『俺と僕で何?』


第弐拾参話 巨人達の運動会


「おはようございます」

「おはよう、シンジ君」

「おはよう、碇君」

「あ、おはよう、綾波」

そう言えば、最近の朝飯って二人に任せっ切りだな・・・配膳だけでもやるか。

「こうして三人で一緒に外出するのって久し振りですよね」

「そう言えばそうね」

「今度、みんなでどこかに行きませんか?」

「いいわね。近場じゃないと駄目かも知れないけどね」

「近場でもいいですよ。綾波はこの街以外のところって行った事あるの?」

「いいえ、ないわ」

「この辺だったらハイキングなんていいかも知れませんよ」

「そうね。青葉君あたりが企画してくれそうね」

「ハイキング・・・『山野・海辺などを自然を楽しみながら歩くこと』 」

「この辺りだったら海も山も自然が残されているからね。弁当を作って持って行くんだ」

・・・楽しい、事なのね」

「そうだよ」

「三人とも揃ったわね」

「「はい」」

「ミサト、待機の理由、教えてくれるんでしょうね?」

「いいわよ、アスカ。今日は本部での待機命令なんだけど、実はもう直ぐエヴァで出動してもらいます」

「出動って・・・使徒が来たの?」

「そうじゃないわ。日本重化学工業共同体の開発した『ジェット・アローン』、通称『JA』という巨大ロボットと勝負してもらうわ 」

「ええーーっ!何よ、それーっ!勝負って一体何で勝負すんのよ?」

「色々よ、細かい事は加持に任せてあるの。ですから今回は彼の指示に従ってもらう事になるわ」

「それを今日までわたし達に教えなかった理由は何ですか?」

「加持の希望だったのよ、レイ」

・・・

「納得いかないって顔だな、シンジ君」

「加持さん!」

「JAはさっきも言ったように日本重化学工業共同体が開発した一種の戦闘用ロボットで、その目的は使徒の殲滅にある 」

「ロボットで、ですか?」

「ああ、そうだ。ところがこいつの能力では使徒とは全く勝負にならないのさ。で、実戦配備はご遠慮頂きたいんだが、口で言っても分かる連中じゃなくってね。ネルフとしてもある意味、実力行使せざるを得なかった、という訳なんだ 」

「それでどっちが優秀か、勝負する事にしたんですね」

「その通りだ」

「で、勝負の種目は何なのよ?」

「零号機は遠距離射撃能力、弐号機は近接戦闘能力、初号機は持久力、という事にした」

何だよその持久力って・・・

「三機対一機なんて卑怯じゃない!」

「あちらさんの動力は原子炉だから別に構わないんだよ。競技自体は一対一だからな」

「各機の能力分担の根拠は?」

「MAGIによる分析結果だよ、レイちゃん」

・・・どうして持久力が俺の担当なんですか?」

「気になるかい?」

「気になりますよ」

「納得してもらえるような説明となると時間がかかるぞ」

「シンちゃん、実は時間がないのよ。悪いんだけど、その説明は…終わった後にしてもらえないかしら?」

はあ・・・だから今日まで教えてくれなかったんだな。

「はいはい、分かりましたよ」

「本日はお忙しいところ、日本重化学工業共同体が開発したジェット・アローンの実演会にお越し頂き、誠にありがとうございます。後程管制室の方へ席を移し、実機をご覧頂きますが、試運転のほかにあの有名なネルフのエヴァンゲリオンとの模擬戦も予定されていますので楽しみにして下さい 」

随分と余裕があるじゃないか?

加持さん、段取りとか勝算とか、大丈夫なんだろうな?

『では、先ずは5キロメートル走です。ネルフ側の選手は弐号機です』

なんだよ、『5キロメートル走』って、運動会かよ、これ?

『勝者は弐号機』

ま、圧勝だな。

『次は立ち幅跳び、ネルフ側の選手は零号機です』

運動会にもこんな競技はねえぞ。

『勝者は零号機』

・・・これも圧勝か・・・

『次は腕立て伏せ、ネルフ側の選手は初号機です』

こら、『腕立て伏せ』って競技かよ!・・・これが持久力?

『勝者はジェット・アローン』

・・・体力対原子力じゃ勝負になんないっつうの!

