『俺と僕で何?』
第拾弐話 記憶の謎
『ピンッ、ポーーーーン』
あっ、来た!
「はーーーーいっ!」
『ガチャッ・・・』
「いらっしゃい!」
リツコさん、・・・そして加持さんがいた。
・・・。
「シンジ君・・・元気そうじゃないか、って言おうと思ってたんだけど、いきなり、泣くかぁ?」
・
「すいませんでした、加持さん」
「いや、こっちこそ失礼した。すまん。君にすれば当然だよな」
「・・・また逢えるなんて・・・信じられなくて・・・うう」
う〜ん・・・どうも『俺』よりも『僕』の感性の方が強いみたいだ。
「まあ、いいさ。で、リッちゃん。葛城は?」
「さあ、もう直ぐ着くと思うけど・・・。加持君に会いたくないのかしら・・・」
「それより二人とも中に入ってください。綾波も待ってますよ」
・
「やあ、レイちゃん。こんにちは。リッちゃんから聞いてるだろ。写真より老けてるけど、俺が加持リョウジだ。まあ、よろしく頼む 」
ああ、綾波はこの世界の住人のままだったんだ。
「綾波レイです。こちらこそ、・・・よろしく」
綾波って、人見知りするんだ。
加持さんも意外そうにしてる。
「お茶、用意したので・・・」
「おっ、ありがと。」
「ありがとう、レイ」
「い、いえ」
・・・緊張してるのかな?
・
『ピンッ、ポーーーーン』
あっ、ミサトさんかな?
「あ、僕、出ます!はーーーーいっ!」
・
『ガチャッ・・・』
「ミサトさん、いらっしゃい?」
ミサトさん・・・がいた。
・・・昨日も会ってるのに・・・その前も会ってるのに・・・・・・涙が出た。
「あーら、シンちゃあーんったら。そんなに嬉しがってくれちゃって」
言葉とは裏腹に・・・抱きしめられた。
ああ、本当に・・・本当にミサトさんに会えたんだ!
「ミサトさん・・・ありがとう」
「シンちゃん」
・・・。
「すいません。さ、どうぞ中に入って」
「え、ええ」
ちょっと・・・ためらい?
「おじゃまするわ」
表情が固い・・・。
・
「よっ!葛城っ!元気だったか?」
加持さん・・・軽すぎますって。
『バッチィイーーーーン!』
あっちゃーー・・・、やっぱり。
「・・・無様ね」
レイは目をパチクリ。
「あっ、あんたぁねぇ・・・あたしがどんな思いでここに来たか分かってんのっ!」
「ああ、そのつもりだ」
リツコさんの目配せで俺達三人は部屋をそっと出た。
・
「ミサトさん・・・怒ってますね」
「無理もないわよ。・・・でもこれからのことを考えると私も気が重いわ・・・。はぁ」
「どうしたんですか?」
「・・・リツコさん、大丈夫?」
「大丈夫よ、レイ。ありがとう。・・・そろそろいいかしらね?」
・
「ミサト。入るわよ」
「ええ、いいわ。もう大丈夫」
なんとか落ち着いたみたいだ。穏やかな表情に戻ってる。
「しっかし、不思議なもんよね。ったく。こんなことでもなきゃ、リツコは射殺もんだったかもしれないのよ 」
「そうね、って、知ってたのね」
「ま、まあね。でも、仕方ないわよ、あの状況下じゃ。加持も解ってたでしょうし、ね 」
「ああ。俺を仕留めるには一番有効な刺客だった訳さ、リッちゃんは」
そうだったのか。知らなかった・・・。つくづくガキだな、俺は。
「ごめんなさい。謝って済むことじゃないけど、本当にごめんなさい」
「いいって、いいって。みんな司令の手の平の上だったってことさ。誰のせいでもない。気にすることはないのさ 」
やっぱりすごいな、加持さんって。
「いいのよ、リツコ。本人も納得してんだから。あたしも悔しいけど納得してるの。この件はもう終わりにしましょ、いいわね 」
「了解」
「それより、現在の状況の確認と今後の対策よね」
「そうね」
さすがみんな立ち直りが早いや。
「リッちゃんが仕切ってくれ。君が一番状況が掴めているみたいだからな 」
「わかったわ。でもそれほど大差ないと思うわよ」
「いいから、どうぞ。進めて」
ミサトさんも真剣だ。
「じゃ、まず各人の記憶の確認ね。みんながこの世界、いえ、この環境と言った方がいいかしら、ま、この環境になる前後のことを話してみましょう。まず、ミサト 」
