。感謝してる」

「リツコさんって、あのメールの人だよな。・・・美人なのか?」

「ああ、まあ美人の部類なのかな?よくわかんないや。あ、綾波。今のオフレコな」

「オフレコって何?」

「内緒ってことだよ」

「誰に?」

「リツコさんに」

「何故?」

・・・

「まあ、ええやないか。綾波もそんなに突っ込まんと。飯にしようや」

「「「「うん」」」」

「ヒカリのお弁当、美味しそう・・・

「そ、そう?一つ食べる?」

コクン、と綾波。で、口を、あーーーん、としてる。

「ねえ、みんな。みんなで口を開けないでよ・・・

つい釣られてしまった・・・

「おいしい・・・。ヒカリ、これ自分で作ってるの?」

「ええ。家のみんな、お父さんとコダマ姉さんと妹のノゾミの分もね」

・・・今度・・・教えてくれる?」

「え?ええ!喜んで!」


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