『次は長距離射撃、ネルフ側の選手は零号機です』

『勝者は零号機』

綾波の奴・・・瞬撃だったな・・・Aは照準すら合わせる暇なかったんじゃないか?

『次は近接格闘、ネルフ側の選手は弐号機です』

『勝者は弐号機』

一瞬で決まった。

JAは敏捷性に欠けるんだな。旋回速度が遅いから後ろを取られてしまうんだ。

アスカじゃなくても、勝負にならないよ。

でも、段々と勝負っぽくなってきたな。

『さて、最後の競技は土木作業となります。ネルフ側の選手は初号機です』

ガクッ!

『この競技は先の第三新東京市の戦闘で殲滅された第伍使徒ラミエルの残骸を解体するというものです。解体のルールを説明します。解体に当たっては・・・

競技種目で言うと、射撃、格闘、それと・・・土木作業、落差があり過ぎじゃないですか、加持さん・・・

これって競技にかこつけた事後処理じゃないか・・・今回も予算が足りないんだな、きっと。

『勝者はジェット・アローン』

はあ、はあ、はあ、・・・あ、当たり前だろっ!って、これが加持さんの本当の狙いか・・・

『さて、用意された競技はこれで全て終了となります。当日本重化学工業共同体が開発したジェット・アローン、ネルフ側が開発したエヴァンゲリオン、それぞれ全勝とはなりませんでした。以上の結果も含めまして、ご質問があれば承りますので、ご遠慮なくどうぞ 』

『はい』

『これはご高名な赤木リツコ博士。お越し頂きまして光栄の至りです』

『質問、よろしいですか・・・

「お疲れ様、シンちゃん」

「いえ。あのアスカと綾波は?」

「もう二人でショッピングに行ったわよ」

「そうですか・・・今回はミサトさん、会場に行かなかったんですね。」

「今回はあたしのやる事ないもんね」

「そうなんですか?」

「そうよ。だってあたしは作戦家なのよ。個別能力の競技会には無用の人間よ」

「そういうもんですか?」

「そういうものなのよ、シンジ君」

「リツコさん!」

「質問会は終わったんですね」

「ええ、今回は何の問題もなかったわ。和気あいあいとしたものよ」

「そうなんですか・・・というよりも、どうして今回は和気あいあいになっちゃうんですか?」

「全ては仕組まれたものなのよ、加持のシナリオでね」

「JAをネルフに引き込むため、ですか・・・

「ご明察、さすがはシンちゃんね」

そんなの、ガキでも分かりますよ!

「加持さんはどうしたんですか?」

「加持君は先方との事後処理があるので残ってるわ。JAに関しては、本来は実戦配備を阻止する事を目的に保安諜報部、というよりも加持君が総司令から直接請け負った任務だったの。だけど、加持君も前回の事知ってるし私達三人で相談してJAを上手く利用することにしたの 」

「JAは射撃にも格闘にも向いていないけど、持久力と精密さにおいてエヴァを上回っている」

「そいう事っ。だいたいがリアクター内蔵の兵器を格闘戦なんか、危なくって使える訳ないわよぉ」

「それで使徒戦の事後処理用としてネルフが使うんですか、あれを?」

「そうよ。JAによる事後処理は技術開発部担当で具体的には私が指揮を執るわ」

「リツコさんが、ですか?」

「そうよ。もともと使徒もこの要塞都市も私の管轄だもの」

「そうでしたね。

「でもね、シンジ君。使徒戦でも格闘戦じゃなければJAにも使い道はあるかも知れない。その辺の検討は戦術作戦部、ミサトの仕事ね」

「うーーん。それはそうかも知れないんだけど・・・うちのオペレーターに操縦出来ないわよ、多分。時田シロウ、あの男も含めてチーム毎ネルフに移籍ってのがいいんだけどなぁ。あ、もちろん、リツコが嫌ならいいのよ。嫌いなんでしょ、あの男

「あら、私は別に嫌いじゃないわよ」

「そうーお?前は随分とおかんむりだったわよぉ・・・

「そりゃあ頭に来たのは確かよ。でもね、立場が逆だったら私も同じ事をするもの」

「何よ、それ・・・

「私は自己中心的な人間なのよ。生物そのものの本質が自己中心的ならば、私はその典型ね」

そんな事はないですよ、リツコさん。

・・・で、俺に出来る事が何かあるんですか?今回は俺、ダシに使われたみたいですけど 」

「ごめんね。ダシにしたのは加持だけど・・・今特にやってもらう事はないわ。ダシにされたシンちゃんには説明しなくちゃいけないと思って話したのよ 」

「はい」

それってお詫びって事なのかな?

