『俺と僕で何?』
第四拾六話 迷い
「おはようございます、リツコさん。いつも早いですね」
「いま朝食の用意をしているわ」
「じゃあ綾波とフェルを起こしますね」
「お願いするわ」
苦手なんだよな、それって。
・・・
(コンコン)
「綾波、朝だよ!」
返事がない。
「綾波っ!」
「は・・・い」
「起きてよね!」
・・・。
起きて来ないな。
「綾波!」
「は・・・い、碇君」
「起きた?」
「・・・起きた」
「じゃあちゃんと起きてよね!」
大丈夫かな?
本当に寝起きが悪いんだからな。
・・・。
ま、いいか・・・次はフェルだ。
(コンコン)
「フェル、朝だよ!」
・・・返事がない。
「フェルっ!」
「ふぁ〜い。起きるよ〜」
良かった。
綾波よりは寝起きがいいからな。
「じゃあ待ってるからね!」
「あ〜い」
・
・
・
「「「いただきま〜す」」」
「リツコさん、今日の予定はハーモニクステストでしたっけ?」
「そうよ。忘れないでね」
「わかりました」
「レイもフェルも忘れないでね」
「あ〜い」
「了解」
・
・
・
「さあ、やっと昼飯やー!」
「トウジはそればっかりだね」
「学校一番の楽しみやからな」
「でもトウジは購買のパンが多いよね?」
「ウチはおとんとおじんだけで女手がないから仕方あらへんねん」
洞木さんは作ってあげないのかなぁ?
「なんなら俺が作って来ようか?」
「何が悲しゅうて男のお前に弁当作ってもらわなあかんのや?」
「あ、いらないの?」
「そら購買よりええけどな。シンジに作ってもらう謂われはあらへんで」
「そうか」
「そうや」
洞木さんが作ってくれるといいんだけど、どうしたらいいかな?
「碇君は3人分作ってるの?」
「まあリツコさんと綾波との交代制だけどね」
綾波は寝坊が多いから結局俺が手伝ってるんだよな・・・。
「一人分も三人分も手間は変わらないわね」
そうか!
「いや、一人分の方がめんどくさいよ。少しずつ作るのは効率悪いからね。洞木さんはどうしてるの?」
「毎日家族含めて四人分作ってるわ」
「じゃあ五人分でも変わりないね」
「ええ、それはそうだけど」
「だったらトウジの分も作ってあげたらいいんじゃないかな?ケンスケのは俺が当番の時に作るからさ」
「そら悪いわ」
「どうかな、洞木さん?」
「それは構わないけど・・・わたしのお弁当でいいの?」
「そんな・・・わしは嬉しいけどな。ええんかいな、委員長?」
「いいわよ。手間は変わらないんだから」
「なら悪いけどな・・・材料費と手間賃は払うよってお願いするわ」
良かった。
「わかったわ。じゃあ明日から作ってくるわね」
「すまんのう、委員長」
「いいのよ。気にしないで」
洞木さん嬉しそうだ。良かった。我ながらいいアイデアだったな。
「じゃあケンスケの分は俺の当番には作るけどリツコさんと綾波にもお願いしておくよ。綾波はいいかな?」
「構わないわ」
「ありがとう」
「相田ケンスケ、感激です!ありがとう!」
「いいって」
「ありがとう、綾波」
「いいの。碇君の頼みだから」
「ありがとう」
これでトウジと洞木さんの仲が進展するといいんだけどなぁ。
・
・
・
「シンジ君、ハーモニクステストお疲れ様。あがっていいわよ。後で私の部屋に来てね」
「はい、わかりました」
・・・
「今日は何ですか?」
「サンダルフォンの件なんだけど、シンジ君はどうしたらいい思う?」
「前も言いましたが即時殲滅がいいと思いますね」
「A-17が発令されたらどうしたらいいかしら?」
「それは誰が潜るか、って事ですよね」
「そうなるわ。」
「俺が潜れればいいんですけど規格外なんでしょ?」
「そうなのよ。残念ながら弐号機か参号機しか使えないわ」
「じゃあアスカかカヲル君かフェルかイスラって事ですよね」
「そうなるわね」
「危険な任務ですから俺には選べません。でもATフィールドを使いこなせないアスカは外した方がいいんじゃないでしょうか。この前リツコさんはイスラを使うって言ってませんでしたか?」
「ええ、言ったわ」
「気が変わったんですか?」
「私も迷ってるの」
「そんな事言われても俺も困ります」
「そうなのよね」
「ミサトさんの意見はどうなんですか?」
「ミサトはアスカを使う積もりよ」
「何故ですか?」
「前回成功しているからでしょう」
「でもかなり綱渡りの危機一髪で俺も酷い目に遭いましたよ」
「渚君はともかく、イスラやフェルの場合はエヴァでの戦闘経験はないから未知数でしょう?」
「なら何でイスラを使うって言ったんですか?」
「使徒としての資質ね。ATフィールドも使いこなせるし」
「でもカヲル君もフェルも少なくともATフィールドは使えると思いますよ」
「じゃあシンジ君は少なくともアスカを使うのは反対と言う事ね?」
