『俺と僕で何?』


第伍拾壱話 ハンバーグ


「おはようございます」

って誰もいないや。

・・・俺が一番か。

眠りが浅かったな。

朝食の用意なくちゃ。

(カチャカチャ)

(カタン)

(ジュージュー)

(カタン)

(シュンシュン)

(カチャカチャ)

(ジュージュン)

(パタパタ)

「おはよう、シンジ君」

「おはようございます、リツコさん。綾波とフェルを起こしてくれますか?」

「わかったわ」

・・・

「ところで今日の予定は何でしたっけ?」

「今日はテニスと格闘訓練よ。1530本部集合ね」

「はい、わかりました」

格闘訓練かぁ・・・あれは苦手なんだよなー。

「レイもフェルも同じだから一緒にね」

「あい〜」

「了解」

「おはよう、トウジ、ケンスケ」

「ああ、おはよう、碇」

「おはようさん、シンジ。今日はなんぞ予定あるんかいな?」

「ああ、ごめん。今日は本部で訓練なんだ。だから5限で早退になるよ」

「さよか。新しいゲームが入ったんやけど、訓練やったらしゃあないな」

「ごめん。今度付き合うよ」

「しかしシンジ達も大変だな。訓練、訓練、でさ」

「仕方ないよ、ケンスケ。出来る人間がやらなきゃいけないんだから」

「まあ怪我しないようにな」

「ありがとう」

「・・・これが世に言うセカンド・インパクトでありまして、その後の内乱も含めて何と世界の人口の3分の1が失われてしまったのです。その頃私は根布川に住んでいましてね・・・」

また始まったな・・・この先生は授業そっちのけで昔話なんだからな。

セカンド・インパクト・・・その本当の理由は違うのに・・・。

「さあ飯や飯や」

いつもの昼休みだ。ワンパターンと言えばワンパターンだけど。

「あ、これケンスケの分だよ」

「あっりがとうございまぁーす。感激だぁ!」

「今日は俺が作ったから味の保証はしないからな」

綾波に合わせて肉はタコさんウインナしか入っていないんだけどね。

「シンジの弁当は折り紙付きだって。問題ないよ!ホントに嬉しいなぁ」

「そう言ってもらえると俺も作った甲斐があるよ。トウジは洞木さんの作ったお弁当だよね」

「おお、委員長の弁当は最高やでぇ。ほんま、感謝しとるわい」

あ、洞木さん、顔が真っ赤になっちゃったよ。でも良かったね、洞木さん。

「はい。これは綾波のだよ」

「ありがと。」

「修学旅行楽しみだわぁ」

ん、そんな事アスカが言うか?

ま、いいか。

「ケンスケ、弁当美味しい?」

「ああ、滅茶苦茶旨いよ。やっぱり持つべきものは友達だね。ホントに感謝感激雨霰だよ」

「ありがとう。あ、洞木さん。今日は俺達午後途中から早退するから先生に伝えておいてくれるかな?よろしくね」

「わかったわ、先生に言っておく。でも碇君達大変ね。いつもいつも訓練で、遊ぶ暇もないんじゃない?」

「そうかも知れないけどさ。慣れちゃったからそんなに苦痛ではないんだ」

「そうなの?」

「ああ。こんなもんかな、って思っちゃってるね」

「そうなの」

「そうなんだ」

「アスカやレイもそうなの?」

「あたしは小さい頃から訓練してたから、もう当たり前の生活ね」

「レイは?」

「わたしも同じだわ。当たり前なの」

今日はテニスと戦闘訓練だけど、両方とも加持さんが指導するんだ。

「じゃあ今日はイスラとフェルも参加するからみんなよろしくな。まずは準備体操をしよう!」

「「「「「「はい」」」」」」

・・・

「次はペアを組んで軽くミニラリーをしよう。シンジ君と渚君、アスカとレイちゃん、イスラ君とフェル君でペアを組んで。ネットを挟んでサービスラインの中に入れるように。じゃあ始めよう!」

・・・

しかし何でカヲル君やフェルやイスラはテニスが出来るんだろう?