「んー、あたしの前の記憶は、シンジ君をエヴァのケイジ用リフトに乗せた後出血多量で朦朧として、何か、多分爆薬ね、が爆発したところまで、かな。で、意識が戻ったのは・・・3ヶ月前位ね 」
「じゃあ、加持君は?」
「俺?俺の前の最後はリッちゃんも知ってる通りで、こっちに来たのはドイツ支部でアスカのお守りしてた時だ・・・4ヶ月前位かな。リッちゃんはどうなんだ?」
「私はミサトと同じ位よ。前の記憶は碇司令が自分自身に同化させたアダムとレイとの融合で補完を発動させるのを止めようとして司令に射殺されてターミナル・ドグマのLCLの落ちたところまで。こっちでの最初の自覚はエヴァの冷却水の中。点検中だったからもう少しで溺れるところだったわよ。それが3ヶ月前位ね 」
「ぷっ!そりゃあ災難だったなぁ、まじで」
綾波は深刻な顔をしている。
「笑い事じゃないわよ。私の場合、状況が似てたから、生き返ったのかと思ったわ 」
あ、少し気が楽になったのかな?
しかし・・・今でこそここで平静にしてるけど・・・みんなかなり悲惨な状況だったんだな。
「そうするとみんな一緒に戻った訳じゃないんですね」
「シンジ君。シンジ君はどうだったの?」
「何がですか?」
「前の記憶よ。どこまで思い出したの?」
「多分、全部思い出してると思います。でも、はっきりしないんです。尋常な状況じゃなくって、なんかそれ自体が夢だったんじゃあないかって思える位なんです・・・」
「シンジ君、結局サード・インパクトは起こったのかい?」
「はい。発動はしたと思います。でも失敗でした、多分。・・・綾波は覚えてないの?」
「いいえ。覚えてない・・・」
「シンちゃん。ゆっくりでいいから話してみてくれる?」
「ええ、いいですよ。でも長くなりそうですからお茶とお菓子を用意して置きましょう。綾波、手伝ってくれるかな 」
「ええ、いいわ」
「じゃ、ちょっと休憩ってことで」
「へーい」
「俺、トイレ借りるわ」
「・・・どうぞ」
・
・
・
「あの・・・どこから話しましょうか?」
「じゃあ、悪いんだけど。あたしと別れてケイジに行ったとこからでいいかな?」
「はい。わかりました」
・
・
・
「そうか・・・。サード・インパクトは起こった、と見るべきなんだろうな」
「でも、失敗した、ということ?ねえ、リツコはどう思ってるの?」
「そうね・・・。サード・インパクトは発動された。しかしその発動は、司令の意図とも、ましてや、ゼーレの意図とも異なった方法で行われた、ということかしら 」
「どう違う訳なの?」
「ゼーレはアダムと使徒タブリスもしくは量産機との融合、碇司令はアダムとレイとの融合、でも実際はリリスと初号機との融合でなされた、のかしら?」
「なによ、リツコ!あんたにもわかんないの?」
「解かる訳ないわよ。知らないんだもの」
「俺も色々探ったが・・・肝心なことは完全に隠蔽されていた」
「だから事実と思われることを確認することにしましょう」
「そうだな。結局俺達三人はサード・インパクト未経験者ってこどだよな 」
「で、加持?あんたはその後今まで何やってたの?」
「あ?俺か・・・俺は自分の前の記憶の正体が何か、について考えてたよ」
「へ?」
「仕方ないだろ、誰にも相談なんて出来る状況じゃなかったんだから。せめてアスカも同じだったら楽だったんだが・・・ま、アスカが俺の記憶のアスカと違ったんで気が紛れたという面もあったんだがね 」
「アスカ、か。ねえ、リツコ?」
「何?」
「アスカもシンジ君とおんなじ状況なのかしら?」
「記憶喪失みたいじゃないか、ってこと?」
「ええ」
「実際に会ってみないと、なんとも言えないわ」
「わたしは?わたしはどうなの?」
・・・綾波。
「レイ、あなたのことはまだ何とも言えないわ。情報が少ないもの。…焦らないで、ね 」
「わかりました、リツコさん」
「私の調べた限りでは、前の記憶を持っていたのは、私、ミサト、加持君。この三人は確かで、それは今確認できたわ。あと可能性のあるのは・・・碇 司令ね」
「碇司令が?どうして?」