「そうですね、前回の事もありますから。でも・・・こういう選択って難しいんですね。ミサトさんの苦労が少し判った様な気がします。絶対に誰かを選ばなきゃいけないんですから 」
「そうよ」
「困りました。少なくともアスカには事情が説明出来ませんから、カヲル君かフェルかイスラに出てもらうしかないですね」
「そうなのよ」
「その場合も弐号機を使うのはアスカが難色を示すでしょうから、参号機を使う事になるんでしょうか?」
「消去法でいくとそうなるわね」
「カヲル君かフェルかイスラか・・・実戦経験があるのはカヲル君だけですよ」
「そうなんだけど渚君にはバックアップ、潜るのはイスラで考えているんだけど」
「どうしてフェルじゃなくてイスラなんですか?」
「性格から選んだのよ。イスラの方が冷静みたいだから」
「わかりました。ただ強固なライフラインの厳重確保と熱膨張での攻撃用のパイプの用意と武装の手当てはお願いしますね」
「わかったわ。一応シンジ君にもバックアップをお願いね」
「わかりました。綾波とアスカとフェルはどうするんですか?」
「多分本部での待機になるでしょうね。万一別の使徒が来たら困るから」
「使徒の同時侵攻ですか・・・歴史は変わったかも知れないと言う事ですね」
「そうよ」
「わかりました。ただアスカが納得しますか?」
「それは何とかするわ」
「うまくお願いしますよ」
・
・
・
「やあ綾波」
「碇君」
「食堂でお茶しないか?」
「いいわ」
・・・
俺はアイスコーヒーで綾波はアイスティーだ。
「綾波は今度の使徒をどうしたらいいと思う?」
「殲滅した方がいいと思うわ」
「どうして?」
「危険だから」
「そう思うの?」
「ええ」
「何故危険なの?」
「前の記憶があるから。アスカは危なかったわ」
「知ってるんだ」
「前回戦闘記録を見たから知ってるわ」
「じゃあ綾波は誰が潜ればいいと思う?」
「碇君の初号機とわたしの零号機はD型装備が規格外だから無理だわ。でも誰がいいかと言えば渚君がいいと思う」
「そうか、綾波はそう思うんだ」
「ええ」
「リツコさん、フェルは?」
「さっきまでここにいたんだけど」
「そうですか。リツコさんは今日は残業ですか?」
「いいえ、定時で終える積もりよ」
「じゃあ一緒に帰りましょう。5時半に食堂でいいですか?」
「わかったわ。みんなにも携帯で連絡しておくわね」
「お願いします」
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食堂で待ち合わせだ。
「俺はアイスコーヒーを飲むけど、綾波は何か頼む?」
「わたしは何もいらないわ」
「わかった」
・・・
あ、フェルが来た。
「シンジ〜、今日はリツコさんと一緒に帰れるんだってね」
「うん。久しぶりだね、みんな一緒に帰るのは」
「そうだね〜」
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・
今日の夕飯はリツコさんが作ってくれた。
「ご馳走様でした、リツコさん。後でお話しいいですか?」
「わかったわ」
・・・
「で、何かしら?」
「次のサンダルフォンの事です」
「何なの?」
「チルドレンの中で誰が潜るかみんなの意見が分かれています」
「私はもう決めているわよ」
「参号機でイスラが出るんですよね」
「そうよ」
「綾波はカヲル君がいいと言ってますけど。どうしてイスラなんですか?」
「シンクロテストとハーモニクステストの結果よ。参号機はイスラが一番相性がいいのよ」
「カヲル君は良くないんですか?」
「参号機に限っては今一つね」
「そうなんですか・・・。(どうしてなんだろう?良く判らないな)わかりました。ところで修学旅行なんですけど、今回は行ってもいいんですか?」
「一応今回はチルドレン全員行っていいわよ。ただし有事の際には途中でも呼び戻すかも知れないわよ。UNの戦闘機を使ってね」
「はい、わかりました。前回は行けませんでしたからね、ありがとうございます。アスカ達も喜ぶでしょう。特にアスカは前回かなり怒ってましたからね」
「沖縄からだとUNの戦闘機なら40分もあれば帰ってこれるわ」
「そうなんですか」
「だから修学旅行中は思いっ切り楽しんでね」
「ありがとうございます。アスカ達にも伝えているんですか?」
「ええ、ミサトが伝えている筈よ」
「わかりました」
「あまり嬉しそうじゃないわね」
「いえ、サンダルフォンの事が気になっちゃって」
「多分今回はシンジ君の出番はないわよ」
「はい、多分そうなんですよね・・・」
イスラと参号機で大丈夫なんだろうか?前回とは違う展開なんだよな・・・。
フェルは使徒も進化しているかも知れないって言ってたし。
・
・
・
(コンコン)
「はい?」
「わたし」
「ああ、綾波か。開いてるから入っていいよ」
(ガチャ・・・バタン)
綾波、どうしたんだろう?
