『俺と僕で何?』


第伍拾四話 マグマダイバー


あれ?知らない天井だ。

あ!修学旅行に来てるんだったっけ・・・。

「シンジ、起きたんかいな」

「あ。おはよう、トウジ」

「おはようさん」

「おはよう、シンジ君」

「あ。おはよう、カヲル君」

「ケンスケはまだ夢の中かいな」

「俺も起きてるよ」

・・・

「さあ、飯や飯や!」

朝食は簡単んだ。

ご飯、味噌汁、干物の焼き物、温泉玉子か。

「ご飯のお替わりは自由ですからどんどんおっしゃってくださいね」

「ほな、お替わりや!」

トウジ、早い!

「トウジは飯を食うために生きているみたいなもんだな」

ケンスケが冷やかす。

食事の席は部屋割りだからケンスケもトウジもカヲル君も近くにいる。

「今日の予定の目玉はスクーバ体験教室だな」

ケンスケが今日の予定をチェックしている。

「アスカが楽しみにしているんだ」

アスカ、スクーバ体験教室参加出来るといいんだけど・・・。

「へえ、そうなんだ」

「アスカはスクーバの免許も持っているんだって言ってたよ」

「ふーん」

「他の予定はどうなっているんだい?」

カヲル君がケンスケに訊く。

「えーと・・・午前中が沖縄歴史資料館の見学で、午後にスクーバ体験教室だな」

「そうかい、ありがとう」

・・・

午後中の資料館の見学をしている。

はっきり言って詰まらない。

でも午後のスクーバ体験教室も泳げない俺にとってはあまり楽しいメニューじゃあない。

アクアラングがあるから泳げなくても関係ないのかも知れないけど、生理的に受け付けない感じだよな。

「センセ、どないしたんや、しんき臭い顔しくさって?」

「いや、何でもないよ」

「さよか、ならええけどな」

「シンジ」

「なに、ケンスケ?」

「ここ絶対課題に出るぜ。要チェックだよ」

「わかった、ありがとう」

・・・

昼食は沖縄ラーメン。

この後はスクーバ体験教室だ。

・・・

スクーバ体験教室が始まった。

「装備が12組しかないので順番を守ってくださいね」

係りの人が説明している。

出席番号順なので、男子はケンスケと俺が一番手だ。

アスカは2番手か3番手だろう。

インストラクターが説明をしてくれている。

「サードチルドレン」

え?

こんな沖縄なのに黒服の保安部の人に声を掛けられた。

「なんですか?」

「悪いが修学旅行はこれで終わりだよ。非常召集だ」

「使徒ですか?」

「そうだ。車に乗ってくれたまえ」

仕方ない。

「わかりました」

車に向かうとアスカやレイ、イスラ、フェル、カヲル君も車に向かっていた。

「荷物は後で回収するから今はこれを着ていてくれ」

と、バスローブを渡された。

・・・

車で空港に行き、軍用ジェットヘリコプターに乗る。

加持さんやマヤさん達オペレーターの人達もいる。

どこに行くをだろう?

やっぱり浅間山なのかな?

「どこに行くんですか?」

「浅間山だよ、シンジ君。使徒が発見されたんだ」

「そうですか。エヴァは?」

「今浅間山に移送中だ」

「わかりました」

「参号機と初号機、弐号機が浅間山に向かっている。零号機は本部で待機となった」

「じゃあ俺達の配置はどうなるんですか?」

「シンジ君とアスカ、イスラとフェルが浅間山。レイちゃんと渚君が本部待機だ」

「本部は綾波とカヲル君だけで大丈夫なんですか?」

「まあ機体が零号機しかないからな。他のチルドレンがいてもやる事がないのさ」

だから綾波とカヲル君だけが別のヘリに乗ったのか。

・・・

目的地に着いたみたいだ。

約1時間半か、さすがにジェットヘリ・・・速いな。

・・・

「これからは各自葛城の指示に従ってくれ」

「はい。わかりました、加持さん」

・・・

エヴァ3機がもう準備されていた。

どうやって運んだんだろう?

