『俺と僕で何?』
第弐拾七話 カヲルとレイそしてシンジ
「・・・」
俺は・・・アスカが話し方とかを使い別けしてたのには何となく気が付いてはいたんだけどさ、だからどう、って事は・・・別に理由を知しりたいなんて思った事はなかったんだよなぁ・・・。
「どうしたんだい、シンジ君?」
「あ、いや、何でなのかなぁ、と思ってさ?」
「理由が判らないのかい?」
「・・・うん・・・気にした事がなかったんだよ 」
「なんやそれは・・・」
「ま、碇だったらありそうな感じだな」
何か少しムカツク・・・。
「トウジ・・・ケンスケ・・・。じゃ、じゃあみんなは分かってるのか?」
「いいや、俺達には分からないさ」
「え?なんだよそれはぁー」
「本当の理由は惣流本人にしか解らないって言う意味だよ。な、トウジ」
「ああ」
「委員長だってそうだろ?」
「え、ええそれはそうね」
何を言いたいんだ、みんなは?
「ちょっと!」
あ!
「な、何、アスカ?」
「んもう・・・あたしには聞かないのぉ?」
「あ、そうだよね・・・アスカが答えてくれれば万事解決だよね 」
「そうよ!」
「で、何でなの?」
「最初にヒカリが言ったからよ」
「え?わたし何て言ったのかしら?」
「えっえーー!あんた覚えてないの、ヒカリ!」
「ごめんね、アスカ。なんだったかしら?あはは・・・」
「『友達なんだからそんな丁寧な言葉遣いする必要ないのよ』って言ったじゃなーい」
「そう言えばそんな会話があったわね・・・でも・・・それって碇君が言ったをじゃなかったかしら?」
え!俺だったっけ・・・?
「まあ誰が言ったなんてどうでもいいわよ、今更ね。友達なんだから色々付き合いしてるうちにどうせ本性バレちゃうじゃない」
「ふーん・・・惣流さんにとっては・・・シンジ君も単なる友達なのかい?」
「渚、何を言いたいってんのよ、アンタは!」
「別に僕はいいんだけどね、その方がね・・・」
・・・カヲル君・・・。
「鈴原トウジ君と洞木ヒカリさん、碇シンジ君と惣流アスカさん・・・レイちゃんと相田ケンスケ君と僕が余ってしまうね。僕達も仲良しになろうね、相田君・・・いや、ケンスケって呼んでもいいかい?」
なんて危ない雰囲気漂わせてるんだっ、カヲル君!
「あ、ああ・・・構わないよ・・・トウジやシンジもそう呼んでるんだし・・・」
「君は優しいんだね。全く、好意に値するよ、ケンスケ」
「好意って・・・?」
「『好き』って事だよ、ケンスケ」
「「「「「・・・!」」」」」
・
・
・
カヲル君は一体どうしちゃったんだろう・・・?
マジじゃないとは思うけど・・・好意の対象がケンスケだなんてなぁ。
『コンコン』
ん?
『お兄様、ちょっといいかしら?』
「あ、レイ?いいよ、入って」
『ガチャン・・・』
「どうしたの、レイ?」
「お兄様に話しておかなくてはいけない事があるの・・・」
「そうか・・・俺もレイに聞いておかなきゃいけない事があったんだよ 」
「そうなの」
「うん。でも、まずはレイの方の話しからでいいよ。で、何、話しって?」
「渚君の事よ」
「カヲル君の事?」
「最初に会った時に何が起こったか、まだ話してなかったから」
「あ、それなら俺の話したかった事と同じだよ」
「そうなの?」
「ああ。あの時何が起こったのか・・・実はよく判らないって言うか・・・実際覚えていないんだ 」
「そう。」
「俺が覚えているのはさ、レイがカヲル君と握手して、俺もカヲル君と握手しようとしたところまでで、その後の記憶が途切れてるんだ」
「・・・」
「リツコさんに話したら、俺の記憶は正確じゃないみたいなんだ」
「そうみたいね、リツコさんから聞いたわ」
「教えてくれないか、何が起こったのかを・・・」
「ええ、いいわ。でも・・・私が教えられるのは自分に何が起こったかという事だけなの。お兄様に何があったかは知らないの。私が気が付いた時には使徒は殲滅されていたわ 」
「・・・そうか・・・分かったよ。レイが知っている事だけでいいんだよ 」
「・・・どこから話せばいいかしら・・・あ、私が渚君と握手しようとして、何故か気が遠くなって…お兄様が『綾波』って叫んだの。それは覚えてる?」
「いや・・・それが覚えてないんだ・・・と言うよりも俺の記憶とは違うんだよ。だからレイが覚えている事を話して欲しいんだ」
「・・・分かったわ 」
・
綾波はカヲル君と握手した途端に気が遠くなって夢見みたいな感じになっていたらしい。
その夢の内容を聞いている・・・。
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わたしが見た夢のようなお話し・・・。
