『俺と僕で何?』
第伍拾伍話 修学旅行最終日
朝か。
夕べは変な夢を見たな。
俺の中に別の碇シンジがいた。
俺の中のもう一つの魂か。
寝覚めが悪い。
寝汗をかいている。
「よう、センセ。おはようさん」
「おはよう、トウジ。早いね。」
「今日もスクーバやな。二日連続なんてこいつは惣流の差金かいな?」
「多分そうだね」
「昨日はどうだったの?」
「わしは耳抜きが上手くいかんとあんまり深いところに行けなんだわ。でも海の中は綺麗やったぞ」
「そうなんだ。俺は泳げないからな」
「関係あらへんわ、そんな事。酸素ボンべがあるさかいな」
「そっか」
「おはよう」
ケンスケも起きた。
「おはよう、ケンスケ」
「ああ。今日もスクーバだな」
「ケンスケは昨日どうだったの?」
「俺は自由気ままに潜ったぜ。ホント、沖縄の海は綺麗だよな。魚がいっぱいいて一緒に泳いだよ。今日も楽しみだぜ」
「そっか。じゃあ俺も頑張るかな」
「さあ、飯の時間や。食堂にいこうやないか」
・・・
今日で修学旅行もおしまいか。
朝食はまた干物だった。
・・・
海岸に来た。
僕等チルドレンは昨日やってないので、みんなとは別にスクーバのレクチャーをまた最初から受けている。
アスカは何だかうんざりしているみたいだけどね。免許を持っているんだから当然か・・・。
「では装備を着けてください」
装備を着ける。結構重いんだ。
「では潜りましょう」
最初はアスカ。
イスラ、フェル、カヲル君・・・次々と海に入っていく。
最後が俺だ。
(ザブーン・・・ゴボゴボゴボ・・・)
「・・・」
息が出来る。
手足を動かす。
何とか進む。
耳抜きも出来た。
・・・
本当に綺麗だ。
こんなに近くに魚がいるよ。
あ!アスカがいた。
そうだ、アスカに着いていこう。
アスカ、早いな。
あ、アスカが俺に気付いて何か合図をしている。何かな?
・・・あ、ウニとヒトデの大群だ。
ウニやヒトデって海の中ではあんなに早く動いているんだ。
何だか良く分からないけど綺麗な魚が何種類も群れで泳いでいる。
魚の大群の中に入っちゃったよ。
変な感じだ・・・。
でも海の中ってこんなに綺麗で素晴らしかったんだ!
知らなかったな・・・。
・・・
楽しかったスクーバ教室の時間も終わってしまった。
「お疲れ様」
インストラクターの人がスクーバ教室の終了を宣言した。
ちょっぴり残念な気がする。
「シンジも結構出来たじゃない」
アスカが俺に言う。
「何とかね」
「スクーバ好きになった?」
「うん。海の中がとっても綺麗だったよ」
「またやろうよ」
「そうだね」
今日のアスカはやけに優しく感じた。
・
・
・
午後は沖縄の史跡巡り。
「なんやつまらんの」
トウジが文句を言っている。
「でも課題になってるからちゃんと観ておかないと後で困るよ」
「せやな」
気の無い返事。
「ケンスケは課題はもうバッチリなんだっけ?」
「ああ、後は少し微調整すればお終まいだよ」
要領のいい奴だな。
「俺はこれからなんだよね」
「何だったら俺のを写してもいいぜ」
「それは反則だろ。自分で何とかするよ」
班の課題とは別に個人の課題もあるからな。
・
・
・
史跡巡りも終わってホテルに帰ってきた。
「今日はもう帰るのか」
ケンスケがしんみりと言う。
「これからお土産を買わなくちゃいけないね」
今日の夕方はそのために時間が取られているだけだ。
その後は空港に行って帰る。
「でもシンジ達も修学旅行に来れて良かったじゃないか」
「うん。楽しかったよ。アスカのお陰でスクーバも出来たしね」
「碇は泳げないけどスクーバは大丈夫だったのか?」
「ああ、ボンベがあったからね。耳抜きも上手くいったよ」
「そりゃあ良かったな」
「うん」
「じゃあお土産でも買うか?」
「そうだね」
土産物屋に行く。
ミサトさんにはやっぱり泡盛だな。
本部のみんなにはチンスコーでいいかな?