「状況が似てるのよ、私達三人とね」
「どういう事だい、リッちゃん」
綾波は僕の隣に・・・というよりも直ぐ側に寄り添うようにしている。・・・不安なんだ・・・当たり前か。
とにかく・・・僕と綾波は黙って聞いているしかない・・・。
「そもそも前の記憶を持ったまま、その記憶の過去の状況にいるということは異常なこと、それはいいわね 」
「「・・・」」
「結構。で、この状況を説明できる可能性を考えたわ。まず、夢。これは不可知論になるので却下。次に、記憶の混乱、言い換えれば、既視感または既知感の大規模なもの。でも、ミサトも同じ状況みたいだって分かったのでこの可能性は捨てた 」
「リツコ。何で不可知論なの?」
「だって、この世界が夢なら、夢だと結論付けても、夢から覚めなければ意味がないのよ。覚めない夢は夢かどうか確認できない、想像でしかないわ 」
「まあ、そうだな。これだけの現実感を持って自分自身が持続的に認識してるんだ 」
「そうね・・・霞を食べて生きていける状況じゃないわね」
「良くあたしも一緒だなんて分かったわね?」
「私の行動が前と違うからあなたの周りの状況も色々変わってきたのに、あなたの行動は私に対するとき以外何も変わってなかったからよ。あなたも気が付いてたんでしょ、私も一緒だって?」
「やっぱ、そっか・・・いいわ、続けて」
なんか随分と難しい話になってきたな・・・。綾波は解かってるのかな?
「回りくどくてごめんなさいね、レイ、シンジ君」
「あ、いえ」
「大丈夫です。続けてください」
・・・解ってるみたいだね。
「そうなると、可能性として一番考えやすいけど、科学者としては一番受け入れたくない結論にならぜるを得ないの」
「過去へのタイム・スリップ、かい?」
「・・・そうよ」
「あたしもそう思った」
「でもね、おかしいのよ、ミサト?」
「へ?何がおかしいのよ?」
「タイム・スリップなんて前例聞いたこともないし、発生のメカニズムだって解かる訳じゃないわ 」
「そりゃそうでしょうよ・・・。解かってたらノーベル賞もんだわよ」
「タイム・スリップと言うから誤解するのね。正確に言うわ。『自分自身が、自分自身の過去の記憶に極めて近いと思われる状態に、その状態から将来に起きたと思われる自分自身にまつわる記憶を持って存在している場合は、その肉体、かつまたは、精神に如何なる 事態が発生したのか?』ということかしら?」
「あんた、自分で言っときながら疑問形になってるわよ」
「仕方ないさ。で、リッちゃんの結論は、どうなんだい?」
「まず確かに言えるのは、この世界の時間が逆行したのではないわ。もしそうなら記憶も逆行してしまう。だから、その世界に存在するものには時間の逆行を認識することは出来ない。これこそ正しく不可知論ね 」
「それは、解かるわ。それに、あたし達自身が未来から逆行した訳でもないわね 」
「あら、ミサト。どうしてそう断言できるの?」
「馬鹿にしないでよ、リツコ。あたしだってあたしなりに悩んで考えたんだから。だって、そうでしょ。この世界にはあたしはこのあたししかいないのよ。それにこの体だって多分この時代のものよ 」
「・・・ご明察。おそれいったわ」
「へへーーん」
「えっ?じゃあ、どういうことになるんですか?」
思わず声に出る。
「そうね、記憶を持った精神みたいなものだけ過去に逆行してその時間の自分に上書きされた、という可能性もあるわね 」
「でも、全ての人が、じゃないんですよね」
「多分ね。でもシンジ君もそうだけど、私達三人にも時間差があったのよ。これからみんなが思い出すという可能性も否定は出来ないわ 」
「・・・リッちゃんはその可能性を既に否定してるんじゃないかい?さっき、俺達三人の状況が似ていると言ってだろ 」
「さすが職業柄記憶力がいいわね、加持君」
「いや、いや。大した事じゃないのさ」
「で、何よ。早く言いなさいよっ!」
あ、ミサトさんが切れかかっている。きっと判かんなくなってきてるんだな。
「三人の共通点は、分かるわ」
え、綾波ぃ・・・綾波は・・・判るってるのか?