・・・あんまり嬉しくはないけど・・・

「シンジ君。もし今回のこの世界のサード・インパクトでまた再構築するようなことがあったら、その際にはネルフの資金を増やすように配慮して頂けるかしら・・・

「そんなケチケチしたもんじゃなくて、あたし達の個人資産をドーーンと増やしておいてね」

「はあ?」

「あ、それと、今日はあたし徹夜だからアスカはリツコんとこに泊まるわ。よろしくね」

「ただいまー」

アスカ達、まだ帰ってないんだ。

「ニャー」

「よう、チャチャ。今日の出迎えはお前一人なのか?」

俺もどっか寄って帰れば良かったかな・・・時間が中途半端になっちゃったよ。

ま、風呂でも入るか。

気持ち良かったぁ・・・あれ、アスカ達、帰って来たのかな?

「あ、シンジ。今晩はここに泊まるわよ」

「いらっしゃい。ミサトさんから聞いてたよ」

「碇・・・迷惑じゃなかった?」

「別にアスカがるのに俺に断る必要はないさ。ミサトさんが夜勤の時にはいつでも気軽に泊まってもらっていい 」

「ありがとう」

「ありがとね」

「しかしシンジそれにしても良くこんなに沢山買って来たもんだなぁシンジ

「へへー、いいでしょ」

「一体何買ったんだよ」

「もちろん、洋服よっ!」

「綾波もか?」

「わたしは洋服と本」

「へー、どんな本?」

「これ」

・・・

『脳と心』、『心の成り立ち』、『魂は存在するか』、『女と男の役に立つかもしれない行動心理』、『人間関係を良くする方法』、『時間と宇宙への序説』、『パラレル・ワールドの不思議』・・・

なんじゃこりゃ、綾波も色々と考えているんだろうけど、ちょっと・・・悪食じゃないか?

「レイったら、本屋に時間かけちゃって・・・読書家なのね 」

「アスカはブティックに時間かけ過ぎ」

確かにすごい量だよな、これ。

「こんなに入り切らないだろ」

「あら、ここに仕舞うのは半分よ。あとの半分は持って帰るの」

まさか・・・

「もしかして同じの二着買ったのか?」

「当然でしょ」

はあぁ・・・


「なあ、シンジ。見たか、あの巨大ロボット」

え?

「な、なんだよ、巨大ロボットって?」

「なんや、シンジ達は気が付かんかったんかぁ?」

「だから何をだよ?」

「なあ、シンジ。ネルフの機密事項に守秘義務があるのは分かるが、それも程度問題だぞ」

程度問題って言われても、ケンスケ達は昨日の実演会の事は知らない筈だぞ?

「どうかしたの、相田君?」

「ああ、綾波は今朝のあのロボット、見たか?」

「いいえ、見ていないわ」

・・・マジかよ」

「今朝登校してる時、そいつがこの前の使徒っちゅう奴を解体してたんやでぇ」

「へー、ほんとに気が付かなかったなぁ。あいつが早速解体作業やってるなんて」

「何だよ、やっぱり知ってるんじゃないか」

「う、うん。知ってはいたけど、今朝見てないのはほんとだからいいじゃないか」

「ほんまに気が付けえへんかったんかいな?呆れたやっちゃな・・・

「ほら、あれだよ。シンジのやつ、今朝は三人仲良く登校だったじゃないか。大方、美少女二人に見惚れて気が付かなかったんだろうよ」

「そ、そんなんじゃないよ」

「あら、美少女二人なんかメじゃないってことぉ?」

げ!アスカ・・・

「アスカも気が付かなかったのか?」

「ねえ、相田」

「な、なんだよ」

「あんたさ、巨大ロボットが使徒の残骸を処理してんのを見たんでしょ」

「そうだよ」

「相田はシンジの住んでるところ、知ってるわよね」

「ああ」

「通学経路も知ってるわよね」

「ああ。あっ!」

「そういう事よ。気が付かなかったのぉ?」

「ああ。俺としたことが迂闊だったよ」

「そうかしら?」

「いや、本当に気が付かなかったんだ。別にカマを掛けた訳じゃない」

「ま、いいわ。で、それがあんた達に何か関係があるの?」

「いや・・・そう改まって言われると、まあ直接の関係はないな。でも何の説明もなしにいきなり自分の住んでる街に巨大ロボットが出現したら話題にしない方が不自然なんじゃないか?」

「その気持ちは分かるけど、公式発表のない事を話題にしてるとしょっぴかれるかも知れないわよ」

それは言い過ぎなんじゃないか?