アスカ達と重なると不味いな。
アスカ達にチンスコーを買った事をメールを送る。
そうだペンペンには干物を買ってあげよう。
(ピピピピ・・・)
アスカからだ。
『あんたがチンスコー買ったからあたしは別の物にするわ。イスラ、フェル、渚とも相談して決めるわよ。ミサトには泡盛でいいわね。重なっても文句ないでしょ!』
確かにミサトさんは何本あっても文句は言わないだろうな。
「碇、トウジと渚を誘って最後の温泉に入ろうぜ!」
「ああ、そうしよう」
・・・
「いやあ・・・今日で修学旅行もおしまいかいな。課題が難関やな・・・」
「トウジはちゃんと説明聞いてたのか?」
「全然覚えておらへんわ。どないしょう?」
「知るかよ。俺のを写すか?」
「おお、よろしゅう頼むわ」
「高く付くぜ」
「商売上手なヤツやっちゃ・・・背に腹は変えられん」
「カヲル君は課題はどうするの?」
「もう書いてしまったよ。だから何も心配する事はいんだ」
なんと早い!
出来てないのは俺とトウジだけか・・・。
帰りの飛行機の中で何とかしよう。
温泉につかりながらそう思う。
・
・
・
もう修学旅行もおしまいか・・・。
「シンジ、何たそがれてんのや?」
「いや、修学旅行もおしまいかと思ってね」
「まあ、シンジ等は真ん中が抜けて変な修学旅行になったさかいな」
「仕方ないよ。緊急事態だったんだから」
「ま、センセが納得しとるんやったらわしには言う事はないわ」
「うん」
「それよりシンジもスクーバ出来て良かったのう」
「うん。新鮮でこんな世界もあったんだなあ、って、感動したよ。泳げない俺にもあんな経験が出来て嬉しかった」
「そら良かったな、シンジ」
「ありがとう」
「さ、そろそろ荷造りしようぜ。夕方には第三新東京市だ」
「ああ、そうだね」
・
・
・
荷造りは簡単に済んだ。
ロビーで皆が集合するのを待つ。
アスカが来た。
「あら、シンジ。早いのね」
「まあね。大した荷物もないから」
「お土産は買ったの」
「うん、買ったよ。アスカは?」
「あたしも買ったわよ。一応ね」
「何買ったの?」
「うん・・・ミサト用の泡盛り、本部のみんなへの沖縄瓦煎餅、そして、ペンペンへの魚の干物」
あ!俺はペンペンへのお土産を忘れてた・・・。
まあ、アスカが買ったんならいいか。一緒に住んでいる訳じゃあないしね。
綾波やフェルやイスラも何か買ったんだろうか?
そんな事を考えているうちに集合時間になった。
クラス単位で点呼がとられている。
・・・
「では出発します。皆さんバスに乗って下さい」
・・・
修学旅行来れて良かった。
途中使徒が来て慌ただしかったけど、スクーバも出来たし、みんなと一緒に騒げたし・・・温泉定番の卓球もしたし・・・楽しめたと思うんだ。
こんな日常がずっと続けばいいのにな。
そんな事を考えているうちにバスは空港に着いた。
・
・
・
飛行機の中。
何故か帰りは隣に綾波とアスカが座った。
「イスラ、今回は大変だったね」
「え?何の事ですの?」
「マグマの中に潜った事だよ」
「ああ・・・大した事じゃあありませんよ。皆さんのバックアップがありましたから不安はありませんでしたわ」
相変わらずの丁寧な言葉遣い。
「でもイスラの仲間じゃあないの?」
「違いますわ。私にとっても敵ですの、使徒は。ヒト化されればともかく、そうでなければ敵ですわ」
「そうなんだ」
何でヒト化されれば敵じゃあなくなるんだろう?