でも・・・わたしは今は知っている。
それが前回のわたしの記憶の断片だと言う事を・・・。
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碇君が新しく更新されたIDカードをわざわざ届けに来てくれた。
わたしはシャワーを浴びていて、碇君がいるなんて気が付かなかったから・・・裸のまま・・・碇君と会ってしまったわ。
あの時はなんとも感じなかったけれども、今だったら大変な事・・・とても恥ずかしい事。
わたしの裸を見られただけじゃなく・・・胸も触られてしまったの・・・。
その後、碇君が碇司令の悪口を言うので…わたしは碇君を叩いてしまった・・・胸が痛い・・・これは後悔という気持ち。
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わたしは碇君と一緒に戦っていた。
最初に戦ったのは、ラミエル・・・あの変てこな八面体の使徒・・・。
待機中に碇君に聞かれた・・・わたしがエヴァに乗る理由・・・。
あまりうまく説明出来なかった。
わたしは碇君を護るという命令に従って、盾を持って加粒子砲からの攻撃を遮断し碇君を、いえ、初号機を護った。
ブラグ内のLCLが高温になって気を失った。
でも・・・碇君が助けてくれたの。
その時の碇君のイメージは、零号機の実験の失敗の時に助けてくれた碇司令と一瞬ダブッたけれど、碇君のわたしを気遣う気持ちが伝わってきて・・・そう・・・嬉しかったのね・・・わたし・・・。
わたしは初号機を護ったつもりだったけれども・・・本当に護ったのは碇君だったのね・・・。
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レリエル戦。
碇君が虚数空間に飲み込まれてしまった。
碇君の独断先行をなじったアスカ・・・。
あの時わたしは何故怒ったのかしら?
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・・・バルディエル戦…哀しい戦い・・・。
わたしもアスカも何も出来なかった。
・・・そして・・・その結果・・・碇君にとても辛い思いをさせてしまった。
鈴原君、碇君の大切なお友達。
碇君の心は傷付いてネルフを離れた。
その後のゼルエル戦。
碇君は戻って来てくれた。
わたし達を護るために・・・。
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アルミサエル戦。
二人目のわたしが消えてしまった戦い。
ただ碇君を護りたかった二人目のわたし。
それなのに最後に思い浮かべたのは・・・碇司令。
何故だったのかしら?
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わたしが見た夢・・・いえ・・・渚カヲルがわたしにくれた前回の記憶はここまで。
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彼は何故わたしにこの記憶をくれたのかしら?
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「そうだったんだ・・・綾波。カヲル君は綾波の記憶を持っていたんだね・・・」
「渚君は全てを知っているのかしら?」
「うん。多分そうだと思うよ。だから二人目の綾波の記憶だけじゃなくて・・・そのぉ・・・」
「気にしなくていいわ、渚君は三人目のわたしの記憶も持っているかも知れない・・・と言いたいのね」
「・・・うん。最後には綾波とカヲル君はリリスと一体だったみたいだったからね・・・」
「碇君・・・わたしはどうするのがいいのかしら?」
「どうするって?」
「渚君はわたしが望めば三人目のわたしの記憶もくれるかも知れないわ」
「そうだね。で、綾波?」
「何、碇君?」
「・・・」
碇君・・・何か考え込んでる。
「どうしたの、碇君?」
「・・・うん。綾波さぁ、今僕の事を『碇君』って呼んだよね・・・」
「・・・あ!」
「綾波がカヲル君からもらったのは・・・前回の単なる知識としての記憶なんかじゃあないんだね」
そうだ。わたしが得たのは単なる知識としての記憶だけじゃなく・・・。
「そうだったのね・・・碇君に渚君がくれた・・・前のわたしの記憶の話しをする事でわたしは前のわたしになったんだわ。渚君はその心理的な鍵も渡していたのね」
「そうみたいだね・・・それは・・・僕に対しても同じだったみたいだよ」
碇君?・・・何を言ってるのかしら?
