『俺と僕で何?』


第伍拾話 日常への復帰


ああ、今日は寝坊しちゃったよ。

「おはようございます、リツコさん、綾波、フェル。寝坊しちゃったよ」

「いいわよ。今日は私の当番だから。もうすぐ朝食が出来るわ」

「はい。顔洗ってきます」

・・・

今日は本部だったよな。

「今日は1500シンクロテストでしたっけ?」

「そうよ。忘れないでね」

「わかりました」

「レイとフェルも同じだから忘れないようにね」

「は〜い」

「はい」

「「「いただきまーす」」」

「はい、どうぞ」

学校に着いた。

「昨日は楽しかったね〜」

「そうだね」

「また行きたいな〜」

「今度はまた違う所に行こうか」

「うん」

フェルは余程楽しかったんだろうな。

「わたしも楽しかったわ。リスさんが可愛かった」

「そうだね」

あ、アスカとイスラだ。

「おはよう、アスカ、イスラ」

「おはよう、シンジ、レイ、フェル」

「おはようございます」

「おはよう〜」

「おはよう」

アスカ達はピクニック楽しかったのかな?

「アスカ、昨日は楽しかった?」

「まあまあね」

「イスラは?」

「楽しかったですわ。また行きたいですわ」

楽しかったんだ、良かった。

「また今度違う所に行こうよ」

「そうですわね」

「違う所ってどこよ?」

「第二芦の湖とか・・・」

「第一の次は第二ぃ?あんた馬鹿じゃないの?そんなのほとんど変わりないじゃない」

アスカ、言い方キツイな。

「いやよそでもいいんだけどさ。第三新東京市から外には出られないじゃないか。戦闘待機なんだからさ」

「そう言えばもうすぐ修学旅行だったわね。あたし等は行けるのかしら?沖縄でしょ?なんか聞いてる?」

なんて言えばいいだろ?

「それはミサトさんに直接聞いた方がいいんじゃないかな」

「そうね、ミサトに聞いてみるわ。行けるんだったら水着を新調しなくっちゃいけないからね」

「え?わざわざ新調するの?」

「当然!こういうのはバシッと決めなきゃダメなのよっ!」

そんなもんかなぁ?

「わたしも水着を買わなくてはいけませんわ。水着を持ってませんから」

「綾波は水着どうするの?」

「わたしはいい、持ってるから」

(ピンポンパンポーン)

「あ、授業が始まる!」

(ピンポンパンポーン)

「さあ、飯や飯や!」

「トウジは学校に何しに来てるんだか」

「ええやんか、ケンスケ。わしの唯一の楽しみやさかいな」

あ、弁当渡さなきゃ。

「はい、弁当。綾波」

「ありがとう」

「はい、フェル」

「ありがとね〜」

今日はリツコさんが作ったんだけどね。

「なあ、シンジ」

「何、トウジ?」

「シンジ等は修学旅行行けるんかいな?」

「ああ・・・まだ分からないな」

ホントは行けるんだけどね。アスカの手前言う訳にはいかないんだ。

「えらい難儀やっちゃなぁ」

「仕方ないよ」

「でもエヴァンゲリオンを操縦出来るパイロットなんだから凄いよな。羨ましいよ。俺も一度でいいから操縦してみたいよ」

「そんなんじゃないよ、ケンスケ。パイロットになんてなるもんじゃない」

「そうかな」

「そうだよ。絶対に!」

「そ、そうなのか?」

「ああ。いい事なんて何もないさ」

「シンジはエヴァのパイロットだからそんな事言うんだろ?」

何度言っても解んないだなケンスケは・・・。

「そんなんじゃないよ。もうこの話しは止めよう」

「わかったよ」

「あ、今日はネルフに行くから早退するから、よろしく、委員長」

「わかったわ、先生に言っておくわ」

「ありがとう」

・・・

またテストか。

「シンジ君、準備はいい?」

「はい、いつでも」

『じゃあシンクロスタート!』

『LCL注水』

・・・

『A10神経接続』

『ボーダークリア』

『エヴァ起動しました』

『シンクロ率65%!』

これもダミーがな?