ミサトさんだ。

「修学旅行の途中なのに申し訳なかったわね。でも、使徒が発見されたのよ」

「どこにですか?」

知ってるんだけどね。

「浅間山の火口の中よ」

「火口の中ぁ!そんなのどうするのよ。まさか中に潜れって言うの?」

アスカが言った。

「そうよ。今エヴァはD型装備、耐熱耐圧特殊装備にしてあるわ」

「だからあんな変な格好なのね」

「作戦における各自の分担を伝達します。イスラは参号機で火口に潜行。弐号機はバックアップとして同じく火口に潜行。初号機は火口入口でのバックアップとなります」

 

今回は参号機と弐号機の二機が潜るのか。

・・・

「みんなエントリーして!」

「はい。」

「了解。」

「わかりましたわ。」

・・・

「エヴァ各機起動しました」

日向さんの声だ。

「探査針打ち込みます」

青葉さんだ。

「目標は?」

「目標予測深度は1347付近です」

「了解。エヴァ参号機、沈降開始!」

「了解!沈降開始ます」

イスラとアスカが潜っていく。

俺は今はただ見ているしかない。

「360秒後にエヴァ弐号機を沈降よろしく」

「了解!弐号機沈降準備します」

アスカも潜っていくんだ。

いよいよ始まったな。

「どう、イスラ、機体に異常はない」

「状況は良好ですわ。問題ありませんわ」

「それは結構。アスカは?」

「異常なし。良好だわ」

「深度750に到達。」

「エヴァ弐号機、沈降開始!」

「了解!」

バックアップのアスカが潜り始めた。

「参号機、深度1347。目標予測深度到達です」

「イスラ。何か反応はある?」

「ありませんわ」

「対流が予測よりも乱れているまたいね。再計算して」

リツコさんが言った。

「じゃあ再度沈降よろしく」

・・・

「参号機、深度1470。弐号機、深度1352。参号機は目標再計算予測深度到達です。エヴァD型装備限界点まであと579です」

「どう、イスラ?」

「なんかいましたわ!」

「では、様子を見つつ冷却砲を準備!」

「了解ですわ」

俺には中の様子がわからない。

「使徒に動きありませんわ。冷却砲発射します」

「では発射!」

「了解」

「青葉君、使徒の反応をモニターしてね」

「了解です、葛城一尉」

「イスラ、どうなってるの?」

「使徒の体が収縮していますわ。・・・あ!形が変化していきますわ」

「羽化したのね!」

リツコさんが叫ぶ。

「そのまま冷却砲を!」

ミサトさんの指示。

「大丈夫。使徒が崩れていきますわ」

「状況は?」

「葛城一尉、パターン青消失ました!作戦成功です」

良かった。

「では参号機と弐号機の引き上げを開始!」

「了解!」

良かった。今回は何事もなく終わった。

・・・

ブリーフィング。

「みんなご苦労様。使徒は殲滅出来たわ。ありがとう」

「今回はイスラの初陣でしたしね」

「本当にお疲れ様。」

「いえ。お力になれて嬉しいですわ」

「じゃあ事後処理を終えたらあなた達にはまた沖縄に戻ってもらうわ」

「いいの?」

「ええ。まだ一日あるでしょう。楽しんできてね」

「「わーい!」」

ジェットヘリで沖縄の宿舎に戻ったのは7時ちょっと前だった。

丁度夕食の時間位かな。

・・・

今は食堂だ。

「よう、シンジ。もう仕事は終わったんかいな?」

「うん」

「そりゃ良かったな。ありがとうさん」

「今回はイスラのお陰だよ」

「さよか。お陰さんでこうして飯が食えるっちゅう事やな。ほんまにありがとさん」

「いいんだよ。礼はイスラに言ってよ。今日のスクーバ体験はどうだった?」

「ああ、海の中が滅茶苦茶綺麗だったわ」

アスカはくやしがるんだろうな。

「明日もスクーバ体験教室やるんだって」

「そうなの?予定にはなかったけど・・・」

わざわざアスカのためにネルフがごり押ししたのかな?

