『俺と僕で何?』
第弐拾弐話 アスカとレイ(後編)
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『ピン、ポーーーン!』
あれ?
『はーーい!』
・・・。
『ガチャ』
『おはよう、レイ』
『おはよう、アスカ』
また来たのか、アスカ。・・・仕方ないな。
『ガチャ』
「おはよう、アスカ」
「今日は碇君、出て来たのね」
「うん。昨日あんな事言われたからね」
「碇君、今日はそう言う問題じゃないと思うわ」
「へ?」
「んもーっ!今日は訓練日でしょうが!」
「そうよ。だから迎えに来てくれたのよ、アスカ」
あっ!
「・・・」
「もしかして・・・忘れてたんじゃないの、シンジは?」
「忘れてたのね」
「別に忘れてた訳じゃないさ!」
ほんとは忘れてたけど・・・。
「・・・ま、いいわ。じゃ、行くわよ!」
「ちょっと待ってくれよ!訓練は午後だろ、まだ昼前じゃないか?」
「遅刻するよりはいいわ。碇君の荷物はわたしが用意しておいたわ。はい」
はい、って・・・あ、替えのパンツまで入ってるよ・・・。
「・・・」
「出来の良い妹でしかも可愛い!良かったわね、シンジ」
アスカ?・・・あ、別に嫌味じゃないんだ。
どうも前のアスカのイメージが強すぎるみたいで、意識過剰なのかな?
「行きましょ、碇君」
「行きましょ、って、昼飯はどうすんだよ?」
「本部で済ますわ。さ、行きましょ、碇君」
「・・・はいはい、わかったよ」
強引だなぁ、二人とも。逆らっても無駄だろうし・・・。
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「あら、三人ともえらく早いじゃないの?一体どうしたの?」
「あたしが二人を誘ったのよ、ミサト。別に早く来ちゃいけない、ってルールはないでしょ?」
「んーー・・・リツコ、なかったんだっけ、そういうルール?」
「何故私に聞くのかしら、葛城一尉?あなたは規則を読んでないの?」
リツコさん、いつになく厳しくないか?
「読んだわよ、ちゃんと。言い訳じゃないわ。自信がなかったから聞いただけなのに・・・そんなに怒る事ないじゃない 」
「リツコさん、いつもより厳しい」
あわわ、綾波・・・。
「そうね。少しイライラしてるのは確かだわ。でも自分の部下の就業規則を私に聞くのは基本的に問題あるわよ」
それはごもっともだと思います。声に出して言う勇気ないけど・・・。
「そうよ。大体このあたしが言ってる事に間違いがある訳ないじゃない!」
って、何えばってるんだアスカは・・・こういうところはおんなじだよなぁ。
「ねえ、俺腹減ったから食堂行ってるね」
「「駄目(よ)」」
えーーーー?
「何でだよ?」
「「一緒に行くの(よ)」」
「はいはい。早くしてくれよ」
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「いいんですか、リツコさんとミサトさんも来ちゃって?まだ昼休みじゃないでしょうに・・・」
「あーら、あたし達には勤務時間なんて関係ないもの」
「え?そうなんですか?」
「そうよ。他の一般職員の手前、みんなに合せてるけど、本当は関係ないのよ」
「へー、そうなんだ。知らなかったな。アスカや綾波は知ってた?」
「あたしは知ってたわよ」
「私は知らなかった。」
「レイの場合は勤務時間があるって事の方を知らなかったんじゃあないの?」
綾波、少し顔が赤くなった。・・・図星だったんだな。
さてと、何にしようかな?
「あたしはハンバーグ定食にするっ!」
アスカはほんとにハンバーグが好きなんだな。
「わたしはラーメン」
素ラーメン、か。
「私は和食セット」
ちょっと年寄り臭い、かな。
「あたしはねえ・・・レバニラ定食とカツ丼・・・と天婦羅うどん、かな 」
・・・それは食べ過ぎ、しかも高カロリー過ぎですよ、ミサトさん。
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「じゃ、始めようか。まずはストレッチからだ。アスカに任せるから適当に頼む」
「はーーーい」
アスカで大丈夫なのかな?