『シンジ君、右手を動かしてみて』

右手を動かすイメージ。

『データ収集順調なり』

・・・

『お疲れ様。上がっていいわよ』

「はい」

・・・

ブリーフィングだ。

「シンジ君のシンクロ率は安定してきたわ」

「そうなんですか?」

「そうよ」

ダミーデータじゃかないのか?

「レイもアスカも安定してきたわ。渚君もフェルもまずまずね。イスラは絶好調だわ」

やっぱり次の使徒はイスラでいくのか・・・。

「みんなお疲れ様。今日はこれで終わりにします」

休憩所でジュースでも飲むかな。

スポーツドリンクにしよう。

(ガチャ・・・ガチャン)

ああ美味しいな。

LCLっていつまでたっても慣れないや。

血の味がして・・・。

あ、アスカ。

「シンジはいいわよね」

「え?何が?」

「シンクロ率が高いから」

「そんなの機体の個別差じゃあないか」

「イスラが絶好調だってさ」

「そうみたいだね」

アスカ、気にしてるのか?

「あーあ、あたしは伸び悩み、頭打ちだわ」

「そんなの関係ないだろ。弐号機にはアスカしか乗れないんだからさ」

「それはそうなんだけどね。なんか気合いが抜けちゃったのよね」

アスカらしくないな。

「どうしたんだよ。アスカらしくないな」

「そんな時だってあるわよ」

「そのうちにシンクロはまた上がるさ」

「そうね。ありがとう、シンジ」

アスカにお礼言われちゃったよ。気味悪いな。

「じゃああたしは帰るわ」

「ああ、じゃあまた明日」

「バイ」

・・・

アスカ・・・大丈夫かな?大分落ち込んでたけど。

「碇君」

「あ、綾波」

「どうしたの、ぼんやりして?」

「いや、ちょっと疲れただけだよ」

「フェルが来たら帰りましょ」

「ああ、そうだな」

「でもイスラ凄いわ」

「そうだな」

「シンクロ率87%だったわ、イスラ」

「そうだな。アスカが落ち込んでいた」

「アスカが?」

「ああ」

「どうして?」

「アスカはエヴァに乗る事に生き甲斐を感じているみたいなんだ。だからイスラにシンクロ率を抜かれたのがショックだったみたいだ」

「そうなの・・・」

「綾波」

「何?」

「機会があったらアスカを励ましてやってくれないかな」

「わたしが?」

「ああ。俺が言っても多分反発するだけだと思うからな」

「どうして?」

「前回がそうだったから・・・」

「わかったわ」

あ、フェルが来た。

「ほ〜い。お待たせ〜」

「やあ、フェル。じゃあ帰ろうか」

「あ〜い」

「買い物付き合ってくれるかな?」

今日は俺が食事当番だからな。

「いいよ〜」

「今日は何が食べたい?」

「う〜ん・・・ハンバーグ!」

「わかった。じゃあ綾波は豆腐ハンバーグでいいかな?」

「いいわ」

「じゃあ行こうか」

「フェル、買い物出来る?」

「フェルが買うの〜」

「ああ」

フェルにも買い物慣れてもらわなくちゃな。料理も覚えてもらいたいし。

「わかった〜」

「普通のハンバーグと豆腐ハンバーグだからな」

「あ〜い。じゃあまずは挽き肉だね〜。どの挽き肉がいいの?」

「合い挽きがいいよ」

「ほ〜い」

「あとは玉葱〜」

「正解」

「それと豆腐〜」

「オッケー」

「他には何かいるの〜?」

「玉子だな」

「あ〜い。で、サラダとかは〜?」

「一応家に材料はあるから今日はいいよ」

「じゃあこれでおしまい、オッケーだね〜」

「はい、良く出来たね、フェル」

「わ〜い!」

・・・

「ただいま〜」

「ただいま」

「ただいま」

(トテトテトテトテ)

