『俺と僕で何?』


第弐拾八話 カヲル、その存在


碇君…今日は意識的に渚君を避けているみたいだわ ・・・

渚君の方も碇君やわたしに接触して来ない・・・

「アスカ」

「何、レイ?」

・・・碇君とわたしは本日1400から本部にて身体検査があるの ・・・

「ふーん・・・そうなんだ。あたしは特に何にも無いのよね ・・・

「だから二人は早退するわ」

「わかったわ」

・・・嘘じゃないけど全てではない・・・今はまだ話せないから・・・

・・・前のアスカ、『弐号機パイロット』は、こんな些細な事にもこだわってゴネていた筈なのに・・・確かに前とは変わっている・・・『弐号機パイロット』。

・・・わたしは前は『弐号機パイロット』の事を『弐号機パイロット』と呼んでいた・・・でも今は『弐号機パイロット』の事を『アスカ』って呼んでいる・・・何故?

今のわたしは、前の二人目のわたしの記憶だけじゃなく・・・今回の二人目の前とは違う記憶をも併せ持っている新しいわたしなの?

「じゃあ、そろそろ行かなくちゃね、綾波」

「え、ええ、碇君」

アスカ、何か思案顔だわ

「ねえ、レイ・・・

「何、アスカ?」

「あんた達、喧嘩でもしてるの?」

?!

「どうしてそんな事を言うの?」

「だって、レイはシンジの事を『碇君』って他人行儀に呼んでるし・・・シンジはシンジでレイの事・・・綾波』ってこれまた他人行儀に呼んでるじゃないの。レイはシンジの事、『お兄様』って呼 ぶ事にしたんじゃなかったっけ?」

あ?

「あ・・・それは ・・・『お兄様』って呼ぶと、なんだかヒカリや・・・みんなが・・・すっと、引いてる様な気がしたから・・・だから止めただけ。アスカは知らなかったかも知れないけど、元々わたしは『碇君』って呼んでいたのよ

・・・これは嘘・・・

「ふぅーーん・・・そうだったんだ・・・まあ、いいけどさ。でもシンジはどうしてなのかなぁ?・・・

「え!・・・ぼ、僕は綾波につられてつい元の呼び方に戻っただけだよ・・・そのぉ・・・何と無くさ・・・

・・・碇君も嘘付き・・・

「ふぅーーーん・・・ま、あたしには別にどうでもいい事なんだけどねぇ ・・・。あ!そうだった!今日はミサトが遅くなるって言ってたから、今夜はあんた達ん所に泊まるから。よろしくね!」

「「わかった(わ)」」

「でも、夕食はどうするの?」

「ヒカリと買い物に行ってそのままヒカリん家で食べて行くからいいわ」

「わかったよ。」

・・・ごめんなさい・・・アスカ・・・今はまだ話せないの。

碇君、リツコさん、ミサトさん、加持さん・・・そしてわたし。いつものメンバー・・・

アスカはまだ呼べない・・・いつもの密談。

「さあぁーってっ、と。今日は何の話しをするのかしら、リツコ?」

「実は、シンジ君が渚カヲル君の歓迎会を開きたいって言うのよ。で、その席で直接彼の真意を聞いたらどうか、って言ってるんだけど・・・。それでね・・・今日は、渚カヲル君について・・・と、シンジ君の提案についての是非について皆さんのご意見を聞かせてもらいたいと思うの。彼を当面どういう風に扱えばいいか・・・。まずは加持君のご意見から伺いましょうか」

「え?何で俺からなの?」

「だって加持君にしか彼について調査する機会がないんだから当然でしょう?渚カヲルはゼーレが使徒として送り込んで来たんでしょ?」

「それはそうなんだけれどさぁ・・・良くわからなかったんだよ。前回は面識すらなかったし・・・今回だって直接は会った事も話した事もないんだぜ・・・

「加持は彼のデータを調べらたんでしょ?」

「ああ・・・一応はね。だが彼、渚カヲル君の個人的なデータはほとんど記録が残されていないのさ」

「それはわたしと同じ、と言う事ですか?」

「うーーん・・・表面的にはレイちゃんと同じなんだが・・・何か違う感じだったんだよなぁ」

「何が違ったんですか?」

「いや・・・どうも彼自身が自ら自分のデータを隠蔽したような印象を受けたんだよ。 ・・・どうも彼はゼーレの、いや、キール議長の思惑とは違う行動を取っている様な気がするんだ、根拠のない勘だけだけどね 」