「レイ?何か思い出したの」
「いいえ。でも共通点は分かる」
「綾波・・・まさか大学の同級生、なんて言わないよね」
ゲッ・・・睨まれた、のかな?言わなきゃ良かった。
「さっきリツコさんも言ってた。三人ともサード・インパクトを経験していない 」
「えっ?でも経験していない人達は他にも大勢いるよ。戦自が攻めてきた時に大勢が死んだんだ」
「まだあるのよ、共通点が」
「何がだい、レイちゃん?」
「その他大勢の人達とリツコさん達三人の違いは、わたしが知っている人か、知らない人か、だわ 」
「でも、それはシンジ君だって一緒じゃないのか?」
「いいえ、違うと思う。碇君は知らなかったんじゃないかしら?」
「うん。僕は知らなかった、と思う」
「私が撃たれた時にはシンジ君はいなかった。レイはいたけど・・・レイはまだレイだったわ。リリスではなかった」
「僕も一旦はLCLになったって言いましたよね。その時、みんなの感じがした。でも、この三人は僕の中でしか感じることが出来なかったと思うんです 」
「・・・」
「ちょっと、疲れたわね。休憩、というか、お昼にしましょう」
「そうね」
「そうだな」
・
・
・
「ご馳走様ーっ。しっかし、シンジ君はともかく・・・レイが本当に一人で料理 できるなんて・・・驚きだわ。とっても美味しかったわ、レイ」
「ミサトさん、いくらなんでも失礼ですよ、綾波に」
「いいの。ほんとのことだから」
「でも・・・」
「今こうしてみんなに食べてもらえて嬉しいの」
「そうか、それならいいんだけど」
「シンちゃーん、相変わらず優しいのねっ」
「そんなことないですよ、ミサトさん」
・
「じゃあ、リツコ!再開しましょ」
「そうね。どこまでだったかしら?」
「わたしが話した三人の共通点のところ・・・」
「あ、そうだったわね。レイが知ってるか知らないかの違いね。思い付かなかったわ 」
「何かわかったの?」
「いえ、何と無くなんだけど、私達三人の魂は記憶付きで保存されてたんじゃないかしら、LCLに 溶けること無く、ね」
「で、それが今の状況にどう繋がるんだい?」
「解からないわ」
「って、何よ!人を期待させといてぇ・・・」
・・・。
「最後にカヲル君が言ってた。『ヒトは、自分自身の意志で動かなければ何も変わらない』、と。綾波はこう言った。『だから、見失った自分は、自分の力で取り 戻すんだ。』、と。『たとえ、自分の言葉を失っても・・・。他人の言葉が取り込まれても…。』、と」
「「「「・・・」」」」
「・・・ところで、アスカはどうなってるんですか?加持さん、さっき自分の記憶のアスカと違うって言ってましたよね。何が違うんですか?」
「ああ・・・シンジ君も会えば直ぐに判るさ」
「・・・」
・
・
・
アスカ・・・。
アスカは何故あんなことを言ったんだろう?
何故LCLに帰って行ったんだろう?