「しっかし、加持さんも手回しがいいわね」

「もともとそういう事をさせるために昨日の勝負を仕組んだんだろ」

「そうね。その点では碇君が一番の貢献者」

あ、綾波ぃ。

「俺は一応一所懸命やったんだけどな・・・

「まあ仕方ないわよ。相手は原子力なんだから疲れないんだもん」

「惣流が慰めてくれるなんてな」

「あら、意外なの?」

「碇君、それってアスカに失礼」

「あ、ごめん」

「いいわよ、別に。シンジがあたしの事どう思ってるかって、よーーーーくっ、解かったわっ!」

あーあ、綾波が余計な事言うから・・・

「で、でもさ」

「何よ?」

「あのJAを誰が何処で操作してるんだ?」

「「・・・」」

『ただいま』

ダダダダーッ!

『あら。トト、チャチャ、ミミ。ただいま』

『『『ニャーーン!』』』

・・・

いつもの事なんだけど、えらい差別のされようだよな・・・

綾波にも結構なついてるのに・・・俺の方がまだ付き合いが短いからなのかな?

・・・そういう理由じゃない気もするけど。ま、嫌われてる訳じゃないみたいだからいっか。

「お帰りなさい。今日は早いですね」

「ただいま。お客さんよ」

「あ、ミサトさん。いらっしゃい」

「お邪魔するわよ、シンちゃん」

「はい」

「あら、レイは?」

「あ、今、風呂です。もうじき出ると思いますよ」

「わかったわ。先、着替えてくるわね」

「ミサトさん、今日はどうしたんですか?」

「いえね、チョーーッチ相談したい事があってね」

「そうだんですか?」

「碇君、オヤジ」

「あ、綾波!」

・・・シンちゃん・・・そんなオヤジギャグ言ってると嫌われるわよ 」

・・・

「加持の奴、遅いわねぇ・・・

「多分もう直ぐ来るわよ」

「あいつが時間通りに来た事なんて一度もないわよぉ」

「それはデートの時の話でしょ。仕事の時は違うわよ」

「そうかしら?」

・・・

「わりぃ、わりぃ。遅れたかな?」

・・・まずいんじゃないですか、加持さん?