「「「ニャーン」」」

「やあ、トト、チャチャ、ミミ」

「フェルは猫達に餌を上げてトイレを替えてくれるかな?」

「は〜い」

「レイは風呂を入れてくれ。俺は夕飯を作るから」

「わかったわ。わたしも食事の用意を手伝うわ」

「ありがとう」

・・・

リツコさんは今日は遅いのかな?

じゃあまずは玉葱をみじん切りにして炒める。

(トントントントン)

(ジャージャージャー)

次は挽き肉をこねるか。

(クチャクチャクチャ)

で炒めた玉葱を混ぜて、と。

(クチャクチャクチャ)

空気を抜く。

(パンパンパンパンパン)

(クチャクチャクチャ)

(パンパンパンパンパン)

(クチャクチャクチャ)

(パンパンパンパンパン)

こんなもんでいいかな。

次は豆腐ハンバーグだな。

「碇君、手伝うわ」

「ありがとう。じゃあ綾波はサラダをお願い出来るかな」

「了解」

豆腐を水切して手で崩す。

炒めた玉葱を混ぜてこねる。

(クチャクチャクチャ)

(パンパンパンパンパン)

バーベキューフレイバーを入れてまたこねる。

(クチャクチャクチャ)

(パンパンパンパンパン)

こんなもんでいいかな。

出来たハンバーグに小麦粉をまぶしておかなくちゃね。

「綾波。こっちの下拵えは済んだよ。あとはソース作りだ。何がいいかな?」

「茸ソースなんかどうかしら?」

「あ、いいね」

茸は何があったかな?

冷蔵庫には・・・。

(パカ)

マッシュルーム・・・しめじとエリンギか。

ま、何とかなるかな?

(バタン)

(トントントントン)

(ジャージャージャー)

コンソメ、ケチャップ、白ワイン、塩、胡椒を入れて、混ぜて完成、っと。

「あとはハンバーグを焼くだけだよ」

「わたしもサラダの用意は出来たわ」

「じゃあリツコさんの帰りを待とうか」

「ええ」

リツコさん今日は残業じゃない筈だったよな。連絡もないし。

(ピーピーピー)

「碇君。お風呂が入ったわ」

「じゃあ先に入ってもいいかな?」

「どうぞ」

「ありがとう」

・・・

(ザーザー)

(チャポン)

気持ちいいね。

アスカ・・・こんなに早くシンクロ率にこだわるとは思わなかったな。まあ前回はイスラなんていなかったからな。

サンダルフォンはイスラが前線担当だ。アスカはどう思うんだろう?

やっぱり反発するのかな・・・?

アスカの価値が変わる訳じゃないんだけどな・・・。

アスカ・・・エヴァ以外にも自分の価値があるって解ってくれるといいんだけど。

・・・

「綾波、フェル、風呂出たよー!」

「あ〜い。次はフェルが入る〜」

アスカ・・・今度は何とかしたい。

(ガチャ)

「ただいま」

(バタン)

リツコさんだ。

「おかえりなさい、リツコさん」

「「「ニャーン!」」」

「ただいま、トト、チャチャ、ミミ」

「お風呂沸いてますけど、食事とどっちを先にしますか?風呂は今綾波が入ってますけど」

「じゃあ食事を先にするわ」

「わかりました」

ハンバーグを焼こうか。

(カチャカチャカチャ)

(ジュージュージュージュー)

ソースも温めて。

(コトコトコトコト)

・・・

「出来ました。ご飯にしましょう。並べるの手伝ってください」

綾波とフェルが食卓に料理を並べてくれている。

・・・

「じゃあいただきます」

「「「いただきま(〜)す」」」

今日の出来映えはどうかな?