後でリツコさんかカヲル君に聞いてみよう。
「アスカはこの修学旅行は楽しかった?」
「もっちのろん!よ。楽しかったわよ。温泉にも入れたし、スクーバも出来たしね」
「アスカはスクーバが好きなんだ」
「まあね」
「でもドイツじゃあ海なんてないじゃないか。なのにどうしてスクーバが出来るの?」
「軍事訓練のメニューのひとつだったのよ」
「ああ、なるほど。そういう事なんだ」
「そういう事よ。シンジはどうだったのよ」
「楽しかったよ。泳げない俺でも何とかスクーバは出来たからね」
「そう、良かったわね」
「うん。・・・そう言えばアスカやイスラは課題はどうしたの」
「あたしは家に帰ったらチャチャっと済ませるわ。頭の中ではもう出来てるからね」
凄いなあ。
「イスラは?」
「私はまだですわ。でも何とかなりますわ」
「そうなんだ」
「シンジさんはどうなんですか?」
「俺はこれから考えるんだ」
「そうですの。頑張って下さいね」
「ああ、ありがとう」
みんなしっかりしてるな。綾波はどうなんだろう?
・
・
・
やっと家に帰った来た。
夕方の6時半だ。
(ガチャ・・・バタン)
「ただいま」
「ただいま〜」
「ただいま」
「「ニャー」」
「ニャン」
猫達の出迎え。リツコさんはまだなんだな。
「じゃあ俺は夕食の用意をするから、フェルは風呂の用意を、綾波は猫の世話をしてくれるかな?」
「了解〜」
「わかったわ」
・・・
レイとフェルが風呂に入っている。
俺は久しぶりに夕飯の準備だ。
今日はハンバーグ。
「碇君、お風呂空いたわ」
「わかったよ、綾波」
「後はわたしがするから碇君はお風呂入って」
「うん、そうするよ。ありがとう」
「いいの」
・・・
修学旅行の温泉も良かったけどやっぱり自分の家の風呂は落ち着くなあ。
夕飯を済ませたら課題をやらなきゃ・・・。
・・・
風呂を出てリビングに行く。
「お風呂出たよ。次誰か入って」
「わかったわ。フェル、先に入っていいわよ」
綾波はキッチンで夕飯の下ごしらえをしていた。
「あ〜い。じゃあフェル先に入りま〜す!」
「悪いね、綾波。手伝ってもらっちゃって。後は俺がやるよ」
「いいの。碇君はゆっくりしていて」
「でも・・・今日は俺の当番だから」
「もうここまでやってしまったから最後までやるわ」
そうもいかないよ、綾波。
「じゃあハンバーグは綾波に任せるから、俺はスープを作るよ」
「わかったわ。じゃあお願い」
(ピンポーン)
あ!リツコさんかな?
(ガチャ・・・バタン)
「ただいま」
やっぱりリツコさんだ。
「おかえりなさい」
「ただいま、シンジ君」
「おかえりなさい」
「ただいま、レイ。・・・フェルは?」
「フェルは今風呂に入ってます」
「そう。じゃあ私は着替えてくるわね」
「はい」
・・・
フェルが風呂を出て今は皆で夕食を採っている。
「修学旅行はどうだったの?」
「楽しかったよ〜」
フェルが第一声で応える。
「フェルにとっては本当に初めての旅行だったもの。楽しめて良かったわね。レイはどうだったのかしら?」
「わたしも楽しかったです。わたしも旅行なんて初めてだったから」
「そうね。レイも旅行なんて初めてだったかしらね」
「はい」
「俺は旅行は初めてじゃありませんでしたけど、飛行機に乗ったのは初めてでしたけど」
「あら・・・皆が初めてづくしだったのね」
「フェルは飛行機が楽しかった〜」
「そう、良かったわね」
「俺はスクーバが良かったです。俺って泳げませんから海の中に入れただけでも感動もんなのに、海中遊泳なんか出来て大感激でした」
「それは楽しかったでしょう。レイは?」
「碇君に泳ぎを教えられて嬉しかった」
「そう。で、シンジ君は泳げるようになったのかしら?」
「いいえ。わたしの教え方が悪くて成功しませんでした」
「あらあら。それは残念だったわね、シンジ君」
「綾波の教え方が悪かったんじゃありません。俺の根性と度胸が足りなかっただけですよ。だから綾波せいじゃないから」
「碇君、優しい」
綾波が言う。
「そんな事ないよ。俺こそせっかく綾波が教えてくれたのに泳げるようにならなくてごめんね」
「ううん」
「また頑張るからまた教えてくれるかな?」
「わかったわ」
あ!リツコさんにお土産があったんだった。
「リツコさんにお土産があります」
「あら、ありがとう」
「ありきたりの物で申し訳ないんですけど、チンスコーです」
「嬉しいわ。私チンスコー好きよ」
「そう言っていただけると助かります」
「ご馳走様〜」
フェルが食べ終わった。
「私もご馳走様」
リツコさんも。
「ご馳走様、綾波」
俺も。
「お粗末様。わたしもご馳走様、碇君」
と、綾波。
ご馳走って言われても俺はスープを作っただけなんだけどな・・・。
・
・
・
リツコさん、風呂出たみたいだな。
もう暫くしたらリツコさんの部屋に行ってみよう。
・・・
もういいかな?