アスカは喜ぶだろうけど・・・。

「シンジ!」

「あ、アスカ」

「明日はスクーバ体験教室よ!」

「明日もあるの?」

「あたしがやると言ったらやるの!」

「もしかして職権乱用じゃあないの?」

「うっさいわねぇ。いいでしょ、それ位」

やっぱり・・・ネルフの特権を使ったな。

・・・

夕食はまたまた豪華なものだった。

後でレシピを教えてもらって家でも作ってみようかな。

・・・

今はトウジと温泉に入っている。

ケンスケとカヲル君は気が早くも土産物屋でお土産を物色している。

「ああ・・・極楽じゃあ。こんな事が出来るのもシンジ達のお陰じゃなぁ・・・」

「そんな事はないよ。頑張ったのはイスラなんだから。俺は待機だったし結局何もしなかったからね」

「それは結果論や。シンジがわしらを守ろうと頑張った事には変わりないで」

「そっかな?」

「そうや。ほんまに感謝しとるんや」

「ありがとう」

・・・

温泉を出たところでカヲル君に会った。

「やあ、シンジ君」

「カヲル君は温泉に入らないの?」

「僕は寝る前に入るよ。また卓球大会があるかも知れないからね」

なるほど。

「それよりもシンジ君に話しがあるんだ」

「え、何?」

「サンダルフォンは無事に殲滅出来た。その魂はイスラやフェルとは違ってこの世界には滞まれなかったけどね」

「うん。」

でもサンダルフォンの魂は消滅した訳じゃあないをだよね。

また平行宇宙の狭間のディラックの海をさ迷うだけか。

人類はいつかまたサンダルフォンに出会うのかも知れない。

「話しと言うのは次の使徒の事なんだ」

「次の使徒って・・・」

なんだっけ?

「マトリエルだよ、シンジ君」

「あ、あいつか。確か本部で停電があったんだったよね。でも何でカヲル君が知ってるの?」

「サード・インパクトの後のLCLの海でシンジ君の記憶をもらったからだよ」

「そうなんだ。でマトリエルがどうかしたの?」

「サンダルフォンとは違ってマトリエルはヒト化出来るかも知れないんだ。シンジ君は何を望むかと思ってね」

「マトリエルのヒト化か・・・。みんなの意見を聞いた方がいいんじゃないかな?」

「わかったよ。じゃあまた別の機会にしよう。おやすみ、シンジ君」

「おやすみ、カヲル君。また明日」

カヲル君は軽く手を上げて向こうに行った。

「シンジ!」

アスカだ。

「アスカも温泉に入ってたの?」

「ええ。一人だったけどね」

「今回はアスカの出番がなかったね」

「ああ、サンダルフォンの事?」

「そう」

「別にいいわよ。ちゃんと殲滅出来たんだから、誰がやったかなんて関係ないわ」

アスカ、前回と違う。

どうしてなんだ?

「俺はもう寝るけどさ、アスカは?」

「あたしももう寝るわ」

「じゃあおやすみ」

「おやすみ、シンジ」

もう10時半だ。

6時半起床だからな。

さて本当に寝るか。

自分の部屋に向かう。

・・・

(カチャ・・・バタン)

「おお、シンジかいな」

「まだ起きてたんだ」

「こんなに早うから寝れるかいな」

「俺もたよ」

ケンスケもか。

「俺は寝るよ」

そう言ってベッドに入る。

「なあシンジ」

「なんだよ、トウジ?」

「エヴァのパイロットってどんな感じなんや?」

「なんなんだよ、急に」

「いや、わしにも出来るんやないかと思うてな。」

「エヴァのパイロットになる条件は個人の資質じゃあないんだ。エヴァがパイロットを選ぶんだよ」

「なんや難しそうやのう」

「だからトウジが頑張ってなれるもんじゃないんだ」

「さよか。わかったわ。ありがとさんな、シンジ」

「いいんだよ」

ケンスケも聞いてたよな。

「じゃあおやすみさん」

「おやすみ、トウジ、ケンスケ」

「ああ、おやすみ、碇」

次はマトリエルか。

また本部は停電するのかな・・・。

そのへんは加持さん達が何か考えているだろうか?