アスカと同じ位上手いんじゃないかな。ホントに上手いよ。

「ミニラリーだけどフォアもバックもスピンをかけるようにしろ」

なかなか上手くいかないや。サービスラインをオーバーしちゃうな。

・・・

「次はひとつ時計回りに回ってボレーボレーだ!」

今度はアスカとかぁ。

・・・

「シンジは反応が遅いわね」

アスカのスピードが速過ぎるんだよ・・・。

そんなに打ち込む事ないじゃないか・・・。

アスカの攻撃的な性格が出てるよな。

・・・

「じゃあまたひとつ時計回りに回って今度はストロークだ」

今度はイスラとか。

少しは楽に出来るかな。

「シンジ君!振り遅れてるぞ。もっとテイクバックを早くするんだ」

「はい」

俺ってテニスの才能ないのかな?

・・・

「じゃあはここまでにしよう。次は戦闘訓練だが、その前に10分間休憩にする」

助かったぁ・・・バテバテだよ。

しかし、この戦闘訓練が俺は苦手なんだよな。

「今日はテコンドーをやる。またペアになって組手。シンジ君とアスカ。渚君とレイちゃん。イスラ君とフェル君でペアを組んで!」

えぇっ、アスカとかぁ・・・やだなぁ。

「そら、いくわよぉ、シンジ!」

「お手柔らかにお願いします」

「何なま言ってんの!いくわよぉ・・・そりゃあー!」

あ!いきなり顔面かよぉ。

何とかセーブ。

あ!フェイントだ。腹にくらった。

・・・

はあはあ・・・疲れた。

結局アスカにボコボコにされてんだな。

・・・はあはあ・・・。

「シンジ君、もっと集中しろ!」

してるよ!

でももう限界なんだよね。

・・・

「じゃあ今日はここまで!」

はあはあ・・・助かったぁ。

・・・はあはあ。

例によって食堂での待ち合わせ。

「シンジ〜!こっちこっちだよ〜!」

フェルが一番か。

「やあフェルは元気だね。俺はもう疲れちゃってバテバテだよ」

「シンジは運動不足なんじゃないのかな〜?」

「そうかな?」

「フェルはそんなにきつい訓練じゃなかったと思うよ〜」

「フェルはホントに元気だよね」

「お待たせしましたわ」

あ、イスラだ。

「いや、俺も来たばっかりだよ。レイとアスカとカヲル君はまだだよ。」

「そうでしたの」

あ、みんな来た。

「お待たせ」

「待たせたわね」

「・・・」

「じゃあみんな揃ったから帰る?」

「なんか飲みたい〜」

各自めいめいに飲み物を買う。

「あー、いい汗かいたわ」

いい汗か。

「アスカは訓練が好きなの?」

「身体を動かすっていい事じゃない。」

「そりゃそうだけど」

限界はあるんだよね。

「あんたは嫌いなの?」

「いや、嫌いって訳じゃないけど、俺には少しハードかな、って・・・」

「情けないわね。女の子のあたしもレイもイスラもフェルもちゃんとやってるのに」

「はいはい」

「碇さんは私達よりも真剣に訓練なさってるんですわ、きっと。だからお疲れなのかと」

イスラ・・・ナイスフォローだけど間違ってるよ。俺の体力不足だ。

もうそろそろ帰ろうか・・・。

「じゃあそろそろ帰ろうか?」

「そうね」

「お疲れ様」

「お疲れ様ね」

「じゃあまたね」

「お疲れ!」

「バイバイ〜」

今日はリツコさんも家で夕飯食べるって言ってたよな。

「今日はリツコさんも家で夕飯食べるって」

「そうなんだ〜」

「俺は買い物してから帰るから二人は先に帰ってていいよ。」

「わたしも付き合うわ」

「フェルも付き合う〜」

「わかった」

・・・

今日はここのスーパーが特売だ。

「今晩は何が食べたい?」

「フェルはハンバーグが食べた〜い」

肉料理か・・・綾波は大丈夫かな?

「綾波はどう?」

「ハンバーグ・・・ちょっと苦手」

「じゃあ綾波のは豆腐ハンバーグにするからそれでいいかな?」

「いいけど手間じゃない?」

「そんなに手間じゃないよ」

「ありがとう」

「じゃあ買い物しちゃおう」

挽き肉、玉葱、人参、と・・・パン粉はあったな。味噌汁はどうしよう?