(コンコン)
「シンジです。リツコさん、ちょっといいですか?」
「いいわよ、入って」
(ガチャ・・・バタン)
「すいません、夜遅くに」
「いいのよ。で、何かしら?」
「ご相談したい事があるんです」
「・・・続けて」
「修学旅行の時に気になる夢を視たんです」
「どんな夢だったの?」
「夢の中にもう一人の俺が出てきました」
「それから?」
「俺はそのもう一人の俺と話しました。もう一人の俺は自分の事を『僕』って呼んでました。そしてそいつは自分は俺の中にいるもう一人の碇シンジで俺がいるから夢にしか 出られないって言ってました。自分が現実世界に出て来ると俺が消滅するって言うんです。綾波がそんな事は望まないから夢にしか出てこれないんだって言ってました」
「レイが望まないって言ったのね?」
「はい」
「以前シンジ君には二つの魂が存在するんじゃないかって話しをしたの覚えているかしら?」
「ええ、覚えてます」
「その『僕』って言う碇シンジ君はそのもうひとつの魂かも知れないわ」
やっぱりそうなのか・・・。
「そうなんですか」
「彼は他に何か言ってた?」
「ええ、自分がサード・インパクトを起こしたから俺に綾波とアスカを助けて欲しい、って。あと、アスカは前の事を覚えている筈だ、とも言ってました」
「アスカが?」
「はい。確かにそう言ってました」
「・・・」
「どういう事なんでしょうか?」
「多分その『僕』と言うのはもう一人のシンジ君ね。それも前回のシンジ君の魂だと思うわ」
「じゃあこの俺はなんなんでしょうか?」
「彼の言葉を借りれば、レイが望んで存在する魂・・・それがあなたと言う事なんでしょうね」
「良くわかりません」
「レイは二人目と三人目の記憶を取り戻しているけど、リリスとしての記憶はまだ取り戻していないって言ってたわ。だから前回のレイがリリスとして何を望んだのかは多分今のレイに聞いても解らないでしょうね 」
「じゃあどうしようも無いんですか?」
「そうなるわね」
「そんな・・・」
「あと可能性があるとすれば渚君かしら?」
あ!
「そうですね!カヲル君なら何か解るかも知れませんね!」
そうだ、カヲル君なら何か知ってるかも知れない。
「あと気になるのはアスカが前回の記憶を持っているかどうかね」
「とりあえずカヲル君を呼んでみます!ちょっと待ってて下さい」
「わかったわ」
カヲル君、いるかな?
(ガチャ・・・バタン)
・・・
(カチャ・・・ピ)
(トゥルルルルル・・・トゥルルル)
『はい、渚ですが』
「あ、カヲル君。シンジだけど」
『やあ、シンジ君。どうしたんだい、こんな夜に?』
「あ、遅いのにごめん・・・ちょっとカヲル君に訊きたい事があって」
『なんだい、訊きたい事って?』
「うん。少しややこしい事なんだけど・・・」
『わかった。今からそっちに行くよ』
「ありがとう」
『じゃあ』
「うん」
(プツ)
・・・
(ピンポーン)
流石に早いな、カヲル君は。
「はーい!」
(ガチャ)
「ごめんね、カヲル君」
「いいんだよ、シンジ君の為だからね」
「さ、入って」
「ああ、お邪魔します」
(バタン)
・・・
「あら、随分と早かったわね」
リツコさんが驚いてる。
まさかカヲル君がATフィールドを使ってディラックの海から来たなんて知らないからな・・・。
「今晩は、赤木博士」
「今晩は、渚君。わざわざ呼び出して悪かったわね」
「いえ。シンジ君の為ですから気にしてませんよ。で、なんですか、訊きたい事っていうのは?」
・・・
俺はカヲル君にあの夢の話しをした。
・・・
「成程・・・そういう事なんだね」
「渚君には何か心当たりがあるのかしら?」
「それよりも赤木博士の見解はどうなんですか?」
「以前シンジ君の脳波とかを検査した結果、シンジ君には二つの異なる波長が観測されて、シンジ君には二つの魂があるんじゃないかと推測しているの」
「魂が二つですか・・・」
「ええ、そうよ。で、端的に言うと、そのうちの一つは前回の碇シンジ君の魂で今はここにいるシンジ君の魂の蔭に隠れていると思われるわ」
「成程ね」
「隠れているシンジ君、前回のシンジ君は自分の事を『僕』と呼ぶけど今のシンジ君は『俺』って言うし、性格もかなり違うのも確かだわ」
「そうですね」
「今回シンジ君が診た夢は、前回の碇シンジが今のシンジ君に何か訴えたくて診させたものじゃないかしら?」
「なかなか鋭いですね」
やっぱりカヲル君は何か識ってるんだ!