・
結局今日はみんなの最後の記憶とここでの最初の記憶を確認するだけになっちゃったけど、まあ、仕方ないよね。考えてもわからないんだから。ただ、自分だけが特殊じゃないってわかっただけでも安心したと思う。
逆に不安なのは綾波、だ。
そして、アスカ・・・。
一体、あの二人はどうなったんだ?
『シンジ君とレイ、アスカの三人は私達とはかなり状況が違うし、その三人もみな状況が違うみたいね。今は想像すら出来ない段階だわ。言い方は悪いけど、シンジ君の最後の記憶を裏付けるものが何も無いもの。しばらくはレイとアスカの様子を見るしかないわ。でも、シンジ君。何か気付いたり思い付いたら、是非教えてね 』
リツコさんの言う通りだろう。
今はどうしようもない。
正直言えば、不安なのは僕も一緒なんだ。・・・考えてみれば僕自身、自分の記憶が本当か、ということに絶対的な自信がある訳じゃあ無い・・・夢かも知れない。
もしかすると、僕は精神病で、さっきの会話は僕の治療の為の作り話って可能性だって無いとは言えない気もするしな。
・・・リツコさんは、他のみんなには『僕』と『俺』の話をしなかった。
これは僕、いや?俺か?まあ・・・とにかく俺の特殊性・・・だよな。
・・・学校のみんなや綾波には『俺』で通した方がいいかな?
いいだろうな、・・・いちいち説明が面倒だ。
・
・
・
「「「ごちそうさま」」」
やっぱりリツコさんの手料理、感激だな。
記憶が戻ったせいかな、今日は余計にそう感じる。
以前のリツコさんのことを思い出しているからだろう。
前は、リツコさんは冷たい人だと思っていたもんな・・・。
でも、それは僕、いや、俺がそう思い込んでいただけなんだ。リツコさんの一面しか知らなかった・・・気付かなかっただけだ。
そうさ、前の『僕』の中のリツコさんだ、でも、今の『俺』の中のリツコさんと同じ人間だ。
リツコさんはリツコさんなりに前の経験で自分を変えたんだろうか?
何のために?
俺や綾波のためか?
それとも自分の?
加持さん、ミサトさんのため?
・・・。
分かる訳ないよな、俺はリツコさんじゃないんだから。
・
『コン、コン』
ん?
「はーーい」
『ガチャ』
あ。
「綾波?どうしたの?」
「碇君・・・ちょっといい?」
「あ、いいよ。入って」
「うん」
どうしたんだろ、珍しいな、この部屋に来るなんて・・・って初めてか、な?
「どうしたの?」
「今日のみんなの話、そして碇君の話、わたしだけ仲間外れみたいな感じがする 」
「・・・気にしてるの?」
「うん。わたしにはわからないの」
「何が?ってことはないよね。ごめん。記憶、だよね」
「うん。忘れているのか、そもそも記憶が存在しないのか、わからない・・・」
「それは仕方ないよ。綾波のせいじゃない」
悩んでいるのか・・・。
「もしかしたらサード・インパクトを起こしたのは、わたしかも知れないのに 」
「それは違う。違うと思う。サード・インパクトを起こしたのは俺だ。そして失敗させた、少なくとも不完全に終らせたのは、この俺なんだ。綾波は何にも悪くないんだよ 」
「でも」
「綾波が記憶を思い出せないのか、記憶を持ってないのか、それは俺にもわからない。でもね、今の状態の綾波には何の責任もない。それは確かだよね 」
「うん」
「気になるのはわかるけど、そのことを気にすることはないんだ、ね。みんなもそう思ってる 」
「うん。わかった・・・。ありがと、碇君」
「いいんだ。前の綾波には世話になった。いや、迷惑を掛けっぱなしだったと言ってもいい位だ。今度は綾波の力になりたい。みんなもそう思ってる。だから何の遠慮もいらない。笑ったり、泣いたり、怒ったり、時には悲しい事もあるかも知れないけど、でも、生きているんだから、生きてさえいればいつか必ず生きててよかったって思う時がきっとあるよ、そのうちきっと楽しいと思えることがあるさ 」
「え、ええ」
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