「じゃ、始めるわよ。あたしの真似してねっ!」
「「・・・」」
なんか嫌な予感がする…。
「せえーのっ!アイン!ツヴァイ!ドゥライ!」
・・・。
「あのさ、惣流。その体操ってどこで習ったの?」
「これはドイツ仕込みのグーテンモルゲン体操じゃない。知らないの?」
加持さん、知っててアスカにやらせたんだろうな。
「わたし、知らない」
「俺も知らないよ」
「ちょうどいいわ。これを機会に覚えなさいよ。歌も付いてるのよ」
「歌はちょっと無理だよ、ドイツ語知らないもん」
「わたしも無理」
「じゃ、体操だけでいいわよ。じゃ、初めっからね!」
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「ストレッチも終わったようだしウォームアップにしよう。まずはストロークだ」
「アスカとレイ、シンジ君と俺で組になろう」
「「はい」」
「加持さん、加持さんはレイと打って。あたしはシンジと打つわ」
「どうしてだい?」
「レイのコーチング、あたしがしてみたいのよね」
「惣流、コーチは加持さんの役目じゃないか?」
「そうだな・・・理由はなんなんだ、アスカ?」
「・・・別に深い理由はないわ。ただレイとのコミュニケーションの場を増やしたいだけよ 」
「そうか、まあいいだろう」
・・・。
・
「いい、レイ。スタンスはあまり広く取らないほうがいいわ。後の戻りが遅れるから」
「うん」
「それとテークバックももっと小さ目にして」
「うん、わかったわ」
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結局、アスカが綾波の指導をしている間、俺はボケっとしているしかなかった。
「・・・」
「まったくアスカのやつ。もともとはシンジ君の希望で始めた事なのにな。これじゃ主客転倒だな」
でも・・・。
「いいんですよ、俺は。アスカと綾波があんなに楽しそうにしてるんですから 」
「そうか」
こんな状態が続けられればいいんだけどな・・・。
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「どうだったの、今日のテニスは?」
「なんかアスカと綾波の交流の場と化してます」
「そう、なの?」
「ええ。ま、悪い事じゃないですよね」
「そうね」
「アスカと綾波の関係ってどうなんでしょう?」
「どう、って?」
「いい関係なんでしょうか?」
「自分で悪い事じゃないって言ったばかりじゃないの」
「いや・・・女の子同士の関係って俺にはわからなくて・・・」
「ま、そうよね。いい関係なんじゃないのかしら、今のところは」
「今のところは、ですか」
「そうよ。今後色々な変化は出て来るかも知れない」
「例えば、記憶の回復、ですか?」
「そういう事もあるわね」
アスカが綾波と仲良いのはアスカの記憶のせいなのか?
「リツコさん、今日少しイライラしてる、って言ってましたけど、なんでですか?」
「・・・」
『ガチャ』
「それはねぇ。次の使徒の事考えてるからよ」
ミサトさん!
「本当に神出鬼没ね、ミサトは」
「へっへー」
「要するに暇なだけね」
「随分な言われようね」
「事実でしょ」
やっぱりイライラしてるんだ、リツコさん。
「あんたも考え過ぎ、と言うか、考えてもしょうがない事考えるの止しなさいよ!」
「リツコさん、ガギエルの事を考えてるんですか?」
「そうよ。彼、って彼女?ま、いいわ。ガギエルの出番ってどうなるのかなと思うと夜も眠れないのよ」
「いいじゃないの、考えても分かる事じゃないんでしょ?そんな事で困る事ないわ」
「困るかどうか解からないから困ってるんじゃないの!」
「ですって」
「ですって、ですって!」
「もう。いい、リツコ。なまじ前の事を知ってるから悩むのよ。前の時は予備知識なしでなんとかなったじゃない。今回も大丈夫、案ずるより産むが易しよ」
「あなたは・・・どうしてそんなに平気でいられるのかしらね 」
「そこが科学者と軍人との違いなのよ、リツコ」
「・・・そうなんでしょうね」
「ねえ、リツコ。こういった事は筆記試験とは違うのよ。予習しただけじゃ戦いには勝てないわ。予習しなくても勝たなきゃいけないし、勝てればいいのよ」
勝てればいい、か。
でも、誰もがミサトさんみたいに割り切れる訳じゃないんだよな。
ミサトさんもなんだろうけど・・・。
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「なあ、シンジ」
「何、ケンスケ?」
「惣流と綾波って、最近仲良くないか?」
「そうだね」
「そうだね、ってあっさりしてるな、シンジは」
「別に悪い事じゃないんだから、いいじゃないか?もともと仲が悪かった訳でもないんだし」
「・・・そうだよな。別に変じゃないんだ、よな。って、シャッターチャンスじゃないか・・・」
また始まったよ。
「あーあ、平和だねぇ。な、トウジ」
「ああ、ええこっちゃ。平和っちゅうのは」
しかし、アスカは何であんなに綾波に構うんだろう?
「なあ、シンジ。カメラのファインダーからあの二人を覗いて見ろよ」
「なんだ、ケンスケか。でもどうして俺がそんな事しなくちゃいけないんだよ?」
「いいから言う通りにしろよ。見れば解かるからさ」
・・・なんなんだよ、一体・・・。
どれどれ、何が解かるって?
「・・・」
「な、解かったろう」
「・・・」
何が、な、なんだ?