「カヲル君は何か識ってるの?識ってるんだったら教えて欲しい!」
「私も知りたいわ」
「そうでしょうね」
「本当はレイに訊ければいいんでしょうけど、生憎レイは二人目と三人目の記憶は持ってるけど肝心のリリス、サード・インパクトの時のリリスとしての記憶は取り戻してい ない。だから多分レイは覚えていないわ、あの時自分が何を望んだかを・・・」
「カヲル君が識ってる事を教えてくれないかな?」
「わかったよ」
「本当?」
「ああ。今話せる事は教えてあげるよ」
「ありがとう、カヲル君!」
「いいんだよ。本当はレイちゃんから聞く方がいいんだけど、レイちゃんはリリスの記憶を封印しているみたいだし・・・どうせいつかはシンジ君が識らなきゃいけない事だからね 」
「渚君、貴方は全てを識ってるって言うの?」
リツコさんが少し驚いている。
「全てとは言いませんけどね。でも僕は前回の記憶を全て持っています。それにレイちゃんに三人目とリリスの記憶を渡したのは僕ですから・・・サード・インパクトの記憶を含めてね 」
「そうだったの・・・」
リツコさん、今度はかなりびっくりしている。
俺もだけど・・・。
「何から話しましょうか?いえ何が識りたいですか?」
「じゃあ私から質問して良いかしら?」
リツコさんが俺に同意を求めてる。
「ええ、とりあえずお任せします」
「シンジ君には本当に二つの魂が宿っているのかしら?」
「ええ。そして一つは前回の碇シンジ君のもので、今のシンジ君の魂の蔭に隠れていると言うのも正解です」
「じゃあ今のシンジ君の魂は何?どこから来たって言うの?」
「今のシンジ君の魂はリリスの魂の欠片ですよ」
!
ええ!なんだってぇ?
「俺の魂がリリスの魂の欠片ぁ?!」
リツコさんも唖然としている。
「そうなんだよ、シンジ君」
俺の魂がリリスの欠片ってなんで?どういう事なんだ?全然解らないよ・・・。
「ちょっといいかしら?」
「なんですか?」
「リリスはレイなんじゃないの?」
「そうですよ。でもレイちゃんはこの世界のリリスです。シンジ君の魂であるリリスは別の世界のリリスの魂をレイちゃんが呼び寄せたものなんです」
「「別の世界・・・?」」
思わずリツコさんとハモってしまった。
「そうです」
「それはどういう意味なの?」
「世界は一つじゃないんです。多元宇宙の仮説はご存じですよね。この宇宙はその多元宇宙、並行宇宙の一つだと言う事ですよ」
「多元宇宙は本当にある訳ね。確か前にもそんな話しをしていたわね、使徒は多元宇宙の狭間を漂っているって」
「そうです。リリスはその全ての宇宙に存在してるんです。そして全てのリリスはその大元は一つだった。レイちゃんはその多元宇宙の一つからリリスの魂を呼び寄せシンジ君に与えたんです 」
「何故そんな事をしたのかしら?」
「はっきりした事は解りません。シンジ君がこの巻き戻された世界をやり直すのに必要だったんじゃないでしょうか?」
「さっき貴方はレイはリリスの記憶を封印してる、って言っていたわね?」
「ええ、言いましたよ。レイちゃんに三人目とリリスの記憶を渡したのは僕ですからね。確かに渡しましたから、レイちゃんがリリスの記憶を思い出せないならそれはレイち ゃん自身がその記憶を何らかの理由で受け入れられずに拒否したとしか考えられません」
「・・・何故かしら?」
「さあ、何故なんでしょうね?僕にも解りません。記憶を渡したのはそもそもリリスたるレイちゃんの依頼だったんですけどね。僕はそれに従っただけだから・・・」
「レイが自分で思い出すのを待たなければいけないと言う事ね」
「そうなりますね」
そう言えば・・・。
「思い出すって言えばアスカはどうなの。俺が見た夢の中でもう一人のシンジがアスカは覚えてるって言ってたけど・・・」