「・・・碇君・・・どういう事?」
「僕も前の『僕』に戻ったみたいなんだ。さっきまでの『俺』ではない『僕』、つまり・・・前回の碇シンジ、今の綾波が知っている『碇シンジ』にね・・・」
「そう・・・なの?」
「うん」
「だとしたら・・・さっきまでの碇君、いいえ、『お兄様』はどうなってしまったの?」
「・・・うーーん・・・どうなったんだろうね?綾波はどんな感じなの?」
「わたしはわたし。今の『綾波レイ』は・・・碇君を『お兄様』と呼んでいた『綾波レイ』だわ。赤木博士を『リツコさん』と呼んでいた『綾波レイ』だわ。でも・・・前の感覚の方が強い感じはする・・・」
「そうなんだ・・・」
「碇君はどうなの?あ・・・『お兄様』って呼ぶ方がいいのかしら?」
「呼び方は綾波の言いたいように呼んでくれていいんだよ。綾波はどうなの?」
「何?」
「あ、その・・・『綾波』って呼ばれるのと・・・『レイ』って呼ばれるのと・・・どっちがいいのかな、ってさ・・・」
わたしは・・・わたしは・・・『レイ』って呼んで欲しいような気がする・・・。
「わたしは・・・碇君の好きなように呼んでくれればいいわ」
「わかったよ・・・綾波」
!
「・・・」
言えなかった・・・わたしの希望・・・。
「リツコさんが帰ってきたら話しておかなくちゃいけないね」
「そうね・・・碇君・・・」
「何?」
「わたしは碇君の事…どう呼べばいいかしら?」
「綾波の好きなように呼んでくれればいいよ」
・・・今のわたしは・・・もう碇君の事を『お兄様』とは呼びたくない・・・。
「わかったわ・・・碇君」
「うん」
・
・
・
「そう、彼はそんなマジックを仕込んでいたのね」
リツコさん・・・ちょっと思案顔だわ。
「リツコさん、僕は『僕』に戻っちゃったみたいですよ」
「そうみたいね」
「わたしも・・・前の記憶が単なる記憶としてじゃなくて、今は自分自身の体験として認識しています」
そうなの・・・逆に今までが夢の様に思えるわ・・・とても変な感じ・・・。
「・・・」
「ねえ、リツコさん」
「なあに、シンジ君?」
「カヲル君の歓迎会をやりませんか?」
「はい?ってどう言う事かしら?」
「そのぉ・・・カヲル君はレイと僕の今の状態を多分解っていると思うんですよ」
「そうなんでしょうね・・・と言うよりも彼が仕組んだんでしょうから当然と言えるわね」
「だからあれこれ考えるよりも直接聞いちゃった方がいいんじゃないかと思うんですよ」
「・・・そうね・・・でもその前に確認しておきたい事があるの。明日本部に来てもらえるかしら?」
「はい、いいですけど・・・」
「わたしも・・・ですね」
「ええ、お願いね、レイ。渚君の歓迎会はその後で段取りを考えましょう」
「・・・わかりました」
・
・
・
・・・碇君は前の碇君みたい・・・。
でも・・・わたしは・・・二人目のまま・・・。サードインパクトまでの記憶はないままの二人目の『綾波レイ』。
・・・。
わたしはどうなるのだろう?
渚君はわたしをどうしたいのだろう?
・・・そして・・・わたし自身はどうしたいのだろう?
・・・碇君の望んだ事・・・三人目の『わたし』が望んだ事・・・一体なんだったんだろう?
・
『コンコン・・・』
あ、碇君・・・。
「・・・はい、どうぞ・・・」
『シンジだけど・・・ちょっといいかな、綾波?』
「ええ、どうぞ入って・・・」
『ガチャ・・・』
「・・・」
碇君がわたしの座っているベッドの横に座る・・・わたしとの間に少し空間が空いている・・・。
「どうしたの、碇君?」
「あ、うん・・・」
「?」
「あ、あのさ。ちゃんと言っておかなくちゃと思っていたんだ・・・」
「何?」
「その・・・『ありがとう』」
「何が?」
「ああ・・・前、僕を助けてくれただろ・・・自分を犠牲にしてまで・・・」
・・・そんな事をわざわざ?
「いいの・・・たいした事じゃないもの」
「・・・」
・・・なんだか碇君の様子が変だわ、どうしたの?
「他にも何かあるの?」
「・・・うん。そうなんだけど・・・良く考えてみたら今は言うべきじゃあなかった・・・」
「・・・そう・・・なの?」
「うん、ごめん」
・・・三人目のわたしに何か言いたいのね・・・。
「わたしは今は二人目だけど・・・いずれ近いうちに三人目の記憶を受け継ぐような気がするわ。だからその時には話してね、碇君・・・」
「うん、そうだね。約束するよ。ありがとう、綾波」
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