ネルフの敵は使徒だけじゃないって事だよな。

俺はサード・インパクトまでの記憶を取り戻した。

ミサトさん、リツコさん、加持さんはサード・インパクトまでの記憶を持っていた。

綾波も三人目までの記憶を取り戻した。

他のみんなはどうなんだろう?

アスカは?

トウジは?

ケンスケは?

本当は記憶を持っているんじゃないのか?

ただ他人に話せないだけで・・・。

特にアスカ。

前回のアスカと違い過ぎる。

アスカは記憶を持っているんじゃないのかな?

・・・

何だか目が冴えて眠れないや。

仕方ない、温泉に入ってから寝ようかな。

・・・

一人で温泉に来た。

トウジとケンスケは眠っていた。

明日はスクーバ体験教室だ。

アスカが楽しみにしていたな。

アスカは前回浅間山火口に潜行する時にもスクーバしてたよな。

アスカ・・・。

俺は何がしたいんだろう?

俺の魂は前回の碇シンジとは違うみたいだ。

俺は誰なんだろう?

記憶では碇シンジだ。

自分でもそう思っている。

でもリツコさんは俺は俺の事を『俺』ではなく『僕』と言っていたそうだし、性格も違うらしい。

俺って何?

眠くなってきた・・・。のぼせてきたし、寝よう。

・・・

『やあ、久しぶりだね』

「誰?」

『碇シンジだよ』

「碇シンジは俺だ」

『君の中にいる本当の碇シンジだよ』

「俺の中にいる本当の碇シンジだって?」

『そうさ。僕はこの居心地の良い精神の奥底に逃げ込んだんだよ。全てを君に任せてね』

「どう言う事なんだ?」

『君にはこれから辛い事が待っている。勿論僕も感じる事になるさ。君が大切な人達を壊すのをね』

「お前は誰だ!」

『僕は君だよ。碇シンジさ。サード・インパクトを起こして精神の闇に逃げ込んだ弱虫のシンジだよ。』

「何で出てこないんだ?」

『君がいるからだろう?僕が出ていけば君は消滅してしまう。綾波はそんな事を望んでいないと思うよ』

「綾波が?」

『さあ、目覚めの時だ』

「まて!」

『良い目覚めを・・・碇シンジ君』

「待てよ」

・・・

夢か・・・。

今何時だ。

3時か。

いやな夢だな。

寝よう。

・・・

『また会ったね』

「碇シンジか?」

『そうだよ』

「何故俺の夢に出てくるんだ?」

『それしか僕には方法がないからだよ』

「何が言いたい」

『綾波とアスカを助けてあげたいんだ』

「何故だ?」

『前に酷い事をしてしまったから』

「あの事か?」

『そうだよ』

「あれは俺がした事なのか?」

『いいや違う。僕がした事さ。君には関係ないよ。でも今の僕は君の意識に隠れてしまっているからどうしようもないんだ。君にお願いするしかない』

「アスカは前回のアスカとは違う。」

『アスカは覚えているよ』

「そうなのか?」

『アスカは思い出しているよ』

「そんな事言ってない」

『怖くて言えないだけさ。彼女は思い出しているよ』

「・・・」

『じゃあね。』

「待て!」

『よろしく頼んだよ、碇シンジ君』

「待ってくれ!」

・・・

夢。

あれは俺の中の本当の碇シンジなのか?


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