「流石にそれは僕には判らないよ。僕は惣流さんには関与していないから。リリスの記憶ではそんな事はないとは思うんだけど、記憶がリリスの全てじゃないからね」
「じゃあアスカに聞くしかないって事なのかな?」
「そうね。でもアスカの態度を見る限りそんな様子は感じられないわね」
俺もそう思うけど・・・。
「でも・・・アスカって最初の頃に較べると今の方が前回のアスカの性格に近くなってる様な気はするんです」
「そう言われてみればそうね。加持君辺りに聞いてみようかしら?」
「お願いします、リツコさん」
「わかったわ」
「他に何かありますか、赤木博士?」
「じゃあ今日は最後にもう一つだけ」
「どうぞ」
「この世界の繰り返しは今回で何回目なの?」
「さあ・・・僕にも何回かは解りません」
「でも少なくとも初めてじゃあないのね?」
「ええ、それは確かですよ」
「ありがとう。また色々と聞くかも知れないけどその時もよろしくお願いするわ」
「喜んで。シンジ君はもういいのかい?」
俺は・・・何が何だか判らないよ。
「今日はいいよ、カヲル君。ありがとう、色々と話してくれて」
「いいんだ。シンジ君の役に立てれば僕も嬉しいんだからね」
・・・
カヲル君が帰って行った。
「とにかくびっくりしたわね、シンジ君」
「ええ・・・俺のこの魂が別の並行世界のリリスの欠片だなんて・・・」
「シンジ君にはその自覚は当然ない・・・のよね?」
「もちろんありませんよ!そう言われた今も自分自身信じられないんですから・・・」
「やっぱりそうよね」
「以前調べた時には・・・シンジ君の肉体は遺伝子的には完全に人間の物だったわ」
「そうですか」
「また今度検査してみましょう」
「はい、是非お願いします」
「あとはアスカの事ね・・・アスカも今度検査してみるわ」
「そうですね」
「シンジ」
「なんですか?」
「貴方、アスカに直接聞いてみる?」
「え!俺がですか?」
「ええ、そうよ」
そんな・・・。
「でも、その為には俺達が前回の記憶を持ってる事を話さないといけないんじゃないですか」
「やっぱりそうよね」
そうだよ!
「俺だけでは荷が重いですよ」
「わかったわ。何かいい方法を考える事にするわ」
「お願いしますよ」
「シンジ君、明日は休日だけど本部に行ってくれる?」
「ええ、俺は構いませんけど・・・何をするんですか?」
「久しぶりに皆で集まって色々と報告や相談をしましょう」
「皆って、リツコさん、ミサトさん、加持さん、それと、綾波、俺、ですか?」
「それとフェルもね。イスラはアスカが怪しむといけないから今回は外しましょう。特に加持君はあれから色々と調べたみたいだから面白い話しが聞けると思うわ」
「わかりました」
「じゃあ遅いから今日はもう寝ましょうか」
「はい。お休みなさい、リツコさん」
「お休み、シンジ君。お疲れ様」
「リツコさんもお疲れ様」
(ガチャ・・・バタン)
「はぁ・・・」
なんだかとんでもない展開になっちゃったな。
綾波とフェルはもう寝たみたいだな。
(ガチャ・・・バタン)
「疲れた・・・精神的に」
リリス、か。
リリスって一体全体なんなんだろう?
綾波はこの世界のリリスだよな。
で、俺は別の並行世界のリリスなのか・・・。
全然自覚ないのになぁ。
まあ今考えても仕方がないか・・・今日はもう寝よう。
・
・
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(段々と真実に近付いているね、もう一人の『僕』、碇シンジ君)
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