碇君・・・何か複雑な表情・・・

・・・加持さん・・・

「なんだい、シンジ君?」

「あの・・・・・・加持さんに・・・その・・・是非聞いておかなくちゃいけない事があるんですけど・・・

「何をだい?」

「今回の・・・加持さんとゼーレとの関係についてです」

「今回は、幸いかどうかはわからないが、まだバイトの申し込みはしていないよ」

「それでこれから申し込むんですか?」

「いや、今回はその必要はないだろうな、今のところはだがな」

「シンジ君。加持君はこの辺でもういいかしら?」

「あ、はい。すいません、話題が逸れちゃって・・・

「別に気にする事はないわよ。で、渚君の歓迎会については何か意見があるのかしら?」

「別にいいんじゃないか?同じチルドレン同士、仲良くするいい機会じゃないか」

「あんたねぇ・・・そんなお気楽な事でいいのぉ?」

「じゃあ、ミサトは反対なのね?」

「あ、反対じゃないのよね・・・ただ加持の言い方が軽過ぎたから・・・。あたしも彼、渚カヲルに接触するなら早い方がいいと思うわ。時間が経てば経つ程不自然になるものね 」

「わかったわ。じゃあ、レイはどうかしら?」

あ!

・・・わたしは・・・わたしは碇君さえ良ければ異存はありません」

「あ、いいんだよ。僕に遠慮しないでちゃんと自分の意見を言って」

碇君・・・やっぱり優しい。

「いいえ。わたしも確認したい事があるから・・・

「みんな、歓迎会をするという事で意見は一致ね。あ、私も賛成よ。渚君さえ良ければ明日にでもやりましょう。場所は私の家でいいわね?」

「はい、ありがとうございます」

みんな異存はない。

「それから今のうちにみんなに報告しておくわね」

「何なの、リツコ?」

「今日の身体検査の結果を、よ」

「何かわかった事でもあるのか?」

「ええ・・・レイとシンジ君の脳波なんだけど・・・基本波形が変化してるのよ・・・二人ともね」

「「「「?!」」」」

「で、リッちゃんはどういう風に考えてるんだ?」

「脳波の基本波形パターンが変化したのは、二人とも渚君がきっかけになったと思われるわね。二人 が渚君に会う前の波形パターンは、レイが前回と同じでシンジ君のは違っていた。今は・・・レイの方が違っていてシンジ君は前回と同じに戻っているわ。二人が渚君と会ってから今回の検査までには二人ともに極めて異常な不安定な波形パターンを示していた・・・

「で!リツコの結論は?」

「そうね・・・以前話したと思うけど、渚君に会う前のシンジ君は『あなたは誰?』って感じだったわ。で、今はレイが『あなたは誰?』って感じね 」

「それって・・・どういう事よ?あたしにも分かる様に話してくれると助かるんだけどね」

・・・ミサトさんって、短気・・・我慢の限界なのね・・・

「それはな、葛城。今はレイちゃんの方がシンジ君よりもテニスがうまい、って事さ。だろ、リッちゃん・・・

・・・そ、そうね。発想がユニークだけど・・・

「まあ・・・なんとなく解ったわ。後は仕掛けの張本人である渚君に聞くっきゃない、か・・・

「リツコさん?」

「何、レイ?」

「今の話しからすると、わたしの中に碇君のだった魂の一部がある、という事なんですか?」

「多分・・・まだ断定は出来ないけれどもね。」

「わかりました。」

なんだか嬉しい様な変な感じだわ。

「ねえ、ミサトさん。」

「なあに、シンちゃん?」

「歓迎会なんですけど・・・アスカはどうするんですか?呼ぶんなら事情を説明して置かないと、カヲル 君から必要な情報を聞き出しにくいんじゃあないですか?」

「あう・・・その問題があったわね」

「確かに。私も迂濶だったわ。どうする、加持君?」

「え?って・・・ここで俺に振るかぁ」

「だって、あの娘、あなたに一番馴ついてるじゃないの」

「そうでもないんじゃないかな。今回は葛城の方に親近感を抱いてると思うぞ」

「でも・・・碇君。アスカを呼ばない訳にはいかないわ」

「うん。綾波の言う通りだね」

「まあ、今回は腹の探り合いって事で・・・俺が何とかうまく聞き出すとするかな」

「そうね。腹芸はあんたの十八番だから・・・任せるわ。ただし、ドジんないでよ!」

「へいへい、葛城は怒らせたくないからな・・・

「じゃあ、そういう事で。レイ、シンジ君、渚君のご招待、よろしくお願いね」

「「はい」」


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