「シンジ・・・解からないのか?」
「・・・」
解からない・・・。
「どれ、わいが見たるわい」
トウジ、解かるのかな?
「おーー。二人ともええ感じやないかぁ。こりゃまるで姉妹やな」
えっ?
「ちょ、ちょっと・・・もう一回見せてくれ」
「おお、ええぞ。ほら、シンジ」
・・・。
「シンジには解からんようやなぁ・・・」
解からん・・・。
「シンジにゃ、無理か。ま、自分の妹だからかな?」
そうなのか?
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アスカが姉で綾波が妹、外交的で明るい姉、やや内気で天然な妹。
背もアスカの方が高いし、って・・・綾波は同年代にしては背が低いよな。
良く考えたら綾波って厳密には14才じゃないし・・・。
結局俺には良く解かんなかったけど、ケンスケやトウジには綾波とアスカは姉妹に思えたらしい。
いや、俺は解からないんじゃない。解かろうとしなかっただけだ。
前のアスカと綾波の事を引きずっているだけなんだ。
今のアスカと綾波には関係のない、責任のない事なのにな。
俺は・・・これじゃリツコさんと一緒だ。
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「シンジ君、おはよう」
「おはようございます、リツコさん」
「シンジ君は忘れてると思うけど、今日はあのJAのお披露目の日よ」
そうだったんだ・・・。
「仰る通り、忘れてましたよ」
「今回も仕組まれた暴走が起きるんですか?」
「前とは趣向を変えたわ。加持君の提案でね」
「今度は何をするんですか?」
「今日は駄目、明日本部で話すわ。加持君との約束なのよ」
「・・・リツコさん、俺は明日どうすればいいんですか?」
「今回はミサトも無茶しないけど、三人とも本部で待機してもらうから」
「三人ともですか?」
「そうよ」
「わかりました」
「レイもお願いね」
「はい」
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前回はJAの制御プログラムを操作して暴走するように仕組んであった。
でもミサトさんは知らされていなかったから、ミサトさんはあんな無謀な事をした。
そのとばっちりで俺も駆り出されたんだ・・・。
ミサトさんのあの行動がなかったら、どう決着したのかな?
爆発寸前にシステムが急に正常に戻って、チョン、だったんだろう・・・。
それってなんか、いかにもネルフがやりましたよ、って感じでバレバレじゃないか。
・・・もっと何とかならなかったのかって思うよな、今は。
三人とも待機だなんて・・・今度はどういう趣向なのかな、加持さん?
『ゴチッ!』
・・・電柱かよ。
「碇君、大丈夫?」
「うん」
「ボケボケっとしてるからよ」
「よそ見じゃなくて考え事してたんだよ」
「どうだか?」
「何を考えていたの?」
「明日の事さ」
「明日は本部待機でしょ」
「ああ。惣流は何の為の待機か聞いてるのか?」
「そう言えば聞いてないけど・・・待機なんだから待機という事なのよ!」
「・・・」
意味不明だよ、アスカ。相変わらずだな、そういうとこ。
「レイは何か聞いてるの?」
「いいえ。でも、明日本部で説明があるそうよ」
「そうなんだ。じゃあ、シンジも聞いてないのね?」
「うん」
「何かの訓練なのかしらね?」
「でも、待機なんだから訓練じゃないだろ」
「シンジ・・・待機そのものが訓練かも知れないじゃない。それに待機中に抜き打ちで何かあるのかも知れないわよ 」
「そうね。・・・そういう考え方もあるのね。アスカはやっぱり違うわ 」
「綾波、それって褒めてるのか?」
「当然でしょうがっ!」
アスカには聞いてないんだけどな・・・。
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綾波にとってアスカって綾波何なんだろう?
アスカにとって綾波って綾波何なんだろう?
今の俺にとってのアスカは、綾波は何なんだろう?
綾波にとってアスカは友人であり姉みたいな存在。
アスカにとって綾波は友人であり妹みたいな存在。
俺にとって綾波は戦友であり妹みたいな存在。
俺にとってのアスカは?
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「ねえ、綾波」
「何?」
「綾波にとってアスカって何?」
「友達」
「・・・そりゃそうだね。」
「でも、家族でもある。それは碇君もリツコさんも同じ」
アスカも家族?
「家族って・・・リツコさんがお母さんで、俺が兄貴、アスカは?」
「お姉さん」
「そうか・・・でも俺達はアスカに隠し事をしている」
「悪意がある訳じゃないわ。それにそれはわたしにも言える事」
「・・・」
綾波がアスカに対してか、俺が綾波に対しての事なのか?
「でも、わたし達もいずれは碇君のように思い出すかも知れないわ」
「・・・」
・・・綾波には無理かも知れないよ。
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