「何?」
「碇君は修学旅行に行くの?」
「ああ、その事か・・・。一応せっかくから行くつもりだよ。綾波は行かないの?」
「碇君が行くのなら行く」
「そう」
俺がいないと不安って事なのかな?
「・・・」
「それが聞きたかったの?」
「うん」
「なんだ。でもどうして?」
「修学旅行って良くわからないから」
小首を傾げて・・・こういう綾波って本当に可愛いよな・・・何を考えてるんだ、俺は。
「きっと楽しいと思うよ。色々なところに見学に行ったり、海で泳いだりスクーバ教室もあるみたいだからね」
「そうなんだ」
「だから一緒に行こうね、綾波」
「うん・・・色々教えてね、碇君」
やっぱり不安なんだな。
「任せてよ!」
「サンダルフォン発見まではわたしも楽しみたい」
「うん」
綾波にはその権利が十二分にあるよ・・・綾波。
「それが聞きたかったの?」
「碇君・・・」
「何?」
「碇君はわたしの本質を知っているわ」
「うん」
「それでもわたしを受け入れてくれるの?」
「当たり前だろ!」
あ!言い方がきつくなっちゃった。
「・・・」
「綾波は綾波だよ。俺は今の綾波に幸せになって欲しいんだ。だから前回の繰り返しはしたくない。」
「あ・・・ありがとう」
「だからアルミサエルとの戦闘では絶対に自爆なんてしちゃ駄目だ。それだけは・・・それだけは覚えていてくれるかな、綾波」
「うん。わかったわ、碇君」
「ありがとう」
「でも他のアルミサエル殲滅の方法がわからないわ」
「それは考えるよ。リツコさんやミサトさんや加持さんも考えてくれてると思う。みんな前回の記憶を持ってるんだから」
あれ?加持さんは前回知らないかも・・・一度ちゃんと話ししなくちゃいけないかも知れないな。
「ありがとう」
「いいよ。当たり前の事だよ。綾波は修学旅行の準備は出来たの?」
「まだ、だと思う」
「どうして?」
「何をどうしたらいいかがわからないから」
うーん・・・どうしたらいいんだろう?
アスカかな。
「じゃあ今度アスカ達と買い物に行かない?色々荷物を揃えようよ。フェルのも必要だしね」
「わかったわ」
「じゃあそういう事でいいかな?」
「うん。ありがとう、碇君」
「もう遅いから寝た方がいいよ」
「うん。わかった。じゃあ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
(ガチャ・・・バタン)
・
・
・
(コンコン)
「リツコさん?」
「何、シンジ君?」
「まだ起きてすよね?」
「ええ。何かあるの?」
「綾波の事なんですけど」
「どうぞ入って」
「すみません」
(ガチャ・・・バタン)
「で、何レイの事って?」
「綾波、自分一人では修学旅行の準備が出来ないみたいなんです。多分フェルも同じだと思いますけど」
「なるほど。で、私に手伝って欲しい、と?」
「そうなんです。俺じゃあ女の子の荷物なんてわかりませんから」
「わかったわ、いいわよ」
「買い物とかあれば俺も荷物持ち位しますから」
「お願いするわ、ありがとう」
「いえ。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
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