「あんたねぇ、もうちょっと早めに来るとか出来ないのぉ?」

「遅れてはいないわ。でも・・・私の家、盗聴なんてしてないでしょうね?」

「まさか!何言ってんだよ、リッちゃん」

ほら・・・加持さん、タイミング良過ぎなんですよ。

「まあ、いいわ。じゃ、全員集まったから始めましょ」

「何をするんですか?」

「もっちろん!次の使徒、第六使徒ガギエルの対策よ」

「葛城一尉。使徒が発見されたんですか?」

「そういう事じゃないんだけどね」

「でも・・・弐号機はもうこっちに来ちゃってますから、ガギエルは出番がないんじゃ・・・

「前回の事を思えばそう見えるかも知れないが、状況が変わったんだよ、シンジ君」

「どう変わったんですか?」

「なんかね、何時の間にか参号機がこっちに輸送されてんのよぉ・・・

「ええっ?」

「明日佐世保に着いて明後日には横須賀に向けて出向する予定よ」

「参号機が?」

「何を話しているのか、わたしには解からないわ」

「あ、ごめん。綾波にはまだ説明してなかったね」

「そういう事だったのね。解かったわ」

「問題は、何故今この時期に参号機を輸送するのか、ね」

「そうね。パイロットがいないわ」

「パイロットがいないのは前回も同じだったの。ミサトに言った事は本当だったのよ。参号機の輸送決定後に私が選んだんだもの」

「そう。・・・じゃあ今回は誰にするのかしら?」

「さあ、どうするのかしらね?」

「どうするのかしらね、って、他人事じゃないでしょ!」

「そんなに突っ掛かんないでよ。司令の命令は受けてないんだもの。勝手に選んでるんじゃないのよ」

「まあまあ、そんなにイライラするなよ。二人とも折角の美人が台無しだぞ」

「あんたに誉められても全然嬉しくないわよ」

「そうね、何か白々しいわね」

「あの・・・話が進んでないような気がするんですけど・・・

「気のせいじゃないわ、碇君。進んでないもの」

「「「「・・・」」」」

・・・綾波、怒ってるのかな?

「ごめん、ごめん。そんなに怒んないでよ、レイ」

やっぱ怒ってるように見えるよな。

「そうね。今は前回のことよりも今後の事を考えましょう。で、加持君の意見は?」

「え?いきなり俺に振るのかい?」

「だって、プロでしょ」

「まあ、どうしてもガギエルを出現させたいんじゃないかな。今回の輸送は佐世保までが航空機輸送で、佐世保からは戦艦輸送だ。いかにも不自然だ」

・・・それって・・・父さんが仕組んだ事ですか?」

「さあな・・・あるいは委員会、か」

「加持さん」

「なんだい、レイちゃん?」

「使徒は来るべき順番が決まっているの?」

「うーーん。ネルフを裏で操るゼーレという組織があるんだ。そのゼーレは『裏死海文書』の記述に従って事を進めているという話がある」

「何ですか、その『裏死海文書』って?」

「ゼーレが持っているとされる物で人類がこの世に現れた時には既に存在していたと言われている」

「では、それは人類が残した物じゃないの?」

「さあ、どうだろうな?『裏死海文書』と言っても単なるコード・ネームかも知れないし、デマかも知れないしな」

なんだかまた話がずれて進んでないような・・・

「綾波、また話がずれていってるみたいだけど」

「あ、ごめんなさい」

「いいよ。でも今回はどうなるのかな?」

「そうよ、ガギエルが現れたらどうやって、しかも、誰が倒すって言うの?」

「葛城、それは俺達が考える必要はないんじゃないか?」

「なんでよ?」

「司令達が考えてくれるって事よ、ミサト」

「そんなんでいいんですか、リツコさん?」

「少なくともシンジ君のクラスメートから参号機用のチルドレンは選出されていない。それに使徒が参号機に接触してもサード・インパクトは起こらない。従って私達は直ぐに使徒を倒す必要はない。むしろ碇司令や副司令の出方を見るいい機会かも知れない。そういう結論でいいのかしら?」

「リツコの言う通りかも知れない・・・弐号機の早期配備について司令が反対しなかったのも今回の参号機の輸送で埋め合わせられるとの前提だったかもね 」

結局、俺達は父さん達がどう対応するのかを見極めるため、特に何もしない事になった。

・・・『裏死海文書』、か。

仮に人類がこの世に現れた時には既に存在していたとしたら…それは『オーパーツ』だよな。

『オーパーツ』・・・Out Of Place Artifacts、時代や文化に合わない場違いな遺物。

人類の手によらない物だったら、何語で書かれた物か知らないけどどうやって解読出来たんだろう?

人類の手による物だったら、それは時間を遡ったか、あるいは・・・それだけ巻き戻されずに残されたのか・・・

まあ、存在が確認されていない物についてあれこれ考えるのは時間の無駄か・・・

存在が確認されているのは、

『エヴァ』、『アダム』、『使徒』、そして・・・『リリス』。

なんでみんな『旧約聖書』絡みのネーミングなんだろう?

ゼーレってユダヤ教関係なのかな?

もしかすると、俺達は色々な物の名前に気を取られて、肝心な事を見誤っているんじゃないのか?

『エヴァ』、『アダム』、『使徒』、『リリス』、そして・・・『裏死海文書』。

みんなそれぞれに意味を持った言葉だし、その言葉から概念的なものが思い浮かんでしまう。

でも、良く考えてみると、そこには一番重要な『神』がいない。

全ての事を『旧約聖書』を中心とした世界観で捉えようとし過ぎているんじゃないのか?

・・・

だけど・・・何かもっと大事な事を忘れているような気がする。

一体何だろう?


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