油揚げとなめ茸、豆腐でいいか。

サラダはレタス、クレソン、唐モロコシかな?人参は買ったしな。

「お待たせ、終わったよ」

「じゃ、帰りましょ」

「フェルはお菓子が買いた〜い」

「いいよ」

「ただいま」

「ただいま〜」

「ただいま」

「ニャア」

「ニャ」

「グルニャーン」

「フェルは猫に餌をあげてトイレを替えてくれるかな?」

「あ〜い」

「綾波はお風呂を入れて。俺は夕飯の用意をするから」

「わかったわ」

・・・

「ただいま」

「おかえりなさい、リツコさん。お風呂も入ってますけど食事とどっちを先にしますか?」

「ありがとう。じゃあ食事を先にするわ」

「わかりました」

・・・

「「「ご馳走様でした。」」」

「お粗末様でした」

「じゃあ片付けはフェルがするからシンジはゆっくりしてていいよ〜」

「ありがとう、フェル。リツコさんはお風呂をどうぞ」

「ありがとう。そうさせていただくわ」

・・・

「片付け終わったよ〜」

「ありがとう、フェル。助かったよ」

「ねえシンジ」

「なに?」

「修学旅行って何をするのかな〜?」

「俺も初めてだから良く分からないけどさ。色々な 史跡を見学したり水泳やスクーバの教室があるみたいだよ。栞読んでないの?」

「読んだけど一応聞いておこうと思ったんだよ〜。ありがとね〜」

「そう言えばフェルは水着持ってるの?」

「持ってない」

「じゃあ買いに行かなきゃ」

「だね〜。イスラと一緒に買いに行くよ〜」

「それがいいね」

「じゃあお風呂に入ってフェルは寝るから」

「おやすみ」

「おやすみ〜」

・・・

「リツコさん、父さんとは話しすることあるんですか?」

「あるわよ。事務的な事だけどね」

「そうですか」

「父さんは何を考えてるんでしょうか?」

「今の司令が何を考えているのかは私にはわからないわ」

「そうですよね。リツコさん。父さんと話しをしようと思うんですけど、どうでしょうか?」

「司令と何を話しをするっていうの?」

「今回の父さんがどういう人か確認したいんです。リツコさんは前回の父さんと何か変わったと思う事はないんですか?」

「そうね。事務的な報告とかはしてるけど・・・司令の真意は分からないわね」

「やっぱり父さんと話ししてみます。面会の手筈をお願いしていいでしょうか?」

「それは構わないけど、いいの?」

「はい。いつかは越えなきゃいけない事ですから・・・」

「・・・わかったわ。手配しましょう」

「ありがとうございます。」

「でも何を聞くの?」

「まずは綾波の事ですね。なんであんな育て方をしたのか」

「次は?」

「エヴァの事。エヴァが何者なのかを。何故適格者しか乗れないのかを」

「後は?」

「カヲル君の事を。何故彼がチルドレンとして選ばれたのかを」

「シンジ君」

「何ですか?」

「司令と敵対する積もりなの?」

「そんな積もりはありませんよ。単に思ってる疑問を聞くだけです」

「でもその質問は危険だわ」

「上手く聞きますよ」

「司令は今のところ私達に干渉して来ないわ。その真意は分からないけど。この状況をわざわざ悪化させる必要はないのよ」

「わかってますよ。だから上手く聞きます」

「はあ・・・仕方ないわね。わかったわ。手配しましょう」

「ありがとうございます」

「気を付けてね」

「はい」

「念のために盗聴機は付けさせてもらうわよ」

「わかりました」

風呂は命の洗濯かぁ。

実際気持ちいいよな。

このまま溶けてしまいたい気分だ。

何で俺はここにいるんだろう?

前回と何が変わったんだろう?

良い方向に向かっているんだろうか?

何が良い方向なんだろうか?

わからないよね、そんな事は。

未来は見えないんだから。

ああ風呂は気持ちいいな。

身体が溶けてしまいそうだ。


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