「美味し〜い」

「本当に?」

「美味しいわよ、シンジ君」

「本当に美味しいわ」

「良かった」

どれどれ。

あ、美味しいや。良かったな。

「ソースが秀逸だわ」

「有り合わせだったんですけどね」

「ドミグラソースが美味しいわ」

「有り合わせだったんですけどね」

「シンジ君の才能ね」

「ありがとうございます」

「綾波も大丈夫だった?」

「これはお肉と同じ味なの?」

「かなり似てると思うけど微妙に違うんじゃないかな。少なくとも血の味はしないと思うよ」

「これは美味しいわ。もしかしたら普通のハンバーグも食べられるかも知れない気がしてきたわ」

「じゃあ俺のを少しあげるよ。はい」

端の良く焼けた部分を綾波にあげる。

真ん中は生っぽいからね。

「ありがとう」

(パク)

「どう?」

「美味しいわ。血の匂いがないわ」

「綾波は良く焼いた焼肉は食べられるんだから、良く焼いたハンバーグなら大丈夫な筈だよね」

「そう・・・そうだったのね」

「今度は綾波にも普通のハンバーグを作ってあげるよ」

「うん。お願い」

「ああ」

今度作ってあげようかな。

「そうだったわ!」

「何ですか、リツコさん?」

「シンジ君達の修学旅行だけど、行っていい事に正式に許可が出たわ」

「わ〜い!」

フェルが歓声をあげた。

良かった!本当に平気なのかな?

「本当にいいんですか?」

「ええ。ただし有事の際には途中でも戻って来てもらうけどね。UNとも話しがついたのよ」

「ありがとうございます!」

「わ〜い!修学旅行だぁ〜」

でもアスカやイスラやカヲル君はどうなのかな?

「アスカとイスラとカヲル君もですか?」

「そうよ」

「良かった」

「そうじゃないと不公平でしょう」

「いつ決まったんですか?」

「今日よ」

「じゃあアスカ達はまだ知らないのかな」

「ミサトが伝える筈だけど」

「アスカは修学旅行に行けるのは半々位に考えていたみたいなんです」

「そうだったの?」

「だから早く知らせてあげた方がいいと思うんですけど」

「そうね。じゃあミサトにそう言っておきましょうか?」

「お願いします」

「後で電話しておくわ」

「はい」

「ああ美味しかった〜。ご馳走様〜」

「ありがとう、フェル」

「「ご馳走様」」

「お粗末様でした。じゃあリツコさんはお風呂をどうぞ。もうみんな入っちゃいましたから」

「ありがとう、そうさせていたたくわ」

・・・

綾波とフェルが後片付け手伝ってくれたから早く終わったな。

綾波が珍しくテレビを見てる。

何を見てるんだろう?

「綾波、何見てるの?」

「英会話教室」

綾波が英会話?

「綾波、英会話なんてするの?」

「わからない。でも面白いわ」

「そうなんだ・・・」

俺は英会話なんて出来ない。

「綾波、でもどうして突然英会話なの?」

「修学旅行。沖縄。UN駐留軍の外国人がいるわ」

「なるほどね」

「だから勉強しておくの。多分使わないと思うけど」

確かに使う可能性は少ないだろうな。

「じゃあ俺は先に寝るよ。おやすみ」

「おやすみなさい、碇君。

「おやすみなさい、リツコさん、フェル」

「おやすみなさい」

「おやすみ〜」

自分の部屋に戻る。

修学旅行か・・・自分は行けるのが嬉しいんだろうか?

使徒が来るのが分かっているのに・・・。

使徒を殲滅するのはイスラだ。

俺はバックアップだ。

だからいいのかな?

他人に任せるからいいのかな?

・・・そんな事はない。

そんな事は思っていない。

イスラは大切な仲間だ。

俺は俺の出来る事をする。

みんなを守るために。


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